Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 7月 1st, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その3)

ステレオサウンド 56号、レコード芸術11月号(1980年)のころ、
瀬川先生は世田谷・砧にお住まいだった(成城と書いている人がいるが、砧が正しい)。

その砧のリスニングルームには、メインのJBL4343のほかに、
瀬川先生が「宝物」とされていたKEFのLS5/1A以外にもイギリスのスピーカーシステムはいくつかあった。
スペンドールのBCII、セレッションのディットン66、ロジャースのLS3/5A、
写真には写っていないが、ステレオサウンド 54号ではKEFの105を所有されていると発言されている。

それにスピーカーユニットではあるが、グッドマンのAXIOM80も。
イギリス製ではないけれどもドイツ・ヴィソニックのスピーカーシステムも所有されていた。

これらのスピーカーシステムを鳴らすときに、どのアンプを接がれて鳴らされたのか。
ステレオサウンド別冊「続コンポーネントステレオのすすめ」に掲載されているリスニングルームの写真では、
アンプ関係は、マークレビンソン、SAE・Mark2500、アキュフェーズC240、スチューダーA68がみえる。

アナログプレーヤーは、EMTの930stと927Dst、それにマイクロのRX5000+RY5500。
アナログプレーヤーは、マイクロがメインとなっていたのか。

ステレオサウンド 56号、レコード芸術11月号を読んでいると、そんなことを思ってしまう。
もうEMTのプレーヤーもスチューダーのパワーアンプも、もう出番は少なくなっていたのか、と。

ロジャースのPM510は、EMTの魅力を、ヨーロッパ製のアンプの良さを、
瀬川先生に再発見・再認識させる何かを持っていた、といえまいか。

聴感上の歪の少なさ、混濁感のなさ、解像力や聴感上のS/N比の高さ、といったことでは、
EMTでは927Dstでも、マイクロの糸ドライヴを入念に調整した音には及ばなかったのかもしれない。
アンプに関しては、アメリカ製の物量を惜しみなく投入したアンプだけが聴かせてくれる世界と較べると、
ヨーロッパ製のアンプの世界は、こじんまりしているといえる。

そういう意味では開発年代の古さや投入された物量の違いが、はっきりと音に現れていることにもなるが、
そのことはすべてがネガティヴな方向にのみ作用するわけでは決してなく、
贅を尽くしただけでは得られない世界を提示してくれる。

なにもマークレビンソンをはじめとする、アメリカのアンプ群が、
贅を尽くしただけで意を尽くしていない、と言いたいわけではない。
中には意を尽くしきっていない製品もあるが、意の尽くした方に、ありきたりの表現になってしまうが、
文化の違いがあり、そのことは音・響きのバックボーンとして存在している。

Date: 6月 30th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その19)

私が感じている、よくできた鉄芯型のカートリッジに共通するよさは、
中低域から低域にかけての響きの充実ぶり、とでも表現できる要素である。

このことは、クラシックを聴くことがほとんど私にとって譲れないところでもある。

鉄芯型の優秀なMC型カートリッジが、
なぜ、そういう音(むしろ響きと表現したい)を聴かせてくれるのかについては、
その理由ははっきりとわかっていない。
けれど、このしっかりとして、そして豊かな中低域から低域のよさは、
音楽をしっかり支えてくれて、フォルティッシモではそのことを強く感じることができる。

たしかに空芯型の優秀なMC型カートリッジを聴いたあとでは、鉄芯型のフォルティッシモは、
やや濁りが生じて解像力の高さということではすこし劣る。
でもその反面、力に満ちて吹きあげるようなフォルティッシモとなると空芯型では、
優秀なものでも、鉄芯型の優秀なカートリッジと比較すると、もの足りなさを感じる。

鉄芯型の優秀なカートリッジには、響きの確かさがある、と思う。
そして、この響きの確かさは、ピアノのフレームに鉄が使われていることにも関係しているように思えてならない。

