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Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4345, JBL, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(その22)

瀬川先生が愛用されていたJBLの4341を譲り受けられたMさん曰く
「新品のスピーカーだと、最初の音出しをスタート点として、多少良くなったり悪くなったりするけど、
全体的に見れば手間暇かけて愛情込めて鳴らしていけば、音がよくなってくる。
けれど瀬川先生の4341は、譲り受けて鳴らした最初の日の音がいちばん良くて、
徐々に音が悪くなる、というか、ふつうの音に鳴っていく」。

そんなバカなことがあるものか、気のせいだろうと思われる方もいて不思議ではない。

でも、瀬川先生の遺品となったJBLの4345も、そうなのだ。
瀬川先生が亡くなられて1年弱経ったころ、サンスイのNさんが編集部に来られたときに話された。
「瀬川さんの4345を引き取られたIさん(女性)から、すこし前に連絡があってね。
ある日、4345の音が急に悪くなった、と言うんだ。故障とかじゃなくて、
どこも悪くないようなんだけど、いままで鳴っていた音が、もう出なくなったらしい」。

これも、やはり瀬川先生が亡くなられて半年後のことだったらしい。

半年で、瀬川先生が愛用されていたスピーカーに込められていた神通力、
それがなくなったかのように、どちらもふつうの4341、4345に戻ってしまったようだ。

西新宿にあったサンスイのショールームで行なわれていた瀬川先生の試聴会、
それもJBLの4350を鳴らされたときに行った人の話を聞いたことがある。
「がさつなJBLのスピーカーが、瀬川さんが鳴らすと、なんともセンシティヴに鳴るんだよね」。

「音は人なり」と言われはじめて、ずいぶん、長い月日が経っている。
けれど、何がどう作用しているのかは、誰もほんとうのところはよくわからない。

真に愛して鳴らしたモノには、少なくとも何かが宿っているのかもしれない。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その29)

ビクターZero-L10の専用置き台ST-L10は、ダイヤトーンのDK5000とは違い、調整代(しろ)がない。
2本の角材をX字型の桟で連結した構造で、寸法もZero-L10にぴったりくるようになっている。

ST-L10上で、Zero-L10を多少前後させることで、調整できないことはないけれど、
見た目を考えると、面を揃えたほうがしっくりくる。
もちろん置き台とスピーカーとの間に、スペーサーを挿むこともできるが、
メーカーの主張としては、置き台とスピーカー底面の接触面積を決めておくことで、
音を仕上げているわけで、まずは何も挿むことなく取り組むべきだろう。

Zero-L10は、Zero1000の3ウェイ・プラス・スーパートゥイーター的構成ではなく、
DS5000同様、中低域の再現能力を高めるための本格的な4ウェイである。

ウーファーとミッドバスは、セラミック・ファイバーとクロスカーボンの複合素材を、
ミッドハイとトゥイーターは、ピュアファインセラミックを振動板に採用している。
振動板を剛性を高め、内部音速の速い素材を使うことで、
分割振動をできるだけ上の帯域に移動させ、ピストニックモーション領域の拡大を図っている。

ピストニックモーションの追求こそ、4343と国産4ウェイ・スピーカーとの、
もっとも大きな違いだと、私は考えている。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その28)

ダイヤトーンが、アコースティックキューブと呼んでいたDK5000は、
カナダ産カエデを使い、ブロックを12分割したランバーコア構成にしたもので、
先に述べたように上部センターに無酸素銅のピンが打ち込まれている。
アクセサリーとして直径25mm、厚み1.6mmの無酸素銅のスペーサーが8枚ついている。

通常の銅よりも無酸素銅は振動の減衰が早い。
同じ直径、厚みのものを弾くと、チーンという音の鳴りの時間が無酸素銅は短いことからもわかる。

このスペーサーを利用することで、スピーカー底面への接触面積は減り、より自由な鳴り方になるとともに、
当然、この銅スペーサーの音も、わずかとはいえ、音にのる。

DK5000の後には、ヤマハからスペーサー・セットが発売された。
無酸素銅のスペーサーの他に、セーム革やフェルトなど、素材の異る円状のスペーサーの詰め合わせだった。

