Archive for category テーマ

Date: 6月 26th, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その10)

小林貢さんの、それまでのメインスピーカーであったHarknessへの想いは、
小林さんの連載「果てしなき変遷」の担当編集者の N Jr.さんは、
エンクロージュアの写真のキャプションに
「ダブルウーファーを収めた特注エンクロージュアから、ハークネスを追放した主のセンチメンタリズムが漂ってくる」
とつけている。

この記事が載っているステレオサウンドは67号、1983年6月に出ている。
このときより、いま読んだほうが、小林さんの気持ちがわかるような気がする。

小林さんが、あの当時目指されていた音の方向に対して、
Harknessは明らかにそぐわなくなっていた。

小林さんのHarknessを模した特注エンクロージュアは、
Harknessよりも大型になっている。
このサイズになると、あの金属脚がもう似合わなくなっていることに気がつく。

Harknessのかっこよさは、あのスタイルであり、あの大きさだからこそ、
あの金属脚がよく似合うことを確認できたわけだ。

小林さんはHarknessを模したエンクロージュアから、レイオーディオのモニターにさらに突き進まれた。
レイオーディオには、いうまでもないことだが、もうHarknessの面影はカケラもない。
ここで、小林さんははっきりとHarknessと訣別されたのだろう、と勝手におもっている。

小林さんは1983年にHaknessを手離された。
私は、その30年後の2013年、Harknessを「終のスピーカー」として迎え入れる。

Date: 6月 26th, 2013
Cate: 型番

型番について(その18)

針圧調整とはいったいどういうことなのかについて考えずに、
ただカタログ、取扱い説明書に表記してある標準針圧(最適針圧)にぴったり合せる。
その針圧でうまくトレースできないレコードのときには針圧を少し増す。

中にはレコードの寿命を少しでも伸ばすため(傷つけないためにも)、
針圧は針圧範囲内での軽めの値に合せる、という人もいる。

こういうカートリッジの使い方が、いかにカートリッジを理解していないことによるものか、
それについては別項「オーディオ機器の調整のこと」で今後書いていく。

ここでいいたいことは、オルトフォンのSPUの最適針圧の値がいくつなのかを、
カタログや昔の資料などをあさって調べるよりも、
カートリッジの構造と、その構造からくる動作を理解した上で、
針圧とインサイドフォースキャンセラー量の調整とは、どういうことをアジャストする行為なのか、
それを身体感覚として身につけた上で、SPUに限らずカートリッジの調整を行ってほしい、ということだ。

カートリッジは新品のときとしはらく使っていったあとでは、針圧の調整が必要となる。
いまはエアコンがほぼどこにでもあり、気密性の高い住宅も増えてきているため、
昔と比べて住居内の温度変化は、とくに低い方に関しては小さくなっている、と思う。

そのため、カートリッジを動作させる温度に関しては、無頓着になりつつあるのではないだろうか。
昔は、部屋を暖めて(それも急に温めてるのはよくない)、
カートリッジもレコードも冷えきった状態ではなくなってから、かけていたものだ。

温度の低下はカートリッジだけでなく、レコードにも影響している。
こういったことをすべてふまえて、身体感覚としてカートリッジの取扱いを身につける必要がある。

Date: 6月 25th, 2013
Cate: 型番

型番について(その17)

われわれ使い手側によるカートリッジの針圧調整とは、いったいどういことなのか。
カタログに書かれている標準針圧(最適針圧)にぴったり合せることではない。

針圧調整の意味を正しく理解するには、
インサイドフォースキャンセラー量の調整とセットで考えるべきものである。

針圧は垂直方向のバイアス量であり、
インサイドフォースキャンセラー量は水平方向のバイアス量であり、
無音溝に針を降ろした時に、MC型カートリッジならば、
発電コイルの位置が磁界の中心にあるということである。

Date: 6月 25th, 2013
Cate: 型番

型番について(その16)

インターネットにはいろんな資料があって、
SPUの古いカタログをスキャンしたPDFもある。
これはアメリカの会社によるカタログということなのだが、
そこにはStylus Pressure………1 to 2 grams recommendedとある。

