オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その9)
プリント基板でなければ成り立たない機器があるのはわかっている。
けれど部品点数が、半導体アンプにくらべて少ない真空管アンプでは、
しかも部品そのものもそれほど小さくない、ということも考え合わせれば、
なぜプリント基板を使うのだろう……、と疑問に感じる。
市販品の真空管アンプの中には、プリント基板に真空管のソケットを取り付けているものも少なくない。
そういうアンプにかぎって、プリント基板の固定もさほど考慮されていない。
以前のアメリカ製の真空管式のコントロールアンプに多く見受けられたのは、
フレキシブルな、といえるプリント基板にソケットをとりつけて、
この基板をゴムで、いちおうフローティングしている。
こういうつくりの真空管アンプを見ると、残念に思う。
しかも昔のアンプとは異り、トーンコントロールやその他の機能も持たないから、
内部の配線はずっと簡略化されているのだから、
もう少し気を使ってワイアリングをやってくれたら、どんなにいいアンプになっただろうか……、と思うからだ。
以前、知人に頼まれてパッシヴのクロスオーバーネットワークを作ったことがある。
ようするにコンデンサーと抵抗とアッテネーターといった受動素子だけによる、
減衰量-6dBのチャンネルデヴァイダーである。
市販のシャーシーにラグ板をいくつか取り付けて、部品、フックアップワイアーをハンダ付けしていく。
プリント基板は使わなかった。
ラグ板の端子にはそれぞれの部品のリード線が接触するようにからげてハンダ付け。
あくまでもラグ板は部品の固定のためである。