Date: 5月 10th, 2025
Cate: audio wednesday

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その19)

先日のaudio wednesdayでは、“THE DIALOGUE”もかけた。
2024年4月のaudio wednesdsyでも、アパジーのDuetta Signatureを鳴らした時にかけている。

この時の鳴り方もなかなか良くて印象に残っているけれど、
今回のフランコ・セルブリンのKtêmaでの鳴り方は、予想を超えていた。

私の中での“THE DIALOGUE”の鳴り方のイメージは、
アナログディスクでの、JBLの4343と4350で聴いた音が核になっている。

そういうこともあって、四谷三丁目の喫茶茶会記で、アルテックのユニットを中心としたシステムでは、
少しばかり恐怖を感じるくらいの音量で鳴らしていた。

JBLやアルテックでは、そこまでの冒険(無理)は可能でも、
フランコ・セルブリンでは、それは無茶ということであり、試みることもせずに、
やや控え目な音量で、audio wednesday開始前の時間、鳴らしていた。

Ktêmaを貸してくださっているOさんの、もっと音量を上げても大丈夫です、と言葉を信じて、ボリュウムを思い切ってあげる。

ここまでパワーリニアリティが高いのか、と、自分の認識不足を感じていた。

あの時代のJBL、アルテックの暴力的な鳴り方ではないが、Ktêmaの“THE DIALOGUE”は見事だった。
もう少し音量も上げられるな、という感触もあったし、
セッティングを詰めていけば、相当なところまでいけるはず。

とにかくKtêmaでのベースの鳴り方は、いい。

Date: 5月 9th, 2025
Cate: ディスク/ブック

One Girl Best(その2)

「ムーミンのテーマ」を聴いたことがある人で、
テレビの音声以外で聴いたことがあるという人は、どのくらいいるのだろうか。

私は、子供の頃、テレビから流れてくる「ムーミンのテーマ」しか記憶にない。

今回聴いて感じたのは、丁寧に録音されている、ということ。
ムーミンはテレビアニメで、子供向けの作品だから──、といった甘えが感じられない。
むしろ子供たちが耳にして、口ずさむであろうから、きちんと作らなければ、というふうにも受け止めることができるほど、
そこには手抜きが一切感じられなかったからこそ、
きちんと再生することで、驚くことになったのかもしれない。

メリディアンのUltra DACの三種のフィルターで聴いていて、最も良かったLongフィルターの音は、
MQAです、と言われれば素直に信じてしまうほどの良さと好ましさだった。

Shortの音がひどかったのではない。
Shortの音だけ聴いても、きちんとした仕事による録音と感じることはできる。

それがMedium、そしてLongへと変えることで良くなり、
声の生々しさが増していき、同時に歌の表現の幅が広くなり、深みを増す。

あえてくり返すが、Longフィルターの音はMQAといってもいいほどだった。

テレビを通じてではあったものの、幼い頃に、
「ムーミンのテーマ」を毎週聴いていたことは、ふり返ると、
贅沢なことだったと思う。

Date: 5月 8th, 2025
Cate: ディスク/ブック

One Girl Best(その1)

昨晩のaudio wednesdayは、リクエストの会だった。

四谷三丁目の喫茶茶会記でやっていた時、何度か来られた大阪のMさん。
今年になって毎月来られている。

Mさんが待ってこられたCDの一枚が、“One Girl Best”だった。
堀江美都子のベスト盤。

堀江美都子の名を見て、反応する人もいれば、無反応な人もいるけれど、
この二枚組のCDに収録されている曲のいくつかは、
私と同世代か近い世代の人であれば、どこかで、いつの時代かに耳にしているはず。

昨晩はメリディアンの、Ultra DACを使っていたので、
リクエストされたすべてのCDで、
Ultra DACならではの三種のフィルターを切り替えて聴いてもらった。

Mさんリクエストの曲の後に、個人的聴きたい曲があったので、かけた。
昨晩は、Short、Medium、Longの順で、冒頭一分弱を聴いてもらい、
どのフィルターにするかを決めてもらうようにしていた。

“One Girl Best”でも、私が聴きたい曲でもこの順番で聴く。

「ムーミンのテーマ」、私が聴きたい、この曲では、
音の変化がはっきりとしていた。
Short、Medium、Longの順に音が良くなる。
変化すると書いた方が誤解は少ないとはわかっているが、
昨晩の音の変化は、誰の耳にもはっきりと良くなっていった。

