Archive for 9月, 2014

Date: 9月 18th, 2014
Cate: SP10, Technics, 名器

名器、その解釈(Technics SP10の場合・その5)

原器という観点からテクニクスのオーディオ機器をふり返ってみると、
名器かどうかという観点にしばられていたときには見えてこなかったものがみえてくるものがある。

1977年にテクニクスはSU-A2というコントロールアンプを発表した。
外形寸法W45.0×H20.5×D57.4cm、重量38.5kg、消費電力240Wという、
プリメインアンプよりも大きな筐体のコントロールアンプだった。
価格は1600000円。このころマークレビンソンのLNP2Lは1280000円だった。
国産と輸入品ということを考えれば、もっとも高価なコントロールアンプでもあった。

SU-A2には、コントロールアンプとして考えられる機能はすべて搭載されている、
そう断言できるほど、各種機能が搭載されている。

SU-A2を最初見た時、テクニクスがヤマハのCIに対抗するコントロールアンプを出してきた。
そう思った。
CIも多機能のコントロールアンプを代表する存在だった。

CIが登場した時とSU-A2が登場した時とでは、状況が変化していた。
マークレビンソンのJC2の登場により、国産のコントロールアンプは薄型になり、
トーンコントロールやフィルターといった機能を省く設計のものが増えていた時期でもある。

そこにテクニクスが分厚く多機能なコントロールアンプを投入した。
このSU-A2を、私はヤマハのCIとの比較で捉えてしまった。

Date: 9月 18th, 2014
Cate: 素材

オーディオと金(その4)

金は金属だから電気を流せる。
ケーブルの素材となる。
ただ導体抵抗が銅よりも高いこと、それに高価なこともあって、純金製のケーブルはほとんどない。
デンマークのDual Connectから出ていたことは知っているが、それ以外にるのかは知らない。

それでもメーカーは試作品では金を使っている。
これも井上先生から聞いたことだが、あるメーカーがMC型カートリッジのコイルを金線で巻いた。

金でコイルを巻いた経験はないけれど、想像するに銅や銀よりも巻きにくいのではないか。

井上先生によれば、金コイルのカートリッジの音は、いい音だったそうだ。
この話も何度か聞いている。
つまり、それだけ井上先生のなかで印象に残っている音ということである。

井上先生は数多くの音を聴かれている。
その井上先生が金のことを話される。その意味をいまになって考えている。

金はオーディオにとって特別な素材である。

Date: 9月 18th, 2014
Cate: ジャーナリズム

Mac Peopleの休刊(その2)

友人は私よりも二、三年はやくMacを仕事に使っていた。
友人は録音スタジオで働いていて、そこに遊びに行くたびにMacをすすめられた。

とはいえ、あのころmacは高かった。
友人が仕事で使っていたIIciと外部ディスプレイ、その他いくつかの周辺機器を揃えるだけで、
かるく100万円はこえていた。それにアプリケーションも買わなければならない。

すぐに買えるわけがなかった。
それならば、と友人はmac関係の雑誌を読めとすすめる。
いつかMacを使うことになるから、そのためにも読んでおけ、と。

友人はMAC POWERをすすめた。
掌田津耶乃氏が書いている、のが理由だった。

MAC POWERが、だから最初に買ったMacの雑誌である。

そうやって買ったMAC POWERを最初から理解して読んでいたわけではない。
Macに関する知識はないに等しかったし、
友人がすすめる掌田氏の記事はhyperCardに関する記事だったから、Macがなければおもしろさは伝わってこない。

それでも伝わってくるものはあった。
特集記事を読み、連載記事を読み、読み進めていった。
巻末に近いところに、2ページ見開きの連載があった。
それがDesign Talkだった。

Date: 9月 17th, 2014
Cate: 素材

オーディオと金(その3)

金と振動の関係について、実際に耳で確かめられるのにSMEのトーンアームがあった。
3012-R Specialが好評だったため、SMEは3010-R、3009-Rを続けて出し、
さらに金メッキを施した3012-R Goldと3010-R Goldも続けて出した。

このGold仕様の製品が出ることは、製品が届く前から伝わっていた。
金メッキ? と私だけでなくほとんどの人が思っていた。

そんなとき、長島先生(だったと記憶している)が、
「金メッキといっても、日本と向うとではずいぶん違うから、想像しているような金メッキではないはず」
そんなことをいわれた。

