Archive for category コントロールアンプ像

Date: 2月 3rd, 2015
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その3)

CDプレーヤーの出力は2Vrmsで、それまでのチューナーやテープデッキよりも出力電圧が高い。
ラインアンプのゲインが、CD登場以前のままではボリュウムをかなり絞り気味になる。
コントロールアンプのライン入力の感度も従来と同じというわけにはいかなくなってきた。

2Vあれば、ゲイン的にラインアンプは必要としない。
パワーアンプに直接接続すればいい。
レベルコントロールがパワーアンプ側にあれば、多少使いにくさはあるが、
パッシヴのフェーダーすらいらない。

デジタル信号処理が進歩したことでデジタルボリュウムも進歩している。
そうなってくるとパワーアンプ側のレベルコントロールもいらなくなる。
リモコンでレベルコントロールができる。使いにくさはなくなる。

しかもCD登場直前のコントロールアンプは、音質向上を謳い機能を省いたモノが多かった。
入力セレクターとレベルコントロールくらいの機能しかないモノもあった。
ならばいっそのことラインアンプは、もういらないんじゃないか、という発想が起るのが自然ともいえる。

そんなときに、いいタイミングでゼネラル通称がP&Gのフェーダーを使ったフェーダーボックスを製品化した。
けっこうヒットしたように思う。
しばらくしてより筐体をしっかりとつくったモデルも登場した。
こちらはしばらくステレオサウンド試聴室でもよく使っていた。

コントロールアンプの必要性を再考すべき時期が来ていた。
ステレオサウンドにいたとき、しっかりとこのことを再考していた、とはいえない。
反省がある。

離れてずいぶん経ち、こうやってブログを書くようになって考えている。
むしろCD(デジタル)だからこそ、コントロールアンプが必要だと、いまはいえる。

Date: 2月 3rd, 2015
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その2)

コントロールアンプは不要と考える人が出て来た(もしくは増えてきた)のは、
やはりCD登場以降である。

長島先生。
ステレオサウンド 61号を読まれた方ならば、
長島先生もまたコントロールアンプ不要の人ではないか、ということになる。

マランツのModel 7を長島先生は使われていた。
Model 7は管球式コントロールアンプを代表するモデルでもあり、
コントロールアンプとしての機能は過不足なく備えている。

けれど長島先生はModel 7のフォノイコライザーのみを使われていた。
トーンコントロールやフィルター機能をもつラインアンプは使われていない。

そしてレベルコントロールはDAVENのアッテネーターで行なわれていた。

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」。
ここでの瀬川先生の120万円の組合せ。
スピーカーはロジャースのLS3/5A、パワーアンプはルボックスのA740、
アナログプレーヤーはEMTの928。
コントロールアンプはない。

928にはイコライザーアンプが内蔵されている。
A740にはレベルコントロールがフロントパネルについている。
コントロールアンプがなくても最低限の機能は備えている。

もちろん予算が120万円と制約されていなければ、なんらかのコントロールアンプを選択されていたはず。
けれど制約の中とはいえ、ここで瀬川先生はコントロールアンプなしの組合せをつくられている。

とはいえ、CD登場以前はコントロールアンプを省こうとする人はそうはいなかったと思う。
それがCDの登場後、オーディオ雑誌でも取り上げられるし、実際の製品も登場するほど、
コントロールアンプの存在が稀薄になっていった。

Date: 2月 3rd, 2015
Cate: コントロールアンプ像

パノプティコンとしてのコントロールアンプ像(その1)

NTi AUDIOFLEXUS FX100に強い関心をもっている。

この関心の強さは、
パノプティコンとしてのコントロールアンプ像を考えていくうえで深く関係してくると考えているからだ。

コントロールアンプは不要という人はいる。
アナログディスクを聴くにしても単体のフォノイコライザーアンプとパッシヴのフェーダーがあればいい、
CDも同様にCDプレーヤーとパッシヴのフェーダーがあれば、そのままパワーアンプに接続できる。

