スピーカーシステムという組合せ(セレッションSL600・その4)
SL600が登場するころ、イギリスのオーディオ機器にはネクステル塗装が流行っていた。
メリディアンのMCA1やCDプレーヤーMCDなどがそうだった。
SL600もそうだった。
最初は流行っているからなのか、と思ったが、
(その3)で書いたことを試してみて、
実のところセレッションもエンクロージュアの素材であるアルミハニカムの欠点に気づいていたから、
ネクステル塗装にしたのではないか、とも思うようになった。
エンクロージュアの塗装は、音に大きく影響する。
ピアノ仕上げのスピーカーは見映えのためだけではない。
光沢のある仕上げもそうである。
でも個人的には光沢のある仕上げだと、
スピーカーのバッフルに自分の顔が映ってしまう。
これが苦手だ。
音楽を聴いている自分の顔を、私は見たいとは思わない。
中には、音楽に真剣に向きあう己の姿にうっとりする人もいるけれど、
私はそんな人種ではない。
セレッションが私と同じことに気づいてのネクステル塗装を選択したのかはなんともいえないが、
別の塗装であれば、音は違ったものになっているのは確かである。
アルミハニカムは軽くて剛性も高い。
内部にエネルギーを蓄積しないという点では、SL600の開発意図に添う素材である。
アルミハニカムは蜂の巣と同じ構造となっている。
同じ大きさの六角形が隙間なくきっちりと並んでいる。
テクニクスは六角形の大きさを外周にいくにしたがって大きくなるように工夫していたが、
SL600のアルミハニカムはそうはなっていないはずだ。
この構造が軽くて高い剛性を両立させているわけだが、
同時に聴感上のS/N比を悪くもしている。
同じ大きさの六角形とは、同じ大きさの空洞である。
その空洞を塞ぐようにスキン材が両側に張られている。
この空洞を、何かで埋めない限り、
アルミハニカムで良好な聴感上のS/N比を得るのは無理なのではないか。
具体的にはウールのような天然素材を、
すべての空洞に軽く詰めていく。
ぎゅうぎゅうに詰める必要はないばずだ。
これは試してみたかった。
けれどSL600のスキン材をきれいに剥してすべての空洞をうめたうえで、
もう一度スキン材を張ることができるわけがなくて、あきらぬていた。
それでもときどき思い出しては、
アルミハニカムそのものが入手できるのであれば、
SL600と同じコンセプトのスピーカーを自作できるのに……、と、
インターネットで検索をしていた。