夜の質感(Heart of Darkness)
「地獄の黙示録」は、公開当時、ものすごく話題になっていた映画だった。
あれこれいわれていた映画だった。
あまりにいわれすぎていて、それだけで観たような気になったわけではないが、
なんとなく観る気が失せていっていた。
公開当時は17歳。他に観たい映画があった。
結局「地獄の黙示録」を観たのは東京に来てからだった。
レーザーディスクでだったと記憶している。
映画館で観たのは2001年の特別完全版だった。
「地獄の黙示録」の原題は”Apocalypse Now”、
原作となったのはジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」ということは、知識として知っていただけだった。
「闇の奥」は読んでいない。だから「闇の奥」の原題が”Heart of Darkness”だということを知ったのは、
それほど昔のことではない。
“Heart of Darkness”が「闇の奥」ということは、
“Heart”は、そういうふうに訳せるのか──、このことが新鮮に感じていた。
「新月に聴くマーラー」のことを考えていて、
“Heart of Darkness”のことを思い出していた。