Date: 6月 30th, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その2)

レコード芸術の1980年11月号に、PM510の記事が載っている。
瀬川先生と音楽評論家の皆川達夫氏、それにレコード芸術編集部のふたりによる座談会形式で、
PM510とLS5/8の比較、PM510を鳴らすアンプの比較試聴を行なっている。
PM510というスピーカーシステム、1機種に8ページを割いた記事だ。

比較試聴に使われたアンプの組合せの以下の通り
QUAD 44+405
アキュフェーズ C240+P400
スレッショルド SL10+Stasis2
マークレビンソン ML6L+ML2L
マークレビンソン ML6L+スレッショルド Stasis2
マークレビンソン ML6L+スチューダー A68
マークレビンソン ML6L+ルボックス A740

この座談会の中にいくつか興味深いと感じる発言がある。
ひとつはマークレビンソン純正の組合せで鳴らしたところに出てくる。
     *
しばらくロジャース的な音のスピーカーから離れておりまして、JBL的な音の方に、いまなじみ過ぎていますけれども、それを基準にして聴いている限り、EMTの旧式のスタジオ・プレーヤーというのは、もうそろそろ手放そうかなと思っていたところへ、このロジャースPM510で、久々にEMTのプレーヤーを引っ張り出して聴きましたが、もうたまらなくいいんですね。
     *
ステレオサウンド 56号の記事をご記憶の方ならば、そこに927Dst、それにスチューダーのA68の組合せで、
一応のまとまりをみせた、と書かれてあることを思い出されるだろう。

このレコード芸術の記事では、スチューダー、ルボックスのパワーアンプについては、こう語られている。
     *
このPM510というスピーカーが出てきて、久々にルボックス、スチューダーのアンプの存在価値というものをぼくは再評価している次第です。
(中略)JBLの表現する世界がマークレビンソンよりスチューダー、ルボックスでは狭くなっちゃうんですね。ところがPM510の場合にはルボックスとスチューダー、それにマークレビンソンとまとめて聴いても決定的な違いというようなものじゃないような気がしますね。コンセプトの違いということでは言えるけれども、決してマークレビンソン・イズ・ベストじゃなくて、マークレビンソンの持っていないよさを聴かせる。たとえばスレッショルドからレビンソンにすると、レビンソンというのは、アメリカのアンプにしてはずいぶんヨーロッパ的な響きももっているアンプだというような気がするんですけれども、そこでルボックス、スチューダーにすると、やっぱりレビンソンも、アメリカのアンプであった、みたいな部分が出てきますね。

Date: 6月 29th, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その1)

瀬川先生の「音」を聴いたことのない者にとって、
その「音」を想像するには、なにかのきっかけ、引きがねとなるものがほしい。
それは瀬川先生が書かれた文章であり、瀬川先生が鳴らされてきたオーディオ機器、
その中でもやはりスピーカーシステムということになる。

となると、多くの人がJBLの4343を思い浮べるだろう。
4341でもいいし、最後に鳴らされていた4345でもいい。
ただ、JBLのスピーカーシステムばかりでは、明らかに偏ってしまった想像になってしまう危険性が大きい。

どうしても、そこにはイギリス生れのスピーカーシステムの存在を忘れるわけにはいかない。

ここに書いているように、瀬川先生はロジャースのPM510に惚れ込まれていた。

瀬川先生ご自身が、PM510を「欲しい!!」と思わせるものは、一体何か? と書かれているのだから、
第三者に、なぜそれほどまでにPM510に惚れ込まれていたのか、のほんとうのところはわかるはずもない。
それでも私なりに、瀬川先生の書かれたものを読んでいくうちに、そうではないのか、と気づいたことはある。

Date: 6月 29th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その18)

オルトフォンのSPU、もしくはMC20MKII、MC30といった鉄芯型と、空芯型のMC2000と比較する。
デンオンのDL103を、空芯型のDL303、DL305と比較する。

