モードセレクター(その1)
音のために機能を省く、ということは、
1970年代ごろから始まったことであり、あの時代、いきついたのがマークレビンソンのML6ともいえた。
ML6のシルバーのフロントパネルにあるツマミはふたつだけ。
インプットセレクター(それもPhoneとLineのふたつだけ)とボリュウム。
トーンコントロールはおろかフィルター、テープモニター関係のスイッチは何ひとつなかった。
しかも左右チャンネル別シャーシーだから、
インプットセレクター、ボリュウムの操作は左右チャンネルで独立して行うことになる。
使い勝手の悪いコントロールアンプである。
それでも当時は、ここまでしないと得られない音の世界というものがあり、
それに魅了された人は確実にいる。
ML6が登場したころ高校生だった。
音のめたには、ここまでしないといけないのか、と、
まだ聴いたことのないコントロールアンプML6は憧憬の的だった。
コントロールアンプにはどういう機能が必要なのか。
ML6には最低な機能しかなかった。
未熟ながら、あれこれ考えていた。
どんなに回路技術が進歩してまったく音質の変化の生じないアンプが生れてきたとしても、
接点が一箇所増えればそれだけで音質は変化する。
ケーブルでも音は変る。
そういう微妙なところで音は変るのだから、どんなに技術が進歩しようとも、
音質変化の全く生じないアンプなど、到底無理なわけだ。
ならば音のために省けるものはすべて省いていくべきではないか、と10代の未熟な私は考えた。
コントロールアンプの機能の中で、最も必要としないのは何か。
未熟な私はモードセレクターだ、と考えた。