終のスピーカー(その9)
それは、一週間後にやってくる「Harkness」には、D130が収まっているからである。
別項「異相の木」の(その6)で書いている。
私にとってJBLのD130というスピーカーユニットは、はっきりと「異相の木」である。
Harknessのスタイルは美しい。
だから、たとえばこの外観だけをそっくりまねてバスレフ型エンクロージュアにしよう、という考えを、
実は私は持っていた。
そのころは、まだD130を異相の木として認識していなかったから、
このHarknessそっくりのバスレフ型エンクロージュアには、
JBLのユニットを使ったとしても、D130以外のユニットを選択しただろうし、
JBLではないメーカーのユニットを選んだかもしれない。
世の中には同じことを考える人が、やはりいるもので、
小林貢さんもレイオーディオのモニタースピーカーを導入される前は、
Harknessを大型化したエンクロージュア(ダブルウーファー用)を使われていた。
小林さんもまたHarknessを使われていた人だ。
1982年夏、無線と実験での企画でJBLの2445Jを聴かれたことが、
Harknessを追放することになった──、と、
ステレオサウンド 66号から連載が始まった「果てしなき変遷」で書かれている。
でもHarknessのかっこよさだけは捨てられなかったのだろう、
Harknessのスタイルを模倣したエンクロージュアを、あえて導入されたのだから。