これにはちょっとばかり驚く。
極初期のSPUの実物はガラスケースごしに見たことはあっても、
触ったことも聴いたこともない。

極初期のSPUは、2gを切る針圧でもトレースできた、という話はどこかで耳にしたことがある。
こういうカタログが昔は出回っていて、いまはインターネットで見ることができるわけだから、
2gトレース説も説得力をもつようになる。

その一方でアメリカの会社によるものだから、誤植の可能性も高い、という説もある。

この手のことをインターネットで検索しはじめると、
以前とは比較にならないほどいろんなことがヒットして、おもしろいといえばおもしろいのだが、
だからといって、SPUの針圧は何gが正しいということがわかるわけではない。

標準針圧(もしくは最適針圧)のところに書かれている数値が、絶対ではない。
針圧計をもってきて、標準針圧:3gと書いてあったから、3gちょうどに針圧をセットしたからといって、
そのカートリッジ(SPU)がベストの状態で鳴ることは、可能性としてはきわめて低い。

いろんなことがうまくいって3gがベストということだってないわけではない。
それでも針圧というのは、微調整が要求される項目である。

Date: 6月 24th, 2013
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その16)

QUADは、いまでこそブランド名であり会社名にもなっているが、
1980年代の途中まではブランド名だった。

QUADのブランドをもつ会社の正式名称は、Acoustical Manufacturing Co.Ltd.。
QUADは、Quality Amplifier Domesticの略して名づけられたものだ。

domesticは家庭の、とか、家庭的な、といった意味があることからわかるように、
そしてQUADがイギリスのオーディオ・メーカーということも相俟って、
QUADのアンプは、性能、音質のためだからといって、物量を投入に走るようなことはやらない。

まずサイズ(形・スタイル)ありき、からのアンプである。

405は100W+100Wのパワーアンプ。
いまでこそこの程度の出力はハイパワーということはないが、
405が登場したころは100Wは、充分にハイパワーということができた。

100W+100Wを、W34.1×H11.5×D19.5cm、9.0kgの大きさに収めている。
このことも405登場時には話題になったことだ。

405の内部の半分ほとは電源トランスが占める、とはいえ、
それほど大きな電源トランスとはいえないし、
平滑用の電解コンデンサーも数値を競うかのような大容量ではない。
ほどほどに、節倹の精神とでもいえるつくりである。

AGIはアメリカのメーカーで、設計者は若い。
新進のメーカーだから、物量投入型かと思えば、
内部を見て、意外に思うのは電源トランスの小ささである。

リアパネルの隅に電源トランスは取り付けられている。
ちょこんとした感じで、ついている。
OPアンプ構成だから、ディスクリート構成のアンプよりも消費電流は少ないとはいうものの、
511の電源トランスを初めて見る人は、しょぼい、と思うはずだ。

Date: 6月 24th, 2013
Cate: 再生音

続・再生音とは……(その11)

ロビタが数多く、それこそ数えきれない数が何世紀にもわたって生産(コピー)されていったことは、
ロビタの外観と、意外にも関係があるのかもしれない。

ロビタの外観が何に似ているのか、といえば、埴輪ではないだろうか。
小学生のころから「火の鳥」を読みはじめてきて、
ロビタは何かに似ている、と感じていたものの、
つきつめて考えることはしてこなかった。

今回、「再生音とは……」というテーマで考えていて、
ふと思いあたったのが、埴輪だった。
埴輪には足があるのもあるけれど、
写真で多く見受けられるのは、たいてい足がないものばかりである。
単純化された顔と手、省略された足、胴に関しても細部は省略されている。

こう書いていくと、ロビタの外観を表していることにもなる。
とすれば埴輪は泥人形。
泥人形といえば、ゴーレムがいる。

Date: 6月 24th, 2013
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(facebookにて・その8)

「元原を見たい、元原で確認したい」──、
そう思うのは私だけでなく、今回「オーディオ彷徨」に携われた人も、まったくそうだったと思う。
もちろん、これは私の憶測にすぎないといえばそうなのだが、でも確実にそうだといいきれる。