こういう人は、余分なものを通すと必ず音は悪くなる、という。
そしてシンプル・イズ・ベストだともいう。
だが、パッシヴのフェーダーを使い、コントロールアンプを省くことが、シンプルとなるのか。
それについては、別項でこれから書いていくとして、
実は私も一時期、パッシヴのフェーダーを使っていた。

定インピーダンスのアッテネーター、それもH型のバランス仕様のものを使いバランス伝送でやっていた。
もちろんインピーダンスマッチングもやっていた。

これはこれならではの音の良さはあった。
それでも、いまはコントロールアンプは必要とする考えである。

フェーダーだけのモノをパッシヴ型という、
一方、増幅回路をもつモノをアクティヴ型ともいう。

パッシヴとアクティヴ。
パッシヴでコントロール可能なのはレベルだけである。
アクティヴとなると、どうなるのか。
パッシヴとあまり変らないアクティヴも少なくない。

エレクトロニクスは進歩している。
特にデジタルの信号処理技術は驚くほどの進歩である。
だからFLEXUS FX100もあらわれてきた、といえよう。

ならばより積極的なアクティヴなコントロールアンプの出現を、私は望んでいる。
それがパノプティコンとしてのコントロールアンプである。

Date: 12月 12th, 2014
Cate: コントロールアンプ像

ミキサーはコントロールアンプたり得るのか(その2)

マーク・レヴィンソンが送り出したコントロールアンプといえば、
まずマークレビンソン・ブランドのLNP2があり、それから機能を絞った薄型のJC2(ML1)、ML6、ML7が続き、
チェロ・ブランドのAudio Suitがある。

チェロ時代にはEncoreも出しているけれど、
機能的に捉えた場合、EncoreはML1、ML7的位置づけになるので割愛する。
その後のレッドローズ・ミュージック、現在のダニエル・ヘルツに関して、あえて取り上げない。

これら三つのコントロールアンプの形態で、
私がミキサー的なだなと感じるのは、LNP2よりもAudio Suitのほうである。

これら三つのコントロールアンプは、いずれもモジュール構成をとっているが、
そのモジュールの考え方は同じとはいえないところがある。

LNP2、JC2のころのモジュールは、いわばOPアンプ的モジュールである。
プラスチックの比較的小さなケースに回路基板をおさめ、ピッチで固めている。
ICタイプのOPアンプが、大きくなりディスクリート構成になったものといえる。

ML7、ML6A以降のモジュールはプラスチックのケースはなくなり、基板もかなり大型になっている。
モジュールといえばそうなのだが、視覚的にはメイン基板の上にサブ基板がコネクターを介して取り付けられている。

LNP2にはモジュールを追加することができた。JC2ではMCヘッドアンプを追加できた。
ML7以降になると、追加することはできなくなっている。
フォノイコライザー用の基板がMM型カートリッジ用とMC型カートリッジ用が用意されていたくらいだ。

これらとAudio Suitは、
モジュールの考え方・使い方が違っていて、その点がLNP2よりもミキサー的と感じるところへつながっている。

Date: 12月 10th, 2014
Cate: コントロールアンプ像

ミキサーはコントロールアンプたり得るのか(その1)

私がオーディオに興味を持ち始めた1970年代後半には、ミキサーの一部がコントロールアンプとして存在していた。

岩崎先生が愛用されていたクワドエイト(QUADEIGHT)のLM6200Rがその筆頭だし、
イタリアのギャラクトロン(Galactron、輸入元:成川商会)のMK16、
ベルギーのロデック(Rodec、輸入元:今井商事)のMixmaster、
それにマークレビンソンのLNP2は、もともとミキサーとして開発されたLNP1がベースとなっているし、
LNP2をミキサーとして作りかえたモノが、当時のチック・コリアのコンサートでは使用されている。

1970年代のステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEには、ミキサー/ノイズリダクションのページがあった。
当時は生録もブームだったこともあり、据置型だけでなく可搬型のミキサーもいくつかあった。
可搬型のモノはAC電源だけでなくDC電源パックが用意されていた。

