Archive for 10月, 2008

Date: 10月 21st, 2008
Cate: BBCモニター, LS3/5A, サイズ

サイズ考(その6)

省スペースの意味を含めた小型スピーカーとして、私にとって印象ぶかいのは、
ロジャースのLS3/5Aである。

ご存じのようにLS3/5Aは、BBCのライセンスを受ければ、ロジャース以外のメーカーでも製造できる。
スペンドール、KEF、ハーベス、チャートウェルから出ているが、
最初に聴いたLS3/5Aはロジャース製であり、所有していたのも15Ωタイプのロジャース製であるため、
私にとって、LS3/5Aといえば、ロジャースのそれである。

つい最近ロジャースから復刻版のLS3/5aが出た。なぜだが、型番末尾が、
Aではなく小文字のaに変更されている。
もっともオリジナルのLS3/5Aの表記も、ネットではLS3/5aと表記している例が多いが、
所有されている方ならば、リアバッフルの銘板には、LS3/5Aと記してあるのをみてほしい。

こういう表記のいいかげんなところは、ネットの拡大とともに目につくようになった。
LS3/5Aと同じBBCモニターのLS5/1には、Aがつくのとつかないのがある。
LS5/1が当然オリジナルモデルで、当時、LSナンバーはライセンスされていなかったため、
どこそこのメーカー製ということはない。
日本で知られている、そして瀬川先生の愛機だったのは、改良モデルのLS5/1Aであり、
このモデルからKEFで生産されるようになった。

LS5/1とLS5/1Aの違いは、まずウーファーがプレッシャー製からグッドマンのCB129Bに変更され、
エンクロージュアの内部構造も手を加えられているし、
吸音材の材質、入れ方ともに変更されている。また専用アンプも、メーカーが異る。

KEFではその後、専用アンプをハリソン製のトランジスターアンプに変え、
ネットワークをやめバイアンプ駆動しに、
低域のローブーストとともにレンジ拡大をはかった5/1ACを出している。これにはLSはつかない。

LS5/1(A)は、2基搭載しているトゥイーター(セレッションのHF1300)のうち1基は、
3kHz以上での干渉をおさえるためにロールオフさせている関係で、
高域補正した専用アンプか、それ以外のパワーアンプを使用するならば、
正確な高域補正をして聴くのが当然だ。

Date: 10月 20th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その5)

SACDプレーヤーが世に登場したばかりのころの、ある機種で、SACDを再生すると、
コントロールアンプと接続しないでも(ケーブル無しでも)、
ボリュームをかなり上げると音楽が聴こえるという現象が起きた。

CDプレーヤーよりも高いクロックを扱うことに、まだ技術が完全に追いついてなかった為、
不要輻射が盛大にプレーヤーから放出され、それをコントロールアンプが拾ってしまったためである。

そのSACDプレーヤーばかりのせいでもなく、コントロールアンプ側にもある。

つねにオーディオ機器は目に見えないもの、
電磁波や地磁気、漏洩フラックス、振動、熱、そういったものにさらされていて、
なんらかの影響を受けている。

こういうと、それぞれの要因が与える影響はほんの微々たるもので、
その程度で電子機器は影響を受けない、ともっともらしいことを言われる人がいる。
たしかにひとつひとつの要因を単独で判断するとそうかもしれない。

けれど実際にはすべての要因がからみあって作用している。
有吉佐和子氏の「複合汚染」を知らないのだろうか。
オーディオ機器も複合汚染にさらされているというのに。

Date: 10月 20th, 2008
Cate: 電源

ACの極性に関すること(その3)

ACの極性によって音を変化させるものに、ACファンがある。
DCファンは、ACの極性は関係しない。

ACファンを使用しているオーディオ機器をお使いならば、
ファンのAC極性のみを反転した音を聴いてみてほしい。
電源のAC極性の違いと同じ傾向で、おもに音場感の再現が、ときには大きく変化する。

ACファンにも極性があることを知っているメーカーもあれば、知らないメーカーもあるようだ。

そういう例はないと思うが、ステレオパワーアンプで、ACファンを二基、
左右チャンネルにそれぞれ使用しているものでACファンの極性が左右でもし違っていたら、音場感はいびつになる。

以前、SUMOのThe Goldを使っているときに試したことがある。
ちなみに、ボンジョルノはACファンの極性のことを知っているようで、
アンプのACの極性をきちんととると、ACファンの極性も揃うようになっている。

