長期間にわたって売り続けられている製品・商品をロングランとかロングセラーなどという。
オーディオの世界にもロングラン・コンポーネントはある。
オルトフォンのSPU、デンオンのDL103がすぐに浮ぶ。
これらよりも少し新しいところでは、オーディオテクニカのAT33も挙げられる。
スピーカーユニットではフォステクスのFE103がある。
昔はJBLのLE8T、アルテックの755もそうだったけれど、
いまはどちらも製造中止になって久しい。
JBLには4311があった。
4311の後継機として4312があり、昨年70周年記念モデルとして4312SEが出た。
このへんは人によって捉え方が違ってくるのだが、
私の目には4312は4310、4311とは違うスピーカーとしてうつる。
ましてネットワークに変更が加わった4312SEは、4310、4311の流れの外に位置する。
こういうロングランの製品を日本語にすれば、定番だろう。
SPUにしてもDL103にしても、上に挙げたモデルは、
どれもそのメーカーの定番の製品である(あった)。
ここに来て業績が回復しているというニュースがあったマクドナルドは、
少し前までは、ボロボロの会社のような印象で報道されがちだった。
マクドナルドがなぜダメになったのか。
正確なところはわからないが、友人らと話している時にマクドナルドのことが話題になった。
友人らはみな同世代。
10代のころにマクドナルドを初めて食べている世代だ。
みな、あのころのマックはおいしかった、という。
私も東京に出て初めて食べたビッグマックはおいしいと感じた。
それがいつしかおいしいとは感じなくなっていた。
みな同じだった。
年齢も関係しているだろうし、舌も肥えてきたからなのかもしれないが、
それでもあの頃のビッグマックといまのビッグマックは違い過ぎるだろう、とも話した。
記憶のなかだけの比較でしかないのはわかっている。
正確な比較ではない。
それでも、あの頃のビッグマックは、味だけでなく、ボリュウムもあった、
そのボリュウムが、いかにもアメリカの食べ物という印象を与えてもいた。
とみな感じている。
そのボリュウムがなくなってしまったのが凋落の原因だ、と好き勝手に話していた。
ビッグマックはマクドナルドの定番であり、
ビッグマックという定番があの頃のままであったならば……。
マクドナルドの業績の変化は違っていたかもしれない。
もしかするとあの頃のビッグマックといまのビッグマックは、まったく同じなのかもしれない。
けれど変っている、と感じている。
定番が定番にあり続けるためには、まわりの変化に応じての変化が必要であり、
変化を完全に拒否したところでは、定番を定番として維持することはできないのだろう。