ワイドレンジ考(その22)
幼い頃から耳にしている再生音(スピーカーからの音)は、テレビやラジオの音がいちばん多いと思う。
最近ではテレビのない家庭も増えていると聴くから、一概にそうとは言えないだろうが、
私と同世代、もしくは上の世代の人には、やはりテレビ、ラジオの音を、
意識するしないに変わらず、もっとも長く聞いてきていると思う。
そのころのテレビといえばモノーラルだったし、
ラジオについていたスピーカーもフルレンジ一発だった。
ところがテレビの音声多重放送がはじまりだして、
テレビのスピーカーがフルレンジから安っぽいトゥイーターをつけた2ウェイが現われ出したし、
ラジカセもステレオが当然になり、フルレンジから、
これも品のないトゥイーターを付け足したモノがあっという間に増えた。
レンジが広がり、音の品位が向上するのならいいが、
そういったテレビ、ラジカセの存在を私は知らない。
特にラジカセで、一時期流行ったスタイル──アザラシの死体のような外観の、
黒くてぶざまな製品から出てくる音のひどさといったら……。
アザラシの死体、という例えは、どなたの発言だったか忘れてしまったが、ぴったりの表現だと思う。
存在を強調するように鳴るトゥイーターがついたテレビの音、ラジカセの音を、
幼い頃からずーっと聞いてきたとしたら、
もしかすると、人の体にある630Hzという基準が高い方にズレてしまう気がする。
大きく40万の法則から外れた音に馴染んでしまうことによって。
私の勝手な推測にすぎないことは断っておく。
なぜ、こんなことを思うようになったかといえば、
バイワイヤリング対応のスピーカーの接続の例を、いくつか見てからである。