Archive for 11月, 2009

Date: 11月 23rd, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その13)

鉄は磁性体である。
だから、スピーカーやカートリッジなどの磁気回路、電源トランスや信号系のトランスの鉄芯、
そういった動作に必要なもの以外の磁性体をなくす方向できている。

シャーシーはもちろんネジの一本まで徹底して磁性体を排除する人にとっては、
スピーカーユニットのフレームといえど、なにもわざわざ鉄を使うこともなかろうに、と思われることだろう。

信号系からひとつずつ磁性体を排除していくことを否定しはしないが、たとえば真空管のピン、
トランジスターやFETのリード線なども、意外と磁性体が使われているものだ。

すべての部品を特註でもしないかぎり、磁性体を信号系から完全に排除することは無理であろう。

ならば鉄には鉄ならではのよさがあるはずで、それを積極的に利用しようという考えも、
一方にあってもいいはずだ。

Date: 11月 22nd, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その12)

コイルは、電流量を変化させまいとする働きをもつ。
信号が流れていない状態から流そうとすると、それまでの状態を維持しようとする。流さないように働く。
反対に常時信号が流れている状態で、信号をとめてしまうと、やはりそれまでの状態を維持しようとする。

この性質をチョーク・インプット方式は利用している。
同じチョーク使用の電源でも、コンデンサー・インプット方式だとチョークコイルにかかる電圧は、
コンデンサーによって平滑された、ほぼ直流といっていいものだから、働きの違いが生じる。

この項の(その1)で書いたように、電流波形に着目すれば、チョーク・インプット方式を採用したくなる。
ただチョーク・インプット方式が、コイルの、上記の性質を利用しているということは、
動作の際にコイルからパルス性のノイズが発生していることでもある。

このことを考慮すると、チェロのパフォーマンスがチョークコイルを含めて、電源部を別筐体としたのは、
振動面の問題も含めて、うなずけることだ。

Date: 11月 22nd, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その11)

いいかえれば、チョーク・インプット方式は、電流変動の少ない回路、
つまりコントロールアンプ、A級動作のパワーアンプなどに向くものである。

B級動作のアンプに採用した場合、小出力時にはチョーク・インプット動作はしていない。
チョークコイルは、高周波カットの役目を果たしているだけだろう。
臨界電流値をこえた出力以上では、チョーク・インプットとして動作するものの、
そうなるとこんどは電源電圧が低下する。

出力段の電源電圧を、低下分を見込んであらかじめ高く設定してあれば問題はなさそうだが、
精神衛生上は、あまりいいものではない。

チェロの技術者だったコランジェロが、チョーク・インプット方式の電源の基本を知らないわけはないだろう。
とすると、それでもチョーク・インプット方式を採用するメリットが、音の面であったということだろうか。

Date: 11月 21st, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その16)

工場でプレスされたCDは、輸送されることで、われわれの手もとに届く。
日本の輸送の99%はトラックによるものだ。

CDの輸送につかわれているパーセンテージまではわからないが、
仮にCDやDVDなどのパッケージメディアが、いっさい作られなくなり、デジタル配信のみになったとしたら、
稼働するトラックの台数は確実に減ることだろう。

トラックの稼働台数が減るということは、二酸化炭素の排出量は減る、排気ガスも減る、化石燃料の消費量も減る、
そして交通事故も減るはずだ。
騒音も、ぐっと減るだろう。

Date: 11月 21st, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その15)

デジタル配信に関しては、全面的に支持したい。

CD、DVD、SACDなどのパッケージメディアはなくなるだろう、というよりも、
なくなるべき、なくすべきだとも考えている。

もう「趣味の世界のものだから」といういいわけは、使うべきではない。

パッケージメディアには生産と輸送、そして廃棄がつきまとう。
CDにつかわれているポリカーボネイトは、内分泌撹乱物質(環境ホルモン)のビスフェノールAと無縁ではない。
これまでは灰色とされてきたビスフェノールAも、
数ヵ月前に、胎児、幼児にとっては、あきらかに害だという記事を読んだ。

このことに、もう目をつむるわけにはいかない。

Date: 11月 21st, 2009
Cate: 中点

中点(その5)

疑問をもつこと以上に心がけておきたいのは、
腑に落ちる、腑に落ちないといった身体的感覚を、体得しておくということ。

Date: 11月 20th, 2009
Cate: 中点

中点(その4)

