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Date: 8月 26th, 2019
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(SNSの選択・その3)

SNSを眺めていて、
特にこの一年感じていることは、この人は、いったいどういう音を鳴らしているのか、である。

ここでの「この人」とは、一人のことではない、複数の人である。

オーディオのシステムのどこかを変える。
そのことで音が変化する、良くなる。
どんなふうに良くなったのかを書いている人がいる。

その人が何かを変えたのは一度だけではない。
何度も、いろんなところをやっている。
その度に、音は良くなっていっている(ようだ)。

それらの投稿を読むと、この人の、いま出している音は、
そうとうなレベルにあるんじゃないか、と思えないこともない。

その人は、前に鳴っていた音との相対評価で、そんなふうに書いているのはわかっていても、
それでも、読んでいくうちに、相対評価ではなく、絶対評価のように思えてきてしまう。

また別の人は、細かな音の違いを聴き分けていることを書いてたりする。
ほんとうに、そんな領域の違いを、そこまではっきりと聴き分けられるのか、
と驚くほどの耳の鋭敏さ、耳の良さを持っている人のようだ。

そこまでの耳を持つ人を満足させるだけの音というのも、
またすごいレベルにあるんだろうな、と上記の人の同じように感じもする。

音を言葉で表現するのは、あらためていうまでもなく難しい。
共通体験がある相手に対してであってもそうであって、
まして共通体験があるのないのか、それすらはっきりとしない相手に対して書くのであれば、
なおさら難しさは増していく。

増していくから、表現には多少の誇張が加わることがある。
この、多少の誇張が、実は怖い、ということを「この人」たちは実感しているのか。

Date: 8月 26th, 2019
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(SNSの選択・その2)

その1)へのコメントがfacebookにあった。
SNSには、ミュート機能、フォロー解除などができるようになっている。

いわゆるマルチポストを読みたくなければ、そういう機能をうまく使えば済むことである。
ミュート機能は、特定の人の投稿をミューとしていることは、相手側にはわからない。
なので、マルチポストを頻繁にする人の投稿に対してミュートすればいいだけの話だ。

見たいもの、読みたいものだけを読む、
見たくないもの、読みたくないものは読まない、
そうすることが可能なのもSNSである。

わかっているから、マルチポストをする人がいても、どうでもいい、という気持がある。
けれど、それが音楽、オーディオに関することとなると、
私の場合、話は違ってくる。

思っていること、考えていることを書く、という行為、
それを誰かに読んでもらうために公開するという行為は、
選択から始まっている、と考える。

最初の選択から始まって、次から次へと選択していく。
特に意識していない人もいるかもしれないが、
何かを書いて公開する、ということはそういうことだ、と私は考えている。

これは私の考えだし、誰かに押しつけようとは思っていない。
その人の考えで書いて公開すればいい。

マルチポストしたい人はすればいい。
マルチポストするということは、どういうことなのかを、
「選択」ということで考えてほしい。

そこで選択を放棄している、と私は見る。
いや、多くの人に読んでもらいたいから、という選択からのマルチポストだ──、
そんな反論が返ってきそうだが、それは、もう選択ではない、と私は思っている。

マルチポストをする人は、こういうことはどうでもいいことなのだろう。

それでも、音楽をオーディオを介して、しかも少しでもいい音で聴きたい、と願うことは──、
それをかなえていくためにはやらなければならないことは──、
こういうことを考えていけば、選択のもつ意味の重さが実感できるはずなのに……、と思う。

結局のところ、マルチポストをする人は、これからもしていくだろう。
それを止めようとは思っていない。
好きにやればいい。

私は、というと、(その1)で書いているように、
音楽のこと、オーディオのことを平気でマルチポストする人とは、
音楽、オーディオについて語らないようにするだけだ。

Date: 8月 25th, 2019
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その36)

コンパクトであるということを優先して、私はパイオニアPL30Lではなく、
テクニクスのSL01を選んだわけだが、
PL30L(もしくはPL50L)とSL01を比較試聴したら、
パイオニアのプレーヤーの方が好結果ではないか、と思っている。