だからこそ、facebookページ「岩崎千明/ジャズ・オーディオ」に「いいね!」をしてくれていた、
ステレオサウンドの関係者(Nさん、としておく)が、
非公開のfacebookグループ「audio sharing」に参加されたのだ、と思っている。

参加しなければ、岩崎先生の原稿を見ることができない。
見なければ確認できない。
逆の立場だとしても、私も同じ行動をとる。

それでも、audio sharinbへの参加希望の知らせが来て、
誰なのかを目にした時は、やはり驚いていたけれど。
でも、驚きは、すぐに納得に変る。

岩崎先生が亡くなられてすでに36年が経つ。
岩崎先生の手書きの原稿で確認しようと、どんなに思っても願っても、
ほとんどかなわないことである。まずかなわない、といいかえてもいい。

そこに一本ではあっても、手書きの原稿を見える機会があれば、
ためらうことなく、そこが非公開で、ステレオサウンドに対して、
少なからぬ人が批判的だと思うことを書いている人間がやっているところへでも行く。

それは、完璧な一冊の本をつくるのは困難だとわかっているけれど、
それでも少しでもそこに近づけたいと常日頃から思っている編集者にとっては、
ためらう理由にはならない。

同じステレオサウンド関係者であっても、
立場の違いはあっても、私が管理していることがわかってすぐに「いいね!」を取り消した人と、
取り消すことなく、さらに非公開の「場」に参加してくる人、
このふたりの違いは、どこに起因しているのだろうか。

Date: 6月 24th, 2013
Cate: 型番

型番について(その15)

オルトフォンのSPUは、ほんとうにながいことつくられ続けている。
いまも現役のカートリッジである。

SPUの構造が少し変化していることは、時期によって漆器、中期、後期とあることはすでに書いた通り。
こういう、外からは目に見えない内部に関することだけでなく、
SPUには、変化していることがある。針圧に関することである。

現在オルトフォン・ジャパンから販売されているSPU-Classicはカタログには適性針圧:4gとなっている。
1970年代、SPUの針圧は2〜3gである。
すこし意外に思われる人もいるかもしれないほど、軽めの値である。
これはオーディオニックス時代だけでなく、
ハーマンインターナショナル時代になっても2〜3gと表記されている。

それが3.0〜4.5gと重めにシフトしたのは、ハーマンになってからしばらくした1978年ごろからである。

何がどう変って、この針圧の変化なのだろうか。
ちなみにコンプライアンスは、オーディオニックスの時代もハーマンインターナショナルの時代でも、
5×10の-6乗cm/dyneであり、変更はない。

カートリッジの針圧の表記はメーカー、輸入商社によって微妙に異る。
針圧範囲を2〜3gと、こんなふうに表示するところもあれば、
2.5g±1gという表記もある。

中には標準針圧:2.5gという表記もあるし、
さらには最適針圧という表記を使うところもあった。

どの表記でも問題ないといえばそうなのだが、
それでも最適針圧という表記は、ユーザーに誤解を与えることにもなりかねない。

Date: 6月 23rd, 2013
Cate: 型番

型番について(その14)

人よりいいモノを手に入れたい──、
この気持は、人よりもいい音を出したい、という気持に、どこかでつながっている。

いい音で音楽を聴きたいから、いい音を出したい、
そんな気持がいつしか、どこかで、人よりもいい音を出したい、という気持が変っていくことがある。

そんな気持を、これまでのオーディオ人生の中でひとかけらも持ったことがない、という人がいるだろうか。
私も、人よりいいモノを手に入れたい、そんな衝動に突き動かされたことが幾度となくある。

そのために細かい情報を集める。
同じモノとして流通していても、何が違うのか。
もっとも音がいいのは、どれなのか。
同じ型番のモノの見分け方を身につけようとしていた。

ロングランのモデルならば、製造時期による違いは、
海外製品においてはけっして小さくない。音も違ってくる。

でもそれでもSPUはやはりSPUであることを思い出したい。
どのSPUがいいのか、そのことに血眼になっているときは、
SPUにこんなにもこだわっているという、一種の陶酔感がある、といえる。