ディスクによっては、フィルターによる音の違いがわかりにくかったり、
違いは聴き取れても、どのフィルターにしようか、迷うこともないわけではない。

「ムーミンのテーマ」は、Ultra DACのフィルターの試聴にぴったりの曲でもあったし、
「ムーミンのテーマ」は、子供のころ、毎週テレビから流れてくるのを聴いていたわけだが、
こんなにもいい曲、魅力ある歌唱だったことを、今回初めて知った。

Date: 5月 7th, 2025
Cate: きく

カセットテープとラジカセ、その音と聴き方(エルカセットのこと・その1)

来年で、「五味オーディオ教室」と出逢って五十年になる。
だから、けっこうな数のオーディオ機器の音を聴いているわけだが、
それでもタイミングというか、聴く機会がなかったモノもけっこうある。

1976年に登場したエルカセットが、その一つだ。
オープンリールテープと同じ1/4インチ幅のテープを、
カセットテープと同じようなハウジングに収めたもの。

オープンリールテープ並みの音と性能を、カセットテープの扱いやすさで、ということが謳い文句だった。
かなり期待された規格だったはずだ。にも関わらず短命だった。

実機を見たことはあるが、聴いたことはない。
エルカセットテープを手にしたこともない。
何の実感も持たずに、エルカセットは消えていった。

でも、ふと思うことがある。
エルカセット登場の三年後にソニーからウォークマンが出た。
ウォークマンが世に出なかったら、エルカセットはもう少し生き延びたのか、と。

Date: 5月 7th, 2025
Cate: 純度

オーディオマニアとしての「純度」(その19)

オーディオ評論家もオーディオマニアのはずだ。
少なくともオーディオ評論を仕事とする前はオーディオマニアだったはず。

だから、この項を書いていて、オーディオ評論家としての「純度」とは? を考える。

Date: 5月 6th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その18)

同軸スピーカーケーブルの逆接続による音の変化を、何度か経験するうちに、
なぜ、こんなふうに音は変化するのかについての、
自分なりの仮説が、二、三浮かんでくる。

その時の仮説とは別に、それから三十年以上経ち、
インターネットが普及し、さまざまな知見が得られるようになってから、
また一つの、新たな仮説が浮かんできた。

ポインティングベクトルである。
ポインティングベクトルについて解説することは、私には無理。

検索してみればわかるが、数式や図式が表示される。
それらを眺めたところで無理。

それでもいくつか眺めている(読んでいるとは言えないレベル)と、
「電流のエネルギーは導体の外側を流れる」という記述が目に入る。

ここで重要なのは、
電流は、ではなく電流のエネルギーは、のところなのだが、
これにしても理論的に理解できているわけではない。

それなのに、ここでポインティングベクトルについて書いているのは、
同軸スピーカーケーブルの逆接続の音は、このことに関係しているように感じているからだ。

もしそうだとしたら、また新たな仮説が浮かんでくるのだが、
実際のところ、どうなのだろうか。

Date: 5月 6th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十六夜(三度目のFRANCO SERBLIN KtêmaとMeridian Ultra DAC・いよいよ明日)

今年、フランコ・セルブリンのKtêmaを鳴らすのは四度目となる。
一度目の2月の会では、アナログディスクのみで鳴らした。
3月、4月の会は、MQA-CDのみで鳴らした。

明日のaudio Wednesdayでは、KtêmaとメリディアンのUltra DAC、三度目の組合せとなる。
今回はMQA-CDにこだわらず、来られた方が持参されたCDを鳴らすリクエストの会となる。

すでに告知しているように、Ultra DACならではのフィルター三種の音を聴いてもらって、フィルターの決定とする。

どのフィルターにするのかは、リクエストされた方の判断に任せる。
私は一切、何も言わない。

一緒に聴いている人の中には、自分だったら、こっちのフィルターを選ぶと思われるかもしれない。
それも黙っていてほしい。

リクエストされた方の好きなように聴いてもらう会にしたいからだ。

開始時間は19時。終了時間は22時。
開場は18時から。

会場の住所は、東京都狛江市元和泉2-14-3。
最寄り駅は小田急線の狛江駅。

参加費として2,500円いただく。ワンドリンク付き。
大学生以下は無料。

Date: 5月 5th, 2025
Cate: 4345, JBL

JBL 4345(4347という妄想・その5)

