Archive for 1月, 2011

Date: 1月 10th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その7)

オーディオ機器のデザインについて語る時、ナグラのCDプレーヤーは話題になることも多いと思う。
それも、いいデザインのモノとして、話題にのぼることだろう。

でも、クランパーのことも、デザインのこととして語られべきこと、だと私は考えている。

あのクランパーの精度の悪さは、使い手をひじょうにイライラさせる。
いちど気にしたら、つねに頭のなかにこびりついて離れにくくなる。

このクランパーが改良されていないかぎり、ナグラのCDプレーヤーを、優れたデザインのモノとは呼べない。

Date: 1月 9th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その6)

MPAをパワーアンプにもってくるのなら、コントロールアンプもCDプレーヤーで統一しよう、
とはまったく考えていない。

コントロールアンプのPL-Lは、実は聴いたことがない。
だから、実際に聴いてみると、さすがにナグラ同士の組合せ! ということになるかもこともあるだろうけど、
ただ直感的に、MPAに、私が感じている良さを、抽き出す方向とは、すこし違う気がする。

ではCDプレーヤーは、というと、以前、数時間、じっくりと触ったことがある。
音については、不満はない。

このCDプレーヤーを選ばない理由は、別のところにある。

ナグラのCDプレーヤーはピックアップ・メカニズム全体にトレイに一体になっている。

ピックアップにはフィリップスのCD-Pro2Mを使っているとのことで、
そのことにも不満は、特にない。メカニズムが出てくるのを見ているのも楽しい。
たしかに、精度が良さそうな感じは、見ている分には伝わってくる。

ナグラの輸入元である太陽インターナショナルのサイトには、
「トレイ上のクランプはセンタリングをきっちり出すため、ナグラにより切削されたもの」とある。

このクランプとは、ピックアップ・メカニズムのセンタースピンドルのことだろう。

ナグラのCDプレーヤーには、一般的なCDプレーヤーにあるクランプ用のアームはない。
メカニズムが出てきて、そこにディスクを置いて、磁力で吸いつくクランパーをユーザーが直に置く。

このクランパーの精度が、CDプレーヤーの全体の良さを壊してしまうほど、よくない。
たまたま私がさわっていた機種だけ、のこととは思えない。
おそらくすべての共通していることなのだろうが、実際において試しにと動かしてみると、
意外なほど動くのに驚く。

これが非常に軽いクランパーであれば、ディスクに回転に伴っての影響はごくわずかなのだろうが、
実際にはそこそこの重量がある。これがなにも意識せずに安易に置いてしまったら、
場合によっては、かなり偏心した状態でディスクとともに高速回転することになる。

意識的に大きく変身させたときの音と、注意深く、できるだけ中心にもってくるようにした時では、
残念なことに、当然のことでもあるが、音は微妙とはいいがたい差を聴かせる。

しかもできるだけ中心にもってくるようにするのが、意外と面倒なのだ。
これをもし自分のモノとして手に入れた日には、ディスクをかけかえていくことが億劫になるだろう。

クランパーの、そんなわずかな偏心による音の違いなど、気にしない、という人ならばいいだろう。
でも、いちど、その差を耳にしてしまうと、なかなか、そうは言い切れなくなる。

ナグラのCDプレーヤーが、価格の廉いものであれば、目をつぶろう、とも思うかもしれない。
でも、非常に高価なモノだ。しかも精度の高さを誇っている製品でもある。

CDプレーヤーは、日に何度も直接ふれるものである。
それが、ほんのわずかなことで、使い手にストレスをあたえるつくりになっているのは、
なんとも残念なことであり、クランパーを作りかえることだけですることだから、
なんとかしてほしいと思う次第だ。

もっとも私がナグラのCDプレーヤーに触ったのは、もう2年以上前のことだから、
最近の製品では改良されている可能性もある。

Date: 1月 8th, 2011
Cate: 「介在」

オーディオの「介在」こそ(その5)

土に親しむ時期がなく育ってきた人たちなのだろうか、
いま土を、なにか汚いもの、として受けとめている人が増えつつあるという話をつい最近聞いて、
あまりにも意外なことで、驚いてしまった。

