So(その1)
30年前の5月19日、ピーター・ガブリエルの五枚目のアルバム”So”が登場した。
当時ステレオサウンド編集部にいたO君が教えてくれたアルバムだった。
ケイト・ブッシュを聴く私に、プログレッシブロック好きのO君が、
「ピーター・ガブリエルのアルバムでデュエットしていますよ」と教えてくれた。
ステレオサウンドがある六本木にはすでにWAVEがあった。
けれどなぜかまだ”So”は入荷していなくて、O君に連れられて渋谷のCiscoに行った。
“So”はレジ横の柱に、他の売れ筋のCDと一緒に貼ってあった。
すぐに買って帰った。
ケイト・ブッシュが参加している三曲目から聴きたかったけど、
一曲目から聴き始めた。
“Red Rain”、”Sledgehammer”と聴いて、お目当ての三曲目。
すぐにケイト・ブッシュが歌いだすわけではない。
待つ。もどかしく待つ。
ケイト・ブッシュが”Don’t Give Up”と歌う。
“Never Give Up”ではなく”Don’t Give Up”と歌う、
聴き手に語りかけるかのように歌う。
“So”を聴き終り、もう一度”Don’t Give Up”を聴いた。
歌詞の意味が知りたくて日本盤も買った。
あの日から、何度聴いたのだろう。
30年の間にはいろんなことがあった。
どんな人であろうと、いろんなことがある。
1月に久しぶりに”Don’t Give Up”を聴いた。
“Never Give Up”ではなく”Don’t Give Up”でよかった、と30年前よりも深く思っていた。