日本のオーディオ、これから(ブームだからこそ・その4)
アナログディスク復活というブームとともに、
ハイレゾもブームになりつつある。
ハイレゾ(ここではあえて、このハイレゾを使う)とは、
サンプリング周波数および量子化ビット数のどちらかが、
CDのスペックである44.1kHz、16ビットを超えていれば、そうみなされる。
つまりサンプリング周波数はCDと同じ44.1kHzであっても、24ビットであれば、ハイレゾとなる。
サンプリング周波数が44.1kHzということは、20kHz以上の音は録音・再生できないため、
20kHz以上の信号を記録・再生できるアナログディスクも、ハイレゾ扱いされつつある。
ここで考えたいのは、東洋化成でカッティング・プレスされるアナログディスク。
つまりカッティングマスターがCD-Rのアナログディスクの場合である。
CD-RはCDと同じサンプリング周波数、量子化ビット数(44.1kHz、16ビット)である。
つまりアナログ録音のマスターテープに、仮に20kHz以上の信号が記録されていても、
CD-Rに記録するために44.1kHz、16ビットでデジタル変換する。
そうやってつくられるアナログディスク(AADAのディスク)を、ハイレゾ扱いすることは、
理屈のうえで間違っている、といえる。
周波数特性だけで音のよさは決定されるわけではない。
CDは20kHz以上が出ないから音が悪い、といわれがちだが、
FM放送が盛んだったころを思い出してほしい。
ライヴ中継の音の良さを思い出してほしい。
FM放送はアナログだが、高域は20kHzまで出るわけではない。
チューナーにもよるがたいていは15kHz、もう少しのびているモノでも16kHzあたりが限度である。
これはひとつの電波でステレオ放送を可能にするために、送信時に一旦ステレオの合成波にして、
受信時にチューナーの内部で、元のステレオ(2チャンネル信号)に分離される。
このために必要なのがパイロット信号で、この19kHzの信号がいわば目印となり、
まちがえることなく分離できるわけである。
つまりチューナーでは、パイロット信号を取り除くためのハイカットフィルターがある。
このフィルターかあるためチューナーの周波数特性はそれほど上にのびているわけではない。
にも関わらずライヴ中継を一度でも聴いたことのある人ならば、
高域の美しさは、周波数特性とは直接的には関係ないことを実感している。
だからアナログディスクの音の特質は、別のところにあると私は考えている。