パイオニアのアナログプレーヤーは、Exclusive P3の登場以降、
クォリティが格段によくなっているように思う。

といっても、このころはまだステレオサウンドの読者でしかなく、
いろんなオーディオ雑誌での評価を読んでの印象でしかないが、
Exclusive P3は、ステレオサウンドの試聴室で、じっくり聴いて、
その実力の高さはよくわかっている。

私がステレオサウンドに入ったころ、
試聴室のリファレンスのプレーヤーが、Exclusive P3aだった。
数年後、マイクロのSX8000IIが登場するまで、そうだった。

Exclusive P3は、おそらくいま聴いても、
いい音のするダイレクトドライヴ型のプレーヤーである。

このプレーヤーの欠点といえば、トーンアームがもう少し良くなってくれたらなぁ、と思うところにある。
オーディオクラフトが、同社のトーンアームに換装できるようにアームベースを用意していた。

純正のトーンアームかオーディオクラフト製か、
どちらのトーンアームを選ぶかは、使う人の自由であり、
私ならばオーディオクラフトという程度のことだ。

Exclusive P3で、もうひとつ気になる点は、全体の厚みである。
これも内部構造を知れば、仕方ないことであり、
薄くできるようなことではないのはわかっている。

それでももう少しだけスマートにみえるような工夫があれば、と思わないでもない。

Exclusive P3の特徴は、他にもあって、
軸受けが一般的なプレーヤーとは逆ともいえる構造、SHR(Stable Hanging Rotor)方式を採用。
このことがカタログやオーディオ雑誌で紹介の際にも、大きく扱われていた(と記憶している)。

Date: 8月 25th, 2019
Cate: ジャーナリズム, ステレオサウンド

編集者の悪意とは(その20)

試聴記も見出しも、オブラートに包んだといえる表現だ。
この日、XRT18の音は、ほんとうにひどかった。

そのひどい音に対して、もっと辛辣な言葉が試聴室内では交された。
そのくらい、ひどい音だったわけだ。

これなら、ヴォイシングの経験のない私がやった方が、
ずっとまともな音を出せたのでは──、そんなことを思ってしまうほどだった。

このひどい音の原因は、ヴォイシングの明らかな失敗である。
誰の耳にもはっきりとしている。

エレクトリの担当者は、ヴォイシングの初心者ではない。
全国の、XRT20、XRT18の購入者のリスニングルームに行き、
ヴォイシングを何例もやってきた人である。

それに自社扱いのスピーカーの音を、わざとひどくしてしまう理由はない。

ヴォイシングをいっしょにやったKHさんも、
前述したようにXRT20のユーザーであり、
マッキントッシュの信者といっていいくらいの人である。

この試聴で、XRT18の順番を三日目の最初にもってくるように調整した、
特集の担当編集者にしても、少しでもXRT18をきちんと鳴らそうとしてのことだ。

ようするに、誰にも悪意といえるものはない。
けれど、実際に鳴ってきた音は、どうしたら、ここまでひどい音にできるのかと思えるほどだった。

こういう事情を知らない読者からすれば、
ステレオサウンド 87号でのXRT18の試聴結果から、
誰かが悪意をもっていたのかも……、そんなふうに思う人がいても不思議ではない。

くり返すが、この試聴に関係している人は、誰もXRT18に悪意を持っていたわけではない。
それでも、結果は違った。

Date: 8月 25th, 2019
Cate: ジャーナリズム, ステレオサウンド

編集者の悪意とは(その19)

アンプやCDプレーヤーのセッティングは、前日までのままであり、
これは私が行っていた。

XRT18を試聴室に運び込んで、スピーカーケーブルを接続するまでは、やった。
それから先は、エレクトリの担当者と、編集部の一人が立ち合ってのこと。

この編集者は、編集後記のKHさんである。
ちょうど、このころ編集部に見習い、というか、アルバイトというか、
そんな感じで来ていた人である。

KHさんは、XRT20のユーザーである。
エレクトリの担当者とも親しい。

そういうことで、この二人にまかせてしまった。
このころのステレオサウンドは10時から始まる。
はっきりと憶えていないが、割と早くから二人で試聴室にこもってのヴォイシング作業である。

二時間以上は、たっぷりとヴォイシング作業をやっていたはずだ。
二時間程度は、完全なヴォイシングは行えないのはわかっているが、
それでも他のスピーカーシステムは、試聴室に搬入・設置・結線して、
すぐに音を鳴らしての試聴であるのに、
XRT18は午前中たっぷりと鳴らした上での試聴であり、
他のスピーカーよりもそうとうに有利な条件である。