実物はまさにそうだった。
イメージしていた金メッキのいやらしさは感じなかった。

3012-R Specialは持っていた。
欲しい気持はなかったといえばウソになる。でもあの時36万円だったはず。
手は出なかった。

この3012-R Goldは、オルトフォンのSPU Goldとペアで、Sound Connoisseurの表紙を飾っている。
この3012-R Goldは金メッキ以外は、どこも変更点はなかったはずだ。
だから通常の3012-R Specialと聴き比べれば、金の振動に対する効果が耳で確認できる。

まだハタチになる前だった、あのころは、良さは感じられても、無理としてまでも……、とは思わなかったが、
いま聴いてしまったら、どうなるかは、なんともいえない。
そういう、金ならではの魅力はあった。

Date: 9月 17th, 2014
Cate: 素材

オーディオと金(その2)

接点に使用した時の、それぞれの金属素材の特質を考えると、
AC電源関係の接点に金メッキをする意味は、いったいなんだろう、といいたくなる。

金メッキがされていると、それだけて高級そうに見える。
見えるから、それでいい、と満足できる人ならば金メッキのモノを購入すればいい。
だが現実にAC電源関係の接点に流れる電流値がどのくらいか計算すれば、
金メッキが、この部分にいかに不向きな接点材料であるからがわかる。

電気的にはそうなのだが、機械的に見た場合、
金はやわらかくひじょうに薄く伸ばせる素材であることはよく知られている。
金メッキを施すか施さないかで、その部分の振動モードは変化している、とはいえる。
そういうダンプ効果は認められるけれど、接点材料としてはどうか、ともう一度考えてほしいところだ。

金の振動を抑えることに関しては、以前、井上先生から興味深い話をきいている。
あるメーカーがシャーシーの試作を行った際に、
鉄ベースに銅下メッキをして、そのうえに金メッキをしたものと通常シャーシーとの比較試聴をされた話だった。

アンプの中身はまったく同じ。異るのはシャーシーの材質と処理。
これが驚くほどの音の差であり、鉄・銅・金のシャーシーの音の良さはほんとうによくて、
いまでも忘れられない、といったふうに話された。

しかもこの話は井上先生から何度もきいている。
それだけ井上先生の中に印象に残っている音だということでもある。

ただこのシャーシーは銅下メッキを施しているから、銅が金を吸収してしまうため、
かなりの量の金を使うことになり、コスト的に不採算で結局は市販品に採用されることはなかった。

Date: 9月 17th, 2014
Cate: 素材

オーディオと金(その1)

オーディオと金、といっても、金は(かね)ではなく、素材の金(gold)である。

オーディオ機器に金が採用されることになったのは、
RCAコネクターの金メッキが早かった。
それまでニッケルメッキだったRCAプラグとジャックが、一挙に金色になっていたのを憶えている。
ちょうど私がオーディオに興味を餅始めた時期とだいたいそれは重なっている。

この金メッキの流行りは日本から起っている。
当時の海外製のアンプは本国ではニッケルメッキなのに、
日本に輸入される製品は金メッキ仕様になっているモノもあった。
たとえばRFエンタープライゼスが輸入していたAGIのコントロールアンプ511もそうだった。

正規輸入品と並行輸入品はフロントパネルの色も違っていたが、
RCAジャックの色も違っていたのである。

なぜ金だったのか。
当時講読していた無線と実験に、興味深い記事(見開き2ページだった)が載った。
接点材料としての流せる電流値が表にまとめられていた。

なにかの専門書からの引用であったようだが、
確かに金は微小電流の流れる部分への使用は納得できる値が、その表にはあった。
30数年前のことだから値まではもう憶えいないが、
金は微小電流向きであり、銀は大電流向き、銅はその中間、
微小電流から大電流まで、という理想的な接点材料は水銀だった。

ことわっておくが、これは線材としての電流値ではなく、あくまでも接点材料としての値である。

Date: 9月 16th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その12)

ステレオサウンド、無線と実験、ラジオ技術を読みながら、初歩のラジオも講読していた時期がある。
初歩のラジオも、そのころはDCアンプの製作記事も載っていたし、真空管アンプの記事もあった。
そして初歩のラジオには、実体配線図が三つ折りで毎号ついていた。

この実体配線図は,いわば塗り絵であった。
読んでいたのは中学二年の時。
真空管アンプを製作しようにも、そんな予算(小遣い)はない。
作る予定などまったくないアンプの実体配線図のワイアリングを、色鉛筆で一本一本塗りわけていた。

