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Date: 10月 25th, 2009
Cate: 理由

「理由」(その2)

中学生の時、BCLが流行っていた。
なんとなく面白そうだと感じ、こづかいを貯め、BCLに使えるラジオを買う。
でも、熱はすぐに冷め、ベリカードを、ラジオを買う前は、何枚も集めるつもりでいたのに、
結局、一枚も手に入れることはなかった。

次に興味をもったのは、アマチュア無線だった。
こちらは免許が必要だから、無線機を買う前に、まず勉強。
電子回路に多少なりとも興味をもつようになったのは、このときからだ。

免許取得の勉強しながら、初歩のラジオを読みながら、これが欲しいな、とページをめくっていた時期がある。
試験を受けるつもりでいた。一発でとる自信もあった。
けれど、免許を取って、無線機を買って、見知らぬ人と声だけで会話をしていくことに、
ほんとうに興味が在るのか、と変に冷めているところもあった。

それでも試験は受けるつもりだった。
なのに試験の数ヵ月前に、興味は別のものへと移っていく。

Date: 10月 24th, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その32)

数年前から、ごく親しい人との会話のなかで口にしていたのだが、
「オーディオ・ジャーナリズムが確立される前に、オーディオ・ブームが訪れたのが、オーディオ界の不幸」であり、
あと5年ほどブームが遅かったら、「いまの状況はずいぶん違っていたものになっていたはず」と思っている。

つまりオーディオ・ジャーナリズムは確立されていない、と考えている。

瀬川先生の思想メモを読むと、同じ想いだったように感じる。
だから、書かれたのだ。私はそう思う。

Date: 10月 24th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その3)

ステレオサウンド 43号が出たのは1977年6月。
この年の暮に出たステレオサウンド別冊の「コンポーネントステレオの世界 ’78」で、
瀬川先生はJBLの4343の組合せ2例のなかで、ひとつはEMTの930st、
もうひとつの、トータル価格を意識した組合せでは、ガラードの401を使われている。

記事の中で語られているのは、ダイレクトドライブ型では、
音楽の余韻を感じさせるニュアンスが薄らいでいる印象であること、
そして、少しダイレクトドライブ型不信みたいなところに陥っている、ことである。

こうやって、いくつか記事を読むにつれて、
少しずつ、ダイレクトドライブ型には、回転精度とは別の問題があるように思いはじめていた。

1978年9月発売の48号で、ステレオサウンドは、プレーヤーシステムのブラインドテストを行なっている。
オーディオ評論家によるブラインドテストだけでなく、
指揮者の渡辺暁雄氏によるブランドテストの記事も載っていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その2)

ガラード・401について、瀬川先生は、
「このモーターは音がいい。悠然とかまえて、しかも音の輪郭の明瞭で余韻が美しい」と書かれている。

さらにトーレンスのTD125MKIIBについては、こう書かれている。
「素晴らしく安定感のある音。艶のある余韻の美しさ。
音楽の表情を実によく生かすクリアーな音質。残念ながら国産DDでこういう音はまだ聴けない」

まず、このふたつの文章を読み、物理特性では圧倒的に優れているダイレクトドライブ型よりも、
音のよい、旧式のターンテーブルがあるという事実、
プレーヤーといえど性能だけでは語れない、ということを、それが文字の上だけのことで、
実体験が伴っていないにしても、オーディオに関心をもちはじめて、ごく早い時期に知ることとなった。

だからといって、ダイレクトドライブ型を完全に否定していたわけではなく、
方式としては、多くのメリットを持つわけだから、製品の完成度が高くなれば、
旧式のプレーヤーでは聴くことがかなわない、
優れた物理特性に裏づけられた音のよさを実現してくれるものだとも信じていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その1)