そのことに一喜一憂した経験は持っていた方がいい。
でも、いつまでもそこにいてどうなるというのだろうか、
いまはそういう気持の方が強い。

もう、そういうことに夢中になれる時期はとっくにすぎてしまった。

Date: 6月 23rd, 2013
Cate: 型番

型番について(その13)

MC型カートリッジとMM型カートリッジは、
どちらが優れているのか、どちらが音がいいのか。

ずっと以前はそんなことがオーディオ雑誌の記事となっていたこともある。

それぞれに技術的メリットはある。デメリットもある。
けれどひとついえることは、オルトフォンのSPUのサスペンション構造は、
基本的にはMM型カートリッジでは実現できない、ということである。
その一方で、MM型カートリッジは針交換ができるという、大きなメリットがあるのだが。

そのSPUのメリットを、もっとも理想的に実現できているのは、やはり初期型ということになる。
つまり支点の明確化がMM型カートリッジでは実現が困難だし、
このことを追求すれば、SPUの初期型がよく、その次に後期、中期と並ぶことになる。

となると音も初期型のSPUがもっとも優れているのか。
そういうことになる、といえば、なる。

私も初期、中期、後期のSPUを比較試聴したことはない。
なのではっきりしたことはいえないけれど、初期であろうと中期であろうと、SPUはやはりSPUである。

AシェとGシェルの違い、丸針か楕円針かという違い、製造時期の違い(構造の違い)、
これらは当然のことなのだが、すべてSPUという範囲での違いである。
それぞれを比較試聴すれば、音の違いはあっても、
どれもオルトフォンのSPUであることには違いがない。

SPU同士の比較よりも、オルトフォンの他のカートリッジとの比較、
さらには他社製のカートリッジの比較では、さらに大きな音の違いがそこにあわけだから。

Date: 6月 23rd, 2013
Cate: 型番

型番について(その12)

SPUはStereo Pick Upの頭文字をとった型番であり、
これほどわかりやすく、しかもこのカートリッジのことをあらわしている型番は、そう多くはない。

SPUには、これもよく知られているようにGシェルとAシェルが用意されていて、
Aシェル・タイプはプロ用とされている。
ヘッドシェルの形状により、SPU-A、SPU-Gがある。

そして針先の形状が丸なのか楕円なのかによって、
型番の末尾に楕円針ならばEがつく。
SPU-A/E、SPU-G/Eというふうにである。

それからGシェルだけはAシェルにはないヴァージョンとして
昇圧トランスをシェル内におさめたSPU-GTがある。
これも丸針と楕円針があり、後者の型番はSPU-GT/Eとなる。

SPUには、だから6つのヴァリエーションがあったわけだが、
型番の分け方もわかりやすい。

AシェルかGシェルかによって、音は違ってくる。
丸針か楕円針かでも、もちろん違う。
トランス内蔵型であれば、そのトランス込みの音となる。

このことに製造時期による初期、中期、後期という構造の違いがあることになる。

Date: 6月 23rd, 2013
Cate: audio wednesday

第30回audio sharing例会のお知らせ

7月のaudio sharing例会は、3日(水曜日)です。

テーマはいまのところまだ決めていませんが、
この日の4日前には、「終のスピーカー」がやって来ているはずですので、
そのことについて語るかもしれません。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 6月 22nd, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その9)

それは、一週間後にやってくる「Harkness」には、D130が収まっているからである。

別項「異相の木」の(その6)で書いている。
私にとってJBLのD130というスピーカーユニットは、はっきりと「異相の木」である。

Harknessのスタイルは美しい。
だから、たとえばこの外観だけをそっくりまねてバスレフ型エンクロージュアにしよう、という考えを、
実は私は持っていた。
そのころは、まだD130を異相の木として認識していなかったから、
このHarknessそっくりのバスレフ型エンクロージュアには、
JBLのユニットを使ったとしても、D130以外のユニットを選択しただろうし、
JBLではないメーカーのユニットを選んだかもしれない。

