オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その5)
今回私が補修することになったスピーカーシステムは、サイズとしては日本のブックシェルフ型とそう変らないが、
メーカーはフロアー型としているし、実際に床に直置きする。
エンクロージュアは叩いてみればわかるように、そんなに分厚い板を使っているわけでもない。
補強棧をがちがちにいれているタイプでもない。
どんな造りになっているのか。
ウーファーを外してまず目につくのは、前後のバッフルを結合している太い角材だ。
この角材は、エンクロージュアのサイズ、板厚から判断しても、かなり太いように感じる。
この構造こそが肝心なのだ、と暗に語っているように感じる。
スピーカーシステムの音を大きく左右するのは、
スピーカーユニットと、この補強棧の入れ方であると、このメーカーは考えているのではないだろうか。
ネットワークのパーツやエンクロージュアの内部配線材によって音が変ることはわかっている。
けれど、そんなことよりもまず大事なことがあり、それらをきちんと押えておくこと──。
そういうスピーカーシステムなのだと、思う。
ネットワークからユニットまでの配線材も細い。
ネットワークの部品を結ぶ線もコイルの銅線を引き出してそのまま使っている。
コンデンサーを固定しているラグ板とスピーカー端子の関係をみても、
そうとうに合理主義で、きちんと作られていることがわかる。
こういうスピーカーシステムに、オーディオ用パーツは似合わない。