アナログディスク復活と騒がれている。
確かに売上げは伸びているようだ。
でもそれだけで復活とか、ほんとうのブームだとか、そうは考えたくない。
実態はどうなのだろうか。
いま日本でアナログディスクのプレスができるのは東洋化成、一社だけである。
数が少ないから、そう考えているわけではない。
10年くらい前に、オーディオ関係者の人から聞いたことがある。
東洋化成にはカッティングマスターテープを再生するデッキがない、ということと、
カッティングマスターにはCD-Rが使われることが大半だ、ということを聞いた。
10年くらい前は、その人だけの話だった。
その数年後にも、別の人から、やはり同じことを聞いた。
この人たちのことを信用していないわけではない。
でも、CD-Rがカッティングマスターとして使われている、ということは、
なんと表現したらいいんだろうか、ある種の裏切りともいえるのではないか。
そう思うと、自分の目で確認して書くべきことだと思って、
固有名詞を出して、このブログに書くことは控えていた。
それにアナログディスク・ブームとかいわれるようになって、
東洋化成の業績も、話を聞いたころよりもよくなっているだろうから、
いまではCD-Rではなくて、デッキも導入しているだろう、という期待もあって書かなかった。
カッティングシステムは、カッティングマスターを再生するデッキ、
カッティングへッド、これをドライヴするアンプ、カッティングレース、コントローラーなどから成る。
例えば1970年代ごろのビクターは、カッティングシステムを五つ用意していた。
テープデッキにスチューダーA80、アンプにEL156パラレルプッシュプル、出力200Wのモノ、
カッターヘッドはウェストレックスの3DIIAのシステムがひとつ。
このシステムはおもに大編成のオーケストラ、声楽、オルガン曲に使われたそうだ。
デッキはスチューダーA80、アンプはノイマンSAL74(出力600W)、カッターヘッドはノイマンSX74。
このシステムではロック、歌謡曲、ソウルを。
スカーリーの280デッキに、EL156パラレルプッシュプルのアンプ、カッターヘッドはノイマンSX68。
ピアノ・ジャズ、小編成のオーケストラに使用。
アンペックスのデッキにビクター製、出力300WのトランジスターアンプにノイマンSX74カッターヘッド。
これもロック、歌謡曲、ソウルに使われていた。
スカーリーの280デッキに、オルトフォン製出力800WのGO741アンプに、オルトフォンのカッターヘッドDSS731。
これは室内楽に使われた。
何も同じ規模のシステムを東洋化成も揃えるべきだとは思っていない。
だがスチューダーA80かアンペックス、スカーリーのオープンリールデッキを置こうとは考えないのか。
アナログディスク全盛時代はテレフンケンのM15Aも使うレコード会社もあった。
これらすべてを揃えることができたらいいけれど、
何かひとつ、できればヨーロッパ製とアメリカ製のデッキ一台ずつ導入する気はないのだろうか。