土を汚いものとして受けとめている人たちは、その土で育つ作物に対して、どう思っているのか。
野菜や果物をまったく口にしないというのだろうか。

これから先、10年後、20年後……、どのくらい先になるか見当はつかないけれど、
土にまったく触れずに育っていく人たちが出てくるのかもしれない。

土を毛嫌いする人、土に触れずにきた人、
そういう人たちがオーディオ機器の開発に携わってくることだってあるだろう。
スピーカーの開発にも携わってくるだろう、そういう人たちが──。

そういう時がくるのはまだまだ先だろうから、
それまでにも、スピーカーの技術は進歩していくだろう。

いったい、そのときスピーカーの音は、どうなっているのだろうか。

Date: 1月 7th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その5)

ナグラのMPAを選ぶにあたって、あえてコントロールパネルつきのMPAにしたいというのも、
この色温度に関係している。

あり(プリメイン仕様)となし(パワーアンプ仕様)を比較したことはない。
なしの方を聴いたことはない。
だから、あくまでも想像のなかでのことだが、コントロールパネルつきのほうが、
音の色温度が、もうすこし高くなるんじゃないか、と感じている。

実際には直接比較してみるしかないわけだが、
すでに製造中止になっているMPAだから、ここは直感にしたがうしかない。

プリメイン仕様のMPAならば、コントロールアンプは必要としない。
でも、なにかを選んで使いたい。

その理由はひとつが、MPAの空冷ファンの存在だ。
フロントパネルの中央に取りつけられている。
常時回転しているわけでなく、温度センサーで動作する仕様だが、
それでもいったん回りはじめると、意外に大きな動作音に驚く。

正直、ファンの音は苦手だ。
できるだけ聞こえないようにして、すこし離れたところにでも置きたい。
そのためにも、コントロールアンプを使いたい、という気持がある。

Date: 1月 7th, 2011
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(その8・続々続補足)

あえて最初はモノーラルで調整することについて、もうすこし補足しておこう。

このとき使うプログラムソースは、編成の少ないものがいい、と思う。
そしていろいろなヴァリエーションをもたせて、枚数を用意する。

たとえば男の人の声のもの、女声のもの、それからチェロのソロ、ヴァイオリン・ソロなどなど。

モノーラルで再生するわけだから、
左右のスピーカーの中央にそれぞれ歌い手だったり、チェリストがぴたっと定位するはずだが、
現実には帯域によってずれることがある。

これをグラフィックイコライザーで調整してみると、
定位がずれているところを補整するために、その部分がどの周波数あたりなのか、
それをツマミを上下させながら探し出していくことをくり返していく。
そうやっていくうちに、たとえば男の人の声のどのあたりが、
どのへんの周波数からどこまでなのか、そういったことが、やっていくうちにつかめてくる。

音楽における中域とオーディオ帯域における中域とが、周波数的にはけっこう違うこともわかってくる。

イコライザーへの馴れ方は人それぞれだから、この方法よりもいい方法が、人によってはあるだろう。
でも、いちどグラフィックイコライザーに試してみて諦めてしまった人は、ぜひモノーラルでやることで、
もういちど挑戦してほしいと思う。

最終的にグラフィックイコライザーを採用するかしないか、よりも、
グラフィックイコライザーにとり組むことで、音の正体、というものが見えはじめてくる、と思う。

Date: 1月 7th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その16)

国産アンプで、磁性体を徹底的に取り除こうとしたのはソニー/エスプリのTA-E901、TA-E900があげられる。

1982年、このころの国産メーカーのオーディオ雑誌の広告は、いまとは違って、文字がびっしりあった。
それをしっかり読むことでも、オーディオの勉強になることも、けっこうあった。

ソニーのこのころの広告もそうだ。
中島平太郎氏が署名入りの文章が載ったこともあるし、
設計者自ら、広告の文章を書いているものもいくつもある。

たとえばステレオサウンド 63号に上記、ふたつのコントロールアンプの広告が載っている。
設計者の樋口正氏が書かれている。
設計者が語るESPRITの「エスプリ」、という題名がついている。

