Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 7月 14th, 2011
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その38)

コントロールアンプにLNP2を持ってくるのであれば、いっそのことパワーアンプもML2にするとか、
LNP2と同時代のパワーアンプの中から選ぶ、ということも考えられるが、
私の考え方として、パワーアンプは近年の優秀なモノは、あきらかにスピーカーをドライヴする能力は向上している。
JBLのパラゴンという、すんなり鳴ってくれるわけではないスピーカーシステムに対しては、
とにかく優秀なパワーアンプを組み合わせたい。
それだけで、パラゴンを鳴らすスタート地点が変ってくるし、しなくてすむ苦労が省ける。

もちろん近年のパワーアンプのすべてが、LNP2と同時代のパワーアンプよりも優れているわけではない。
私がパラゴンを鳴らしてみたいとつねづね思い描いているオラクルのSi3000は、優れた能力をもっている。
それにSi3000の、うまい表現がなかなか思いつかないが、濃密な表情をもつ、このアンプの音は、
音色的にもパラゴンに合う印象があるし、パラゴンをどこまでも鳴らしあげるパワー(力)もある。

パラゴンとSi3000の相性は、いいと想像できる。
LNP2とSi3000の相性となると、どうだろう。
うまくいきそうな気もするし、まったく、お互いに相容れない結果になるかもしれない。
どっちにころぶかは、正直予測できない。
こんな組合せをやっている人もいそうにないし、確かめることもできない。

なので、もしかして、という場合のために、ひとつ考えていることがある。
LNP2の出力の直後にライントランスをあえて挿入してみよう、と思っている。

Date: 7月 12th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その26)

低域はヴァイタヴォックスで、中高域はJBL、
つまり低域はイギリスで中高域はアメリカ、ということでもある。
いくらなんでも、そういう組合せでうまくいくわけがないだろう、と思われても仕方ない面がある。

でもヴァイタヴォックスは、ロンドン・ウェストレックスのスピーカーユニットの製造を請け負っていた会社だ。
そういうこともあり、イギリスのアルテック的な捉え方もされている。
となると、ヴァイタヴォックスも、JBLもアルテックも元をたどれば同じところに行きつく。
まったく異質なモノを組み合わせようとしているわけではない、というすこし強引な言い訳はできる。

BBCモニターは、LS5/1のときからウーファーとトゥイーターの製造メーカーは違っていた。
LS5/1ではウーファーはグッドマン製、トゥイーターはセレッション製だった。
LS3/5Aはウーファー、トゥイーターともKEF製だったが、むしろメーカーが揃っていることが珍しい。

BBCの流れを汲むスペンドール、ハーベスなどもウーファーは自社製でも、トゥイーターは他社製だ。
LS5/8ではトゥイーターはフランスのオーダックス製と、国とメーカーも異る仕様になっている。

そんなことも併せて考えると、ウーファーがヴァイタヴォックス製で、トゥイーターがJBLというのは、
なにかうまくいきそうな感じがしないが、
音楽のメロディ帯域の受持つウーファーがヴァイタヴォックス(イギリス製)であれば、
多少苦労してでも、うまく音をまとめあげれば、決して異端のスピーカーシステムというよりも、
わりと真当なスピーカーシステムと仕上がるはずだ。

そんな確信に近いものをもてるのは、
LE175DLHは、瀬川先生が惚れ込まれたユニットのひとつだから、である。

Date: 7月 12th, 2011
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その37)

音のいいコントロールアンプ、優秀なコントロールアンプよりも、
ここでの組合せには、インプレッショニズムのスピーカーシステムとしてパラゴンをとらえたときに、
その魅力を損なうモノは論外で、倍加(というよりも倍化)してくれるコントロールアンプであってほしい。

そうなると、どうしてもマークレビンソンのLNP2が真っ先に浮んできてしかも消えてくれない。
かわりに、あのアンプは、このアンプは、と無理矢理あれこれ思い浮べようとしても、
自分の中に、その選択に対する不自然さを感じてしまい、
結局LNP2になってしまうのか、と自分でもあきれてしまう。