この時代はまだCDは登場していなかったから、アナログディスクがプログラムソースの中心であり、
上記のモデルはすべてフォノイコライザーを搭載していた。
つまりフォノイコライザーがなければコントロールアンプとしてみなされなかった、ともいえる。

いまならば単体のフォノイコライザーアンプがいくつも登場してきているし、
アナログディスクを聴かない人もいるから、
フォノイコライザーを搭載していないミキサーでも、コントロールアンプとして使える、といえる。

ミキサーによってはパラメトリックイコライザーを搭載している機種もある。
ギャラクトロンのMK16は10バンドのグラフィックイコライザーを搭載していた。
クワドエイトのLM6200Rにはない。
ロデックのMixmasterには、いわゆるBASS・TREBLEのトーンコントロールがついていた。

コントロールアンプとミキサーとをわけるものといえば、ミキシング機能の有無なのだが、
それ以外にコントロールアンプとミキサーの共通するところ、そうでないところ、はっきりと違うところ、
これからのコントロールアンプ像を考えていく上で、ミキサーの存在は無視できないのではないか。

Date: 11月 23rd, 2014
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その18)

なぜ、プロフェッショナルではない、と私は言い切るのかといえば、
そういう手法を選択してしまった人たちは、
あれこれいうだろう、おまえが気づかないところまで細心の注意をはらってつくっているんだ、とか、
他にもいくつか、そういう人たちがいいそうなことは思い浮ぶが、
そんなことをではなく、プロフェッショナルであるならば問題解決を選ぶべきである。

にも関わらず問題回避を選んでいる。
だから、そういう人たちを私はプロフェッショナルではない、と言い切る。

Date: 11月 23rd, 2014
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その17)

コントロールアンプの入力端子のどれを使うかで音は変る。
以前のアンプ、フロントパネルの裏にロータリースイッチがあり、
リアパネルの入力端子からロータリースイッチまで配線を引き延している作りでは、
入力端子による違い、各入力間のクロストークは増える傾向にある。

ロータリースイッチではなくリレーを多用して、
入力端子からごく短い配線でメイン基板に接続し、そこでリレーによって切り替えを行うようにすれば、
各入力間のクロストークは大きく減少するし、入力端子による音の違いも減ってくる。

ゼロに近づけることができるけれど、決してゼロになることはない。
ならばいっそのこと入力端子を最少限にする。
つまりライン入力一系統にする。
そうすれば入力セレクターも省けるし、各入力間のクロストークも問題もなくなる。

そういうコントロールアンプはあったし、パッシヴフェーダーにもそういうものがある。
音質劣化の要素をなくすために、とか、音質最優先の設計を、そういう機種は謳う。

だがこの手の手法は、いかにもアマチュア的だ。
アマチュアが作るものであれば、これもありだが、
少なくとも製品化して一般市販するモノであれば、それはプロフェッショナルのつくるモノであってほしい。
もっといえば、プロフェッショナルのつくるモノでなければらない。

アマチュアでも思いつくことをプロフェッショナルと呼ばれている人がやる。
恥ずかしくないのか、と思う。

低価格でいい音という製品ならば、そういうアプローチもある。
そこまで否定する気はないが、非常に高価なコントロールアンプやパッシヴフェーダーでも、
そういう製品には、プロフェッショナルの矜恃はない。

以前、そういう製品に憧れ、そういうことをあれこれ夢想していたから、なおさらそうおもう。

Date: 11月 22nd, 2014
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その16)

コントロールアンプには入力端子がいくつかついている。
Phono入力があり、Line入力、Tape入力がある。
最近ではフォノイコライザーを搭載しないアンプの方が多くなってきたようだし、
テープ関係の入出力端子も省かれる傾向があるから、Line入力のみのモノもある。