エレクトリの担当者とKHさんは、ヴォイシングの結果には満足そうだった。
うまくいかなかった、とか、時間が足りなかった、とか、そんなことは言っていなかった。

かなた期待できそうな音が鳴ってくれる──、
そう思っていたら、試聴記にあるように、ひどい音だった。

井上先生は《スルーの方がバランスが良いくらいである》、
柳沢氏は《輸入元にこの調整をしてもらったのだが、これがさらに結果を悪くすることになったようだ》、
ヴォイシングの結果について、そう書かれている。

Date: 8月 25th, 2019
Cate: ジャーナリズム, ステレオサウンド

編集者の悪意とは(その18)

このテーマで取り上げるかどうか、少し迷ったけれど、
編集者の悪意について考えてゆくうえで、これも興味深い例の一つであるから、あえて書こう。

ステレオサウンド 87号の特集は、スピーカーの総テストである。
そこにマッキントッシュのXRT18が登場している。
228〜229ページに、XRT18が載っている。

試聴記の見出しは、
 ボイシングの調整不足。独特のプレゼンスは魅力。(井上卓也)
 柔軟さ、しなやかさが特徴。設置、調整は難しい。(菅野沖彦)
 明らかに調整ミス。淡泊で焦点のぼけた音だった。(柳沢功力)
試聴記を読まずとも、87号でのXRT18の音がうまく鳴らなかったことはわかる。

ちなみに、この見出しをつけたのは私である。
でも、この見出しのつけ方が、悪意があるとうそうでないとかではなく、
なぜ、こういう試聴結果になったのかである。

XRT20、XRT18は、壁面に設置するスピーカーシステムであり、
ヴォイシングが必要となるシステムである。

輸入元のエレクトリは、購入者へヴォイシングの出張サービスを行っていた。
ヴォイシングは、ユーザーが聴感だけで簡単に行えるものではない。

ヴォイシングの大変さ、難しさ、その重要性は、
菅野先生がステレオサウンドに書かれているので、それをぜひお読みいただきたい。

とにかくXRT20、XRT18にしても、それまでのスピーカーの総テストと同じやり方では、
真価を発揮し難いスピーカーシステムであることは、編集部も十分わかっていた。

だからXRT18のヴォイシングの時間をきちんととっていた。
試聴は数日にわたって行われる。

XRT18は、試聴三日目(だったはずだ)の最初に鳴らすスピーカーになるようにした。
試聴は午後からである。

三日目の午前中に、エレクトリからヴォイシングの担当者に来てもらい、
設置・調整をしてもらう。

そうやって午後から始まる試聴の一番目にXRT18を聴いてもらえば、
問題はない、はずだった。

Date: 8月 24th, 2019
Cate: 冗長性

冗長と情調(余談・「マッチ工場の少女」)

この項の続きを書こうとして思い出しているのが、
1991年に公開された映画「マッチ工場の少女」である。

渋谷のパルコ内の劇場での公開だった。
この映画の監督、アキ・カウリスマキのことは、この映画の公開とともに知った。

何も知らずに観た映画だった。
なぜ、観ようと思ったのか、それすら忘れてしまったが、
「マッチ工場の少女」の衝撃は大きかった。

映画マニアと呼ばれるほどには数を観ていないが、
それでも少なくない映画は観ているほうだろう。

これまで観てきた映画で、こういう映画が観たかった、と思ったのは、
「マッチ工場の少女」が初めてだったし、
「マッチ工場の少女」以上にそう思えた映画は、いまのところ出会えていない。

約70分ほどの、少し短い上映時間である。
「マッチ工場の少女」を観れば、
ここで取り上げた理由がわかってもらえる、と思っている。

Date: 8月 24th, 2019
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(SNSの選択・その1)