世の中には同じことを考える人が、やはりいるもので、
小林貢さんもレイオーディオのモニタースピーカーを導入される前は、
Harknessを大型化したエンクロージュア(ダブルウーファー用)を使われていた。

小林さんもまたHarknessを使われていた人だ。
1982年夏、無線と実験での企画でJBLの2445Jを聴かれたことが、
Harknessを追放することになった──、と、
ステレオサウンド 66号から連載が始まった「果てしなき変遷」で書かれている。

でもHarknessのかっこよさだけは捨てられなかったのだろう、
Harknessのスタイルを模倣したエンクロージュアを、あえて導入されたのだから。

Date: 6月 22nd, 2013
Cate: 型番

型番について(その12)

ここで使っている、SPUの初期、中期、後期は、
あくまでもステレオサウンド 48号が出た時点での分け方である。

では、いったいもっとも理想的といわれている初期のSPUは、いったいいつごろのものなのか。
これについてのヒントも、やはりステレオサウンド 48号の井上先生の発言にある。
     *
井上 日本のカートリッジの原型とはいっても、当時のSPUのサスペンション機構だけはまねしていませんね。細いくびれを中心に、完璧に理想的な振動をする。だから、シリアルナンバー何番までというのは、神様みたいに大事にしたわけです。もっとクリアーで、すばらしい音がした。実は台湾から密輸したんだけど(笑)。昭和30年代後半ですよ。それでもマージンなしで、2万5千円とか3万円でしょう。普通のサラリーマンの給料の5割増しくらいだから、なかなか買えなかったですよ。
     *
いちばん知りたい、シリアルナンバーがいくつまでなのかについては触れられていないけれど、
昭和30年代後半のものが初期のSPUということになる。

SPUは1962年に発表されている。昭和37年のことである。
これも井上先生が語られていることだが、
このころはダイレクトではなく東南アジア経由のものがずいぶんあった、とのことだ。

オルトフォンは以前はソニーや日本楽器も扱っていた。
1968年の日本楽器の広告にはオルトフォンが載っている。
オーディオニックスは、日本楽器の販売代理店だったはず。

1968年は昭和43年である。昭和30年代後半とは、とてもいえない。
ということはオーディオニックスが扱いはじめたころのSPUは、
すでに中期のモノである可能性が高い。

Date: 6月 22nd, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その8)

4343のコンシューマー用モデルに当たるL400は試作品がつくられていたことは確認できている。
にも関わらず製品化されなかった。
なぜなのか? いろいろ考えてみるとおもしろいし、
そのためにはJBLの製品構成を辿っていくことも必要となるし、
こんなことをやっていると、それまで気がつかなかった、見過していた事実に気づいたり、
それまで関連のないことだと思っていた事柄が結びついたりすることもある。

L400ではなくL250だったことに対する私の考えは、別のところで書こうと思っている。
ここで書いていくと、「終のスピーカー」というテーマから離れ過ぎてしまうから。

とにかくL300を境に、
JBLのコンシューマー用スピーカーはサランネットをつけて使うのが、
必ずしも前提条件ではなくなっていったと思える。
現在のJBLのフラッグシップであるDD67000(DD66000)にしても、
サランネットをつけた姿よりも外した姿のほうがインパクトとして強く、
見た者の記憶に残る(ただそれが必ずしもいい印象とは言い難いのだが……)

サランネットをつけて聴くのか、つけずに聴くのかは使い手・聴き手の自由である。
それでもL200でサランネットをつけずに聴く人は少数ではなかろうか。
オリンパスにも同じことはいえる。
Harknessもそうだ。

JBLのユニットは面構えもいい。
いい表情をしているユニットが、実に多い。
オーディオマニアの心境としては、そういうユニットの表情も味わいながら……、という気持はある。
そのくらいにオーディオマニアである私でも、
Harknessはサランネットをつけたスタイルこそが、Harknessである。

そのことは田中一光氏のHarknessの使い方から、
ステレオサウンド 45号に載った写真を何度も飽きずに見続けたことから学べたことである。

ここにおいて、4343への憧れとHarknessへの憧れは、違う。

そしてHarknessは、私にとって、もうひとつの意味をもつ。