編集者の悪意とは(その19)
アンプやCDプレーヤーのセッティングは、前日までのままであり、
これは私が行っていた。
XRT18を試聴室に運び込んで、スピーカーケーブルを接続するまでは、やった。
それから先は、エレクトリの担当者と、編集部の一人が立ち合ってのこと。
この編集者は、編集後記のKHさんである。
ちょうど、このころ編集部に見習い、というか、アルバイトというか、
そんな感じで来ていた人である。
KHさんは、XRT20のユーザーである。
エレクトリの担当者とも親しい。
そういうことで、この二人にまかせてしまった。
このころのステレオサウンドは10時から始まる。
はっきりと憶えていないが、割と早くから二人で試聴室にこもってのヴォイシング作業である。
二時間以上は、たっぷりとヴォイシング作業をやっていたはずだ。
二時間程度は、完全なヴォイシングは行えないのはわかっているが、
それでも他のスピーカーシステムは、試聴室に搬入・設置・結線して、
すぐに音を鳴らしての試聴であるのに、
XRT18は午前中たっぷりと鳴らした上での試聴であり、
他のスピーカーよりもそうとうに有利な条件である。
エレクトリの担当者とKHさんは、ヴォイシングの結果には満足そうだった。
うまくいかなかった、とか、時間が足りなかった、とか、そんなことは言っていなかった。
かなた期待できそうな音が鳴ってくれる──、
そう思っていたら、試聴記にあるように、ひどい音だった。
井上先生は《スルーの方がバランスが良いくらいである》、
柳沢氏は《輸入元にこの調整をしてもらったのだが、これがさらに結果を悪くすることになったようだ》、
ヴォイシングの結果について、そう書かれている。