山水電気がJBLを取り扱っていた時代、
いまとは違い、スピーカーユニットがかなりの数、カタログに載っていた。
フルレンジ、トゥイーター、ウーファー、コンプレッションドライバー、ホーン、ウーファーがあり、
ネットワークも多数用意されていたものの、
JBL純正のエンクロージュアとなると、
バックロードホーンの4520、4530、フロントショートホーンの4550、4560しかなかった。

スタジオモニター的なシステムを組もうとしても、
スピーカーユニットはあれこれ選べても、エンクロージュアに関しては、
自作するか、国産のエンクロージュア製作会社のモノから選ぶしかなかった。

オーディオマニアからの要望もあったのだろうが、
山水電気は1977年にECシリーズを発表する。

JBLとの共同開発したというモノで、EC10、EC20、EC30、EC11、EC12、EC21が用意された。
それぞれの詳細は省くが、
JBLのスピーカーユニットで自分だけのシステムを作りたかったマニア向けであり、
好評だったのだろう、1983年には第二弾が出た。

EC246、EC146、EC137である。
第二弾の特徴は、18インチ口径ウーファーに対応したことだ。
しかもEC246は、18インチ口径ウーファーとともに、12インチ口径ユニットもおさめられる。

EC246の推奨ユニットは、ウーファーが2240H、2245H、
ミッドバスとして2202が挙げられていた。

この項で、私が妄想として書いているユニット構成を実現するためのエンクロージュアが、
1983年の時点で登場していたわけだ。

Date: 5月 4th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その17)

ここで同軸スピーカーケーブルについて書いていることも、
別項「パッシヴ型フェーダーについて」で書いていることきも、同じことが含まれている。

同軸スピーカーケーブルを使って、ただ単に音がいいとか悪いとか、
音が良くなったとか悪くなったとか、
パッシヴ型フェーダーにした方がコントロールアンプを使うよりもいいとか、
やはりコントロールアンプの方が良いとか、
そういうことではなく、
その使い方を思いつく限り試してみることで見えてくる事柄がある。

このことを言いたいだけである。

Date: 5月 3rd, 2025
Cate: オリジナル, デザイン

コピー技術としてのオーディオ、コピー芸術としてのオーディオ(その7)

(その6)は2016年8月に公開しているので、ずいぶん経ってしまったわけだが、
何も考えていなかったわけではない。

タイトルにコピー技術、コピー芸術を使っている。
2016年からの約七年間、コピーだけでいいのだろうか、と思うことが何度かあった。

コピー(copy)で日本語だと複写、複写に近い言葉として転写がある。
英語だとtranscription(トランスクリプション)。

何が言いたいのかというと、コピー技術、コピー芸術の中に、
トランスクリプション技術、トランスクリプション芸術という意味合いを込めていたのかだ。

Date: 5月 2nd, 2025
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その42)

四谷三丁目の喫茶茶会記で、audio wednesdayをやっていた時、
一度、マルチアンプで鳴らしたことがある。

モノーラルで鳴らす回で、パワーアンプの入力に6dB/oct.のフィルターをつけて、
左右チャンネルを低音、高音へと振り分けてのマルチアンプだった。

ステレオでマルチアンプをやるには最低でもパワーアンプが二台は要る。
用意できるのであればやりたかったけれど、無理だった。

今は狛江でやっている。
アキュフェーズのDF35は、すでに持ち込んでいる。
パワーアンプも二台ならば、なんとかなりそうである。

いままでマルチアンプシステムの音を鳴らしていないわけではない。
2024年1月と7月に鳴らしたメリディアンのDSP3200は、
マルチアンプによるアクティヴ型スピーカーシステム。

とは言え、オーディオマニアがマルチアンプシステムと聞いて思い浮かべるものとは、少し違う。

マルチアンプシステムをやるのであれば、DF35を使うわけだから、
ホーン型の方が面白いと思うのは、デジタル信号処理によってディレイをかけられるからだ。

手元にあるアルテックの604-8Gで、まずやってみたいと考えている。
エンクロージュアを用意する必要はあるが、
同軸方ユニットに時間軸の補正を加えた音には、強い関心がある。

なので使えそうなエンクロージュアを探している。

Date: 5月 1st, 2025
Cate: オーディオの「美」

音楽の理解(オーディオマニアとして・その5)

年に数回ほど、そろそろソーシャルメディアを辞めようか、
もしくは数を減らそうか、と思う。

にも関わらず、いまも続けているのは、まれにそうだったのか、と思える投稿に出逢うからだ。

つい先日もそうだった。
トーマス・ビーチャムの言葉が投稿されていた。

“The English may not like music, but they absolutely love the noise it makes.”

