バスレフ考(その3)
瀬川先生は、
《エンクロージュア自体では共振のできることを意図的に避けることが、
聴感上の低音を自然にするひとつの手段ではないかと思う》とされている。
クリティカルな設計のバスレフ型のインピーダンス特性は、
良く知られるようにピークがふたつできる。
エンクロージュアの容積が小さすぎ、もしくはポートが短すぎると、
ふたつの山は高域へとスライドし、ふたつの山の高さも同じではなくなり、
高い周波数のピークが大きく、低い方のピークは抑えられる。
エンクロージュアの容積が大きすぎ、もしくはポートが長すぎると、
低い周波数へとスライドする。山の高さはふたつとも低くなり、
低いほうのピークはかなり抑えられている。
バスレフ型では容積が同じで、ポートが短いと低域がやや盛り上り、
適切なポートの長さよりも減衰し始める周波数が高くなる。
反対に長すぎると減衰がはじまる周波数はもっとも高く、しかも段がつく周波数特性となる。
バスレフポートが同じで内容積を変化させた場合も、ほぼ同じ変化をする。
つまり内容積を大きくし、バスレフポートを長くするということは、
瀬川先生も書かれているように、
《バスレフの二つの共振の山のうち、高い方をできるだけおさえ、
低い方を可聴周波数限界近くまで下げるという考え方が、
わたくしの実験では(この例にかぎらず)概して好ましかった》ということになる。
だから瀬川先生は、こう続けられている。
《ともかく、バスレフは難しく考えなくてよい。
それよりも、むしろ積極的にミスチューニングしよう
(本当は、いったい何がミスなんだ?と聞きかえしたいのだが)。》
むしろ瀬川先生はエンクロージュアのプロポーション(寸法比)を重視されている。
エンクロージュアの幅・高さ・奥行きは各辺の比が、
互いに割り切れないような寸法比にすることをすすめられている。