お金がないから、こんなことをやっていた。
でも、そのおかげというか、伊藤先生のアンプに出合ってから、
今度は伊藤アンプの実体配線図を自分で描いた。

無線と実験の古い記事は写真が不鮮明でしかも小さすぎるから無理だったが、
サウンドボーイではカラー写真が載っていたし、
無線と実験もあとになってから、写真も鮮明になり、サイズも大きくなった。
実体配線図が描きやすくなった。

写真ではっきりと確認できなくとも、
真空管アンプは回路図と真空管の規格表があれば、どのフックアップワイアーがどこに接続されているのかは、
容易に判断できるし、回路図も必然的に頭にはいってくる。

掲載されているアンプの内部写真とまったく同じに絵によるワイアーをはわせていく。
描き終ったら、中学二年の時のように色鉛筆で塗っていく。

お金はほとんど必要としない。
やろうと思えば、ほとんどの人にできることだ。
これをやっていた。

Date: 9月 16th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その11)

何度も書いているように、私にとって真空管アンプとは伊藤先生のアンプが判断の根本にある。
プリント基板に頼らない手配線が必ずしもいい、とはいわない。

無線と実験、ラジオ技術になどに発表されている真空管アンプの製作記事を読むと、
なんともいえない気持になることもある。

高価で珍しい真空管を使っている。
内部の部品もそこそこのものを使っている。
けれど、絶望的にワイアリングが拙いアンプが、ときどきある。

真空管アンプを作りはじめたばかりの人の制作例ではなく、
その雑誌に長いこと記事を書いている人のアンプの内部がそうであると、
正直「またか……」と思ってしまう。

この人は、これまでにどれだけの数の真空管アンプを作ってきたのだろうか。
どうしても、そう思ってしまう。

数をこなせば上達するわけではない──、
まさしく、その見本となっている。

ただ漫然とアンプを、数だけ作っていたのでは悪い手癖が身についてしまうだけである。
それは身についてしまうと、残念なことに抜け難い。

そうなる前に気づくべきことに気づかずに、作ってきた人なのだろう。
伊藤先生とは対極にある真空管アンプである。

Date: 9月 15th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その10)

とにかく知人から、早く作ってほしい、とせかされていた。
だから知人と一緒に秋葉原に行き必要な部品を買い、そのまま知人宅に行き組み立てることになった。

部品点数も少ないから、それで困るわけではない。
回路図は頭にはいっている。
そんなに複雑な回路でもない。

あとは部品を眺めて大きさを把握して、おおよその位置にラグ板を配置していく。
そして部品を取り付け、フックアップワイアーで、
それぞれのラグ板、入出力端子、アッテネーターなどを接続していく。

ここの枝ぶりは、伊藤先生の流儀で、すこしの余裕の持たせてやっていく。
20年以上の前のことだから、製作時間がどのくらいかかったのかは正確に憶えていないが、
夜には完成した、このパッシヴのネットワークを使ってマルチアンプのシステムから音が出た。

後日、このパッシヴのネットワークの内部を、知人が井上先生に見せたらしい。
「よく出来ているじゃないか、いまメーカーのエンジニアでも、こういう配線ができる人はほとんどいない」
ということだった。

意外だった。
だからといって、私がメーカーのエンジニアよりも優れているというわけではない。
私はプリント基板、それも高周波を扱うものは無理である。
メーカーのエンジニアは、そこはプロである(はずだ)。

得手不得手が違う、という話なのだが、
それでも1990年くらいで、
すでにメーカーにフックアップワイアーによる配線をまともに出来る人がほとんどいない、という事実は、
アメリカ、ヨーロッパのガレージメーカーに求めるのも無理な話だと思わせた。

Date: 9月 15th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その9)

プリント基板でなければ成り立たない機器があるのはわかっている。
けれど部品点数が、半導体アンプにくらべて少ない真空管アンプでは、
しかも部品そのものもそれほど小さくない、ということも考え合わせれば、
なぜプリント基板を使うのだろう……、と疑問に感じる。

市販品の真空管アンプの中には、プリント基板に真空管のソケットを取り付けているものも少なくない。
そういうアンプにかぎって、プリント基板の固定もさほど考慮されていない。