Line入力が4系統あったとする。
Line1、Line2、Line3、Line4、
CDプレーヤーだけを接続するのであれば、どのLine入力にするか。

たいていはLine1になる。
私も最初の音出しはLine1を使う。
ただ細かなチェックな意味もかねて、他のLine入力端子にも接続して音を聴く。

アンプによってだが、必ずしもLine1が音がいいとは限らない。
Line4がよかったりすることもある。

これはなにもアナログ入力に限ったことではなく、
D/Aコンバーターデジタル入力端子をもつコントロールアンプでも同じである。

入力端子が複数ついていれば、すべての端子でまったく音が同じということはますありえない。
これは入力端子だけではなく出力端子についてもいえることだ。

入力端子による音の違いが大きなアンプもあれば、気をつけなければあまり感じさせないアンプもある。
けれどすべての端子で全く同じ音がすることはない。

ソニーのTA-ER1は、この点でも見事だった。
どの端子に接ぎかえても音は変化はわずかであった。
こういう配慮がなされたコントロールアンプの先駆け的存在だった。

Date: 11月 21st, 2014
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その15)

コントロールアンプの試聴では、試聴に必要な最低限の機器しか接続しないことが大半だ。
入力機器としてアナログプレーヤーとCDプレーヤーが、一機種ずつ程度である。

フォノイコライザーを持たないコントロールアンプであれば接続される入力機器は、
CDプレーヤー一台だけということになる。

だが現実にユーザーのリスニングルームではそういう例も少なくないけれど、
そうでないケースもまた多い。

CDプレーヤーにしても二台、三台持っている人もいるし、
チューナー、テープデッキを接続する人もいる。

アナログプレーヤーに関しても、一台のプレーヤーでもトーンアームをダブルにしている人もいるし、
一台のアナログプレーヤー、一本のトーンアームという場合でも、
カートリッジがMC型かMM型、MC型ならば昇圧手段はトランスなのかヘッドアンプなのか、
そういった違いがあり、それによってコントロールアンプは多少なりとも影響を受ける。

接続される機種の数、種類によって音は変化するし、
接続している機種の電源を入れるか入れないかでも音は影響を受ける。

だからコントロールアンプの理想としては入力端子すべてになんらかの機器が接続され、
すべての接続される機器の電源がオンの状態でも、まったく影響を受けないことが挙げられる。

実際にはこれは非常に困難なことであるし、
かなり高価なコントロールアンプでも、そういったことに配慮をはらっていないモデルも少なくない。
そういうモデルは、左右チャンネルのクロストークではなく、
各入力端子間のクロストークのチェックをすると、ボロを出すモノがある。

私がテストする機会があった範囲でいえば、ソニーのTA-ER1は十分な配慮がなされたコントロールアンプだった。

Date: 4月 5th, 2014
Cate: コントロールアンプ像

モードセレクター(その2)

モードセレクターはほんとうに必要なのだろうか、とそのころの私は考えた。
ステレオ録音のLPを聴くのであればモードセレクターは必要としない。
モノーラル録音のLPを聴くのであれば、ステレオ用カートリッジではなくモノーラル専用カートリッジを用意する。
スピーカーも左右両チャンネル鳴らすのではなく、どちらか片方だけを鳴らす。

こう考えればモードセレクターが必要な機能とは思えなかった。

そのころの私はモノーラル専用カートリッジはまだ買えなかったし、
モノーラルLPの数も持ってはいたけれどいまよりもずっと少なかった。

将来はモノーラルはモノーラル専用カートリッジで、と考えていた私は、
モードセレクターはそういう機能だとしか認識できていなかった。

モノーラル録音をステレオ装置で聴くためのスイッチとして機能しかないように考えていたわけだ。
この考えはけっこう長かった。
20代になっても30代になってもモードセレクターの必要性は感じることがなかった。

モードセレクターに対する認識がはっきりと変ったのは40代になってからだ。
モードセレクターはチェックのために必要な機能だ、とやって気がつくことができた。

Date: 4月 4th, 2014
Cate: コントロールアンプ像

モードセレクター(その1)

音のために機能を省く、ということは、
1970年代ごろから始まったことであり、あの時代、いきついたのがマークレビンソンのML6ともいえた。

ML6のシルバーのフロントパネルにあるツマミはふたつだけ。
インプットセレクター(それもPhoneとLineのふたつだけ)とボリュウム。
トーンコントロールはおろかフィルター、テープモニター関係のスイッチは何ひとつなかった。

