Date: 10月 12th, 2025
Cate: ハイエンドオーディオ

ハイエンドオーディオ考(その21)

その19)で触れている、ソナス・ファベールのソナス・ファベールのStradivari Homageを見て、
音を聴くこともなく、買っていった女の人は、その後どうなんだろうかとおもう。

当時、ペアで五百万円ほどのStradivari Homageを買う。
この女の人は、Stradivari Homageに見合うアンプその他をすでに所有していたのか、
それともStradivari Homageと一緒にまとめて購入したのか。

なんとなく後者のような気がするするが、仮にそうだとして、
この女の人は、その後、オーディオにお金をかけるのだろうかと思う。

Stradivari Homageをポンと買っていく人だから、かなり裕福な方だろう。
アンプその他も買って行ったとしたら一千万円を超える買い物となる。
オーディオ店にとって、いいお客のはずだ。
ただ、その後もいいお客と言えるのか。

Stradivari Homageの購入をきっかけにオーディオに強い関心を持ってくれるかもしれないが、
高価な音の出る家具としての購入とも考えられる。

そうだとしたら、グレードアップといったことには関心がないだろう。
つまり一回限りのお客の可能性もある(高い)。

それでも一回で大金を払ってくれるのだから、十分すぎるいいお客と、オーディオ店の店員からすれば、そうだろう。

こういうお客が来てくれれば、オーディオ店は潤う。けれど長いつきあいとなるお客かどうかは、なんとも言えない。

オーディオ機器はいつか故障する。
その時は新しい機器を、またポンと買ってくれるかもしれないから、なんとも言えないけれども、
オーディオ界を支えているのは、そういう層の人たちだろうか。

Date: 10月 11th, 2025
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その35)

2020年末まで四谷三丁目でやっていたaudio wednesdayは、2024年から狛江でやっている。

スピーカーも違う、アンプも違う、部屋も違う。いろいろと違う中で、私がいまいちばん意識していることは、
コントロールアンプを使うことが増えてきた、である。

四谷三丁目のころは、アンプはマッキントッシュのプリメインアンプだったから、
コントロールアンプを使うことはあまりなかった。
全く使わなかったわけではない。

マークレビンソンのLNP2を鳴らした方もある。
マッキントッシュのプリメインアンプにはパワーアンプ部への入力端子がある。
コントロールアンプ部をパスしてパワーアンプとして使ったわけだが、
マークレビンソンとマッキントッシュの組合せが決していいとほ思っていないが、
それでもLNP2の存在感を十分すぎるほどに感じられた。

このころはパワーアンプとして使うこともけっこうあった。

2024年は使ったり使わなかったりだったのが、2025年は使うことの方が多い。

アインシュタインのコントロールアンプも使っていたし、マランツのModel 7をメインのコントロールアンプとして使っている。

野口晴哉氏のリスニングルームにはマッキントッシュのC22もあって、
今年、整備されて使えるようになっている。

C22も使おう(鳴らそう)と思いながらも、Model 7を選んでいる。

深く考えてのModel 7ではなかったけれど、こうやって改めて考えてみると、
野口晴哉氏のオーディオシステムのデザインの中心として選んでいたのかも──、と思い始めている。

Date: 10月 10th, 2025
Cate: ディスク/ブック

gulda récital Montpellier, 1993

グルダの1993年のモンペリエ・サマー・フェスティヴァルでのライヴ録音(CD二枚組)は、
グルダの数多いアルバムの中でも素敵な一枚といえるけれど、
残念なことに廃盤のまま、けっこうな月日が経っているし、
それだけでなくTIDALでもQobuzでも配信されていない。

11月半ばにドイツ・グラモフォンからグルダのCDボックスが発売になる。

ドイツ・グラモフォン、アマデオ、デッカ、フィリップス、アコールなどへの録音をおさめたもので、
CD84枚プラスDVDという内容。

今回初めてCD化された録音もある。そしてモンペリエでのライヴ録音も含まれている。

Date: 10月 10th, 2025
Cate: ワーグナー

ワグナーとオーディオ(その12)

