ニュー・アトランティス(その1)
1622年から24年にかけてフランシス・ベーコンが「ニュー・アトランティス」を書いている。
17世紀、いまから400年ほど前に、フランシス・ベーコンは音響研究所について書いている。
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また音響研究所ではあらゆる音を実際に発生させ実験している。われわれにはあなた方にはない和音、四分の一音やそれ以下の微妙な違いの音によるハーモニーがある。同じくあなた方の知らぬさまざまな楽器があり、あるものはあなた方のどの楽器も及ばぬ甘美な音色を出す。典雅な音を奏でる鐘、鈴の類もある。小さな音を大きく、深く響かせ、大きな音を弱め、鋭くすることも、本来は渾然一体てある音を震わせ、揺るがせることも、あらゆる明瞭な音声と文字、獣の咆哮、鳥の歌声を模倣し、表現することもできる。耳に装着して聴覚を大いに助ける器具もあれば、音声を鞠でも投げ返すように、何度も反響させて、種々の奇妙な人工木霊を作り、来た音声を前より大きくして返したり、高くも低くもする装置もある。あるものは、もとの綴りとも発音とも明らかに違う音声に変えてしまう。筒や管を用い、奇妙な経路を経て遠くに音声を運ぶ手段もある。
(「ニュー・アトランティス」 川西進訳・岩波文庫より)
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初めて読まれる方もいるはずだ。
どう思われただろうか。
驚かれた、はずだ。
「ニュー・アトランティス」に音響研究所についての記述があるのは、1983年に知った。
ステレオサウンド別冊THE BRITISH SOUNDのカラー口絵。
『「もの」に反映するジョンブル精神』とつけられた10ページの記事。
この記事で、音響研究所の箇所を読んだ。
驚いた。
THE BRITISH SOUNDでの引用は、中橋一夫訳・日本評論社から、である。
当時、「ニュー・アトランティス」を読もうと思ったのに、
なぜかいまごろ読んでいるのは、手に入らなかったから忘れてしまったのか……。
もうはっきりとは憶えていない。
それから今日までTHE BRITISH SOUNDは何度も開いている。
その度に、「ニュー・アトランティス」のところを読んでいたわけではないが、
何度かは読み返している。
それでも、いまになって、あらためて、すごい予見だ、と思っている。