Jazz Spirit Audio(その5)
“Friday Night in San Francisco”。
私は、このディスクをどの位置で聴きたいか、といえば、
ステージの上で聴きたい。
ギターの至近距離にいて、聴きたい。
だから、そういう音で鳴ってほしい、と思う。
昨年のインターナショナルオーディオショウのあるブースで鳴っていた“Friday Night in San Francisco”は、
正反対の鳴り方だった。
いわゆるハイエンドスピーカーに共通するスピーカーよりも奥に定位する鳴り方。
とはいえスピーカーと聴取位置の距離はさほど離れていない。
比較的近い距離でもあった。
でも心理的距離感が遠く感じる音だった。
ギターのひとつひとつの音が鮮明に鳴れば、近くに感じられるかというと、必ずしもそうではない。
まったく異る音楽のディスクであれば、こういう鳴り方がふさわしいと感じることもあろうが、
そこで鳴っていたのは“Friday Night in San Francisco”。
ライヴ録音ゆえに収録されている観客のざわめき、歓声。
そういった要素がうまく鳴ればなるほど、観客の昂奮とは反比例するかのように、
こちらの心は冷静になっていくような、そんな感触の音が鳴っていた。
インターナショナルオーディオショウの四ヵ月ほど前に、
JBLのD130で“Friday Night in San Francisco”で聴いていたから、よけいにそう感じたのかもしれない。