ワグナーの作品を、最初から最後まで聴き通す。
その最初の会は、やはり「パルジファル」と決めていた。

どこで、いつやれるかは関係なく「パルジファル」だと決めていた。

ステレオサウンドで働いていたころ、確か23歳のころだったか、長島先生に「少年、君はパルジファルだな」と言われたことがある。

18歳で働くようになった私は、ハタチすぎても少年とたびたび呼ばれていた。

長島先生にパルジファルと呼ばれた。
そのことがずっと心に残っているから「パルジファル」だった。

Date: 10月 9th, 2025
Cate: 「オーディオ」考

「音は人なり」を、いまいちど考える(その29)

(その28)で、
腐らないために必要なことは、才能とか自信とかではなく、
結局、覚悟のみだと思う。
覚悟を持って立つことだけが、腐らずにオーディオをやっていける、
と書いた。

腐らないにこしたことはないが、それでも腐ることはあるだろう。

腐ってしまったら、腐ったところを切り捨てるしかないだろう。ここでも切り捨てる覚悟が必要となる。

オーディオにおいて切り捨てるとは、どういうことなのか、それを考えることからも目を逸らしてしまうのもいいだろう。

趣味だから──、と覚悟なしにやっていけばいいだけのことだ。
そのこともまた「音は人なり」なのだから。

Date: 10月 9th, 2025
Cate: スピーカーの述懐

スピーカーの述懐(その64)

そのオーディオマニアは、宿題としてのスピーカーを持っているのか、持っていないのか。

ここでの持っている持っていないは、物理的に所有しているがどうかとは関係ない。

Date: 10月 8th, 2025
Cate: 598のスピーカー
1 msg

598というスピーカーの存在(その38)

598戦争といえた時代の国産スピーカーシステムは、何を目指していたのだろうか──、
といまになっても考える時がある。

その37)で、ステレオサウンド 44号での、井上卓也、山中敬三、両氏の新製品紹介での対談を引用したが、
これを読み返して、ふと浮かんできたのは、
ブロイラースピーカー、ブロイラーオーディオだった。

スピーカー、オーディオの前に、ブロイラーというひどい言いぐさだな、と自分でも思いながらも、
この時代の598スピーカーは、ブロイラースピーカーと呼ばれてもおかしくない。

この時代の598スピーカーを知らない世代には、
ブロイラースピーカーと言った方が、通じやすいかもしれない。

同時に、この時代の598スピーカーだけに当てはまることだろうか。
ハイエンドブロイラースピーカー、ハイエンドブロイラーオーディオ、
そんな影があるように感じるし、濃くなってきているような気さえすることもある。

Date: 10月 7th, 2025
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンド 236号(その3)

菅野先生時代の「ベスト・オーディオファイル」は、64号から始まっているから、CD登場前夜といえる。
64号は1982年9月発売、CDは10月に登場している。

このことも「ベスト・オーディオファイル」をまとめて読んでいくと興味深く感じられる。
少しずつ「ベスト・オーディオファイル」のリスニングルームにも、CDプレーヤーが導入され、登場するようになっていく。

当時はそんなふうには思いもしなかったが、いま振り返ると、なかなかの資料でもある。

無理を承知でいえば、十四年間続いた「ベスト・オーディオファイル」を全てまとめたムックを出してほしいと思うくらいだ。

そんな「ベスト・オーディオファイル」を楽しみに読んできた人にとって、236号の特集は、どうだったろうか。

物足りなく感じた人もいるように思う。
236号だけで終ってしまうのであれば、物足りなさを感じるし、もったいないとも思う。

毎号連載しろとは言わないし思わないが、定期的にやっていくことが大事だと思うからだ。

236号だけで終ってしまえば、別項「管球王国の休刊」で書いている傅 信幸氏の同軸型スピーカーの試聴記事と同じでしかない。
あと一歩の踏込みがあれば面白くなるのに、その一歩に気づかないのか、
気づいているのに、あえてやらないのか。