ACファンの回転数を落としたいとき、直列に抵抗を使うのが一般的だが、
200V仕様のファンを100Vで使う手もある。
また抵抗の代わりにフィルムコンデンサーを使うこともある。
抵抗と違い、熱がほとんど出ないのがメリットだ。
どのくらいの値をコンデンサーを使うかだが、
ファンのインダクタンスとの兼合いがらみなので、いくつかの値のコンデンサーを用意して、試してみるのがいい。

Date: 10月 19th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その4)

スピーカーはどうだろう。

オーディオ誌で、サイズごとに区分けされ、評価されるのはスピーカーである。
どこまでが小型スピーカーなのか、大型スピーカーはここから、といった明確な区分けはないものの、
なんとなく小型スピーカー特集が組まれたりしている。

見た目が小型スピーカーなら、たしかに設置面積は狭い。だからといって省スペースとはいえない。

小型スピーカーの音質上の大きなメリットである音場感の再現の高さを活かすには、
左右のスピーカーの間に、基本的には何も置いてはならない、と多くの人の共通認識だろう。

しかも左右、後ろの壁からも十分な距離をとる。これらを守って設置したら、
スピーカーまわりは何も置けない空間になってしまう。
スピーカーの設置面積ではなく、設置空間ということを考えると、
小型スピーカーも大型スピーカーも、それほどの差はない。
小型スピーカー・イコール・省スペースとは言えない。

省スペースとは言えなくても、スピーカーは、つねに目につく存在だけに、
視覚的に小型なことは、それだけでも、人によっては大きなメリットであろう。

断っておくが、小型スピーカーには、ならではの音質上の特質があるので、
存在価値は認めている。

Date: 10月 19th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その3)

オーディオ機器の中でノイズを放出しているモノとなると、
CDプレーヤーに代表されるデジタル機器だろうが、意外にもパワーアンプからの輻射も多い。
スイッチング電源やD級アンプ(デジタルパワーアンプという呼称は不正確)式のモノは当然だが、
昔ながらの純アナログ式(変な言い方だが)のパワーアンプでもそうである。
特にヒートシンクが筐体の外に取りつけてあるものは注意したい。

ノイズの影響から逃げるには、距離をとるのがベストだと書いたが、
ノイズ輻射の多いオーディオ機器や、外来のノイズの影響を受けやすいオーディオ機器を使っているとしよう。

それらをノイズの影響を受けないように設置しようとすると、意外にも十分なスペースを必要とする。
ちいさなサイズの機器でも、ノイズ輻射の多いものならば、近くに他の機器を設置できない。
多少筐体は大きくても、それがノイズ輻射を減らすため、
もしくは外来のイズの影響を受けないためのものだとしたら、設置条件はかなり自由である。

オーディオ機器のサイズは見た目だけで判断しがちだが、
目に見えないノイズのことを考慮したうえで、サイズを捉えなおすと、
決して外形寸法通りではないことに気づかれるだろう。

サイズを捉えなおす上で見落としてならないのはノイズだけではない。
振動を発生するもの、その影響を受けやすいもの、
漏洩フラックスの多いもの、その影響を受けやすいもの、
発熱の大きいもの、などがある。

Date: 10月 19th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その2)

CSEが、1990年ごろ発売していたMODE L93-94 EMI NOISE CHECKERは、
1台手元にあると便利な簡易計測器である。

型番のとおり、ノイズチェッカーである。
メーターや数値でノイズを表示する計測器はいくつか市販されているが、
高周波ノイズを音に変換するモノとなると、このぐらいしかないと思う。

メーター式のもので十分じゃないか、と思う人もいると思う。
でも、実際にCSEのノイズチェッカーを試してみると、
ノイズの質(たち)の違いが音の違いとなって、すぐにわかる。

連続するノイズでも、ジャーなのか、シャーなのか、ジージーと波打つ感じなのか、
断続的なノイズでも、ボッボッ、プチップチッだったり、じつにさまざまで、
思わぬものが意外にノイズをかなり出していることもわかる。

ノイズの影響を避けるにはどうしたらいいのか。
シールドを厳重にしたり、電波吸収材を使ったりする前に、いちばん確実で有効な手段は、
ノイズ源から十分な距離をとることである。
お金も必要としないし、シールドすることによる音質への影響も関係ない。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その23)

バイワイヤリング対応のスピーカーを鳴らす際、スピーカーケーブルが2組用意できれば、
そのままバイワイヤリング接続をすればいいが、1組だけのとき、
2組あるスピーカー端子のどちら(ウーファー側かトゥイーター側か)にケーブルを接くか。