私もそうだが、twitterとfacebook、
この二つのSNSのアカウントをつくっている人は多いだろう。

イベントなどの告知をしたいのであれば、twitter、facebookのどちらにも、
同じ内容を投稿するのはわかる。

けれど、思っていること、考えていることを、
twitterにもfacebookにも、同じことを投稿する人が少なからずいる。

多くの人に読んでほしい、という気持のあらわれなのだと一応頭では理解しても、
どちらにも投稿する人をみると、この人は選択することを放棄している(しかかっている)、
そんなふうに見えてしまう。

twitter、facebook、どちらか片方しかアカウントをつくっていないという人もいる。
だから、どちらにも投稿する──、とその人はいうかもしれない。

それでも、あえて「選択しよう」といいたくなる。

なぜ、選択しなければならない──、
そう思うのであれば、それはそれでいい。
その人とオーディオについて語ろうとは、私は思わない、
ただそれだけである。

Date: 8月 24th, 2019
Cate: audio wednesday

audio wednesday(今後の予定)

このタイトルで、もう何本か書いているけれど、実現しているのはわずか。
結局、モノの運搬がネックになって実現できていない。
なので、今回書くことも、そんな理由でたぶんできない、と思う。

それでも、ヤフオク!でKEFのModel 303を偶然見かけたのをきっかけに、
いくつかのオーディオ機器を落札した。

すべて1970年代の終りごろのオーディオ機器ばかりで、
つまりステレオサウンド 56号での瀬川先生の組合せがベースになっている。

当時、30万円ほどの組合せが、
八分の一から十分の一ぐらいで落札できた。

すべてを落札したわけではないが、
56号の組合せに必要なオーディオ機器が準備できるようになった。

303があり、AU-D607も手配ができている。
アナログプレーヤーは別項で書いているように、PL30LではなくテクニクスのSL01になった。
カートリッジのDL103Dも手配できる予定である(鳴るのかどうかのチェックは必要だが)。

ヤフオク!をあせらずに利用すれば、程度のよい、当時のオーディオ機器が、
こんな予算で……、と少々驚くほど安く揃えられる。

40年前の、組合せ価格が30万円ほどのシステムは、
いま聴くと、どんな感じなのか、どういう印象を抱くのか。

今回ヤフオク!で落札した予算内で、現在購入できる新品のオーディオ機器と比較すると、
どうなるのだろうか。

やっぱり40年前のオーディオでしかないよねぇ……、とはならないような気はしている。

できれば、今回揃えた(揃えられる)システムをaudio wednesdayで一度鳴らしたい。
そのうえで数ヵ月後に、それぞれに少し手を加えた音を聴いてもらいたい、と考えている。

とはいえ運搬の問題は残ったままだから、期待しないでほしい。

Date: 8月 24th, 2019
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その35)

ヤフオク!がすすめてきたSL01は、そこそこの値段で落札された。
定価80,000円のアナログプレーヤーといっても、もう40年が経っている。

最高のコンディションのSL01を探しているわけではない。
それでも、金額はここまで、という決めて入札する。

修理に出すことも考えて、つまりその費用も考えて総額として、
40年前のオーディオ機器として、ここまでという金額を設定する。

そこを超えたら、すっぱり諦めて次の機会を狙う。
今回三度目のSL01だった。

キャビネットの一部の塗装が剥げている。
そのせいか、入札数も多くはなかった。
上限金額よりも安く落札することができた(5,250円だった)。

塗装の剥げについては、落札する前から、こうやってみようとか、あれこれ考えいた。
同時に、ダイレクトドライヴ型プレーヤーに感じている疑問を、
いくつか試してみようという気にもなってきた。

ダイレクトドライヴ型に関しては、いくつかの大きな問題がある、と考えている。
とはいえ既製品に、私ができる範囲で手を加えることといえば、
聴感上のS/N比を劣化させている原因を、完全になくすことは無理なのだが、
それでもできるだけ抑えていきたい。

落札する前から、このことも考えていた。
SL01の写真をGoogleで画像検索して、内部写真を見ながら、そんなことを考えていた。

私がダイレクトドライヴ型プレーヤーを使っていたのは、高校生のころまでだ。
ステレオサウンドで働くようになってからは、ベルトドライヴ、アイドラードライヴ型だった。

手元にあるプレーヤーも、ベルトドライブ型が一台とアイドラードライヴ型一台である。
ここに、今回ダイレクトドライヴ型が一台加わった。

ひさしぶりのダイレクトドライヴ型であり、
ひさしぶりの分だけ、いろいろなことを学んできたし、
40年前には気づかなかったこともみえている。

そんなに大掛りなことをSL01に施そうとは考えていない。
それでも確実に聴感上のS/N比を向上させていく自信はある。

SL01に手を加えることで、
私のなかにあるダイレクトドライヴ型への疑問をいくつか解消できるかもしれない。

Date: 8月 24th, 2019
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その34)

