スピーカー・セッティングの定石(その5)
KEFのModel 107を知った時、正直にいえばKEFも迷走しはじめた……、そう思っていた。
KEFのModel 105は手に入れたいスピーカーのひとつだった。
Model 105の音は、私にとっては、
熊本のオーディオ店で瀬川先生が調整された音が、その音そのものとして記憶している。
このときのことは、以前書いている。
KEFのmodel 105を、
瀬川先生は《敬愛してやまないレイモンド・クックのスピーカー設計理論の集大成》とされている。
(ステレオサウンド 47号より)
まさしく、そういう音でModel 105は鳴っていたし、
それゆえにModel 107のスタイルを見た時に、なぜ……とおもった。
この「なぜ」は、迷走しはじめた……と思えたKEFに対してのものだった。
でも、ここで本来すべきだったのは、自分に対して「なぜ」を向けることだった。
つまりなぜKEFはModel 107を出したのか。
中高域に関してはModel 105のスタイルを継承しつつも、
ウーファーに関しては、いままでKEFが手がけてこなかったスタイルをとっていることに対して、
その理由を考えなかったことを、いまごろ反省している。
Model 105がレイモンド・クックのスピーカー設計理論の集大成であるならば、
Model 107もレイモンド・クックのスピーカー設計理論の集大成として捉えた上での「なぜ」と考えると、
Model 105で中高域のサブエンクロージュアが上下だけでなく左右にも可動する理由が、見えてくる。