編集者の悪意とは(その20)
試聴記も見出しも、オブラートに包んだといえる表現だ。
この日、XRT18の音は、ほんとうにひどかった。
そのひどい音に対して、もっと辛辣な言葉が試聴室内では交された。
そのくらい、ひどい音だったわけだ。
これなら、ヴォイシングの経験のない私がやった方が、
ずっとまともな音を出せたのでは──、そんなことを思ってしまうほどだった。
このひどい音の原因は、ヴォイシングの明らかな失敗である。
誰の耳にもはっきりとしている。
エレクトリの担当者は、ヴォイシングの初心者ではない。
全国の、XRT20、XRT18の購入者のリスニングルームに行き、
ヴォイシングを何例もやってきた人である。
それに自社扱いのスピーカーの音を、わざとひどくしてしまう理由はない。
ヴォイシングをいっしょにやったKHさんも、
前述したようにXRT20のユーザーであり、
マッキントッシュの信者といっていいくらいの人である。
この試聴で、XRT18の順番を三日目の最初にもってくるように調整した、
特集の担当編集者にしても、少しでもXRT18をきちんと鳴らそうとしてのことだ。
ようするに、誰にも悪意といえるものはない。
けれど、実際に鳴ってきた音は、どうしたら、ここまでひどい音にできるのかと思えるほどだった。
こういう事情を知らない読者からすれば、
ステレオサウンド 87号でのXRT18の試聴結果から、
誰かが悪意をもっていたのかも……、そんなふうに思う人がいても不思議ではない。
くり返すが、この試聴に関係している人は、誰もXRT18に悪意を持っていたわけではない。
それでも、結果は違った。