Archive for category テーマ

Date: 6月 2nd, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その32)

違うブランドのスピーカーユニットを組み合わせるのは、いいとこ取りになるよりも、
どうもうまくいかないことが多いのかもしれない。

そういえば、瀬川先生もステレオサウンドがマルチアンプを特集したHIGH-TECHNIC SERIES-1にも書かれている。
     *
その頃は、こうした考え方に合致するユニット自体が殆ど作られていず、また、あまりにもいろいろの国のキャラクターの違うユニットの寄せ集めでは、周波数レインジやエネルギーバランスまではうまくいっても、かんじんの音色のつながりにどうしてももうひとつぴしりと決まった感じが得られなくて、やがて、帯域の広さでは不満が残ったが相対的な音の良さで、JBLのLE15A(PR15併用のドロンコーン位相反転式エンクロージュア入り)、375ドライヴァーに537−500ホーン、および075という、JBL指定の3WAYになり、やがてそれをマルチアンプ・ドライブし、次に4333をしばらく聴いたのちに4341で今日まで一応落ちつく……というプロセスが、大まかに言ってここ十年あまりのわたくしのスピーカー遍歴だった。そう、もうひとつこれとは別系列に、KEFでアセンブリーしたイギリスBBC放送局のモニタースピーカーLS5/1Aの時代が併行しているが。
     *
けれど瀬川先生が最後まで手元に置かれていたKEFのLS5/1Aは、
ウーファーはグッドマン社製、トゥイーターはセレッション社製である。
LS5/1Aだけに限らない。
スペンドールの場合もトゥイーターには他社製のユニットを使っている。
ロジャースのPM510もトゥイーターはフランスのオーダックス製である。

ということは、必ずしもブランドが違うユニットを組み合わせて、うまくいくこともあることになる。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: Jazz Spirit

Jazz Spirit Audio(その5)

“Friday Night in San Francisco”。
私は、このディスクをどの位置で聴きたいか、といえば、
ステージの上で聴きたい。
ギターの至近距離にいて、聴きたい。

だから、そういう音で鳴ってほしい、と思う。

昨年のインターナショナルオーディオショウのあるブースで鳴っていた“Friday Night in San Francisco”は、
正反対の鳴り方だった。
いわゆるハイエンドスピーカーに共通するスピーカーよりも奥に定位する鳴り方。
とはいえスピーカーと聴取位置の距離はさほど離れていない。
比較的近い距離でもあった。

でも心理的距離感が遠く感じる音だった。
ギターのひとつひとつの音が鮮明に鳴れば、近くに感じられるかというと、必ずしもそうではない。

まったく異る音楽のディスクであれば、こういう鳴り方がふさわしいと感じることもあろうが、
そこで鳴っていたのは“Friday Night in San Francisco”。

ライヴ録音ゆえに収録されている観客のざわめき、歓声。
そういった要素がうまく鳴ればなるほど、観客の昂奮とは反比例するかのように、
こちらの心は冷静になっていくような、そんな感触の音が鳴っていた。

インターナショナルオーディオショウの四ヵ月ほど前に、
JBLのD130で“Friday Night in San Francisco”で聴いていたから、よけいにそう感じたのかもしれない。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その31)

1970年代はスピーカーユニットの豊富さにかけては、いまよりも充実していた。
いまも国内外にスピーカーユニットを生産している会社がけっこうある。
それらからいくつものユニットが登場している。
単純にユニットの数だけで比較すれば(すべてが輸入されているわけではないが)、いまの方が多いかもしれない。

けれどユニットのバリエーションということでは、1970年代の方が充実していた。
そのころ、ステレオサウンドが出していたHI-FI STEREO GUIDEを見ては、
スピーカーはこれにして、アンプはれあれ、プレーヤーとカートリッジは……、と、
予算を決めては組合せをあれこれ夢想していた。

コンポーネントの組合せだけではない、
スピーカーの組合せもあれこれ夢想できていた時代だ。

ウーファーはこれを、エンクロージュアはこれを組み合わせて、
中高域はホーン型にするか、ドーム型でいくのか……、
予算だけでなく、スピーカー全体の大きさをどうするのか、
とにかくそんなことを夢想しているのが、とにかく楽しかった。