そこに、TA-E901、TA-E900からいかにして磁性体を排除していったかについての内容で、
その手法は、正直、いまでも役に立つものだと思う。

磁性体かどうかを判断するのに磁石を使う。くっつけば磁性体。くっつかなければ非磁性体。
でもなかには、これでは検知できないミクロンオーダーの鉄分があって、
そんなわずかな量の鉄分であっても、確実に音に影響を与える、とソニーの広告にはある。

そんなごくごくごわずかな量の鉄分を検知するために、0.1gのサマリウムコバルトマグネットを、
女性の髪の毛に結びつけ、磁気検出計として使った、とある。

少しでも敏感に反応するために、できるだけ細く、しなやかで長い髪の持ち主探しからはじまった、
その検出計は、わずかな鉄分が含まれているだけですーっと吸いつく、そうだ。

その検出計がある部品(抵抗)に反応した。
でもこの抵抗を分解してみても、使用材質に磁性体はない。
それでも検出計が反応するわけだから、
さらに調べていくと、塗料に磁性体が含まれていたことを発見できた、とのことだ。

これはいまでも役に立つ手法だろう。

こういう情報が得られたのにくらべると、いまの広告は、いい悪いは措いとくしても、
なにかものたりなさを感じてしまう……のは、こちらが歳をとったということだけではないはずだ。

Date: 1月 6th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その3)

ときどき耳にするのが、スーパーウーファーを加えたのはいいけれども、
スーパーウーファーの鳴りを目立たせないようにレベル調整をしていって、
どのくらいのレベルで鳴っているのか確かめたくて、スーパーウーファーだけを鳴らしてみたら、
まったく鳴っていなかった……、
スーパーウーファーの電源を落としても、まったく音は変らなかった(つまり鳴っていなかった)……という話だ。

日本人は、……というよりも、日本のオーディオマニアの中には、というべきか、
低音に対して臆病な人が、どうも少なからずいらっしゃる気がする。

低音を出すことは、知的な行為ではない、みたいにとらえられているような気もする。

野放図な低音が、それこそとめどなくドバーッと、つねに鳴りっぱなしだったら困るけれど、
低音はまず出さなければ、始まらない。最初は多少質の低い低音だとしても、まず出すこと。

よく、そんな低音だったら、出さない方が、ずっと透明感のある音になる、ということを口にするひとがある。
はたしてそうだろうか。
それは、ほんとうに透明感(瀬川先生がときおり使われる澄明感、こちらがよりぴったりだ)のある音だろうか。

とにかく調整していったら、スーパーウーファーが鳴っていなかった、そういう失敗をしないためにも、
あるところからはメインスピーカーのレベルで、全体のバランスを整えていったほうがいい。

スーパーウーファーの場合、ときには受持帯域は2オクターヴ以下ということだってある。
それでも、低音は音楽におけるベースである。そのベースの上に構築されるものとしてとらえるのであれば、
メインスピーカーのレベルを調整する、ということを、いちど試してほしい。

スーパーウーファーの追加のために、
専用のエレクトロニッククロスオーバーネットワークを用意したのであれば、そのレベル調整を使えばいいが、
たとえば私のようにSPD-SW1600的なウーファーの場合、
エレクトロニッククロスオーバーネットワークは要らない。

そのかわり、メインスピーカーのレベルを調整するとなると、
メインスピーカー用のパワーアンプには入力レベル調整(ボリュウム・コントロール)がいる。

Date: 1月 6th, 2011
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(その25・補足)

岩崎先生が「対決」ということばを使われるのと、ジャズを聴かれるのは、
絶対に引き剥すことのできない関係である。

瀬川先生が、ステレオサウンド 43号に書かれた、「故 岩崎千明氏を偲んで」で、
スイングジャーナル主催の、サンスイの新宿のショールームでおこなわれた、
菅野、岩崎、瀬川の三氏による鼎談のことについてふれられている。