これらの比較は振動系も違うし、ボディのつくりも違うから、鉄芯型と空芯型の正確な比較試聴とはいえないまでも、
大まかな傾向はつかむことができる。

空芯型のMC型カートリッジの方が、聴感上の歪は少ないと感じる。
ピアニッシモでもそのことは感じるし、フォルティッシモにおいても濁りが少ない、
だから、キメの細かさを感じさせる。
優秀な録音のアナログディスクになればなるほど、この差ははっきりとしてくる。

こういう実例を耳にすると、磁気回路という大きな磁性体のカタマリを排除できなくても、
地道にひとつずつ磁性体を取り除いていくことの大切を感じる。

でも、そういったことがわかっていながら、私が選んできたカートリッジは、鉄芯型のモノばかりである。

まったく同じ発電構造であれば、鉄芯型と空芯型では、鉄芯型の方が発電効率は高い。
つまり出力電圧は大きくなる。
もともと出力電圧の低いMC型カートリッジにおいて、出力電圧が少しでも高くなることは、
音質的にもメリットはいくつもある。
鉄芯型の音質的メリットは、このことだけだろうか。
ただ出力電圧が大きいことだけが音に与えるメリットだけで、私は鉄芯型のカートリッジを選んできたのだろうか。

アナログディスクの音溝に刻まれたエネルギーをカートリッジの針先が拾い、
カンチレバーを伝わって信号を発電する。つまりコイルの巻枠もとうぜん振動している。

このコイルの巻枠の振動モードが、空芯型と鉄芯型はずいぶん違うのではなかろうか。
そのことと出力電圧の大きさとが相俟って、鉄芯型でなければ表現できない音をつくり出している──、
鉄芯型の優秀なMC型カートリッジを聴くと、そう思ってしまう。

Date: 6月 29th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その17)

鉄(磁性体)がオーディオの系の中にあると、音を汚す、濁す。
だから徹底的に排除していくべきだ、という考え方は正しいと思う。
だからといって、絶対的なものである、とは思わない。

いまのところどうやっても電源トランスには鉄芯が、
スピーカーユニットには磁気回路に磁石と磁性体が、最後まで残ってしまう。

たとえ磁気回路を必要としないコンデンサー型スピーカーにしても、
昇圧のためのトランスが必要になってくる。ここに鉄心がある。

そうはいっても、信号系からひとつひとつ磁性体取り除いていく、
直接信号系に含まれていなくても、周辺にあるだけでも磁性体は影響を及ぼすから、
取り除いていけば、それだけの効果はある。

一般的に鉄(磁性体)は悪者ということになっている。
でもMC型カートリッジを例にとると、果して、磁性体は悪影響ばかりだろうか、とも思う。
MM型、MC型にしても磁石は必要とする。
スピーカーユニット同様、磁性体から逃れられないオーディオ機器のひとつである。

そのMC型カートリッジには、大きく分けてふたつある。
発電コイルの巻枠が磁性体か非磁性体か、である。

いわゆるオルトフォン型と呼ばれるMC型カートリッジは、巻枠に磁性体を使用している。
オルトフォンのSPUがその代表的なカートリッジであり、デンオンのDL103、EMTのTSD15などがある。

井上先生は巻枠に非磁性体を使用したカートリッジ(空芯型)を、純MC型とも呼ばれていた。
オルトフォンもMC2000で空芯型を発表、デンオンもDL303、DL305などは空芯型となっている。

Date: 6月 25th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その25)

LE175DLHをトゥイーターに使うとしたら、ウーファーはやはり同じJBLのD130もしくは130Aというのが、
順当な選択ということになるが、
元のモデルとなったLS5/1Aがイギリス製の、BBCモニターであるからして、ウーファーはイギリス製にしたい。