DS5000(DK5000)が登場した1982年ごろから、
置き台、スタンドに、専用のモノがぼつぼつ出てくるようになった。

セレッションのSL6も、木製の専用スタンドが用意されていたし、
SL600ではクリフストーンスタンドと呼ばれる鉄製で、パイプの中に石が詰め込まれたものになっている。
ダイヤトーンからも自社製ブックシェルフ・スピーカー用に、DK5、DK10などが用意されていた。
ビクターやヤマハからも、木製のスタンドが登場している。

それまでのキャスター付きの、間に合わせ的なつくりのモノから、
しっかりとしたつくりで、組み合せるスピーカーとのことを配慮しはじめたモノへと変化していっている。

そして国産4ウェイ・スピーカーで、1985年と遅くに登場したビクターのZero-L10には、
専用の置き台ST-L10が用意されていた。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その27)

DK5000は、何もDS5000専用というわけではない。
ステレオサウンドの試聴室では、リファレンス・スピーカーとして使ってきたJBLの4344は、
常時DK5000の4点支持だった。

床にベタ置きとDK5000を使ったときで何か異るのか。
まずスピーカーの底板の鳴りが大きく変化する。
ベタ置きでは、底板を床でダンプするようなもので、
底板の鳴りが減った分、主に天板、その他の部分の鳴りが大きくなる。
このことはスーパートゥイーターのところで触れている。

DK5000や角材でスピーカーを浮かすと、底板の鳴りは、いくぶんフリーになる。
さらに4点支持でも、DK5000をどの程度、スピーカーの底板にかませるかによって、
底板の鳴りをコントロールできる。

ためしにDK5000がスピーカーからはみ出ないように、四隅をきちんと揃えた音と、
DK5000のセンターピンが、スピーカーの四隅ぎりぎりになるまで外側にはみ出させた音、
まずはこのふたつの状態の音を聴いてみてほしい。

低音の鳴り方、締まり具合の変化が大きいはずだ。

DK5000を四隅に揃えた状態とは半分かかった状態では、底板がフリーになっている面積が違う。
当然底板の鳴り方が変化し、エンクロージュア全体の鳴り方も変化している。

一般的にスピーカーユニットは前面に取りつけてあるため、スピーカーの重心は前面寄りにある。

だから、さらなる調整として、前側2つのDK5000と後ろ側2つのDK5000のかませ具合を変えてみる。
前側は四隅からはみ出ないようにして、後ろ側は半分だけかませてみる。
このへんは自由に試してみてほしい。

DK5000にかかる荷重が変化するということは、おそらく床の振動モードも変化しているはずである。

スピーカーの設置場所は、壁からの距離だけの関係だけでなく、床との相関関係も大きい。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その26)

4343とDS5000のいちばんの大きな違いは、ともにエンクロージュア底面も仕上げされたフロアー型だが、
DS5000には、DK5000という専用のベース(脚)が用意されていることだ。

フロアー型スピーカーだから床に直接設置して、それでいい音が得られるわけではない。
台輪(ハカマ)付きであっても、多少持ちあげて鳴らしたほうが好結果のことが多い。

床からの反射ということだけでなく、スピーカーと床との相関関係は、
スピーカーの重量が重く、エンクロージュア底部の面積が広いモノほど、密接なものとなる。
この関係をどう捉え、どうコントロールするかが、スピーカー設置、
特にフロアー型スピーカーの使いこなしの最大のポイントといえよう。

DK5000は一辺9cmの、良質の木の立方体のブロックで、上面センターに金属のピンが打ち込まれている。
8個1組のDK5000で、DS5000を4点支持、もしくは3点支持で持ちあげる。
アンプやCDプレーヤーもふくめて、3点支持だと音の輪郭がくっきりする傾向がある。
4点支持では、安定した、しなやかな音になる。

