Date: 5月 11th, 2015
Cate: コントロールアンプ像, デザイン
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コントロールアンプと短歌(その1)

それは日本古来の短歌という形式にも似ている。三十一文字の中ですべての意味が完了しているという、そのような、ある形の中で最大限の力を発揮するという作業は、まことに日本人に向いているのだ、と思う。
     *
これは瀬川先生がラジオ技術 1961年1月号に書かれた文章である。
瀬川先生は1935年1月生れで、1961年1月号は1960年12月に出ているし、
原稿はその前に書かれているのだから、瀬川先生25歳の時の文章となる。

この文章はコントロールアンプのデザインについて書かれたもの。
短歌は、五・七・五・七・七の五句体からなる和歌であるから、
31文字であれば、六・六・五・五・九や四・五・六・八・八でいいわけではなく、
あくまでも31文字という制約と五・七・五・七・七の五句体という制約の中で、すべての意味が完了する。

正しく、これはコントロールアンプのデザインに求められることといえる。
これだけがコントロールアンプのデザインのあるべき姿とはいわないが、
瀬川先生がこれを書かれてから50年以上経ついま、きちんと考えてみる必要はある。

瀬川先生の、この文章を読んで、まず私が頭に思い浮べたのは、
ヤマハのCIとテクニクスのSU-A2だった。
どちらも非常に多機能なコントロールアンプである。
コントロールアンプの機能として、これ以上何が必要なのか、と考えても、
すぐには答が出ないくらいに充実した機能を備えているだけに、
それまでのコントロールアンプを見馴れた目には、
コントロールアンプという枠からはみ出しているかのようにもうつる。

ツマミの数も多いし、メーターも装備している。
そうなるとフロントパネルの面積は広くなり、それだけの機能を装備するということは、
回路もそれだけのものが必要となり、消費電力も増える。
電源はそれだけ余裕のある設計となり、筐体も大きくなり、
CIは重量17kg、消費電力55W、
SU-A2は重量38.5kg、消費電力は240Wとなっている。

このふたつのコントロールアンプは、だから短歌的デザインとはいえない、といえるだろうか。
私の知る限り、CI、SU-A2に匹敵する多機能のコントロールアンプは他にあっただろうか、
日本以外のメーカーから登場していない。

このふたつのコントロールアンプは、日本だから登場したモノといえる。
ということは、これらふたつのデザインに、短歌的といえるなにかを見いだすことができるのか。
そう考えた。

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