中高域にJBLのユニットをもってきている時点で、そんなことをいうのはおかしいだろう、という声もあるだろうが、
私の中でのLE175DLHの位置付けは、他の.JBLのコンプレッションドライバーとはすこし違う。
それからジャズをメインとして聴いているのであれば、JBLのウーファーを迷わず選択するが、
私が聴くのはクラシックが圧倒的に多い。

ウーファーの口径は15インチ(適当なものがなければ12インチ)で、
LS5/1A同様、1.75kHzあたりまで使うこと、それに中古であっても入手がそれほど困難でないもの、となると、
思い浮ぶウーファーはひとつしかない。
ヴァイタヴォックスのAK157だ。この古典的なウーファーは、カタログ上の周波数特性は5kHzまで、となっている。
1.75kHzあたりのクロスオーバー周波数を考えているから、AK157はこの点でもぴったりだ。

カタログには出力音圧レベルの記載はないけれど、能率は高いもののはずだ。
同社のシステムCN191、BassBin、Bitone Majorではコンプレッションドライバーとの組合せで使われている。
このことからして低能率のウーファーではないはずだ。

ウーファーが低能率でも、
中高域のコンプレッションドライバーのレベルをアッテネーターで減衰させればすむこと、
それほどウーファーの能率の高さは考慮しなくてもいい、とは私は思っていない。
できることならアッテネーターはなし、ですませたい。
無理なことが多いから仕方なくアッテネーターを挿入するわけだが、
それでも減衰量はできるだけ抑えたい、と思っているからだ。

Date: 6月 23rd, 2011
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その19・補足 2440のこと)

JBL初の4ウェイのスピーカーシステム、
4350のミッドハイを受け持つコンプレッションドライバー2440につながるネットワークはハイパスのみだと書いた。

4350の後継機4355では2440から2441に変更され、ネットワークもハイパスもローパスもある。
一般的なネットワークと同じ仕様となっている。

2440の周波数特性のグラフを見ればわかるように、ほぼ10kHz以上急峻にレスポンスが低下する。
ほぼ垂直に音圧が減衰している。
このような特性であれば確かにローパス(ハイカット)フィルターは不要かもしれない。
ネットワークでカットするよりもずっと急峻なカーヴで減衰しているからだ。

2441はダイアフラムのエッジをダイアモンド(折紙)状にすることで、高域のレスポンスを広げている。
2440と2441の周波数特性のグラフを重ねてみると、2441の高域の延びはあきらかだが、
4〜5kHzからはなだらかにレスポンスがさがっていく。
このあたりの帯域から10kHzまでのレスポンスをくらべると2440のほうがフラットといえる。

2440と2441の相違点は、ダイアフラムのエッジのみ、であったはずだ。
なのにこれだけ高域の周波数特性において違いが生じている原因は、
2440(375もそうだが)は、エッジの共振点を9.6kHzに設定しているからである。

だから2440(375)の周波数特性は10kHzで肩を張ったようになっている。
肩を張ったような特性だから、
2441(376)よりも再生限界の10kHzまで2440(375)のほうがフラットに近い、というわけだ。

10kHzまでほほフラットで、それから上の帯域では急激にレスポンスが低下するのであれば、
ネットワークのローパスフィルターが不要になるし、なんら問題がないように思えるが、
共振を利用したものは、その共振の悪影響が音として現れる。
2440(375)ではエッジの共振周波数(9.6kHz)あたりが耳につきやすくなることは容易に想像できる。

ここが4350の鳴らし込みの難しさと面白さに大きく関係している、と思っている。
2440の周波数特性を利用してネットワークのローパスフィルターを省いた良さと、
9.6kHzのエッジの共振が耳につきやすいという悪さが同居している。

ならば2440にローパスフィルターを加えればすべて解決するかというと、そうはならない。
2405とのクロスオーバー周波数9kHzである以上、ネットワークでどうこうできる問題ではない。