20代のころ、中古ではあったがJC2を購入した。
このときはLNP2よりも、音の良さとして、JC2の方に魅力をより強い感じていた。
それから20年が経ったいま、どちらを選ぶかというと、ためらうことなくLNP2にする。

確かに、このころのマークレビンソンのアンプに、
徹底した音の透明なよさ、どこまでも切れ込んでいく解像力のよさ、
そういった音の良さを求めるのであれば、JC2のほうが上だと思う。
でも、曖昧な表現になってしまうが、音楽を聴いたときの深さのある質感では、LNP2である。
そういう深さが、JC2は稀薄に感じられた。

このことはマーク・レヴィンソン自身も、
LNP2にはJC2にはない音のとディープネスがある、と語っていたときいている。
結局、この深さ(ディープネス)をより深くするために、
瀬川先生はLNP2にあえてバッファーアンプを追加されたのだろう。
バッファーアンプを追加することは、アンプモジュールのLD2をひとつ余計に信号が通ることになる。
そのことによる音の鮮度の低下を問題にする人、
LNP2を使いながらも、トーンコントロールをパスしてRECORD OUTから出力を取り出している人、
もしくはライン入力をTAPE端子に接続している人(これらのことでLD2をひとつパスできる)、
そういう人はLNP2よりもJC2(もしくはML1)を使った方がいい、と思う。

Date: 7月 11th, 2011
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その36)

パラゴンと同じJBLのスピーカーシステムでも、プロフェッショナル・シリーズの4350、4343は、
楽器から放たれてマイクロフォンがとらえた音そのものを、即物的に鳴らす。
この、音そのものを即物的に鳴らす傾向は、
ヨーロッパのスピーカー、とくにイギリス系のスピーカーシステムの特質とは対照的なもので、
JBLのコンシューマー用スピーカーシステムにも聴き取ることができる、とはいうものの、
やはりそれが顕著なのは4350だったり4343だったりする。

あえていえば4350、4343といったスタジオモニター・シリーズを写実派とすれば、
パラゴンはあきらかに印象派(インプレッショニズム)といえるスピーカーシステムであり、
パラゴンが再現し聴き手に提示する音場は、できるかぎり録音現場の音場をそのまま再現しようというよりも、
その録音現場の「場」の雰囲気・印象を、うまく鳴らしたときは、実に生き生きと再現する。

パラゴンは、そういうスピーカーシステムだからこそ、コントロールアンプをうまく選択することで、
インプレッショニズムのスピーカーシステムとして、音楽をリアルに鳴らしてくれる、といえる。
もちろん、そのリアルさは、インプレッショニズムの表現としてのものである。

その意味で、ここで使ってみたい、組み合わせてみたいコントロールアンプには、
音の深みといった要素を色濃くもつモノにしたい。

いったい、そういうコントロールアンプがいくつあるだろう……。

Date: 7月 10th, 2011
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その35)

プリメインアンプのオラクルのSi3000をもってきておいて、なぜコントロールアンプを使うのか。
Si3000、JBLのパラゴンとの組合せにふさわしいモノとなると、安いものではすまない。
それなりの金額のするものとなる。

本来必要としないものにお金をかけることこそ無駄だどころか、
わざわざ余分なお金をかけて、音を悪くするようなものではないか、と思われる人もいよう。

音の鮮度ということを最優先に考えれば、余計な回路は通したくない、という気持は私にだってある。
そう思いながらも、鮮度の高い音は、必ずしも鮮明な音ではない。
一般に言われている鮮度の高い音が鮮明な音とイコールのこともあるが、鮮明に音楽を響かせるかというと、
音の出口となるスピーカーシステムに、何を持ってくるかによって、変ってくる。