スピーカーの場合、床が完全にフラットのことは稀なため、
3点支持の方がガタツキなくセットしやすい。
4点支持だと、ガタつかないまでも、4つすべてのDK5000の上に、均等に荷重がかからないことが多々あり、
ひとつだけ手で容易に動かせてしまうものが出てきたりする。

そのままにしておくと、4点支持の良さは活きてこない。
なんらかのスペーサーを、床とDK5000の間に挿し込み調整する必要がある。
当然、スペーサーの素材によっても音は違ってくる。
私の経験では、和紙の使用がいい結果をもたらしてくれることが多かった。

最近では「レベラー」というコンクリートがある。
通常のコンクリートよりも、水のようにさらさらしたもので、
水は自然に水平が出るように、このレベラーも、流し込むだけいい。
ただし通常のコンクリートよりもかなり高価だけど。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その25)

DS5000が、4343を意識しているのは外形寸法の他に、ソニーのSS-G7、G9同様、
フロントバッフルに、ウーファーとミッドバス以上3つのユニットの間に、スリットをいれている。

もっとも4343の場合は、横向きで使うことを考慮して、
上3つのユニットを取りつけたバッフルの向きを90度変えられるように、
フロントバッフルを2分割したため生じたスリットだが、
DS5000は、エンクロージュア表面を伝わる振動をカットするためのスリットという違いはある。

この他にも違いはいくつもある。
ウーファーの位置も、4343がエンクロージュア下部ぎりぎりまで下げているのに対し、
DS5000のウーファーの位置はできるだけ上に取りつけようと、
他の3つのユニット配置も考慮されている。
4つのユニットは、4343と異りぎりぎりまで近接している。
おそらくこれ以上近づけたらフロントバッフルの強度が不足するのだろう。

レベルコントロールも、4343は、上3つの帯域がそれぞれ可変なのに対し、
DS5000はウーファーとミッドバスのレベルは固定され、ミッドハイとトゥイーターのみ可変だ。
これはDS505もそうで、ミッドバス帯域のレベル設定に自信があることの現われだろうし、
中低域再生能力を高めるための4ウェイ構成であると語っている。

DS5000の音は、ダイヤトーンのスピーカーの中で(すべて聴いたわけではないが)、
意外に新しさは少なく、そのかわり、もっともゆとりある音を聴かせてくれたように記憶している。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その24)

どこかに試作品っぽいところを残している4S-4002P、
4S-4002Pの経験を活かして、売れ筋の価格帯で腕試しをしたともいえるDS3000、
この2機種開発の経験があるからこそ、DS5000の完成度は高いものになっているといえよう。

いわば力作である。それを、なにも4343と同寸法に作ることはないではないか。
もっと自信をもって、最良と考えられるサイズにすればいいのに……、
それともあえて4343と同寸法という制約を自ら設けて、挑んだということか。

モノは試作品を経て製品になり、そして商品になることで完成する。
資本主義というよりも、商業主義の世の中では、製品のままでは、会社は成り立っていかない。

だから売るため売れるために、4343と同寸法にしたことも理解できないことはないといいつつも、
DS5000と同じようなユニット構成で、6年後(1988年)に登場したDS-V9000のエンクロージュアの寸法は、
W65.2×H108×D49.7cmで、4343よりも奥行きが長く、背が低くなっている。

だからDS-V9000の完成度は、DS5000よりも高い、と言えないところがスピーカーの面白いところだ。

DS-V9000のトゥイーターとミッドハイのドーム型ユニットの振動板は、新開発のB4Cである。
DS5000も、ボロンを採用しているが、
ダイヤトーンにとってボロンの採用はこれがはじめてではなく、DS505に搭載している。
その後、3ウェイのブックシェルフ型DS501にも使うなど、
DS5000開発時には、ダイヤトーン技術者にとって、ボロンは新素材ではなく、
手なれた素材だったのかもしれない。