ヤフオク!は、「お探しの商品からのおすすめ」をしてくれる。
PL30Lや50Lを眺めていたときに、そこにテクニクスのSL01が表示された。

SL01を検索してもいないのに、それまでの履歴からSL01を表示する。
なんなんだろう、この機能は? と感心するとともに、
少しばかり空恐ろしくなるところでもある。

そのことがあって、ひさしぶりにSL01の存在を意識するようになった。
SL01は、何度もいうようにコンパクトだ。

PL30Lの外形寸法がW49.0×H18.0×D41.0cm、
SL01はW42.9×H13.7×D34.7cmである。
横幅が約6cm違う。

たった6cmであっても、
SL01はPL30L(というより標準的なサイズ)より、
プレーヤーのサイズとして明らかにコンパクトに見える。
厚みの違うことから、SL01はスリムでもある。

ヤフオク!での写真を見ているうちに、
色調よりも、このコンパクトさの魅力が勝ってきた。

KEFの303、サンスイのAU-D607の組合せには、
PL30LよりもSL01のほうが、全体のまとまりがしっくりくる。
すべて黒になる。

そういえば、瀬川先生は「続コンポーネントステレオのすすめ」で、
UREIの813の組合せで、SL01を使われていることも思い出した。

ステレオサウンド 56号の時点でSL01は製造中止だった可能性は高い。
もし現行製品だったら、SL01を選ばれていたかも──、
そう思った瞬間からSL01が無性に欲しくなってきた。

Date: 8月 23rd, 2019
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その33)

SL01の明るい仕上げのモデルが登場しなかったばかりか、
製造中止になるのも早かったのは、
おそらくジャケットサイズのSL10の登場があったからではないだろうか。

コンパクトということでは、SL01はSL10にかなわない。
もしSL10の登場が二、三年遅かったら、明るい仕上げのSL01が出てきたのかもしれない。

いうまでもなくSL01はダイレクトドライヴである。
それもあって、SL01への関心はいつしか薄れていった。

なのに、いまごろ思い出したように取り上げているのは、
別項で書いているKEFのModel 303を入手したことが深く関係している。

別項では、ステレオサウンド 56号での瀬川先生の組合せについても触れている。
ここでのプレーヤーは、パイオニアのPL30Lである。
当時59,800円のプレーヤーであり、56号での組合せには価格的にもぴったりである。

56号は1980年秋号。
このころSL01はどうだったのだろうか。
現行製品だったのか、製造中止になっていたのか。
それにSL01は価格的にはちょっと高い。

とにかく56号での組合せのプレーヤーはPL30Lである。
ヤフオク!でPL30Lの相場を眺めていた。
PL30Lだけでなく、PL50L、PL70Lもけっこう出品されているし、II型も多い。

パイオニアの、このシリーズはよく売れていたんだろう、と改めて思う。
PL30Lは、なのでそれほど高値がつくわけではない。

手頃な価格だったら──、と思った。
入札したこともある。
けれと応札はしなかったのは、PL30Lの大きさと見た目だった。

個人的に木目の、あれだけのサイズのプレーヤーを欲しい、とは思わない。
もっと小さく、木目の部分がもっと小さかったら──、そんなことを思っていた。

Date: 8月 23rd, 2019
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その32)

テクニクスのSL01への興味はあった。
瀬川先生が43号で、
《もう一機種、明るい仕上げのモデルを併売してくれるとうれしい。またそれだけの価値は十分あると思う》、
47号では、《もっと明るい色なら自家用にしたい程》とまで書かれている。

SL01のカラー写真は何度も見ているにも関らず、
なぜかSL01の写真として浮ぶのは、43号の写真である。
ブランド名も型番もなしのSL01の写真であり、
たったこれだけの違いなのに、印象がずいぶん悪くなっていた。