ではどうしたらいいのか。
ていねいに鳴らし込んでいくしかない。

Date: 6月 18th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・075について)

075の、誰も思いつかないような使い方を、井上先生が「HIGH-TECHNIC SERIES 1」に書かれている。

JBLのスピーカーユニットを使った3ウェイ構成で、
ウーファーに136A、スコーカーに375にHL88(537-500)、トゥイーターが075という組合せである。
ここで、「高域は文句なしに075だ」とされているが、こうもつけ加えられている。
     *
もしも、075がストレートに過ぎるなら、価格的に少し高いがHL91のスラントタイプ音響レンズだけを組み合わせよう。この場合の075の音は一変し、高音が一段と伸びた大変にスムーズな音がねらえる。
     *
いまの認識では音響レンズは音は悪くするもの。
ホーンの開口部のところには何も置くべきではない、という考えが主流のようで、
JBLから音響レンズ付のものはなくなっている。

そのとおりだとは思う。
けれど、とも思う。
日本のように、比較的近距離で聴く場合には、音響レンズは入念に設計しつくれば、
デメリットはあるもののメリットも、まだある、と考える。

Date: 6月 18th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その24)

JBLには075というトゥイーターがある。
カタログ上のスペックでは、2.5kHz以上で使える、となっている。

ステレオサウンド別冊「HIGH-TECNIC SERIES 3」での
JBLのLE8Tをベースにしたトゥイーター55機種の試聴テストに、075が登場している。

そこで瀬川先生は、クロスオーバー周波数を試しに1.6kHzまで下げても音がへたることなく、
エネルギーとしてきちんと出ている、と話されている。
だからといって1.6kHzから使えるわけではないのだが、
この試聴ではトゥイーターはバッフルに取り付けられることなく行なわれている。

バッフル板があれば、周波数特性は変化する。
それも高い周波数よりも低い周波数において、その差ははっきりと出る。

それに試聴ではスロープ特性は12dB/oct.となっている。
これが18dB、さらに24dBという高次のカーヴで遮断したらどうなるか。

075を2発バッフルに取り付けたとしたら、そして3kHz以上で上側の075をロールオフする。
つまり3kHz以下の周波数においては075は2発鳴っているわけで、
エネルギーレスポンス的に下りがちのこの帯域を補えることになる。バッフル効果にそれに加わる。

最大音圧レベルをそれほど要求しなければ、075でもいける可能性があるかもしれない。
仮にうまくいくという保証があったら、LE175DLHではなく075を使うか、というと、やはりLE175DLHをとる。

これはLE175DLHを選んだ理由でもあるが、放射パターンによって、である。
075のホーンの形状、それから指向特性を実際に見てもビーム状であることが読み取れる。
できるだけ拡散して、それも受持ち帯域内では周波数によって指向特性ができるだけ変化しない、
でということを求めているからだ。

Date: 6月 17th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その23)

瀬川先生の4ウェイ構想のミッドハイが受け持つ帯域は、下は1〜2kHzから上は8〜10kHzあたりの範囲である。

JBLのLE175DLHのことを、特に書かれていない。
国産にはこういう目的に合うものがなかった、とは書かれているが、
JBLではなくともアルテックには802-8Dはあった。
それにJBLだけにしぼったにしても、ホーンはいくつもある。
JBLのスタジオモニターの4300シリーズと同じスラントプレートの音響レンズつきのホーンHL91、
そのプロ用の2391(2307+2308)だってある。
ディフラクションホーンの2397もあったにもかかわらず、LE175DLHの型番しか登場してこないのは、
これは瀬川先生のお気に入りのスピーカーユニットだから、ということになる。
少なくとも私のなかでは、そういう結論である。

瀬川先生が宝物のように大事にしてこられたLS5/1Aを、
他のスピーカーユニットで現代に再現してみよう、というのだから、
瀬川先生がそれだけ気に入っておられたLE175DLHを使いたい。