DS-V9000は、ステレオサウンドの試聴室で何度か聴いている。
DS5000とDS-V9000のあいだに、ダイヤトーンは、
DS1000やDS2000、これらのHR板、それにDS10000も開発している。
それらの成果が活きているのだろう、スピーカーとしては、DS5000よりも高性能になっている、
そんな印象とともに、新素材振動板の音が際立っているとも受けとめた。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: 挑発

挑発するディスク(その8)

CD63で、はじめてのCDの音を聴いた後、もう一度P3でアナログディスクを鳴らす。
あれほど安定した音を出してくれるプレーヤーとして頼もしく感じていたP3の音が、
なんとも不安を感じさせる音にしか、もう聴こえない。

CDの音すべてがP3の音をうわまっていたのではない。
けれど、ゆるぎない安定感のある音を、目の前のちっぽけな機械が、いとも簡単に実現している。

それまでは、安定した音のためには、ある程度の物量投入が要求されるもの、
そう思っていたし信じていた。なのに……、である。
これが技術の進歩なのか、新しい音なのか、とおそらく編集部全員思っていただろう。
聴き終った後、興奮気味に話していた。

しばらくしてステレオサウンドで特集記事で、各社のCDプレーヤーの試聴を行なった。
もちろん、その中にCD63も含まれていた。
また、あの音が聴ける、と内心喜んでいた。
価格順にひとつひとつ聴いていき、やっとCD63の番。
けれど、鳴り出した音に、あの日の、圧倒的な安定感は、なぜだかわからないが、なかった。

理由と思われるものは、もう少しあとになってわかる。
それがLHH2000の、「最初」の音だ。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: Kathleen Ferrier, 快感か幸福か

快感か幸福か(その5)

カスリーン・フェリアーのバッハ/ヘンデル集が録音されたのは、1952年。
モノーラル録音で、使われている器材はすべて真空管式である。

モノーラル録音ということに、いちども不満を感じたことはない。
デッカは、のちにオーケストラ・パートだけをステレオで録りなおして、
モノーラルのフェリアーの歌唱とミキシングしたディスクも出している。
指揮者は同じ、サー・エイドリアン・ボールトだ。

人は、生れる時代も性別も選べない。
だが、かりに選べたとして、選べることができるのだろうか。どうやって選ぶというのだろうか。

フェリアーの歌声と真空管器材による録音は、うまくいっている、合っている。
これが、もしトランジスター初期の、冷たく硬い音で録られていたら、どうなる。

時代の音というのが、儼然たる事実として、人にも器材にもある。
もうこの先、フェリアーのような歌手は登場しないだろう。

Date: 12月 31st, 2008
Cate: Kathleen Ferrier, 快感か幸福か

快感か幸福か(その4)

1年の最後に聴くディスクは、決めている。
カスリーン・フェリアーのバッハ/ヘンデル集である。
1985年に復刻されたCDを、いまでもずっと持ちつづけて聴いている。

このディスクだけは手離さなかった。
オーディオ機器も処分して、アナログディスクもCDも処分したときでも、
このディスクだけは手もとに残しておいた。

持っていたからどうなるものでもなかった。
聴くための装置もないし、ただもっているだけにすぎないのはわかっていても、
このディスクを手放したら、終わりだ、そんな気持ちがどこかにあったのかもしれない。

人の声に、神々しい、という表現は使わないものだろう。
でも、このディスクで聴けるフェリアーの声は、どこか神々しい。
いつ聴いても神々しく感じる。

厳かな時間がゆっくりと流れていく、とは、このことをいうのかと聴いていて思う。

23年間所有しているディスクだけに、ケースはキズがつきすこし曇っている。
けれど、ディスクにキズはひとつもない。

フェリアーのバッハとヘンデルを聴く時は、これから先もこのディスクで聴いていく。
いくら音が格段によくなろうと、PCオーディオにリッピングして聴くことは、
フェリアーの、この歌に関しては、ない。

愛聴盤を聴き続けていく行為とは、そういうものである。
だからこそ、愛聴盤になっていく。

いろいろあったし、これからもいろいろあるだろう。
でも、1年の終わりに、フェリアーをじっくり聴けるだけで、幸福というしかない。

Date: 12月 31st, 2008
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その23)