以前のアメリカ製の真空管式のコントロールアンプに多く見受けられたのは、
フレキシブルな、といえるプリント基板にソケットをとりつけて、
この基板をゴムで、いちおうフローティングしている。

こういうつくりの真空管アンプを見ると、残念に思う。
しかも昔のアンプとは異り、トーンコントロールやその他の機能も持たないから、
内部の配線はずっと簡略化されているのだから、
もう少し気を使ってワイアリングをやってくれたら、どんなにいいアンプになっただろうか……、と思うからだ。

以前、知人に頼まれてパッシヴのクロスオーバーネットワークを作ったことがある。
ようするにコンデンサーと抵抗とアッテネーターといった受動素子だけによる、
減衰量-6dBのチャンネルデヴァイダーである。

市販のシャーシーにラグ板をいくつか取り付けて、部品、フックアップワイアーをハンダ付けしていく。
プリント基板は使わなかった。

ラグ板の端子にはそれぞれの部品のリード線が接触するようにからげてハンダ付け。
あくまでもラグ板は部品の固定のためである。

Date: 9月 14th, 2014
Cate: ジャーナリズム

Mac Peopleの休刊(その1)

漢字Talk7が出る一年ほど前からMacを使っている。
私にとって最初のMacはClassic II。OSは漢字Talk6だった。

これより少し前からMac関係の雑誌を読みはじめた。
1991年ごろからだろうか。
当時はMAC POWER、Mac Life、Mac World、Mac Japanがすでにあった。
すべて買っていた。
それから数年後、Mac User、日経Mac、Mac Fanなどが続いた。

MAC POWERの姉妹誌としてMac People、Mac Japanの姉妹誌としてBrosとActiveが出た。
これらすべてを買って読んでいた時期もある。

このころだったと記憶しているが、コンビニエンスストアにMAC POWERが売られていたこともある。

そのころよりもMacを含めてAppleの製品は売れている。
けれどMac関係の雑誌は、Mac PeopleとMac fanの二誌だけに減ってしまった。

20年の変化を読者としてみてきた。

今月末発売の号でMac Peopleが休刊になる。
Mac fanだけになる。

Mac PeopleはMAC POWERが休刊になってから、
いつのまにか誌面をリニューアルしてMAC POWERのようになっていた。
MAC POWERは、Mac関係の雑誌の中で、もっとも長く買いつづけていた。
だからといって、MAC POWERのようになったMac Peopleを買うことはなかった。

Design Talkがないからだった。

Date: 9月 14th, 2014
Cate: 測定

耳はふたつある(その1)

1977年ごろ、ポータブル型のスペクトラムアナライザーのIvieが登場し話題になった。
価格は100万円をこえていたように記憶している。

いま当時のIvieの製品のスペックをみれば、貧弱といえるが、当時はそうでもはなかった。
だから岡先生は購入された。

このころオーディオマニアが自分のリスニングルームの音響特性を測定することは、
まず機材を揃えることが大変だった。
いまはもう違う。
特性が保証されているマイクロフォンがあれば、
以前とは比較にならないほど誰でもできるように思えるくらいになっている。

とはいえ実際にやってみると、マイクロフォンを立てる位置をどうするのか。
これが意外と難しい。
聴取位置に立てればいいじゃないか、と思うだろうが、
実際に聴取位置で測定した結果と聴感とは必ずしも一致しないことがある。

それにマイクロフォンの位置をわずか動かしただけでも測定結果は変ってくる。
聴取位置(頭)をほんのわずか動いても、測定結果ほどの音の違いは生じないにも関わらずだ。

なぜなのか。
答は耳はふたつあるからだ。
左右に、10数cm以上離れて耳はある。

音響測定に使うマイクロフォンは一本である。

Date: 9月 14th, 2014
Cate: デザイン

TDK MA-Rというデザイン(その3)

ステレオサウンド 54号でTDKのMA-Rをセットした広告を出したパイオニアは、
57号では自社ブランドのカセットテープを発売していたこともあって、MA-Rではなくなっている。

54号と57号でのCT-A1の広告で使われている写真はまたく同じアングルによるもので、
違いはCT-A1にセットされているカセットテープの違いだけ。
しかもCT-A1は、通常のカセットデッキとは違い、カセットテープをユーザーが直に装着するようになっている。