早瀬さんが、SOUNDFRAILのトップページに書いてくれている。
     *
リンクしているaudio identity (designing) を読んでいると、オーディオについてのベーシックにして高度な理論について、とにかく徹底して自分の頭で考えるということの大切さを教えられる。電気的な知識がまったく無い人にはちょっと難しい部分もあるのだが、オーディオが好き、という以上あるていどのお勉強は必要だと思う。
audio identity (designing) 主宰者の宮崎さんは、とにかく既成の事実、完成された技術についても疑いの眼差しをもって検証し考え抜くという人。時には製品をバラバラに分解して観察し、何故、という視線をキープしながら本質にせまろうとする。その熱意には並々ならぬものがある、と思う。

名だたる自動車メーカーはライバルメーカーのクルマを徹底的に分解して、ネジ一本に到るまでコスト計算していくという。
いい音を達成するために、とりあえず自分の限界に挑みつつ考えるという態度は必須のものと思われる。
     *
たしかに、つねに疑問をもつように心がけている。
それは、技術に対してだけではない(すこしイヤな人間性なのかもしれない)。
疑問をもつからこそ見えてくることがあるし、発想も湧いてくる。
と書くと、ここで書いたこととすこし矛盾するのではないか、との声もあるだろう。

とことん信じるところと、つねに疑うところがある。
そう心がけているともいえるし、直感に従っているまで、ともいえる。

どちらか片方だけでは、中点が存在しなくなるから、無意識、意識的にそうしているのかもしれない。

Date: 11月 19th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その10)

アンコール・パワーの増幅部に関しては、納得がいく。
けれど電源部に関しては、どうしても腑に落ちないところがある。

たしかアンコール・パワーも、パフォーマンス同様、
チョーク・インプット方式を採用している、となにかの記事で読んだ記憶がある。

チョーク・インプット方式ではなく、コンデンサー・インプット方式のチョーク採用であれば疑問はないのだが、
チョーク・インプット方式となると、ひとつ大きな疑問がある。
B級動作はA級動作のアンプにくらべて、電流変動がひじょうに大きい。
つまりチョークを流れる電流も変動幅が大きいわけである。

チョーク・インプット方式の電源を設計したことのある人ならばおわかりだろうが、
臨界電流を考慮し、臨界電流以下ではチョーク・インプットとしては動作しないということである。

簡単にいえば、チョーク・インプット方式は、電流変動の少ない回路に向くものであり、
B級アンプの電源のように電流変動の大きいものには不向きだということだ。

Date: 11月 19th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その9)

A級動作とB級動作のどちらが、オーディオ用のアンプとして音が優れているか、ということは、
安易には判断できない。

A級アンプにはA級アンプならではの追求のしかたがあり、B級アンプにもB級アンプならではの追求のしかたがある。
どちらの方式にしても、徹底的にそのメリットを追求していけば、そこに共通する音の良さも存在すれば、
それぞれどちらかにしか存在しない音の良さも存在するものだろう。

アンコール・パワーの放熱器はL字型のアルミのアングルだけだった(手元に写真がなく記憶に頼るしかないが)。
シャーシー全体も放熱器として利用しているのであろうが、
こんなに簡単な放熱器のパワーアンプは、そう多くはないだろう。

振動面からいえば、音叉的な働きはほとんどないだろうし、
出力段のトランジスターから出る振動も、アイドリング時はかなり少ないはず。

パフォーマンスのあとの、まったく対照的なパワーアンプとして、
アンコール・パワーは実に興味深い存在ではある……。

Date: 11月 19th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その8)

配線を短くしたいと、あれこれ考えるのは、部品それぞれに異る大きさがあるからだ。
回路図上ではトランジスターも真空管も、抵抗もコンデンサーも記号としての大きさにそれほどの差はない。

それにコンデンサーにしても、電源用の平滑コンデンサーの大容量のものと、
位相補償用の、pF単位の小容量のコンデンサーとでは、記号の大きさは同じでも、まるっきり実際の大きさは異る。

それにやっかいなのは熱を出す部品もあり、熱に弱い部品もあるということ。
放熱器を大きくすることで、配線が長くなるのが問題ならば、
熱を極力出さないようにするというのも、ひとつの解決策であろう。

純B級と呼べるほど出力段のトランジスターに流すアイドリング電流を極力小さくすることで、
ほとんど放熱器をなくしてしまえば、配線の問題だけでなく、
パワートランジスターと放熱器の振動の問題も、かなりおさえられることになる。

スイッチング歪、クロスオーバー歪に関しては、高速な素子の使用、回路の工夫でなんとかできれば、
B級アンプならではの活かし方が生れてくるだろうし、
チェロのアンコール・パワーの内部を見ていると、そんなふうに思えてくる。

Date: 11月 19th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その52)