ここで組合せの要となっているのJBLのパラゴンという、もう半世紀も前につくられたスピーカーシステムである。
しかも、通常のスピーカーシステムとは大きく異る構造をもつ。
使いこなし、鳴らし込みも、一筋縄ではうまくいかない面ももつパラゴンだけに、
あえてコントロールアンプを使いたい。そうすることが、逆に近道になる予感がなんとなく感じられる。

それに鮮度の高い音だけが、音楽を新鮮に聴き手に感じさせるわけでもない、ということも書いておきたい。

Date: 7月 10th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その19の補足)

ストロットを採用したスピーカーシステムはBBCモニター以外にも、
この項で取り上げたAmazonのA.M.T.One以外にも、日本のスピーカーシステムの中にも過去に製品化されている。

1970年代半ばにオンキョーから出たE212AとE213Aが、そうだ。
BBCモニターと、これら2機種のスピーカーシステムの差違はウーファーの取りつけ方と、
それにともなうストロットの設け方である。

BBCモニターではフロントバッフルの開口部を矩形として、バッフルの裏側からウーファーを取りつける。
オンキョーのスピーカーシステムでは、フロントバッフルの表からとりつけて、
ウーファーの前面に矩形開口部のサブバッフルを取りつけている。

オンキョーでも、矩形開口とすることで、ウーファーの中域までの指向特性を改善できる、としている。
オンキョーの2機種で注目したいのは、ストロットの形状に違いがあること。
E213Aで一般的なストロットだが、E212Aでは矩形開口部の両脇にスリットがある。
つまり細長い板2枚をウーファーの左右両端に配して中央に大きめの矩形開口部をつくり、
ストロットを作っている板の外側にスリットができている。

ただこのスリットから見えるのはウーファーのフレームであり、振動板はかくれている。
ということはこの両脇のスリットからは何の効果もないのか……となりそうだが、
どうもそうは思えない。
それにE212Aのストロットの在り方をみていると、二重スリット実験を連想する。

ストロットの基本はBBCモニター的手法となるけれど、もう少し発展させたストロットがありそうな予感を、
E212Aは与えてくれた、といってもいい。

Date: 7月 9th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その2)

BBCモニターの開発過程における試聴プログラムソースに、
音楽だけではなくアナウンサー(主に男性)の朗読も使われていたのはよく知られていることだ。

そのこととLS3/5Aのサイズのことを一緒くたにして、
LS3/5Aというスピーカーはアナウンサーの声のチェック用モニターであって、
音楽を聴くために開発されたスピーカーではない──、
こんなことを言う人が、残念ながらいる。

KEFの創立者であるレイモンド・クックも、音楽以外にアナウンサーの声でチェックしている、と、
音楽之友社から出ている「ステレオのすべて ’75」の中で語っている。
レイモンド・クックは、BBCモニターの開発にも携わっていた人だから、
その開発手法のよいところは、そのまま受け継いでいるからだろうと思われるが、
クックは、音楽を聴いているとマスクされてしまうピーク、あるいはディップといった欠点が、
アナウンサーのスピーチでは聴きとれるからだ、としている。

「ステレオのすべて ’75」の、クックの発言は日本語訳がわかりにくいところがあるうえに、
省略されていると思われるところもある。
だから読み手側でクックの発言を深読み、というか、補うような読み方をしなければならない。

私なりの読み方では、次のようなことだと思う。
音楽がプログラムソースでは、音の強弱がある。ピアニッシモもあればフォルティッシモもあって、
大編成のオーケストラで優秀録音であればダイナミックレンジは広い。
その反対にアナウンサーのスピーチに、音楽のような、広い音の強弱はない。
クックのいうアナウンサーのスピーチは、朗読家による小説の朗読の類いではなく、
おそらくニュース原稿を読むアナウンサーのそれであろう。

それに音楽とスピーチとでは、録音に使うマイクロフォンの数とその使い方が大きく違う。
モノーラルならばスピーチの録音に使われるマイクロフォンの数は1本、
そこに凝った録音手法は使われることはない。