もちろん最終的には両方の音を聴いて、好ましい方を選べばいいのだが、
最初に音を出すときは、当然だが、どちらかを選んで接がなければならない。
なかにも、ケーブルのプラスをウーファー側に、マイナスをトゥイーター側、
もしくはその逆に接ぐ人もいるが、ふつうはウーファーかトゥイーター側のどちらかだろうし、
それはいつまで聴いて好ましいことが多かった方を、自然と選ぶものだろう。
無頓着に、そのときの気分で、という人はあまりいないだろう。

私はと言うと、100%、ウーファー側に接続する。
これまでいろんなスピーカーで試してきた結果から、ウーファー側を選んでいる。

基本はウーファー側に接ぐ、というのが、私の中にはあるし、
ほとんどの人がそうだと勝手に思い込んでいた。

ところが、意外にトゥイーター側を選ぶ人が多いことに、2年ほど前に気がついた。
しかも、その人たちが、私よりも10歳くらい若いということにも。
もちろん私よりも上の世代で、トゥイーター側を最初に選ぶ人も、極端に少ないけどいる。
とはいえ、私のまわりでは、ウーファー側を選択する人がほとんどだ。

どうも、このことは聴く音楽のジャンルとは関係ないようだ。
世代による違いと関係がある、と私のまわりの人たちだけを見ての感じではあるが。

それであれこれ考えて、私なりの結論が、
もしかすると中心周波数の630Hzが、
育ってきた環境によって上の周波数にズレてしまったのではないか、である。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: ワイドレンジ, 瀬川冬樹

ワイドレンジ考(余談)

周波数帯域以上にワイドレンジ化していると感じられるのが、昨今のオーディオの機器の価格の幅。

熊本のオーディオ店でのイベントで瀬川先生が、
オーディオ機器の価格帯についても、40万の法則と同じようなことが当てはまると、
と言われたのを思い出した。

当時はカタログ誌のハイファイ・ステレオガイドが出ていた。
これに掲載されているオーディオ機器の最低価格と最高価格の積の平方根が、
そのジャンルのオーディオ機器の中心価格であり、
その価格の前後の価格帯が、価格と音質向上の度合いが比例関係にある、という内容だった。

横軸を価格、縦軸を音質向上の度合いに設定したグラフを描くと、
中心価格帯のところは、45度以上の急な直線だが、
その価格帯を外れると、上も下もゆるやかなカーブに移行する。

中心価格帯からはずれた、より高額な価格帯は、カーブが寝てきて、
価格をかけた割にはそれほど音質は向上しない、つまり飽和状態に近くなるし、
また反対に下の価格帯にも同じことが言える、とも。

最近では、極端に高価格のモノが存在するが、
いちおう同価格帯でいくつもの候補が存在するまでを最高価格として、
最低価格は、オーディオマニアが使えるギリギリのモノとしてする。
今はカタログ誌がないから、価格の参考になるのは、冬に出るステレオサウンドのベストバイの号か。

ベストバイに選ばれた機種の最低価格と最高価格の積の平方根を、
それぞれのジャンルで出してみたあとで、どういうモノが選ばれているか、
製品分布はどうなっているかをチェックしてみるのもおもしろいだろう。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その22)

幼い頃から耳にしている再生音(スピーカーからの音)は、テレビやラジオの音がいちばん多いと思う。
最近ではテレビのない家庭も増えていると聴くから、一概にそうとは言えないだろうが、
私と同世代、もしくは上の世代の人には、やはりテレビ、ラジオの音を、
意識するしないに変わらず、もっとも長く聞いてきていると思う。

そのころのテレビといえばモノーラルだったし、
ラジオについていたスピーカーもフルレンジ一発だった。

ところがテレビの音声多重放送がはじまりだして、
テレビのスピーカーがフルレンジから安っぽいトゥイーターをつけた2ウェイが現われ出したし、
ラジカセもステレオが当然になり、フルレンジから、
これも品のないトゥイーターを付け足したモノがあっという間に増えた。

レンジが広がり、音の品位が向上するのならいいが、
そういったテレビ、ラジカセの存在を私は知らない。
特にラジカセで、一時期流行ったスタイル──アザラシの死体のような外観の、
黒くてぶざまな製品から出てくる音のひどさといったら……。

アザラシの死体、という例えは、どなたの発言だったか忘れてしまったが、ぴったりの表現だと思う。

存在を強調するように鳴るトゥイーターがついたテレビの音、ラジカセの音を、
幼い頃からずーっと聞いてきたとしたら、
もしかすると、人の体にある630Hzという基準が高い方にズレてしまう気がする。
大きく40万の法則から外れた音に馴染んでしまうことによって。
私の勝手な推測にすぎないことは断っておく。