ダイヤトーンは、DS5000の5年前(1977年)に、フロアー型の4ウェイ・スピーカーを発表している。
ただしコンシュマー・モデルではなく、放送局用として開発されたモデルで型番も4S-4002Pと、
2S305の流れを汲むものとなっている。
40cm口径のウーファー(ハニカム振動板)、18cm口径のミッドバス(これもハニカム振動板)、
5cm口径のミッドハイ、トゥイーターのみドーム型で口径は2.3cm。
エンクロージュアはバスレフでも密閉型でもなく、ウーファーと同口径のパッシヴラジエーターを採用している。
そのため、かなり大型といえ、高さは133.6cm、重量は135kg。
上3つのユニットは両端にハンドル付きのサブバッフルに取りつけられている。
エンクロージュアのサイドはウォールナット仕上げにはなっているが、
全体的な雰囲気は素っ気無い、やや冷たい感じを受ける。

ステレオサウンド 45号のモニタースピーカー特集で取りあげられているから、
一般にも市販されたと思われるが、いままで見たことはない。

同じ4ウェイでも、4S-4002PとDS5000はずいぶん雰囲気が違う。
DS5000からは、つくり込まれているという印象が伝わってくる。

資料や写真のみでの判断するしかないが、
4S-4002Pは、とりあえず4ウェイ・スピーカーを作ってみました、という感じを、
(私だけだろうが)どうしても受けてしまう。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 挑発

挑発するディスク(その7)

TSD15を取りつけた930stの音を、しみじみ、いい音だなぁ、と思ったことは幾度とある。
1985年、フィリップスの業務用CDプレーヤー、LHH2000が持ち込まれたときも、そう感じた。

CDが登場したのは、1982年10月。
発表日まで、CDの音を聴くことは、開発者・関係者以外いっさいできなかった。
26年前のCD発表日の前日の夜、ある人が、こっそりとステレオサウンド試聴室に、
CDプレーヤーとディスクを1枚持ってきてくれた。

はじめて聴いたCDの音だった。

ディスクは小沢征爾指揮によるR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」、
CDプレーヤーはマランツのCD63だった。
同じディスクを、まずエクスクルーシヴP3とオルトフォンのMC20MKIIで聴いたあとに、
いよいよCDを鳴らす。

出てきた音に、編集部全員が驚いた。
P3は、その後もずっと使いつづけている、合板を何層も積み重ねた高さ数十センチの、
重量も相当ある専用の置き台の上な、
CD63は、天板のセンターから脚が出ている、そんなテーブルの上。
当時は、まだヤマハのラックGTR1Bも登場してなくて、置き台に関してもそれほど関心が払われてなかった。

いまの感覚では、置き台に関して不利な条件のCD63。
しかもP3は重量45kg、一方のCD63は片手がひょいと持てる軽さ、おそらく4〜5kgだろうか。
大きさだって、大人と子供以上に違う。

にも関わらず出てきた音の安定感は、CD63が数段うわまわっていた。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 930st, EMT, 挑発

挑発するディスク(その6)

EMTの930st、トーレンスの101 Limited、呼び名はどちらでも良いが、
アナログプレーヤーとしての完成度は、コンシュマー用プレーヤー、
最近のハイエンドオーディオ・プレーヤーとも一線を画している。

1970年代のおわりには、クリアーなピンク色のディスクも、ハイクォリティディスクとして登場したが、
アナログディスクといえば、直径30cmの漆黒の円盤であり、
この円盤のふちを左右の手のひらでやさしく持ち、センターの穴周辺にヒゲをいっさいつけることなく、
すっとターンテーブルの上に置く。
そして最外周、もしくは希望する溝に、カートリッジをぴたりと降ろす。
この一連の動作を、ストレス無く行なえるプレーヤーは、930stの他に、いったいいくつ存在するだろうか。
昨日今日でっちあげられたプレーヤーとは出来が違う。