よくいわれていることにメーカーの異るユニットは組み合わせないほうがいい、というのがある。
例えばアルテックのウーファーに、JBLのコンプレッションドライバーの組合せ。

この組合せは実際にやった人もけっこういた、と聞いている。
実際にやったことのある人から話も聞いている。
まったくうまくいかなかった、と。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その7)

いまも昔もアナログディスク再生に関係するアクセサリーはいろいろある。
どんな人出もひとつかふたつは持っていることだろうし、
多い人ならば、ありとあらゆるアクセサリーを持っていることだろう。

アナログディスク再生に関係するアクセサリーの中で、もっとも重要なアクセサリーであるにもかかわらず、
意外に持っていない人がいるモノ──、
水準器である。

水準器がなければ置き台(ラック)の水平を出すことはできない。
水準器を使わずに目視でわかる傾きはけっこう大きなもので、
そんな傾きは論外であり、置き台(ラック)は水準器を使って水平にする必要がある。

水準器には、オーディオ用のアクセサリーとして売られている円筒型の小さなモノがある。
ないよりはいいけれど、水準器はホームセンターで売られている、スパンのあるタイプがいい。

小さな円筒型だと、水平を正確にとった台の上にいくつも並べてみると、
けっこうバラツキがあるのがわかる、という話を聞いている。

置き台の天板の上に水準器を置く。
左右方向と奥行き方向、どちらも水準器を置いてみる。
このときひとつ注意したいのは、水平を出したあと水準器の向きを180度回転させてみることである。
こうして水平がとれているかどうかもチェックしておくこと。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: audio wednesday

第41回audio sharing例会のお知らせ(試聴ディスクのこと・再掲)

いまJBLの4350について書いている。
その中でチャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」のことについてふれたことで、
facebookで、このことが話題になった。
いくつかのコメントの中で、試聴ディスクについて知りたい、というのがあった。

最近では視聴と書く人が、少なくともインターネットでは多くなってきているが、
あくまでも試聴であり、試聴のためにかけるディスクを試聴ディスク、試聴LP、試聴CDという。

ステレオサウンドで働いていたから、かなりの数の試聴ディスクを聴いてきた。
それ以前、ステレオサウンドの読者だったころも、どんなディスクを使われているのかは非常に興味があった。

試聴ディスクとは、いったいどういうものなのか。
どういう基準によって、試聴ディスクを選ぶのか。

いわゆる優秀録音と呼ばれていれば試聴ディスクとして十分なのたろうか。

試聴といっても、例えばスピーカーやアンプの総テストでは、
かなりの数のスピーカーなりアンプを聴く。
そういうときに使うのも試聴ディスクである。

一方で新製品として登場してきたスピーカーなりアンプを聴くときに使うのも試聴ディスクである。

さらに試聴室でもいい、自分のリスニングルームでもいい。
あるシステムからいい音を抽き出すために調整していくために聴くディスクもまた試聴ディスクである。

試聴ディスクで、ひとつのテーマになる。

今月のaudio sharing例会では、この試聴ディスクをテーマにしようと思っている。

今月のaudio sharing例会は、4日(水曜日)です。
時間はこれまでと同じ、夜7時です。

場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 5月 31st, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その13)

いくつかの候補から、ひとつだけ消去法で外した。
そこは東京にある店で、条件的には問題ない。
エッジ交換のサービスも行っているし、技術もしっかりしてそうだった。

商売になるのであれば何でもかんでも売る店とは異り、そこはJBLの4300シリーズを中心に商売をやっている。
このことは好感がもてる。

にも関わらず、ここを真っ先に候補から外したのは、エッジ交換の技術とは直接関係のないことからだ。

ここは4300シリーズ以外に、その店独自のスピーカーシステムを製作している。
JBLのユニットを使っている。
しかもそれに4300シリーズにはない型番をつけている。

4300シリーズを好きで本当に理解している、と思わせる内容のスピーカーシステムであれば、
エッジ交換にここを選んだかもしれない。

だが実際の、この店オリジナルのスピーカーシステムは、
4300シリーズの魅力をほんとうに理解しているのだろうか、と疑いたくなる内容と外観である。

ここには、だから頼めない、と思った。
まったく心情的な理由から、外した。

Date: 5月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その6)