実物を早くに見る機会があれば、そんな印象はすぐになくなってしまったのだろうが、
熊本ではSL01の実機を見ることはなかった。

なので瀬川先生のSL01への印象がそのまま残った。

1981年春、上京した。
SL01は、このころ製造中止になっていたのか、
東京のオーディオ店でもみかけなかった。
そんなに多くのオーディオ店を見てまわったわけではないから、
どこかにはあったのかもしれないが、縁がなかったのだろう。

とにかくSL01に関しては、43号の写真の印象が残ったままだった。
ながく残っていた。
明るい仕上げのモデルが併売してほしかった、と私も思っていた。

SL01はあまり売れなかったのか。
同じ価格ならば、同じ性能ならば、
この価格帯のプレーヤーを買う層には、大きいサイズのほうがよかったのか。

こんなことを書いている私だって、高校生のころは、
SL01のサイズの魅力をよくわかっていたわけではない。

Date: 8月 23rd, 2019
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その31)

私にとって最初ステレオサウンドは41号(1976年12月号)。
この41号といっしょに買った別冊「コンポーネントステレオの世界 ’77」は、
組合せだけ一冊である。

架空の読者とオーディオ評論家との対話によって組合せがつくられていくメインの記事、
その後に、「スピーカー第一主義の’77コンポーネント“ベスト30”」がある。
30の組合せが七人のオーディオ評論家によってつくられている。

そこにちょっと気になるプレーヤーがあった。
30の組合せ中五つの組合せに登場している。
テクニクスのSL01である。

SL01は41号の新製品紹介の記事にも登場している。
井上先生が担当されている。

でも、この時は、気になる程度であった。
半年後の43号、ベストバイで、SL01は、選者全員がベストバイとして選んでいる。
これを読んで、ちょっと気になる存在でしかなかったSL01は、
かなり気になる存在へと格上げになった。

気づかれている方もいると思うが、43号のベストバイで使われているSL01の写真は、
プロトタイプの写真なのか、プレーヤーベース右手前にあるはずのブランド名と型番の表記がない。

たったそれだけなのに、なんだかのっぺりして見えた。
SL01に関しては、「コンポーネントステレオの世界」でのカラーの方が、いい。
それでもSL01のコンパクトさを、みな高く評価されていた。

菅野先生は、
《これだけの性能が秘められていると思うと、奥ゆかしい魅力を覚える》とされていた。

それでもまだ中学生、オーディオに興味を持ったばかりの私は、
コンパクトさということは、二番目のプレーヤーに求めることのようにも考えていた。

SL01は80,000円だった。
学生には無理な価格だった。

Date: 8月 22nd, 2019
Cate: 会うこと・話すこと

会って話すと云うこと(オーディオ好きであれば、それでいい)

20代のころにもあった、30代のころにも40代になってからもあった。
ある人と親しくしていると、周りの誰かが「あの人とは関らない方がいいよ」といってくる。

そういってくる人は、忠告のつもりなんだろう。
素姓の良からぬ人とは付き合わぬのが賢明とでもいいたいのだろう。

そこには、こちらのことを心配してくれているのか、
それともその人が「あの人」という人のことを嫌っているからなのだろうか、
そのへんははっきりとしないこともあるが、
とにかく「あの人とは関らない方がいいよ」といってきた人が、これまで数人いる。

いってきた人はみな別の人たちであり、
その人たちが「あの人」というのも、また別の人のことである。

そういう人からみれば、あいつはよからぬヤツとつるんでいる、となるんだろう。
でも、これこそよけいなお世話である。

会って話せば、目の前にいる人が、ほんとうにオーディオ好きなのかどうかは、
はっきりとわかる。
それさえわかれば十分である。
その人の職業とか経歴とか、そんなことはどうでもいい。

ほんとうにオーディオ好きの人であれば、
周りの人たちが「あの人は……」といおうが、私にはどうでもいいことでしかない。

でも、周りの人の声のほうが気になって、
「あの人は……」といわれる人とのつきあいをやめていく人もいるみたいだ。

会って話しても、そういう人はわからないのだろうか。
誰がほんとうにオーディオ好きで、そうでないかが。

もしかするとほんとうにオーディオ好きの人を前にすると、
自分のオーディオの好きさ加減がバレてしまうから、それを怖れて、
ほんとうのオーディオ好きを遠ざけるのか。