こういう違いのある音楽の音源と、スピーチの音源の両方を使い、
スピーカーシステムの開発を行っている、ということであって、
スピーチ用のスピーカーシステムとして作っているわけではない、ということだ。

Date: 7月 3rd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・続補足)

アルテックの620Bの組合せの中に、そのことは出てくる。

620Bの組合せをつくるにあたって、
机上プランとしてアルテックの音を生かすには新しいマッキントッシュのアンプだろう、と考えられた。
このころの、新しいマッキントッシュとはC29とMC2205のことだ。
ツマミが、C26、C28、MC2105のころから変っている。
C29+MC2205の組合せは、ステレオサウンドの試聴室でも、瀬川先生のリスニングルームでも、
「ある時期のマッキントッシュがもっていた音の粗さと、身ぶりの大きさとでもいったもが、
ほとんど気にならないところまで抑えこまれて」いて、
マッキントッシュの良さを失うことなく「今日的なフレッシュな音」で4343を鳴らしていた。

なのに実際に620Bと組み合わせてみると、うまく鳴らない。
「きわめてローレベルの、ふつうのスピーカーでは出てこないようなローレベルの歪み、
あるいは音の汚れのようなもの」が、620Bでさらけ出されうまくいかない。

瀬川先生も、4343では、C29+MC2205の
「ローレベルのそうした音を、♯4343では聴き落して」おられたわけだ。

620Bの出力音圧レべは、カタログ上は103dB。4343は93dB(どちらも新JIS)。
聴感上は10dBの差はないように感じるものの、620Bは4343よりも高能率のスピーカーである。
ロジャースのPM510は、4343と同じ93dBである。

つまり4343では聴き落しがちなC29+MC2205のローレベルの音の粗さの露呈は、
スピーカーシステムの出力音圧レベルとだけ直接関係しているのではない、ということになる。

これはスピーカーシステムの不感応領域の話になってくる。
表現をかえれば、ローレベルの再現能力ということになる。

PM510は4343ほど、いわゆるワイドレンジではない。
イギリスのスピーカーシステムとしてはリニアリティはいいけれど、
4343のように音がどこまでも、どこまでも音圧をあげていけるスピーカーでもない。
どちらが、より万能的であるかということになると4343となるが、
4343よりも優れた良さをいくつか、PM510は確かに持っている。

このあたりのことが、927Dst、A68、A740の再評価につながっているはずだ。

Date: 7月 3rd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・補足)

レコード芸術では、4343をスチューダーA68やルボックスのA740で鳴らすと、
4343の表現する世界が、マーレレビンソンの純正組合せで鳴らしたときも狭くなる、と発言されている。

このことだけをとりあげると、ロジャースのPM510の表現する世界も、4343と較べると狭く、
だから同じ傾向のA68、A740とうまく寄り添った結果、うまく鳴っただけのことであり、
スピーカーシステムとしての性能は、4343の方が優れている、と解釈される方もいるかもしれない。

4343とPM510では価格も違うし、ユニット構成をふくめ、投入されている物量にもはっきりとした違いがある。
PM510はイギリスのスピーカーシステムとしては久々の本格的なモノであったけれど、
4343やアメリカのスピーカーシステムを見慣れた目で見れば、
あくまでもイギリスのスピーカーにしては、ということわりがつくことになる。

だがスピーカーシステムとしての性能は……、という話になるとすこし異ってくる。

BBCモニター考」の最初に書いたことだが、
私の経験として、4343では聴きとれなかった、あるパワーアンプの音の粗さをPM510で気がついたことがあった。

「BBCモニター考」ではそのパワーアンプについてはっきりと書かなかったが、
このアンプはマッキントッシュのMC2205だった。
MC2205以前のマッキントッシュのパワーアンプならまだしも、MC2205ではそういうことはないはず、
と思われるかもしれない。私もMC2205にそういう粗さが残っていたとは思っていなかった。