「すでに闘病生活中で、そのときさえ病院から抜け出してこられたのだった」とある。

この鼎談が掲載されているのが、スイングジャーナルから出た〝モダン・ジャズ読本 ’77〟のなかの
「理想のジャズ・サウンドを追求する」である。

そこで岩崎先生は語られている。
「ぼくのように60年安保の時代にジャズを聴いた人間は、ジャズをひとつのレジスタンスの音楽として、非常に闘争的な音楽と考えるわけなんです。」

瀬川先生も語られている。
「ジャズに親しんだのはほんのわずかな時期なんです。ちょうど60年安保の頃、デザインの勉強をしていまして、あの頃はデザインを勉強する者はジャズを聴かなくちゃダメだという風潮がありましてネ。」

60年安保という時代の空気とジャズ──。

Date: 1月 5th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その2)

スーパーウーファーを、メインスピーカーにつけ加えたときのレベル設定に関しては、
たいていメインスピーカーのレベルは固定のまま、
スーパーウーファー側のレベルをいじることが圧倒的に多いだろう。

ある程度のバランスにするまでなら、それでもいいと思う。
とにかく大まかなレベル設定がすんだら、スーパーウーファー側のレベルはそのままで、
メインスピーカー側のレベルを変えることで、バランスを追い込む方が、私はいいと思う。

私はスーパーウーファーにSPD-SW1600を使っている。
これには入力レベルと出力レベルの両方をそれぞれ調整できる。

入力レベルには3つのLED(緑、黄、赤)があり、取扱説明書によれば、常時緑が点灯し、
フォルティッシモにおいて赤が点滅するように調整しろ、とある。
そしてSPD-SW1600の全体のレベルは出力レベルのツマミで調整する。

だから、よく聴く数枚のディスクを、ふだん聴く音量で入力レベルをまず調整し、
メインスピーカーに対してのバランスを出力レベルのツマミで調整していく。
これでかなりのところまで追い込む。

そのあとはしばらくいじることなく聴き続ける期間をとる。
それは一週間であったり、一ヵ月であったり、人によってそのへんは変ってくるだろう。

とくに大きな問題が生じなければ、そういう期間をはさんだあとで、
さらにメインスピーカーとのバランスを追い込む。
このときはSPD-SW1600の出力レベルのツマミをいじってもいいわけだし、
たぶんSPD-SW1600的な構成のウーファーを使われる人ならば、そうしてしまう。

でも、ここからはできればメインスピーカー側のレベルを変えることで、
全体のバランスの細かい調整をしていく。
そのためにはメインスピーカーを鳴らすパワーアンプに、入力レベル調整がついていた方がいい。

Date: 1月 5th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その4)

小学校の理科の時間にならったことだと記憶しているけれど、炎の色と温度について、である。

わかりきったことを書くことになるが、熱さ、暖かさを感じさせる色、つまり赤や橙色の炎よりも、
冷たさに通じる感じのある青色の炎のほうが、温度は高い。

電灯にしても、いわゆる電球色は暖かみを感じるが、螢光灯の青白い光には、冷たく寒々しいものと感じる。

けれど、これも色温度でいえば、暖かみを感じさせる橙色の光は低く、螢光灯の青白い光の色は高い。
白熱電球の一般的な色温度は2500K、螢光灯は5000Kである。

この色温度の違いは、部屋の雰囲気までを変える。
螢光灯のもとで映える色と白熱電球で映える色とは違う。
色温度が高いほど、寒色系の色合いを引き出す。

そして人は色温度が高いもとでは活動的になり、低いところではくつろぎ、落ちつきを感じる、とされている。

たとえば、熱い音、といっても、その温度には高低がある。
音温度、とでも呼ぼうか。

ナグラのMPAの音の熱さは、色温度の高い光のような気がする。
ほんとうは断言したいところが、なにせMPAを聴いた時間は、ごく短い時間だったので……。

俗にいわれる、真空管アンプの暖かい音は、色温度の低い音、ともいえる。
それは白熱電球的でもあるわけだから、くつろぎ、なごめる。
もっとも真空管アンプといっても、より色温度の高い音を聴かせるものを、かなりの数ある。
だから、あくまでも、なんとなく一般的にイメージされている真空管アンプの音について、である。