なぜダイレクトドライブ型のターンテーブルを信頼していない、その理由のひとつは、
まずはステレオサウンドの影響である。

私より上の世代のオーディオ好きの方たちが最初に手にされたプレーヤーシステムは、
ベルトドライブかアイドラードライブ。
それらにくらべて、1970年代にはいり登場したダイレクトドライブ型は、
ワウ・フラッターがほとんどない正確な回転精度、
それにアイドラー型では問題になっていたゴロも発生しない静粛性などの優位性をほこり、
多くのマニアの方たちが、ダイレクトドライブ方に買い替えられた(飛びつかれた人も多かったときいている)。

ところが、実際に自宅で使ってみると、それまでのベルトドライブ、アイドラードライブといった、
旧式のプレーヤーシステムの方が、音がよかったのではないか、という声があがりはじめ、
オーディオ誌においても、メーカーにおいても、ダイレクトドライブ型の再検討が行われはじめていた時期と、
ちょうどオーディオに関心をもちはじめた時期とが重なっていたことが、
ステレオサウンドの影響を大きくしたといえるかもしれない。

ステレオサウンドを読みはじめて3冊目の43号(ベストバイの特集号)では、
ガラードの401が取り上げられている。

Date: 10月 22nd, 2009
Cate: 使いこなし
2 msgs

使いこなしのこと(その17)

かっこいいターンテーブルであれば、3012-R Specialとマッチするデザインであれば、
なんでもいいというわけではなかった。
当然、満足できる、つまり信頼できるモノでなければならない。

だから、ダイレクトドライブ型は最初から除外していた。

見た目だけで選ぶなら、ラックスのPD121のロングアーム版が出てくれていたら、
しかもそれでベルトドライブであったら、決めてしまっていただろう。

早く決めてしまいたい気持は、強くなる。
そこで思ったのは、SMEのアイクマンが使っているのと同じターンテーブルはどうだろう、ということだった。
調べてみると、テクニクスのSP10だった。

白木の大型のキャビネットに、2台のSP10が取り付けられていて、
その下にコントロールアンプが収められているいる写真が見て、すこしふっきれた。

ちなみにアイクマンの、このときのシステムは、
QUADのESLを4段スタックした上で、コーン型のサブウーファーを、センターに2発設置するという、
非常に大がかりな規模のもので、パワーアンプはラックスのM6000(と思われる)。

Date: 10月 22nd, 2009
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その16)

SMEの3012-R Specialと組み合わせるターンテーブル選びは、現行製品だけでなく、
ガラードの301やトーレンスのTD124まで範囲を広げてみた。

ちょうど、このころ、BBC仕様というガラードの301が中古市場に現れはじめていた。
塗装がシルバーのハンマートーン仕上げで、心がぐらっときたものの、
301とロングアームを組み合わせると、意外にプレーヤーキャビネットのサイズは大きくなりすぎて、
プロポーション的に、お世辞にもスマートとはいえなくなる。
それに、BBC仕様の301は、当初、相当に高価だった。

トーレンスのTD124に、ロングアーム用のアームベースがあることがわかった。
しかも程度のいいものが、あるところに一台あることもわかった。
譲ってもいい、ということだったけれど、TD124/IIではなく、オリジナルのほうで、
つまりターンテーブルの素材が鉄なのだ。

比較的マグネットが小さいMM型カートリッジであれば問題はないけれど、
内蔵マグネットが大きなMC型カートリッジでは、ターンテーブルに吸いつくため、針圧が増す問題があった。

カートリッジは、EMTのXSD15とオルトフォンのMC20IIが候補だったから、無視できない。

ただ実際にどの程度、針圧が増えるのかは、計測したわけではないのでなんともいえないが、
ただ鉄(磁性体)というのが、なんとなく精神衛生上、ひっかかる。

Date: 10月 21st, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その6)

スピーカーシステムの音を判断する項目、たとえば聴感上のSN比、レンジの広さ、
帯域バランスの良さ、歪感の少なさ、等々、思いつく限りこまかく挙げていき、
それぞれの項目をできるだけ良くする方向で音をまとめていく──。