なぜ、こんなことを思うようになったかといえば、
バイワイヤリング対応のスピーカーの接続の例を、いくつか見てからである。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その21)

「虚構世界の狩人」のなかの「四〇万の法則」で、瀬川先生は、田口博士の話を書かれている。
     ※
博士は言う。そしてさらにこの六三〇ヘルツという周波数の正体を探ってみると、第一にこれは人間の内耳のナチュラル(自然共振)であり、内耳の特性曲線は六三〇ヘルツを中心にした確率曲線を示している。第二に人間の発声のメカニズムを円錐型のラッパと考えると、口をぽかんと開いたときのナチュラルが同じく六三〇ヘルツだという。さらに630のオクターブ下(1/2)の三一五ヘルツは女の人の声の高さであり、二オクターブ下(1/4)の一六〇ヘルツ附近は男の声の高さ、なので、結局、人間の耳は人の声を聴くのに都合よくできているし、また、内耳の構造からみても六三〇ヘルツを中心とした対称型の周波数が、快い音の条件になるのが当然だと、博士は結論づけておられる。
     ※
人間の体の中に630Hzが存在していることは、
これを人は自然と、感覚の基準としているのかもしれないが、
同時に、人の感覚は揺れ動く面も持ち、外的要因で、630Hzの基準が変わってしまうかもしれない、
高い方にスライドするかもしれない、と思うことがある。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(その15)

音楽之友社から1982年に出版された中野英男氏の「音楽 オーディオ 人びと」の
扉の写真は、瀬川先生が撮られたものだ。

巻末の『「あとがき」のあとに』を読むと、81年春の撮影で、
瀬川先生の愛機ライカSLIIで撮られたことがわかる。
瀬川先生は81年11月7日に亡くなられている。

中野氏がLPを両手で持たれている、その斜め後ろにEMTの927Dstが写っている。
いままでかけられていたLPをとりあげ、ジャケットにしまわれようとされているのだろう。
モノクロの、たった1枚の写真だが、瀬川先生が求められていた音を、
そこから感じとれる、と言ったらいいすぎだろうか。

Date: 10月 17th, 2008
Cate: JBL, Studio Monitor, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その20)

C50SMから4333Aにいたる間での変遷とほぼ並行して、
JBLは、ワイドレンジ・スピーカーを追究している。

1973年に発表された4350、翌74年の4340/4341の開発である。

ステレオサウンド刊「JBL 60th Anniversary」に収録されている「JBLの歴史と遺産」によると、
4350の開発を担当した人物は、JBLに入社まもないパット・エヴァリッジ(Pat Everidge)で、
4340/4341も開発している。
4330/4331、4332/4333の開発担当はグレッグ・ティンバース(Greg Timbers》だ。
彼は現在、JBLコンシュマー・プロダクツのチーフ・エンジニアである。
ティンバースの入社は72年7月で、この頃のJBLの、システムをまとめ上げられるエンジニアは、
有名なエド・メイの他に、パット・エヴァリッジ、ティンバースの3人だけだったと、
ティンバース自身が語っている。
彼によると、4350、4343を除く、ブルーバッフルのスタジオモニターは
彼が手がけたものだ。4315、4345もそうだ。

ということは、4350、4341を手がけたエヴァリッジが、間違いなく4343も手がけたのだろう。
そして4343の外観のデザインは、おそらくダグラス・ワーナー(Douglas Warner)だ。
彼は、パラゴンやL88 Nova、SA600やSG520をデザインしたアーノルド・ウォルフが
経営していたコンサルタント会社でウォルフの助手をしていた人物で、
「JBL 60th Anniversary」によるとL200は彼のデザインで、
ウォルフがJBLの社長に就任した際に、彼の会社をワーナーが引きつぎ、
ワーナー・アンド・アソシエイツと改称し、
1980年代半ばまでのJBLのインダストリアルデザインに大きく貢献した、とある。

「JBL 60th Anniversary」には、4343のデザインした人物については何も書いてない。
だから、あくまで推測にすぎないが、ウォルフの手直しや助言があったのかもしれないが、
4343はワーナーのデザインと見て間違いないと思う。

ワイドレンジ考(その19)

4331Aについて井上先生は、ステレオサウンド 62号に
「システムとしては、バランス上で高域が少し不足気味となり、
3ウェイ構成が、新しいJBLのスタジオモニターの標準となったことがうかがえる」し、
4333Aについて「本格的な3ウェイ構成らしい周波数レスポンスとエネルギーバランスを持つシステムは、
4333Aが最初であろう」と書かれている。