しかもそのローレベルでの音の粗さが4343では聴きとれなかったから、
PM510にしたとき、MC2205の意外な程の音の粗さに驚き戸惑ってしまった。

そのときは、だれも気がついていないことを発見したような気分になっていた。
でもいま手もとにある、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’80」の中で、
瀬川先生がすでに、MC2205のローレベルの音の粗さは、すでに指摘されていた。

Date: 7月 3rd, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その20)

ひところ自転車のフレームの材質として、アルミニウムが流行ったことがあった。
それまでは、ただぼんやりとアルミは鉄よりも軽くて非磁性体だけど、強度は鉄の方が上、と思っていた。

自転車の雑誌には、各メーカーからのアルミ・フレームの新製品がほぼ毎月のように掲載されていた。
そしてアルミの種類についての記述があった。

アルミニウム、といっているけど、実際に自転車のフレームに使われるのはアルミニウム合金であって、
銅、マンガン、硅素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルなどが加えられ、
1000番、2000番、3000番、4000番、5000番、6000番、7000番と大まかに分類され、
それぞれに、いくつかの種類が存在していることを知った。

しかも熱処理をするかしないか、するとしたら、どの程度の温度でどの程度の時間、行うかによって、
強度がまた変化することも知った。

つまり一般的な鉄よりも、ずっと硬いアルミニウム合金がある、ということだ。
その一方で、ナイフで切れるほどやわらかいアルミニウムもある、ときいている。

鉄と同等、それ以上の強度を実現しているアルミニウム合金ならば、
ピアノのフレームに使っても、強度的な問題はないはず。
アルミニウム合金でフレームをつくれば、ピアノの重量は軽くなり、運搬もすこしは楽になる。
けれどアルミニウム合金フレームのピアノは、ない。
(念のため検索してみたら、1938年にドイツのブリュートナーが、
飛行船に乗せるためにアルミ・フレームのグランドピアノを作って話題になった、とある。)

なぜアルミ・フレームのピアノは登場しないのか。
もしかすると各社、研究はしている、もしくはしていたのかもしれない。
いまの技術があれば、1938年のアルミ・フレームよりも優れたものが作れるはずなのに、
出てこないのは、やはり「音」が関係しているからだろう。

Date: 7月 2nd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャースPM510・その5)

ロジャースのPM510も、スペンドールのBCII、KEFのLS5/1A、105、セレッションのDitton66、
これらは大まかにいってしまえば、同じバックボーンをもつ。
開発時期の違いはあっても、スピーカーシステムとしての規模もそれほどの違いはない。

なのにBCII、Ditton66、それにLS5/1Aだけでは……、
PM510が登場するまではEMTの927Dstを手放そう、と思われたのはなぜなのか。
スチューダーのA68にしてもそうだ。
PM510が登場してきて、A68の存在を再評価されている。
なぜ、LS5/1A、BCII、Ditton66といったスピーカーシステムでは、
そこまで(再評価まで)のことを瀬川先生に思わせられなかったのか。

一時は手放そうと思われた927Dst、
アメリカのアンプばかりメインとして使ってこられた瀬川先生にとってのA68、
このふたつのヨーロッパ製のオーディオ機器の再評価に必要な存在だったのがPM510であり、
実はこのことが、瀬川先生に「PM510を『欲しい!!』と思わせるもの」の正体につながっているはずだ。

そして、このことは、このころから求められている音の変化にもつながっている、と思っている。

Date: 7月 2nd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その4)

瀬川先生はスピーカーに関しては、システム、ユニットどちらもヨーロッパのモノを高く評価されている。
それに実際に購入されている。

音の入口となるアナログプレーヤーもEMTの930stを導入される前は、
トーレンスのTD125を使われているし、カートリッジに関してもオルトフォン、EMT、エラックなど、
こちらもヨーロッパ製のモノへの評価は高い。

