ワイドレンジ考(その21)
「虚構世界の狩人」のなかの「四〇万の法則」で、瀬川先生は、田口博士の話を書かれている。
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博士は言う。そしてさらにこの六三〇ヘルツという周波数の正体を探ってみると、第一にこれは人間の内耳のナチュラル(自然共振)であり、内耳の特性曲線は六三〇ヘルツを中心にした確率曲線を示している。第二に人間の発声のメカニズムを円錐型のラッパと考えると、口をぽかんと開いたときのナチュラルが同じく六三〇ヘルツだという。さらに630のオクターブ下(1/2)の三一五ヘルツは女の人の声の高さであり、二オクターブ下(1/4)の一六〇ヘルツ附近は男の声の高さ、なので、結局、人間の耳は人の声を聴くのに都合よくできているし、また、内耳の構造からみても六三〇ヘルツを中心とした対称型の周波数が、快い音の条件になるのが当然だと、博士は結論づけておられる。
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人間の体の中に630Hzが存在していることは、
これを人は自然と、感覚の基準としているのかもしれないが、
同時に、人の感覚は揺れ動く面も持ち、外的要因で、630Hzの基準が変わってしまうかもしれない、
高い方にスライドするかもしれない、と思うことがある。