そうやってつくられたスピーカーシステムは、もちろん優れたモノであるだろう。
けれど、そうやってつくられたスピーカーシステムは、なにかを失っているのかもしれない。

たとえば、ヴィルトゥオーゾと呼ばれた、往年の演奏家と、
現代の、優れたテクニックを有している演奏家との違いにも似ているような気がする。

オートグラフ、VC7に共通して、私が感じている良さは、「気品」であろう。

Date: 10月 21st, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その5)

タンノイ・オートグラフも、ベーゼンドルファー(BORDMANN)VC7も、
ユニットが発する音以外は極力抑えようというスピーカーの在り方とは正反対のところにある。

スピーカーユニットが技術的に完璧なものであって、無共振ということが、ほぼ実現できるであれば、
その在り方のみを純粋に徹底して追求していくのもいいだろうが、
現実には、まだまだスピーカーユニット自体は未完成というよりも、からくりの一種のいえるものであるし、
これから先はわからないが、無共振の素材、つまりいっさいの固有音をもたない素材で、
エンクロージュアに使えるもの、そんなものは、いまのところ、ない。

実験室レベルで、無共振スピーカーシステムをめざしていくのは、それはそれでいい。
けれど、現実のスピーカーシステムとしては、どこかで、からくりであること、
理想の素材は存在しないこと、とうまく折り合いをつけてこそ、
スピーカーでしか味わえない音楽体験が生れてくるのだと思っている。

折り合いのつけ方として、オートグラフやVC7という在り方も、
一方の極のリファレンスとして必要ではないだろうか。

Date: 10月 20th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その4)

タンノイ・オートグラフの、それぞれの受持ち帯域はどうなっているかというと、
中高域は、デュアルコンセントリック型ユニットのクロスオーバー周波数が1kHzなので、それ以上の帯域、
ウーファーは1kHz以下どこまでかというと、フロントショートホーンの開口部の大きさが関係してくることもあって、
それほど低いところまでは受け持っていないのはたしかだろう。

バックロードホーンが、それより下の帯域を受け持つことになるわけだが、
1960年代のタンノイのカタログには250Hz以下で効果を発揮している、という記述もあるし、
ステレオサウンド別冊「The British Sound」には、350Hzより下、とある。

250Hzなのか350Hzなのかははっきりしないが、300Hz近辺として、
オートグラフでは、300Hzと1kHz、
ベーゼンドルファー(BRODMANN)のVC7は、130Hzと2kHz。
わりとちかい値といえないだろうか。
しかもLCネットワークによるクロスオーバーは、どちらもひとつだけである。

そしてもうひとつ共通点として、オートグラフは同軸型ユニット採用、
VC7は、ウーファー、トゥイーターは別個のユニットではあるものの、
ユニットの放射パターンを考えると、仮想同軸配置といえなくもないわけだ。

Date: 10月 20th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その3)

200万円の予算があれば、各ブランドのトップモデルか、
トップモデルとまではいかなくても、充実した技術的内容をもつ中堅機が購入できる。

それらのスピーカーとくらべてみると、VC7は、ウーファーの口径は13cm(4発ついているものの)と、小さい。
トゥイーターはソフトドーム型ユニットが2つ。
いわばVC7の価格の大半は、エンクロージュアの代金といってもよいだろう。
この価格の比率は、往年のタンノイ・オートグラフにおけるそれに近いのではないだろうか。

どちらもエンクロージュアの響きの助けを借りて、
それぞれの、それでしか聴くことのできない低音を創り出している。

VC7は、トゥイーターが2kHz以上、エンクロージュアの両側に2基ずつのウーファーは130Hzまでを、
130Hzより下の帯域は、独自の、プレート・ホーン・レゾネーターが受け持つ。

Date: 10月 20th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その2)

優秀なモノーラル録音をきちんと再生すれば、かなりのリアリティのある音が得られる。
ただしオーケストラなどの編成の大きいものや、ひとつの楽器でも、ピアノのように大きなものではなく、
人の声、チェロぐらいの大きさの音源のソロというぐあいに限られるとはいえ、
説得力ある表現に、モノーラルでもいいかな、とそのときは思わせてくれる。

