オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その11)
何度も書いているように、私にとって真空管アンプとは伊藤先生のアンプが判断の根本にある。
プリント基板に頼らない手配線が必ずしもいい、とはいわない。
無線と実験、ラジオ技術になどに発表されている真空管アンプの製作記事を読むと、
なんともいえない気持になることもある。
高価で珍しい真空管を使っている。
内部の部品もそこそこのものを使っている。
けれど、絶望的にワイアリングが拙いアンプが、ときどきある。
真空管アンプを作りはじめたばかりの人の制作例ではなく、
その雑誌に長いこと記事を書いている人のアンプの内部がそうであると、
正直「またか……」と思ってしまう。
この人は、これまでにどれだけの数の真空管アンプを作ってきたのだろうか。
どうしても、そう思ってしまう。
数をこなせば上達するわけではない──、
まさしく、その見本となっている。
ただ漫然とアンプを、数だけ作っていたのでは悪い手癖が身についてしまうだけである。
それは身についてしまうと、残念なことに抜け難い。
そうなる前に気づくべきことに気づかずに、作ってきた人なのだろう。
伊藤先生とは対極にある真空管アンプである。