4343における52μFの存在(その19・補足 2440のこと)
JBL初の4ウェイのスピーカーシステム、
4350のミッドハイを受け持つコンプレッションドライバー2440につながるネットワークはハイパスのみだと書いた。
4350の後継機4355では2440から2441に変更され、ネットワークもハイパスもローパスもある。
一般的なネットワークと同じ仕様となっている。
2440の周波数特性のグラフを見ればわかるように、ほぼ10kHz以上急峻にレスポンスが低下する。
ほぼ垂直に音圧が減衰している。
このような特性であれば確かにローパス(ハイカット)フィルターは不要かもしれない。
ネットワークでカットするよりもずっと急峻なカーヴで減衰しているからだ。
2441はダイアフラムのエッジをダイアモンド(折紙)状にすることで、高域のレスポンスを広げている。
2440と2441の周波数特性のグラフを重ねてみると、2441の高域の延びはあきらかだが、
4〜5kHzからはなだらかにレスポンスがさがっていく。
このあたりの帯域から10kHzまでのレスポンスをくらべると2440のほうがフラットといえる。
2440と2441の相違点は、ダイアフラムのエッジのみ、であったはずだ。
なのにこれだけ高域の周波数特性において違いが生じている原因は、
2440(375もそうだが)は、エッジの共振点を9.6kHzに設定しているからである。
だから2440(375)の周波数特性は10kHzで肩を張ったようになっている。
肩を張ったような特性だから、
2441(376)よりも再生限界の10kHzまで2440(375)のほうがフラットに近い、というわけだ。
10kHzまでほほフラットで、それから上の帯域では急激にレスポンスが低下するのであれば、
ネットワークのローパスフィルターが不要になるし、なんら問題がないように思えるが、
共振を利用したものは、その共振の悪影響が音として現れる。
2440(375)ではエッジの共振周波数(9.6kHz)あたりが耳につきやすくなることは容易に想像できる。
ここが4350の鳴らし込みの難しさと面白さに大きく関係している、と思っている。
2440の周波数特性を利用してネットワークのローパスフィルターを省いた良さと、
9.6kHzのエッジの共振が耳につきやすいという悪さが同居している。
ならば2440にローパスフィルターを加えればすべて解決するかというと、そうはならない。
2405とのクロスオーバー周波数9kHzである以上、ネットワークでどうこうできる問題ではない。
ではどうしたらいいのか。
ていねいに鳴らし込んでいくしかない。