けれどアンプとなると、すこし様相は違ってくる。
アンプは自作するもの、という考えでそれまでこられていた瀬川先生が最初に購入された既製品・完成品のアンプは、
マランツのModel 7であり、その#7の音を聴いたときの驚きは、何度となく書かれている。
このとき同時に購入されたパワーアンプはQUADのIIだが、こちらに対しては、わりとそっけない書き方で、
自作のパワーアンプと驚くような違いはなかった、とされている。

そして次は、JBLのプリメインアンプSA600の音の凄さに驚かれている。
SA600を聴かれたの、ステレオサウンドが創刊したばかりのことだから、1966年。
このとき1週間ほど借りることのできたSA600を、
「三日三晩というもの、仕事を放り出し、寝食を切りつめて、思いつくレコードを片端から聴き耽った」とある。

このSA600のあとにマッキントッシュのMC275で、アルテックの604Eを鳴らした音で、
お好きだったエリカ・ケートのモーツァルトの歌曲を聴いて、
この1曲のために、MC275を欲しい、と思われている。

それからはしばらくあいだがあり、1974年にマークレビンソンのLNP2と出合われた。
そしてLNP2とSAEのMark2500の組合せ、LNP2とML2の組合せ、ML6とML2Lの組合せ、となっていく。
SAEが出るまでは、パイオニアのExclusive M4を使われた時期もある。

瀬川先生のアンプの遍歴のなかに、ヨーロッパ製のアンプが登場することはない。
KEFのLS5/1Aの音に惚れ込みながらも、
ことアンプに関しては、惚れ込む対象となるヨーロッパ製のアンプはなかったとしか思えない。

Date: 7月 1st, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その3)

ステレオサウンド 56号、レコード芸術11月号(1980年)のころ、
瀬川先生は世田谷・砧にお住まいだった(成城と書いている人がいるが、砧が正しい)。

その砧のリスニングルームには、メインのJBL4343のほかに、
瀬川先生が「宝物」とされていたKEFのLS5/1A以外にもイギリスのスピーカーシステムはいくつかあった。
スペンドールのBCII、セレッションのディットン66、ロジャースのLS3/5A、
写真には写っていないが、ステレオサウンド 54号ではKEFの105を所有されていると発言されている。

それにスピーカーユニットではあるが、グッドマンのAXIOM80も。
イギリス製ではないけれどもドイツ・ヴィソニックのスピーカーシステムも所有されていた。

これらのスピーカーシステムを鳴らすときに、どのアンプを接がれて鳴らされたのか。
ステレオサウンド別冊「続コンポーネントステレオのすすめ」に掲載されているリスニングルームの写真では、
アンプ関係は、マークレビンソン、SAE・Mark2500、アキュフェーズC240、スチューダーA68がみえる。

アナログプレーヤーは、EMTの930stと927Dst、それにマイクロのRX5000+RY5500。
アナログプレーヤーは、マイクロがメインとなっていたのか。

ステレオサウンド 56号、レコード芸術11月号を読んでいると、そんなことを思ってしまう。
もうEMTのプレーヤーもスチューダーのパワーアンプも、もう出番は少なくなっていたのか、と。

ロジャースのPM510は、EMTの魅力を、ヨーロッパ製のアンプの良さを、
瀬川先生に再発見・再認識させる何かを持っていた、といえまいか。

聴感上の歪の少なさ、混濁感のなさ、解像力や聴感上のS/N比の高さ、といったことでは、
EMTでは927Dstでも、マイクロの糸ドライヴを入念に調整した音には及ばなかったのかもしれない。
アンプに関しては、アメリカ製の物量を惜しみなく投入したアンプだけが聴かせてくれる世界と較べると、
ヨーロッパ製のアンプの世界は、こじんまりしているといえる。

そういう意味では開発年代の古さや投入された物量の違いが、はっきりと音に現れていることにもなるが、
そのことはすべてがネガティヴな方向にのみ作用するわけでは決してなく、
贅を尽くしただけでは得られない世界を提示してくれる。