理由はそれだけではない。
他のホーン、たとえば2397とか、ラジアルホーン、マルチセルラホーンを上下2段に重ねようとは思わない。
LS5/1と同じように、上側のユニットを3kHzから上をロールオフさせる使い方だとしても、である。

けれど蜂の巣状の音響レンズのLE175DLHだったら、うまくいきそうな予感がある。
同じ音響レンズでも、スラントプレート型の2段重ねは見た目の問題から、やる気はない。
375+537-500でもだめである。
高域が伸びていないからだけでなく、あの大きな開口部(直径34.3cm)が上下に2つある姿は美しくないし、
いい音がするとは思えない。
LS5/1がHF1300のフランジを外して、2つのHF1300をできるだけ接近させていることにも反することになる。
これはLE175DLHだから、試してみたい気にさせてくれる。

Date: 6月 17th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その1)

今年、ロジャースは創立65周年にあたり、記念モデルとしてLS3/5Aを復刻している。
ロジャースは2008年にもLS3/5Aを復刻している。

このふたつの復刻LS3/5Aは当然おなじものなはずはなく、細部の使用は異っている。
2008年版は、オリジナルのLS3/5Aを範として、現在入手できるスピーカーユニットで再現したもの。
今回の65周年LS3/5Aは、元のユニット、
つまりウーファーはKEFのB110、トゥイーターはKEFのT27そのものをできるかぎり再現したものが、
使われている、とのこと。

それ以上の情報をまだ得ることはできないが、少なくとも写真を見るかぎり、
B110、T27そっくりに仕上がっている、といえる。
B110の振動板のてかり具合も、(あくまでも写真の上ではあるが)見事に再現されている。

2008年版LS3/5Aには興味をもてなかったのに、これは気になっている。
できるだけ早く聴いてみたい、とさえ思っている。

ウェブサイトに公開されている写真を見て、私と同じように思う人もいる一方で、
どうせ中国製だから、と音も聴かずに、関心をもたない人もいるはずだ。

確かに中国製なのだろう。
でも写真のままのLS3/5Aが登場してきたら、そのことはさほど気にすることはないはずだ。
ここまでのものが作れる、という事実に、日本製だろうと、イギリス製だろうと、中国製だろうと、
それは本質的な違いとなって音に現れることなのだろうか。

もちろん中国で作られている製品のすべてが良質なものでないことはわかっている。
ひどいものがある。けれど、素晴らしいものも、やはりある。

たとえばTADのスピーカーシステムは、中国で生産されている。
このことはオーディオアクセサリー誌だったと思うが、記事になっているからご存じの方も多いだろう。

何も知らずにTADのスピーカーシステムを見て、聴いて、中国製だとわかる人がいるだろうか。

心情的にはイギリス製であってほしい、という気持は、これを書いている私にもある。
でも音を聴かずに、実物を見ずもせずに、ただ中国製だから、ということで、関心をなくしてしまうのは、
もったいないこと、というよりも愚かに近い行為だと思う。

Date: 6月 16th, 2011
Cate: Kingdom, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その72)

4ウェイといっても、そのシステム構成の考え方はひとつではない。
3ウェイのスピーカーシステムに、スーパートゥイーターもしくはサブウーファーを足すかたちのものもあれば、
2ウェイのスピーカーシステムをベースに、高低域両端に専用のユニットを追加するかたちもあり、
JBLの4343やアルテックの6041、タンノイのKingdomは後者である。

3ウェイをベースにスーパートゥイーターを加えるものだと、
ユニット構成は、国産の3ウェイスピーカーシステムの多くの例からすれば、
コーン型の採用はウーファーだけ、ということも十分ありうる。

同じ3ウェイ・ベースでもサブウーファーをつけ足すのでは、コーン型ユニットは最低でも2つ使われることになる。
2ウェイ・ベースでもそれは同じ。コーン型ユニットが、最低でもウーファーとミッドバスに使われる。

