挑発するディスク(その8)
CD63で、はじめてのCDの音を聴いた後、もう一度P3でアナログディスクを鳴らす。
あれほど安定した音を出してくれるプレーヤーとして頼もしく感じていたP3の音が、
なんとも不安を感じさせる音にしか、もう聴こえない。
CDの音すべてがP3の音をうわまっていたのではない。
けれど、ゆるぎない安定感のある音を、目の前のちっぽけな機械が、いとも簡単に実現している。
それまでは、安定した音のためには、ある程度の物量投入が要求されるもの、
そう思っていたし信じていた。なのに……、である。
これが技術の進歩なのか、新しい音なのか、とおそらく編集部全員思っていただろう。
聴き終った後、興奮気味に話していた。
しばらくしてステレオサウンドで特集記事で、各社のCDプレーヤーの試聴を行なった。
もちろん、その中にCD63も含まれていた。
また、あの音が聴ける、と内心喜んでいた。
価格順にひとつひとつ聴いていき、やっとCD63の番。
けれど、鳴り出した音に、あの日の、圧倒的な安定感は、なぜだかわからないが、なかった。
理由と思われるものは、もう少しあとになってわかる。
それがLHH2000の、「最初」の音だ。