パイオニアがフルオープンローディング方式と呼ぶ、この機構にはだから開閉ボタンがない。
垂直にカセットテープを装着するデッキでは、カセットテープの収納ケースの同じようになっている。
開閉ボタン押せば、フタが開く。下部を支点にして上部が開くから斜めにカセットテープを挿入する。
そしてこのフタを閉じればいい。

このフタがあることで通常のカセットデッキでは、
装着しているカセットテープの全面が見えるわけではない。
多少なりともカセットテープの一部が隠れてしまう。

CT-A1では、そんなフタが存在しないから、カセットテープを視覚的に隠すものは存在しない。
こういうカセットデッキはCT-A1と同じパイオニアのCT710、CT910、ダイヤトーンのM-T01ぐらいか。

そういうカセットデッキであるCT-A1だから、ステレオサウンド 54号と57号の広告の写真を比較すると、
カセットテープのデザインの重要性をはっきりと見る者に意識させる。

Date: 9月 13th, 2014
Cate: SP10, Technics, 名器

名器、その解釈(Technics SP10の場合・その4)

パイオニアから七月にアナログプレーヤーが発表になった。
PLX1000だ。

誰が見ても、テクニクスのSL1200だ。
ブランドと型番の表示を隠してしまえば、誰もがSL1200と思うことだろう。

SL1200はMK6で製造が終了した。
現行製品ではないから、とはいうものの、オーディオ専業メーカーとしてスタートしたパイオニアが、
こういう製品を恥ずかしげもなく出してしまうが意外だったが、
何かの記事で、ユーザーインターフェイスを変えないため、あえてこういうデザインにした、とあった。

テクニクスのSL1200は、オーディオマニアにはそれほど話題になった機種ではなかった。
最初のSL1200が登場し、MK2の登場までの間、一時的に製造中止になっていた、と記憶している。
ステレオサウンドでも、ほとんど取り上げられていない。
ベストバイでも、最初のころはSL1200は登場していなかった。

そのSL1200が、ディスクジョッキーのあいだで評価が高い、ということを聞くようになったのはいつごろだったか。
ほとんど憶えていない。SL1200がねぇ……、というふうに思ったことだけは憶えている。

結局、そのSL1200がテクニクスのアナログプレーヤーとして最後まで製造されていた。
そんなこともあってSL1200を名器として紹介する記事もある。

私は個人的にSL1200が名器とは思わない。
SL1200はディスクジョッキーにとっての標準原器であったと思っている。
そう考えれば、パイオニアがPLX1000においてSL1200の操作性と同じにしたことは、理解できないわけではない。

Date: 9月 13th, 2014
Cate: デザイン

TDK MA-Rというデザイン(その2)

カセットテープ、カセットデッキの最盛期は、メタルテープが登場し、
いくつかのメーカーからドルビー以外のノイズリダクションが搭載されるようになった1980年あたりだろう。

このころ各社からカセットテープが発売されていた。
1980年版のHI-FI STEREO GUIDEには、アイワ、アカイ、オーレックス、クラリオン、デンオン、ダイヤトーン、
フジフイルム、ジュエルトーン、Lo-D、ラックス、マクセル、ナガオカ、ナカミチ、オットー、サンヨー、シャープ、
ソニー、TDK、テクニクス、ビクター、アンペックス、BASF、フィリップス、スコッチのブランドが並んでいる。

いくつかのブランドはOEMであるが、これらのブランドが数種類のカセットテープを発売していたし、
カセットデッキを製造しているブランドもある。

そういったブランドは、当然だが、自社のカセットデッキの広告、カタログには、
同じブランドのカセットテープを使う。

カセットデッキの広告、カタログに掲載されている製品写真は、
多くがカセットテープがセットされているものである。
同ブランドのカセットテープがあるのに、
他社製のカセットテープをセットして広告に使うことは、それまでなかった。

TDKのMA-Rの広告がステレオサウンドに掲載されたのが51号、
九ヵ月後の54号のパイオニアとアイワの広告の写真には、MA-Rがセットされたカセットデッキがある。
パイオニアがCT-A1、アイワはAD-F55Mである。

パイオニアは1981年ごろから自社ブランドのカセットテープを発売し始めるから、
54号(1980年春)の時点では他社製のカセットテープを使うのもわかる。
けれどアイワはメタルテープの発売は1981年ごろからだから、
54号の広告時点では自社ブランドのメタルテープを持たなかったとはいえ、他社製のテープを使っている。
それもひと目でTDKのMA-Rとわかるカセットテープを使っている。