しかも左右チャンネル別シャーシーだから、
インプットセレクター、ボリュウムの操作は左右チャンネルで独立して行うことになる。

使い勝手の悪いコントロールアンプである。
それでも当時は、ここまでしないと得られない音の世界というものがあり、
それに魅了された人は確実にいる。

ML6が登場したころ高校生だった。
音のめたには、ここまでしないといけないのか、と、
まだ聴いたことのないコントロールアンプML6は憧憬の的だった。

コントロールアンプにはどういう機能が必要なのか。
ML6には最低な機能しかなかった。

未熟ながら、あれこれ考えていた。
どんなに回路技術が進歩してまったく音質の変化の生じないアンプが生れてきたとしても、
接点が一箇所増えればそれだけで音質は変化する。
ケーブルでも音は変る。

そういう微妙なところで音は変るのだから、どんなに技術が進歩しようとも、
音質変化の全く生じないアンプなど、到底無理なわけだ。

ならば音のために省けるものはすべて省いていくべきではないか、と10代の未熟な私は考えた。
コントロールアンプの機能の中で、最も必要としないのは何か。

未熟な私はモードセレクターだ、と考えた。

Date: 8月 19th, 2011
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その14)

クロストークというと、
一般的には、左チャンネルから右チャンネル(右チャンネルから左チャンネル)へ音のもれを指すが、
実際のコントロールアンプでは、これ以外のクロストークも問題になってくる。

コントロールアンプには、最近ではフォノイコライザーアンプを搭載しないものも増えてきているが、
基本的にはフォノ入力、ライン入力、テープ入力を備える。

コントロールアンプにCDプレーヤーをつなぎ、再生ボタンを押す。
インプットセレクターをCDにすれば、とうぜんCDに収められている音楽がスピーカーから聴こえてくる。
ここでインプットセレクターを、他のポジションにしてみる。AUXにする。
ボリュウムをあげていくと、CDに収められている音楽が聴こえる。
インプットセレクターをフォノにしてみる。またボリュウムをあげていく……。

クロストークは、左(右)チャンネルから右(左)チャンネルへのもれだけではなく、
こういう入力端子間でのクロストークもある。

これをなくすには、あいている入力端子にショートピンと差すという手がある。
ただショートピンを差すと、アンプによっては、まれに不都合を生じるものはないわけではないので、
すこしばかりの注意は必要になる。
それでもショートピンの効果は大きく、さっきまではっきりと聴こえていたクロストークがぴたっとおさまる。

もちろんすべてのコントロールアンプで、入力端子間のクロストークがはっきりと聴きとれるわけではない。
盛大に聴こえるもの、かすかにしか聴こえないもの、まったく聴こえないものがあり、
その聴こえ方も、わりと素直にきれいに聴こえるもの、どこかにフィルターがかかっているように聴こえるもの、
ノイズで汚れたように聴こえるもの、などなど。

このチェックをやっていくと、コントロールアンプの入力端子をどう扱うによって(つまりテスト条件によって)、
そのコントロールアンプの音そのものが、ときには、製品によっては大きく変化してしまうことがある。

Date: 7月 20th, 2011
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その13)

チェロのAudio Suiteについて、もう少し詳しく眺めてみる。
Audio Suiteの構造はリアパネルから見ることで、ほぼつかめる。

リアパネル中央下部にバリアターミナルがある。ここに外部電源ユニットからのケーブルをネジ止めする。
このバリアターミナルから、リアパネル下部を横切る10本のバスバーの中央4本にケーブルが延びている。
つまりこの4本が、各モジュールへの電源供給ラインとなる。
のこりのバスバーは6本となり、この6本が入力モジュールと出力モジュールと信号ラインとなる。

Audio Suiteの出力モジュールは2ユニット分の幅がある。入力モジュールは1ユニット分で、最大8枚搭載できる。
電源ユニットには、入出力モジュールをすべて装着しても容量に余裕があるように設計されているものの、
実際には、もしアナログディスクのみしか聴かないのであれば、フォノ入力モジュールと出力モジュールだけ、
CDのみであればライン入力モジュールと出力モジュールだけ、というふうにモジュールの数を最少限に抑えた方が、
より透明度が増し、Audio Suiteならではの芳しさはより香り立つようになる。
そして音の変化はモジュールの数だけが関係してくるのではなく、モジュールをどこにするのか、
その位置によっても、モジュールの数ほどの差ではないにしても変化する。