置き台(ラック)の設置でとにかく重要なことは水平をとること、そしてガタツキなく置くこと、である。

置き台(ラック)といっても、いくつかの構造がある。脚をもつモノもあれば、
四角い開放管(ヤマハのGTR1)の形状のモノもある。

ガタツキなく設置するのに適しているのは三点支持だから、脚は三本がいい──、
とは必ずしもならない。
スピーカーシステムの設置に関しても、三点支持がもっとも良いように捉えている人、
そう謳っているメーカーもあるが、少し冷静に考えれば、三点支持が理想的であるためには条件がある。

三点支持(三本柱)のラックと比較すれば、四本柱のラックは設置場所によってはガタツキが発生し、
ガタツキを取り除くにも、少しの慣れを要する。

開放管型のモノとなると、床との接地面積はぐんと広くなるわけで、ガタツキは発生しやすくなる。
どんなに重量があってもガタツキがあっては無駄になる。

ここでは具体的な手法については書かないが、
とにかく置き台(ラック)がガタついていては、何も始めてはならない。

ガタツキがなくなれば、というよりも、ラックによってはガタツキをとる作業そのものが、
水平を確保する作業にもなってくる場合もある。

Date: 5月 30th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その5)

アナログプレーヤーのための置き台を用意する。
それを部屋のどこかに設置する。

部屋のどこに設置するのかによっても音は変ってくる。
床の振動モードが置き場所によって違うこともあるし、
部屋のコーナーのように音が溜りやすいところと、
そうでないところでもハウリングマージンを含めて変化してくる。

とはいか、実際に置き台とプレーヤーを部屋あちこちに置いてみて音を出し聴いて、
ベストといえる位置を探し出すことがやれる人はいい。
すべての人がそういうわけにはいかない。

スピーカーの位置、聴取位置が決っていれば、
アナログプレーヤーを設置できる場所はある程度限られてくる。
部屋の広さによっても制約は違ってくる。
このあたりにしか置けない、ということもある。

それから使い勝手を優先すれば、どうしてもこの位置に置きたい、ということだってある。

ならば、その位置に置いて鳴らすしかないわけで、
そのために必要なことをやっていくのみである。

Date: 5月 30th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その8)

ステレオサウンドで働いて学んだことのひとつに、試聴という行為の難しさがある。
いろいろな人の、いろいろな試聴があった。
最初のうちは先輩がやっていたアナログプレーヤーの操作もいつごろからか私がやるようになっていた。
CDプレーヤーの操作なども含めて、試聴のオペレートをやってきて、
試聴とは、読者だったころに考えていたよりも、難しさを含んでいることを実感した。

スピーカーの特集記事のためにスピーカーをかなりの数集める。
それらのスピーカーを一機種ずつ、たいていは価格順(安い方から)試聴室に運び込み、聴いてもらう。
LP、CDを数枚、同じところをかけて試聴が終れば、試聴室から運び出し、次のスピーカーに入れ替える。
これをくり返すのが試聴である。

ここまでなら、ほとんどの読者が想像していることであるし、私もそういうものだと思っていた。
試聴とはそういうものではある。
けれど、実際の試聴は、こんなところまで厳格にしなければならないのか、と感じた。
試聴に関わるオーディオ評論家にとっても編集者にとっても、しんどさがある。

音を聴いているだけだろう、それのどこが……、と思う人は、
試聴のことを理解していない人である、と言い切れる。
それに、自分のシステムに対しても、厳しい姿勢で音を聴いていない、とも言い切れる。

Date: 5月 29th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その4)

アナログディスク全盛時代だったころよりも、
おもしろいものでいまのほうが置き台(ラック)の種類は圧倒的に多い。

昔のラックとは違い、構造(棚板の形状、棚板の支え方など)も多種多様といえるようになってきた。
材質も昔は木がほとんどだったのが、これもまたいまは種類もいくつかある。

それとともに高価になってきた。

ここではどういう置き台(ラック)がアナログプレーヤーに最適なのかについては書かない。
使うプレーヤーの種類、構造、コンセプトによっても異ってくる要素があるから、
こういう置き台(ラック)が、すべてのアナログプレーヤーにとって最適だとは言えない面があるからだ。