facebookでの投稿で、自動翻訳されていた。
noiseをどう訳すのかで、facebookの翻訳は、やや意味不明だった。

DeepLだと、
《イギリス人は音楽を好まないかもしれないが、音楽が発する音は絶対に好きだ。》
と訳してくれる。

noiseは雑音と捉えがちだが、以前「音」の英訳を調べていたら、
noiseも含まれていたから、DeepLの訳はすんなり受け入れられる。

《イギリス人は音楽を好まないかもしれないが、音楽が発する音は絶対に好きだ。》
これがいつ語られたのかは不明だが、確かにそうかも、と頷けた。

古き良きブリティッシュサウンドは、こういうところから生まれてきたのだろう、と。

Date: 5月 1st, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その16)

同軸スピーカーケーブルの逆結線(芯線をマイナス、シールド線をプラス側)の効果は大きい。
このことは当時のステレオサウンドにも載っているので、記憶されている方はいるだろうが、
その中で実際に試してみた人は、どのくらいだろうか。

かなり少ないように勝手に思っているし、ここまで読んだ人の中には、
ならば最初から同軸スピーカーケーブルの逆結線にすればいいのでは? と思う人もいるはず。

そう思う人はやってみればいい、としか私には言えないし、
そういう人と私とではオーディオの取り組み方が違うとしか言えない。

段階を踏んでいくことがどれだけ大事なのか、
そのことを理解している人とそうでない人とがいる。
それだけのことなのだろう。

段階を踏むことは、なぜ同軸スピーカーケーブルの逆結線が好結果につながるのか、
そのことへの仮説を生むことにもなる。

ここが大事なことだ。

Date: 4月 30th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その15)

同軸スピーカーケーブルを普通に使うと、
つまり芯線をプラス、シールド線をマイナス側として結線すると、ドンシャリ気味になる。

全ての同軸スピーカーケーブルを試したわけではないので断言まではできないが、
その傾向は多少なりともある、とは言える。

特に日立電線のLC-OFCのそれは、もともとのやや硬質な性格と相まって、
ドンシャリが強調されるとも言えなくもない。

けれど、この状態でさらにシステムを追い込んだところで、
井上先生は、同軸スピーカーケーブルの結線を反対にしろ、と言われる。

最初は、どんなふうに音が変化するのか、想像できるなかった。
それでも、井上先生の指示通りに結線をやり直す。

今どきのアンプやスピーカーシステムならば、かなり太いケーブルでも苦労することなく結線できるが、
1980年代当時のスピーカーシステムもアンプも、端子はそうはいかなかった。

日立電線のLC-OFCの同軸スピーカーケーブルは、太かった。正直、結線をやり直すのはやりたくないほどに、面倒だった。

それでも鳴ってきた音を聴くと、驚く。
ドンシャリな完全に抑えられるだけでなく、全帯域に渡って音の密度が増した、と感じられた。

いうまでもなく、アンプ側もスピーカー側も両方とも芯線をマイナス、シールド線をプラス側にしているから、
スピーカーが逆相になるわけではない。

Date: 4月 29th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その14)

数は少ないものの、以前から同軸タイプのスピーカーケーブルがある。
おそらくモガミが最初に製品化したはずだ。
1980年代には日立電線からLC-OFCを採用した同軸スピーカーケーブルがあった。

いまもモガミには同軸スピーカーケーブルが数種出ているし、
ドイツのゴッサムからも出ている。

同軸スピーカーケーブルを使う場合、芯線をプラス、シールド線をマイナス側として使うのが、
一般的というか、ほとんどそのはずだ。

ステレオサウンドの試聴室には、日立電線のLC-OFCのモノがあった。
硬く径も太かったので、取り回しはやや面倒だったし、
この頃のステレオサウンドのメインのオーディオ評論家のあいだでは、
LC-OFCのケーブルは全般的に不評だった。
まして同軸スピーカーケーブルとなると、使う人は井上先生だけだった。

その井上先生も、常に使われているわけではなかった。
いくつかの条件が重なっていく過程で、日立電線の同軸スピーカーケーブルにしよう、と言われる。

最初は芯線をプラス、シールド線をマイナス側として接続する。
この状態で、システム全体を追い込んでいくと、接続を変えるように言われる。

芯線をマイナス、シールド線をプラス側として使う接続である。