リアパネルのバスバーで信号とやりとりと電源が供給されるわけだから、
つまりこのバスバーはケーブルと同じことで、入力モジュールと出力モジュールを中央に集めることで、
信号と電源が通るバスバーの距離はもっとも短くなる。
その反面、ふたつのモジュールの距離が最小になるため、モジュール間の干渉は最大になるとはいうものの、
私が聴いたかぎりでは、やはりモジュールの数を入力モジュールと出力モジュールそれぞれ1つずつにして、
中央に集めたほうがよかった。

ただこういう配置にしてしまうと、見栄えがなんとなくよくない。
出力モジュールはフロントパネル右端にあったほうがおさまりよく感じる。

こういうモジュールの数、位置による音のわずかとは言い難いが、
だからといって、そのアンプの本質までも変えてしまうわけではない「差」は、
QUADの44にしてもメリディアンのMCA1、MLPについてもいえる。

Date: 3月 4th, 2011
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その12)

インプットアンプをそれぞれの入力端子ごとに設けているコントロールアンプは、過去に幾つかある。

チェロのAudio Suiteではライン入力に関しては、ふたつ用意されていたと記憶している。
グレードの違いで、プレミアム・モジュールとベーシック・モジュールだったはずだ。

メリディアンのMCA1、MLPのライン入力は、
CDプレーヤー専用のモジュールが用意されていた。
他の機器と比べてCDプレーヤーの出力レベルが高いため、入力感度を低くするとともに、
たしか入力ンインピーダンスを通常よりも高くしていたようにも記憶している。
さらに高域の周波数特性も、あるところから数dBステップダウンするようになっていたはずだ。

CDプレーヤー登場以前のQUAD・44にもCD用のモジュールが用意された。
これも入力感度は、チューナー、AUX用のモジュールよりも低かった。

44はシャーシー内部ほぼ中央にマザーボードが垂直に立っている。
このマザーボードにそれぞれのインプットアンプ・モジュールはピンで刺さり接続される。
ピンの数は7本。フォノ入力モジュール、通常のライン入力モジュールが使用するのは、このうち5本。
信号用で3本使用(左右チャンネル1本ずつとアースの1本)、電源用に±で2本となっている。
7本すべて使用するモジュールはテープ用モジュールだげだ。

Audio Suiteはリアパネルの下半分に厚めの金属のバスバーが10本通っている。
この金属のバーに各モジュールはネジ止めされ、信号のやりとりと電源の供給を受ける。

メリディアンはそれぞれのモジュールの側面片側にピン、反対側の側面にピンを受けるコネクターがあり、
信号、電源のほかにロジック信号のやりとりを行っている。

Date: 3月 4th, 2011
Cate: コントロールアンプ像

私がコントロールアンプに求めるもの(その11・補足)

パッシヴフェーダーの回路図は簡単だ、といわれる。
入力セレクターも設けないパッシヴフェーダーともなると、
回路図に書き込む部品は、入力端子、ボリュウム、出力端子とそれぞれを結ぶ線だけだ。
1分もあれば回路図は描ける。

入力端子と出力端子を結ぶ2本の平行線のあいだにボリュウムを挿入するだけ。
けれど、ボリュウム(減衰器)の基本原理に立てば、この回路図は「線」が足りないことに気がつく。

このことについては別項の「パッシヴフェーダーについて、すこしだけ」に書いているので、
具体的なことはそちらを読んでいただきたい。

これはボリュウムをシャーシーにおさめないバラックの状態でも実験できることだ。
従来のパッシヴフェーダーの回路図に足りなかった「線」を加えることは、
あえてコントロールアンプを使わずにパッシヴフェーダーを選択している人にとっては、
決して無視できない音の変化を示してくれるはずだ。