それに理想に近い置き台(ラック)が仮に存在していたとして、
それを手にいれる(実現できる)のであればいいが、そうもいかないことの方が多い。

場合によっては与えられた置き台(ラック)を使うこともある。
そんなとき、こんなラックでは……、というのは誰にでもできる。
もっといい置き台(ラック)の上に置けば、いい音が得られるのはわかりきったことだが、
反面、アナログプレーヤー(アナログディスク再生)のおもしろいところは、
あまりアナログプレーヤーの置き台として向いているとは思えないモノでさえも、
使い手の技倆によって、得られる結果(音)はそうとうに変ってくる。

つまり高価なラックを購入したからといって、ただポンと置くだけでは、
いい結果(音)が得られるとは限らない、ということでもある。

Date: 5月 29th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その3)

アナログプレーヤーは、どこかに置かなければならない。
たいていは置き台(ラック)の上に置かれる。
床に直置き、もしくは石や木などのベースを敷いて、その上に、という置き方もないわけではない。

ただアナログプレーヤーは、オーディオ機器の中でももっとも操作する機器である。
レコードをターンテーブル・プラッターの上にのせる。
カートリッジの針先を音溝に降ろす。
レコード演奏が終ったらカートリッジをあげ、レコードをとりジャケットにしまう。

これらの基本動作に加えて、ときにはレコードをクリーニングすることもあるし、
針先のクリーニングが必要になるときもある。

カートリッジを最適な状態で使うために、針圧、インサイドフォースキャンセラーの調整、
ラテラルバランスの調整が必要なトーンアームであれば、それも行う。
カートリッジのヴァーティカルトラッキングアングルの調整(つまりトーンアームの高さ調整)などがある。

あとカートリッジの出力は微小信号ゆえ、接点のクリーニングも忘れてはならない。

そういった細々とした作業を行うには、ある程度の高さがあったほうがいい。
どのくらいの高さがいいのかは、使う人によってもっとも使いやすい高さということになる。

床に直置きが使いやすい、という人もいるかもしれない。
そんな使い方をしたこともある。

でも私は、それほど高くなくてもいいから、やはり置き台を用意したほうが使いやすい。
使いやすい、扱いやすいは些細な事故を防ぐためでもある。

Date: 5月 29th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その12)

東京もしくは東京近郊で、エッジ交換をやってくれるところはいくつかあるのはわかった。
けれど、どこにするのか。

これもまたインターネットで検索して丹念に検索結果を見ていくと、
それらのところでエッジ交換をした人のサイトやブログがいくつか見つかるし、
エッジ交換をやっているところのサイトにも、交換した人の声が載っている。

そういうのをみていって、ここが良さそうだ、ここもいいみたいだな、とは思う。
けれど、どんなにインターネットで調べたり、エッジ交換をしたことのある知人に話をきいても、
ほんとうのところははっきりとしない。

つまりエッジ交換を依頼した経験のある人は世の中にけっこういる。
けれど、その人たちが、複数の業者にエッジ交換を依頼して、
仕上ってきたものを比較した上で、ここがいい、あそこがいい、と言ったり書いたりしているわけではない。

エッジ交換を依頼した人も、今回の私のように調べて、どこにするかを決めて、そこにする。
それで仕上ってきたモノをみて、満足がいけば、そこが良かった、ということになる。

インターネットに書いている人の多くはそうであろう。
よほどの人でなければ、複数の業者にエッジ交換を依頼して比較することはない。

どんなにインターネットで調べても、実際に話をきいたところで、肝心のところはわからない。
結局、どこかに決めてエッジ交換を依頼するしかない。

では、どうやってそこを選ぶのか。
いくつかの候補を消去法で消していき、残ったところに依頼するのか。
それも判断材料が少なすぎる。

Date: 5月 28th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その7)

4343のトゥイーター2405を取り外して天板に置き、
すべてのユニットをインライン配置を実行したした人にとっては、
そのことによって得られた音の変化は、すべてインライン配置によるものだ、と判断してしまうことだろう。

けれど第三者は冷静である。
そこでの音の変化を、インライン配置によるものだとはすぐには結びつけない。
いい方向への音の変化であろうと、そうでない方向への変化であろうと、
2405をフロントバッフルから取り外して、
天板に置くことによるさまざまな変化がもたらした音と受けとめるかもしれない。
私は、そう受けとめる。