音質の新しさで、930stを上回るプレーヤーは、いくつかある。
930stを使ってきた者にとっては、プレーヤーとしての未熟なところが、目についてしまうこともある。

ノイマンのDSTを取りつけた930stの音はすごかった。
だからといって、TSD15での音がつまらないなんてことは、まったく感じなかった。

101 Limitedは、トーレンスのMCHIが付属カートリッジだったが、
TSD15も購入していたので、MCHIは、新しいレコードでトレースに不安を感じるときだけ使っていた。
もっとも超楕円のSFL針搭載のTSD15が出てからは、MCHIの出番は完全になくなった。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その22)

ダイヤトーンのDS505は見た目からして、
アラミドハニカムの振動板をウーファーとミッドバスに採用したとで、
それまで紙コーンが黒色に対して、山吹色といったらいいか、色合いからして、それまでと異る。
ミッドハイ、トゥイーターのドーム型も振動板とボイスコイルボビンを一体化したDUD構造とするなど、
いわばダイヤトーンとしての新世代のスタートを切るスピーカーでもあった。

それをブックシェルフ型で、価格も38万円(ペア)というところで出してきて、
市場の反応を見るというのが、日本のメーカーらしいといえよう。

DS505の音だが、実は一度も聴いたことがない。なかなか聴く機会がないまま、
ステレオサウンドで働くことになり、しばらくしたらDS5000が登場してきた。

ダイヤトーン新世代スピーカーの頂点にあたるモデルとして開発されたDS5000が、
ステレオサウンド試聴室に搬入されたとき、
ダイヤトーンの技術者が「4343が置いてあった場所にそのまま置けます」と言ったのをはっきりと憶えている。

4343の横幅は63.5cm、DS5000の横幅も63.5cmは同じで、
4343からの買い替えを狙って、この横幅に決定した、とのことだった。
奥行きは、4343が43.5cm、DS5000が46cmとすこしだけ大きいが、
4343はサランネット装着すると、奥行きは46cmくらいになる。
高さは、4343が105.1cm、DS5000が105cmと、徹底して4343を意識した寸法となっている。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その21)

スレッショルドの800Aは、1976年当時、118万円だった。
価格的に4343とほぼ同じだが、まったく無名の新興ブランドということもあってか、
実物を見たこともないという人も少なくない。

けれど、800Aが、国産ブランドのアンプの技術者に与えた影響は、4343のそれと匹敵するかもしれない。
800Aの登場以降、国産アンプの謳い文句に「Aクラス」の文字が増えている。
思いつくまま挙げれば、テクニクスのクラスA+(SE-A1に採用されている)と
ニュークラスA(SE-A3などプリメインアンプにも採用)、
ビクターのスーパーAクラス、デンオンのリアルバイアスサーキットによるAクラス、
Lo-DのノンカットオフA動作、などがある。

800Aも登場したばかりのころは、正確な情報がなかったため、純Aクラス・アンプのように思われたが、
実際は基本動作はABクラスで、出力が増えてBクラス動作に移行したとき、
通常ならば発生するスイッチング歪、クロスオーバー歪を、
特殊なバイアス回路の採用で発生そのものを抑えている。

これに刺激されて、各社から、独自のノンスイッチングアンプが登場したわけだ。
このとき、ステレオサウンドは、国産メーカー各社のアンプ技術者にアンケート調査を行なっている。
自社の技術の特徴と、他社の同様の技術の違いについて回答させたものをまとめた記事で、
技術者が自社製品の技術について語るだけとは異り、ひじょうに興味深い内容だった。

無線と実験やラジオ技術誌がやらなかった記事を、
ステレオサウンドがわかりやすく、しかもつっこんだ内容で、まとめてくれていた。

同様のアンケートを、4ウェイ・スピーカーを発表したメーカーの技術者に対して行なってくれていたら、と思う。
4343をどう捉えていたのかが、はっきりとわかり、ひじょうに面白い記事になったはずだ。