それほど複雑な回路のものではなくてもいいから、アンプの回路図をできれば用意してほしい。
増幅部と電源部が独立して描かれている回路図であれば、
別の紙に描き写して、増幅部と電源部を線でつなぐ。できれば片チャンネルだけでなく、左右チャンネルとも描き写す。

それを眺めれば、回路のいたるところにループ(環)があることがわかる。
増幅部だけでなく、電源部、それも定電圧回路だとループの数は増す。

そしてループは増幅部、電源部で独立しているわけではなく、またがっているループが存在していることもわかる。
独立したひとつのアンプだけでもループの数は多い。
素子数が多くなれば、必然的にループの数も増えていく。

そしてアンプ同士を接続すると、ループの数はさらに増えていくのがわかる。

Date: 11月 18th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その12)

2404に採用されたTH4003については、「音像の前後移動のない大型ホーン」と、井上先生は書かれている。

見た感じはほとんど同じに見えるTH4001とTH4003だが、音像の前後移動があるかないかは、
比較的近い距離で聴くときには、大きな違いとなってくる。

音像の前後移動といってもホーン内部のことであり、それ以上にひろがるわけではないので、
スピーカーとの距離が数メートル以上とれる場合には、近距離で聴くときほどは気にならない。

つまりスピーカーとの距離が近くなればなるほど、音像移動の問題は気になってくるものであり、
TH4003を搭載した2404は、家庭内で聴くことも前提とした設計であり、
このことがスタジオでの使用を前提しているであろう2402との違いでもある。

そしてウーファーに関しては、「鋳鉄フレームの禁を犯したウーファー設計は、
確信犯的な技術成果で、少し硬質だがビシッと決まる低音はスリリングでもある」と、ステレオサウンド 133号にある。

Date: 11月 18th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その11)

1983年に、パイオニアはTADのユニットを搭載したExclusive Model2401Twinと
Exclusive Model2402を発表している。

2401Twinは、型番末尾のTwinが示すようにTL1601aをダブル仕様、2404はシングルで、
ドライバーとホーンは、どちらもTD4001とTH4001の組合せ。

鋳鉄フレームのTL1601cを搭載したModel 2404は、外観、形態的には2402と同じに見えるが、
ユニットはすべて一新されている。
ドライバーとホーンは、TD4003とTH4003の組合せ。

2404に関しては、井上先生が、ステレオサウンド 124号に書かれている。

ここで、「大型のホーンでは音像が前後方向に移動する例が多く」とある。
これは、2404の前身2401に採用されたTH4001のことを指している。
2401Twinと2402が登場したころから言われていたことで、
ヴォーカルもの、それも声域の広い歌手の歌を聴くと、声の高さによって、音像定位が前後するのがわかる。

このことに気がつくと、ずっと耳につくようになる。意外と気持悪いものである。

Date: 11月 17th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その51)

信号に挿入するトランスの数をどこまでも増やしていけば、
トランスらしさだけが残ってくるというものではないことは、容易に想像できる。

極端な数で試したことはないけれど、
おそらくある数までは、トランス臭さが薄れ、トランスらしさが生きてくるだろうが、
その数を越えると、反対にトランス臭さのほうが増してくるのではなかろうか。
それでしばらくトランス臭さが増していき、次の山(谷というべきか)を越えると、
ふたたびトランスらしさが生きてくるようになる。

音には、そういう性質がひそんでいるような気がする。

トランスの数をどこまで増やしていくかの話は措いとくとして、
コントロールアンプの終段にトランスを挿入した場合について、考えてみたい。

Date: 11月 17th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その10)

TAD(Technical Audio Devices)のウーファーに関しては、TL1601aとTL1601bは現行製品なのに、
最後に登場した、鋳鉄フレームのTL1601cだけが製造中止になっている。

ところで、TADの呼び方だが、私を含めてほとんどの方が、おそらく〝タッド〟だろう。

1983年ごろ、TADのスピーカーユニットが登場したときから、タッドと呼んでいた。
パイオニアの方も、そう呼んでいたと記憶している。

けれど、先週末の秋葉原で開催された音展でのTADのブースでは、
スタッフの方たちは〝ティエーディ〟と発音されていた。

JBLがジェイビーエルだし、KEFがケーイーエフだから、たしかにTADがティエーディでも不思議ではない。

以前はタッドでよかったのかもしれない。
どこかでティエーディに変ったのかもしれないし、実は最初からティエーディで、
勝手にタッドだと思い込んでいただけかもしれないが、
少なくとも現在の正しい呼び方は、ティエーディ、である。