ヴァイオリンも楽器のサイズとしては小さいが、倍音成分の再現となると、
ステレオ録音に圧倒的に分がある。
とはいえ、モノーラル録音、つまり真空管全盛の時代の録音のなかには、
再生音ならではの、ヴァイオリンの美があり、これはこれで、捨て難い魅力をもつ。

ステレオ録音は、極端な表現をすれば、音源だけモノーラル録音に、
音場感というステージ(空間)が加わる。音色の美しさに響きの美しさが加わった世界である。

ベーゼンドルファーのスピーカーは、安いものではなかった。かなり高価なスピーカーシステムだった。
BRODMANNのスピーカーも、ほぼ同じ価格だろう。となるとVC7は、ペアで200万円をこえるであろう。

Date: 10月 19th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その41)

個人のブログやサイトで、AC電源のループを問題にしている記述をよく見かけるようになった。
この問題については、1980年代のおわりごろに、ラジオ技術誌で、富田嘉和氏が指摘されていたし、
その記事の中で富田氏が推薦されている技術書を読めば、
それ以前から、この問題が指摘されていたことがわかる。

つまり決して新しい問題ではない。だから、なぜいまごろ? という感じがするし、
それだけでなく電源系のループを問題にする前に、信号系のループにも、というか、
こちらのほうに先に目を向けるべきでないか、とも思う。

アンプ(電子機器)のなかには、いくつものループ(環)が存在している。
しかもそれらは重なっているものがある。

これは、もう直感でしかないが、これらのループをいかに減らし、
そして重なり具合を減らし、しかもループの面積をいかに小さくしていくかが、
音を良くする、というよりも、音を劣化させない(させにくい)ことにつながっていると思う。

Date: 10月 19th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その1)

ヤマハがベーゼンドルファーを買収したというニュースを聞いて、
危惧したのは、スピーカーシステムの製造をやめさせてしまう、ということで、
事実、2008年のインターナショナルオーディオショウのノアのブースには、
ベーゼンドルファーのスピーカーの姿はなかった。

この項の(その1)で、最後のところにちらっと書いているが、
スピーカー部門の主要スタッフは独立している。

去年暮には、BRODMANN Acoustics という会社を興している。
ウェブサイトも、すぐに公開されていたが、いつアクセスしても、
ベーゼンドルファーのスピーカーには似つかわしくない、派手なFLASHによる画面が表示されるだけで、
他のページはまったく作られていなかった。

数ヵ月経ってアクセスしてみても、同じまま。トップページのみのウェブサイトだった。
資金繰りがうまくいかず、消滅してしまうのか……とまで思ってしまうほど、
いつまで経っても、何の動きもなかった。

今日、やはり数ヵ月ぶりにアクセスしてみたら、まだまだ手つかずのページが残っているが、
トップページも変更され、ベーゼンドルファー時代のスピーカーの姿が、そこにあった。
復活していた。

Date: 10月 18th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その40)

スピーカーのネットワークの回路図は、ちょっと探せば、いろんなところに載っている。
そのウーファー部分だけでいいから、抜き書きしてみる。

そして入力のところはオープンになっているはず。そこに、実際の使用ではアンプが接がられるわけだから、
オープンのままにしないで、アンプを示す三角マークを書いてもいいし、
アンプはスピーカーにとって信号源であるから、丸の中に「〜」を描いた記号で閉じてみる。
ネットワークのコイルやコンデンサーの値は入っていなくていい。

この回路図を見ると、いくつものループ(環)があることに気がつかれるだろう。
ネットワークなしの場合だと、アンプとスピーカーの間にはなんら素子は介在しないので、
ループは、大きいものがひとつだけである。

−6dB/oct.のネットワークの場合は、コイルが直列にはいるだけであり、このループに関しては変化はない。
−12dB/oct.以上のネットワークとなると、並列にコンデンサーが挿入されることになり、
このループが増えることになる。
しかもそのループは重なっていることに注目してほしい。