MPAの色温度の高い音は、聴き手の心を、より活動的にしてくれる、といえないだろうか。
色温度の低い音でくつろいでいては、対決はできない。

対決していくには、色温度の高い、青白い炎のMPAが、だからロックウッドには合う、と思っている。

Date: 1月 4th, 2011
Cate: 「介在」

オーディオの「介在」こそ(その4)

風土、ということばは、「風」と「土」からなっている。

風土、ということばには、そこに住むひとの慣習や文化に影響を及ぼす気候、地形、地質など、と辞書にはある。

土地によって土の性質は違う。だから、その土地ごとの特産物がある。
土の色も違えば、粘度も違う。
その土が、舗装される面積が増えることで、表面には露出しなくなりつつある。

都心でマンション住まいの方ならば、会社にいって帰ってくる間にいちども土を踏むことなく一日がおわる、
というひとは少なくないと思う。

そして都心では高層ビルが乱立している。

風も、土同様、その地域地域での独特の「風」であるはず。
それが巨大な人工物によって通り道を塞がれ、風と密接な関係にあるであろう土も舗装されつつある。
そのことによって、それぞれの国、土地に吹いていた風の性質が、
どこもかしこも似通ってきているのかもしれない。

実はこのことが、各国のスピーカーの音から、ある種の個性が稀薄になりつつある原因なのかもしれない。

Date: 1月 3rd, 2011
Cate: 情景, 言葉

情報・情景・情操(その3)

情報量を増やしていく、しかも忠実に伝達していこうとする。

そのための手段として、デジタルでは、CDの44.1kHz/16ビットよりも、
もっと高いサンプリング周波数、
18ビット、24ビット、32ビット……とハイサンプリング・ハイビットの方向がある。
SACDという方向もある。

こういった情報量の増大に対応するために、再生側のオーディオ機器では、より高いSN比、
より広いダイナミックレンジ、周波数特性など、基本特性の拡大が要求されていく。

この方向の追求に限界はないのだろうか。
少なくとも現在の2チャンネルという制約の中でやっていくのであれば、
どこかで大きな壁にぶちあたることになるかもしれない。

もうひとつ、拡大する情報量に対応する手段として昔からあるのが、伝送系を増やすことである。

モノーラルよりステレオ(2チャンネル)、2チャンネル・ステレオよりは4チャンネル・ステレオと、
伝送系の数が増えていくことで、ひとつひとつの伝送系をとおる情報量は、それまでと同じであったとしても、
システム全体としての伝達できる情報量は確実に増していく。

これから先、デジタルの記録密度がもっと高まっていく。
そうすれば、いままで以上のハイサンプリング、ハイビットで、
12チャンネル、16チャンネル再生のための情報量もなんなく聴き手のものに届けられることになるだろう。

これは音楽の聴き手にとって、理想に近づいていくことなのだろうか。

Date: 1月 3rd, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その3)

けっこう前にも書いたことだが、
こういう机上の組合せをつくっていくうえでは、以前ステレオサウンドから出ていたHi-Fi Stereo Guideが重宝する。
ページをぱらぱらめくっていくと、あっ、これだ! というモノが見つかる。

そのかわりとなるものが、いまは残念ながらない。
ステレオサウンドの冬号はグランプリとベストバイ(今回からベストバリューに変更)が特集だけど、
Hi-Fi Stereo Guideのかわりにはならない。
なぜならないのかについて書いていくと、また大きく脱線してしまうのが割愛する。

Hi-Fi Stereo Guideはない。ステレオサウンドも、ここ数年まったく購入していない。
だから、アンプ選びは記憶だけに頼るしかない。

誰もが思いつきそうなアンプは、やはり浮かぶ。それら消去していくことで、意外なモノが浮かんでくる。
あっ、これだ! と感じたのは、ナグラのMPAである。
4、5年前に製造中止になったプリメインアンプ/パワーアンプだ。