なにもマークレビンソンをはじめとする、アメリカのアンプ群が、
贅を尽くしただけで意を尽くしていない、と言いたいわけではない。
中には意を尽くしきっていない製品もあるが、意の尽くした方に、ありきたりの表現になってしまうが、
文化の違いがあり、そのことは音・響きのバックボーンとして存在している。

Date: 6月 30th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その19)

私が感じている、よくできた鉄芯型のカートリッジに共通するよさは、
中低域から低域にかけての響きの充実ぶり、とでも表現できる要素である。

このことは、クラシックを聴くことがほとんど私にとって譲れないところでもある。

鉄芯型の優秀なMC型カートリッジが、
なぜ、そういう音(むしろ響きと表現したい)を聴かせてくれるのかについては、
その理由ははっきりとわかっていない。
けれど、このしっかりとして、そして豊かな中低域から低域のよさは、
音楽をしっかり支えてくれて、フォルティッシモではそのことを強く感じることができる。

たしかに空芯型の優秀なMC型カートリッジを聴いたあとでは、鉄芯型のフォルティッシモは、
やや濁りが生じて解像力の高さということではすこし劣る。
でもその反面、力に満ちて吹きあげるようなフォルティッシモとなると空芯型では、
優秀なものでも、鉄芯型の優秀なカートリッジと比較すると、もの足りなさを感じる。

鉄芯型の優秀なカートリッジには、響きの確かさがある、と思う。
そして、この響きの確かさは、ピアノのフレームに鉄が使われていることにも関係しているように思えてならない。

Date: 6月 30th, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その2)

レコード芸術の1980年11月号に、PM510の記事が載っている。
瀬川先生と音楽評論家の皆川達夫氏、それにレコード芸術編集部のふたりによる座談会形式で、
PM510とLS5/8の比較、PM510を鳴らすアンプの比較試聴を行なっている。
PM510というスピーカーシステム、1機種に8ページを割いた記事だ。

比較試聴に使われたアンプの組合せの以下の通り
QUAD 44+405
アキュフェーズ C240+P400
スレッショルド SL10+Stasis2
マークレビンソン ML6L+ML2L
マークレビンソン ML6L+スレッショルド Stasis2
マークレビンソン ML6L+スチューダー A68
マークレビンソン ML6L+ルボックス A740

この座談会の中にいくつか興味深いと感じる発言がある。
ひとつはマークレビンソン純正の組合せで鳴らしたところに出てくる。
     *
しばらくロジャース的な音のスピーカーから離れておりまして、JBL的な音の方に、いまなじみ過ぎていますけれども、それを基準にして聴いている限り、EMTの旧式のスタジオ・プレーヤーというのは、もうそろそろ手放そうかなと思っていたところへ、このロジャースPM510で、久々にEMTのプレーヤーを引っ張り出して聴きましたが、もうたまらなくいいんですね。
     *
ステレオサウンド 56号の記事をご記憶の方ならば、そこに927Dst、それにスチューダーのA68の組合せで、
一応のまとまりをみせた、と書かれてあることを思い出されるだろう。

このレコード芸術の記事では、スチューダー、ルボックスのパワーアンプについては、こう語られている。
     *
このPM510というスピーカーが出てきて、久々にルボックス、スチューダーのアンプの存在価値というものをぼくは再評価している次第です。
(中略)JBLの表現する世界がマークレビンソンよりスチューダー、ルボックスでは狭くなっちゃうんですね。ところがPM510の場合にはルボックスとスチューダー、それにマークレビンソンとまとめて聴いても決定的な違いというようなものじゃないような気がしますね。コンセプトの違いということでは言えるけれども、決してマークレビンソン・イズ・ベストじゃなくて、マークレビンソンの持っていないよさを聴かせる。たとえばスレッショルドからレビンソンにすると、レビンソンというのは、アメリカのアンプにしてはずいぶんヨーロッパ的な響きももっているアンプだというような気がするんですけれども、そこでルボックス、スチューダーにすると、やっぱりレビンソンも、アメリカのアンプであった、みたいな部分が出てきますね。