私にとってアナログディスク再生とは(その4)
スピーカーシステムの試聴とはまた少し違う意味あいで、アナログプレーヤーの試聴には、
使いこなし、調整といったことが重要になってくる。
オーディオ機器の中で、もっともプリミティヴな構成なのがアナログプレーヤーは、
ほぼすべての機構が目で捉えることができる。
そこで、試聴の対象となる、その前にあるアナログプレーヤーをどう理解し調整し、使いこなしていくのか。
それができるかできないかはオーディオに対する資質も大事だけれど、
それと同じくらいに、その人の中に、アナログプレーヤーに対する理想像が存在しているかどうか、も関係してくる。
昔ながらオーソドックスなスタイルのアナログプレーヤーにおいてもそうだが、
それ以上にCDが登場し普及した後で登場してきた、
それまでのアナログプレーヤーをつくってきたメーカーとは、ひと味ちがうものをもつ新進メーカーのものを、
正しく評価するためには、評価者に「理想像」がなければ、正しく理解することができない。
つまりこれは優れたアナログプレーヤーの良さを引き出すことができないことであるだけでなく、
能書きだけの製品に騙されてしまう、ということになっていくからだ。
ノッティンガムアナログスタジオのAnna Logは、いわゆるオーソドックスなスタイルのプレーヤーではない。
だから、ステレオサウンド 133号の紹介記事がもしほかの人(あえて名前は出さないけれど)だったら、
そこに書いてあることの大半を素直に信じることはしなかった。
133号当時(1999年暮)にステレオサウンドに執筆していた人の中で、
Anna Logの記事を書くのに、最高の適任者は井上先生である。