MPAならば、 ロックウッドのMajor Geminiにぴったり合うはずだ。
Majorの引締った音の表情をゆるめることなく、熱く、無我夢中で対決できる音がしそうな気がする。

MPAにはコントロールパネルを装備したプリメインアンプとしての形態と、
なしのパワーアンプとしての形態がある。

いまは中古でしか入手できないから、どちらか手に入った方、ということになるが、
それでも私は、プリメインアンプとしてのMPAにしたい。

もちろんコントロールアンプは、別途用意しても、だ。

Date: 1月 2nd, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その2)

Major Geminiは、Majorをベースに、15インチ・モニターユニットを2本並列にしたものだ。
これは実物を見たこともない。

瀬川先生がステレオサウンド 43号に書かれている。
     *
1本入りの引締って密度の高い高品位の音質に加えて、音の腰が強く充実感が増して、ことにハイパワードライブではこれがタンノイのユニットか、と驚嘆するほどの音圧で聴き手を圧倒する。
     *
スピーカーシステムは、これしかないだろう。そう思える。

タンノイユニットは縦に二発配置されている。それも、たしか斜めになっていたと記憶している。
ウーファーはダブルになり放射面積が増える。これはいいとしても、同軸型ユニットだけに、
中高域も2箇所から音が放射される。それも15インチユニットだけに、
二つの中高域ユニット間は当然離れることになる。
そのことによるデメリットがどう出るのか。

でも、きっとそんなことはどうでもいいと思わせるほどの魅力をMajor Geminiは持っているであろう。

それにいま思うと、タンノイ・オリジナルと比較して、音の硬度がロックウッドは増している感じがする。
これを活かしてくれるパワーアンプを選びたい、と思っていたら、風呂から上がる時間が長くなってしまった。

あれでもない、これでもない、ひとつずつ消去しながら、ひらめくのを待っていた。

Date: 1月 2nd, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その1)

正月だからというわけでもないが、
入浴中に、ふと、もしジャズ喫茶の店主だった……なんてことをあれこれ夢想していた。

だいたいクラシックが大半で、私の手もとにあるジャズのCDは、クラシックの10分の1くらいしかない。
それなのに、というか、だから、これから先絶対にあり得ないであろうシチュエーション、
ジャズ喫茶の店主について、素人丸出しで、どんなシステムを用意するかを考えていた。

あるジャズ・レコードに対してつよい思い入れを持ってシステムを組む、わけではない。
ただひたすら大音量で鳴らす、できれば岩崎先生のように対決する、そのくらいの音量で鳴らすことだけを考える。

湯につかっているあいだの50分くらい、考えていた。
とにかくスピーカーシステムを決める。
JBL、アルテック、エレクトロボイスなどは、あえて選択しない。
だからといって、ウィルソン・オーディオ、アバロン、ティールといったスピーカーでもない。

ここはあえてタンノイでいきたい。
とくに理由はない。そう思っただけである。
タンノイの何を選ぶのか。現行機種の中から、という条件ならばCanterbury 15しかない。
でもCanterbury 15の雰囲気は、私が勝手にイメージしているジャズ喫茶の場にはそぐわない。

ジャズ喫茶、大音量、このふたつの言葉から浮かんでくるタンノイは、ロックウッドた。
タンノイのユニットを採用した、スタジオモニターを製造したイギリスのロックウッドのMajorだ。

タンノイの15インチ・モニターを、ひじょうにがっしりした造りの、
特殊なバスレフ型エンクロージュアに収めたもの。

とおい昔に、一度だけ聴く機会があった。といってもごくみじかい時間であったけれど、
そのころのタンノイのスピーカー(アーデン)とは、まるっきり印象の異る、
密度の濃さはもともとタンノイが有していたものだが、全体にぴしっと引き締ったおかげで、
より密度が濃くなったように感じたのを憶えている。

とにかく、これが同じタンノイのユニットを使ったスピーカーなのか、とは聴いた誰もが思うはずだ。
だから、これにする。しかもMajor Geminiにする。