瀬川先生は、41号に、「家庭用の高級スピーカーとしては大きさも手頃だし、
見た目もしゃれていて、音質はいかにも現代のスピーカーらしく、
繊細な解像力と緻密でパワフルな底力を聴かせる」L300の登場によって、
「4333の問題点、ことにエンクロージュアの弱体がかえっていっそう目立ちはじめた」と書かれている。

4331/4333から4331A/4333Aの変更点は、主にエンクロージュアにある。
使用ユニットにいっさい変更はない。
板厚が、43331/4333はすべて19mm厚だったが、フロントバッフル以外を25mm厚にしている。
バスレフポートが、4331/4333で、ウーファーの上部横だったのが、
ウーファーの斜下、エンクロージュアのかなり低いところに移動し、
ポートの径も多少小さくなっている。
2405の取付け位置もまた変更され、4320と同じ位置になっている。
こういった細かな改良を施したことによって「4333よりもL300が格段に良かったのに、
そのL300とくらべても4333Aはむしろ優れている」と瀬川先生は高く評価されている。

C50SMからスタートしたスタジオモニターは、4333Aとなり、
質の高いワイドレンジを実現したことになる。

Date: 10月 16th, 2008
Cate: JBL, Studio Monitor, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その18)

同じ2ウェイの4320と4331は、エンクロージュアのプロポーションやつくり(板厚)は同じだが、
ユニットは、ウーファーが130A系の2231Aになっている。
4320採用の2215Bは、LE15系のハイコンプライアンス型で、
磁束密度も2231Aが12000ガウスと高くなっている。
中高域のホーンも変更されている(ドライバーは同じ2420を採用)。
4320採用の2307はホーン長・約22cmに対して、4331の2312は約29cmだが、
クロスオーバー周波数は800Hzと同じだ。

2231Aは、マス・コントロールリングを採用したJBL初のウーファーだ。
軽くて硬いコーン紙を使いながらも、
コーン紙とボイスコイルボビンの接合部に金属のリングをつけることで、
f0(最低共振周波数)を下げることを実現している。

外観上の変更点は、ユニットのレイアウトとバスレフポートの数の変更だ。
4320は3ウェイ化するときに追加する2405の位置が、
ウーファー、ミッドレンジ、トゥイーターが縦一直線に並ぶようになった。
バスレフポートは4320の2つから1つに減り、当然チューニングも変えられている。

4331、4333について、瀬川先生はステレオサウンド 41号に次のように書かれている。
     ※
しかしこのシリーズは、聴感上、低域で箱鳴りが耳につくことや、トゥイーターのホーン長が増してカットオフ附近でのやかましさがおさえられた反面、音が奥に引っこむ感じがあって、必ずしも成功した製品とは思えなかった。
     ※
翌75年に、4331と4333のコンシュマーモデル、L200とL300が発表される。
この両モデルの成功が、4331、4333にフィードバックされ、76年に4331A、4333Aになる。

Date: 10月 16th, 2008
Cate: JBL, Studio Monitor, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その17)

JBLがプロフェッショナル部門の設立と同時に発表した
スタジオモニターの4310と4320(1971年発売)。
ワイドレンジについて語るとき、4320のその後の変遷は興味深い。

4320の原型は、C50SM。1962年に発表されている。約170リットルのエンクロージュアは密閉型で、
2ウェイのS7と3ウェイのS8の2つの型があった。
4320は、大ざっぱに言えば、C50SM/S7をバスレフ型に、使用ユニットをプロ仕様のモノに変更、
クロスオーバー周波数も500Hzから800Hzになっているのは、耐入力向上のためでもある。

翌72年に、4320の小改良モデルとして4325を出す。ウーファーを2216に変更(4320は2215B)、
ドライバーとホーンは4320と同じだが、クロスオーバーは1.2kHzに上げられている。
発表データでは、4320の低域レスポンスは40Hz、4325は35Hzと少しだけワイドレンジ化されている。
4325の評価は必ずしも高いものではなかったようで、4320は製造中止にならず併売されている。

4320、4325が、アルテックの604を使用したモニタースピーカーに代わり、
スタジオに導入されるケースが増えるとともに、低域レスポンスの拡張、最大出力音圧レベルの向上、
クロスオーバー付近の音質向上が求められ、74年に、4330/4331に改良される。

4331がネットワーク仕様モデルに対し、4330はバイアンプ駆動専用である。
そして同時に3ウェイモデルの4332/4333も発表されている。