そのへんの事情は知らないが、236号の特集は一号限りなのか、それとも続きが読めるのか。

Date: 10月 6th, 2025
Cate: 老い

老いとオーディオ(2026年)

今年も三ヵ月足らずで終る。
来年は2026年。

私が「五味オーディオ教室」と出逢ったのは1976年秋だったから、来年で五十年になる。
そしてステレオサウンドは1966年創刊だから、来年は創刊60周年となる。

ステレオサウンドは創刊60周年記念特集をやるだろうが、私は五十年経ったからといって、
何か特別なことやったり、起ったりもないように思う。

それでもほぼ一年前となった、この秋、あれこれおもうことはある。

Date: 10月 5th, 2025
Cate: 音の良さ

アキュフェーズ A20Vのこと(続余談)

アキュフェーズのパワーアンプのリアパネルの両端には、プラスチック製のプロテクターといえるモノが取り付けられている。

アキュフェーズのウェブサイトで見ると、コントロールアンプやプリメインアンプにはないが、
パワーアンプには、今も取り付けてある。
A20Vにもある。

これを指で弾くと中は空洞だとわかる。それに安っぽい音がする。
これを取り外すと、音は変るのはわかっていても、そのままにしていた。
外すのは簡単だ。上下二本のネジで止まっているだけだから、プラスドライバーがあれば、すぐに外せる。

10月1日のaudio wednesdayでは外した。外した音を聴いてもらっている。
外すことを勧めはしないが、このくらいのことでも音は変化する。

取り付けてある、いわば標準の音、
外した状態の音があり、中間に、このプラスチック製プロテクターの空洞に綿など詰めた音がある。

A20Vの、この部分は安っぽいつくりだが、
現在のモデル、上級機ではしっかりしたつくりになっているのだろうか。

Date: 10月 4th, 2025
Cate: オーディオの「美」

人工知能が聴く音とは……(その9)

ジョディ・フォスター主演の映画「コンタクト」を観終って、ある映画を思い出した。
ティム・バートン監督の「バットマン リターンズ」だ。

「バットマン リターンズ」では、あるシーンのバットマンをCGで描こうとしていた、と、その時のニュースは伝えていた。
結果は、映画関係者から猛反対を喰らって妥協した──、そんな内容の記事だった。

「バットマン リターンズ」の公開は1992年、
「コンタクト」の公開は1997年。
どちらも映画館で観ている。

「コンタクト」の終盤、ジョディ・フォスター演じる主人公が、地球外知的生命体と出逢うシーンがある。
この時のジョディ・フォスターの表情は、なんと表現したらいいのか。
こういう表情が人にはあるんだ、と思っていた。

そして映画館を出て、こんな表情を生み出すことがCGでは可能なのだろうか、と考えていた。
ジョディ・フォスターだから可能だった表情を、ゼロからCGでつくり出せるのか。

ジョディ・フォスターと同じレベルの演技ができる人ならば、CGでつくり出せるかもしれないが、
そうでない人、どんなにCGの作成に長けた人であっても、あの表情はつくれない、というよりも思いもつかないだろう。

このことを思い出してのは、ここ数日、生成AIによる女優の誕生のニュースが話題になっているからだ。

Date: 10月 3rd, 2025
Cate: ワーグナー

ワグナーとオーディオ(その11)

一年半ほど前の(その10)で、
3月の会では、カラヤンの「パルジファル」をかけた。
三十分ほど鳴らしていた。
そのまま続けて鳴らしたい(聴いていたい)と思ったけれど、
ワグナーの「パルジファル」を一方的に最後まで聴かせるというのは、
ある種の暴力に近いのかもしれない、と書いている。