2405を天板に置くために(インライン配置にするために)、多くの要素が変化しているから、
そこでの音の変化をインライン配置によるものだとは捉えない。

もちろんインライン配置にしたことのメリットがあることは認める。
けれど、音の変化はインライン配置だけによるものではないことは、何度でも強調しておく。

それを「インライン配置はやっぱりいい」と言い切ってしまうことのもつ意味を考えてほしい、と思う。

そう言い切ってしまえれば、オーディオは楽である。
けれどオーディオの世界を知れば知るほど、そう言い切れないことがわかってくる。
何かを変える。そのことによって、他の要素も変ってしまうことが往々にしてある。
ひとつの要素だけ変えることは、厳格な意味ではできないのではないか──。

ならば、「インライン配置はやっぱりいい」と言い切ってしまってもいいではないか、
なにか不都合があるのか──。

その人が満足さえしていれば、不都合はないといえばない。
それでも、私はそうではない、と思うだけだ。

Date: 5月 28th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その11)

そういうわけで、ウレタンエッジにすることに決めた。
どれだけ持つのかはっりきとわからない。
交換したウレタンエッジも、いつの日かボロボロになるわけで、また交換しなければならない。
その時はまたウレタンエッジにするのか、
それともウレタンエッジに替る、いい材質のエッジが登場しているかもしれない。

とにかく今回はウレタンエッジにする。
では、どこに依頼するのか、となる。

ずっと以前はエッジの交換をやってくれるところを探すのも一苦労だった。
いまではインターネットで検索すれば、あちこちのオーディオ店でエッジ交換を受けつけていることがわかる。

いい時代になったな、ともいえるし、この中からどこを選ぶのがいいのか、
いまの時代は、そのことで迷う時代になっている。

以前ならば、見つけたところに依頼するしかなかったのが、いまでは選べるわけだ。

検索結果を丹念に見ていけば、評判のいいところがいくつかあるのがわかる。
そのうちのひとつは、その評判を耳にしていた。

そこを第一候補としたのだが、ここのウェブサイトのスピーカー・メンテナンスのページをみると、
お預かりに数ヵ月、とある。ここは時間がかかる、ともきいていた。
とはいえ数か月か……、と思った。
時間がかかるのはわかるけれど、数ヵ月預けている、ということが気になった。
自分のユニットではないだけに、よけいに、この点が気がかりとなる。

Date: 5月 28th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その10)

以前、JBLの4411を使っている知人から、エッジがボロボロになっているけど、どうしたらいいか、ときかれた。
ウレタンエッジにすればまたいつの日かボロボロになる。
できればウレタンエッジに替るものでいいものはないのか、ということだった。

もう七年ほど前のことだったから、
ヒノオーディオが扱っているエッジを奨めておいた。
自分でエッジ交換をする必要があるが、知人は結果に満足していた。

それから数年後に、今度はLE8Tのエッジが……、という相談があった。
その人にもヒノオーディオのエッジを奨めた。
彼もまた自分でエッジを交換している。

スピーカーユニットは振動板からのみ音が放射されているわけではない。
何度か書いているようにフレームからの輻射もあるし、エッジも振動しているわけで、
しかも外周にあるから面積としても決して小さいわけではない。
この部分からも、音が出ている。

しかもエッジは常にきれいに動いているわけではない。
大振幅で振動板が動いているときのエッジの変形は、けっこう複雑なものである。
エッジの種類、材質によってもそれは異ってくるものの、
振動板が前に動いているときにエッジの一部は前、他の部分は後と、いわゆる分割振動的な動きをすることもある。

これらは何がしかの音として、振動板からの音に絡み合ってくる。

だからエッジのコンプライアンスが、
もともとついているウレタンエッジと交換したヒノオーディオのエッジとがまったく同じであり、
交換したあとのf0も変化しなかったとしても、音がまったく同じということはあり得ない。

どちらがいいのかは、その人が判断することである。
少しばかり音は変っても、もうエッジ交換の心配をしなくて済む方が精神的に安心して聴ける、
このことの価値を大事にする人にとっては、ウレタンエッジへの交換よりも、
ヒノオーディオが取り扱っていたエッジを、私は奨める。

今回のスピーカーの補修にあたって、ヒノオーディオのエッジのことが真っ先に浮んだ。
できれば、この先エッジの交換をしなくて済むことが大事なことであったからだ。
だがヒノオーディオはもうない。エッジも手に入らなくなっている。