これから書くことになにひとつ技術的な根拠はない。
感覚的な印象ではなるが、コーン型ユニットがウーファーとミッドバスに使われた場合、
このふたつのユニットの口径比は4ウェイ・システムの成否に深く関わっているように思う。

ウーファーに対してミッドバスの口径が大きすぎる(もしくは小さすぎる)と感じられるスピーカーシステムと、
うまくバランスがとれていると感じられるスピーカーシステムがある。

ウーファーに対して大きすぎる口径(小さすぎる口径)のミッドバス、
反対の言い方もとうぜん可能で、ミッドバスの口径に対して大きすぎる口径(小さすぎる口径)のウーファー、
──そんなものは人それぞれの感覚によって違ってくる、とは思っていない。

ここにはひとつの最適解がある、はずだ。

黄金比がある。
計算してみると、18インチに対しては11.12インチとなる。46cmで計算すると28.43cm。
15インチでは9.27インチとなり、38cmでは23.49cm、となる。

Date: 6月 16th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その22)

LS5/1というイギリスのモニタースピーカーを、現代につくる、というに、
アメリカの、それもJBLの、さらにはホーン型ユニットを中高域に使うなんて!、と思う人はいるだろう。

でも感覚的に私の中では、AMT型トゥイーターによるLS5/1型スピーカーシステムよりも、
JBLのLE175DLHを使うほうを実行に移したい、という気持はずっと強い。

LE175DLHは、JBLの数々のスピーカーユニットの中で、見ただけで欲しくなってしまったモノである。
LE175DLHよりも、375に537-500を組み合わせたほうが、もっと堂々として存在感がある。
本格的にJBLのユニットでシステムを構築するのであれば、LE175DLHよりも375+537-500の方が可能性は大きい。

だがLS5/1型スピーカーに使うには大きすぎるし、高域の伸びの不足もある。
それにLE175DLHのほうが、美しい。
それは、途中からホーンが短くなり全体にズングリした印象になる以前の、
スマートだったころのLE175DLHは、スピーカーユニットとしてのデザインの完成度は高いと感じている。

瀬川先生がJBLの3ウェイの自作スピーカーで聴かれているころのリスニングルームの写真に、
ウーファー用のエンクロージュアの上に、LE175DLHが置かれている。
鳴っているのは375+537-500である。

375+537-500を使いながらも、音を聴くときに必ず目にはいってくるところに、
それまで使われていたLE175DLHを置かれていること、
そしてステレオサウンド別冊「HIGH-TECHIC SERIES-1」に載っていた瀬川先生の4ウェイの構想。

フルレンジを使うミッドバス、トゥイーターには、それぞれ14機種、推奨ユニットをあげられている。
にもかかわらず、ミッドハイは最初からLE175DLHのご指名である。

Date: 6月 13th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その21)

いま入手可能なスピーカーユニットでつくる、ということで書き始めたのが、この項だが、
この「入手可能」は現行製品に限ると言う意味での「入手可能」ではない。

中古であっても市場に流通していていた数が多いものであれば、比較的状態のいいものがあせらなければ入手できる。
そうやって入手できるスピーカーユニットと現行製品のスピーカーユニットをあわせて、2つの案を考えている。

ひとつはAmazonのA.M.T. Oneと似た構成になるが、トゥイーターにAMT型を採用したもの。
もうひとつはトゥイーターに、JBLのLE175DLHを使ってみたい、と考えている。
もちろんどちらの案でもトゥイーターは片チャンネルあたり2発使う。
その使い方もLS5/1に準じる。

AMT型トゥイーターを使う案では、2ウェイでもできるかぎりワイドレンジにしたい、
LE175DLHでの2ウェイではそうはいかないし、オリジナルのLS5/1よりも高域の伸びは劣ることになる。
それでもLE175DLHでやってみたい、という気持は強い。