いまもそう思うところはあるが、10月1日のaudio wednesdayではあらかじめ告知していて、
それでも聴きたいと思われる方たちが来てくれたのだから、
いきなり「パルジファル」を最後までかける(聴かせる)わけではないから、
暴力に近いとは言えなくなっていたとしても、苦行かもしれない……、そんなふうには思われていただろう。

10月1日は18時ぴったりに開始した。
カラヤンの「パルジファル」は四枚組。ディスクのかけかえでわずかな時間、音楽は途切れるが、
22時20分近くまで、ずっと「パルジファル」が野口晴哉氏のリスニングルームに響いていた。

バカな聴き方だと思われるかもしれないが、やってみて、やっぱりやってよかった、と私は思っているだけでなく、
またやろうとも考えている。

Date: 10月 2nd, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第二十二夜(Vitavox CN191 Corner Hornで聴く)

11月5日のaudio wednesdayは、すでに告知している通り、ヴァイタヴォックスのCN191を鳴らす。

CN191がよく鳴っているのを、これまで聴いたことがない。
それでも鳴らしてみたいスピーカーの筆頭でもある。

野口晴哉氏のリスニングルームにあるスピーカーは、
ウェスターン・エレクトリックの594Aを中心としたシステム、
シーメンスのオイロダイン、ウェストレックス・ロンドンは、いずれも部屋に組み込まれているため、
スピーカーの置き方をあれこれできるわけではない。

CN191はコーナーに置かれている。
コーナー型スピーカーだから、野口晴哉氏のリスニングルームでは、
そこしかないという位置にある。

シーメンスやウェストレックス・ロンドンがある面から90度横を向く位置にある。

これまで野口晴哉氏のリスニングルームは横長での鳴らし方だったのが、CN191では縦長での鳴らし方となる。

それに左右のCN191のあいだには、ブリュートナー (Blüthner)のグランドピアノがある。

とにかくこれまでといろいろ条件が違う。
どんな音が聴けるのだろうか、という期待と、どこまで鳴らせるだろうか、というおもいもあったりする。

それでもCN191は、秋にじっくりと聴きたいスピーカー(音)というイメージがある。

Date: 10月 2nd, 2025
Cate: ショウ雑感

2025年ショウ雑感(その9)

やはり今回のインターナショナルオーディオショウの今井商事のブースでの是枝重治氏の回は、
ヴァイタヴォックスのCN191を鳴らされる、とのこと。

ヴァイタヴォックスの復活が決まって、今年で十二年。
今井商事のブースで、スピーカーユニットの展示はあったけれど、
スピーカーシステムを鳴らされることはなかった。

それが、今回のショウでCN191が聴ける。
いままではやってこなかったのに、今回はどうしたのだろうか、と思ってもいた。

今井商事がCN191を、ついに取り寄せたのか。
あまりやる気の感じられない今井商事なのに、急にどうしたのだろうか? と思う人は、私の他にもいるはず。

今回のCN191は、是枝重治氏が持ち込まれるモノだそうだ。しかもそのために中古のCN191を仕入れてのこと。
アンプは、是枝重治氏製作のモノが予定されている。
数多い是枝アンプの中から、どれになるのかはまだ決まっていないらしい。

是枝アンプで鳴らされるCN191の音に全く興味を持てない人もいてもいい。
それでも少しでもいいから、できれば若いうちに体験してほしいと思うし、
こういう企画こそ、これから少しでもいいから増えていってほしい。

Date: 10月 2nd, 2025
Cate: ショウ雑感

2025年ショウ雑感(その8)

ヴァイタヴォックスのfacebookを見たら、インターナショナルオーディオショウの今井商事のブースで、
CN191を鳴らす、と告知されていた。

(その7)で触れた是枝重治氏の今井商事での講演は、このことなのか。
CN191と是枝重治氏だとしたら、今回のインターナショナルオーディオショウでのいちばんの楽しみとなる。