型番について(その12)
ここで使っている、SPUの初期、中期、後期は、
あくまでもステレオサウンド 48号が出た時点での分け方である。
では、いったいもっとも理想的といわれている初期のSPUは、いったいいつごろのものなのか。
これについてのヒントも、やはりステレオサウンド 48号の井上先生の発言にある。
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井上 日本のカートリッジの原型とはいっても、当時のSPUのサスペンション機構だけはまねしていませんね。細いくびれを中心に、完璧に理想的な振動をする。だから、シリアルナンバー何番までというのは、神様みたいに大事にしたわけです。もっとクリアーで、すばらしい音がした。実は台湾から密輸したんだけど(笑)。昭和30年代後半ですよ。それでもマージンなしで、2万5千円とか3万円でしょう。普通のサラリーマンの給料の5割増しくらいだから、なかなか買えなかったですよ。
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いちばん知りたい、シリアルナンバーがいくつまでなのかについては触れられていないけれど、
昭和30年代後半のものが初期のSPUということになる。
SPUは1962年に発表されている。昭和37年のことである。
これも井上先生が語られていることだが、
このころはダイレクトではなく東南アジア経由のものがずいぶんあった、とのことだ。
オルトフォンは以前はソニーや日本楽器も扱っていた。
1968年の日本楽器の広告にはオルトフォンが載っている。
オーディオニックスは、日本楽器の販売代理店だったはず。
1968年は昭和43年である。昭和30年代後半とは、とてもいえない。
ということはオーディオニックスが扱いはじめたころのSPUは、
すでに中期のモノである可能性が高い。