Date: 6月 29th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7
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Bösendorfer VC7というスピーカー(その18)

オルトフォンのSPU、もしくはMC20MKII、MC30といった鉄芯型と、空芯型のMC2000と比較する。
デンオンのDL103を、空芯型のDL303、DL305と比較する。

これらの比較は振動系も違うし、ボディのつくりも違うから、鉄芯型と空芯型の正確な比較試聴とはいえないまでも、
大まかな傾向はつかむことができる。

空芯型のMC型カートリッジの方が、聴感上の歪は少ないと感じる。
ピアニッシモでもそのことは感じるし、フォルティッシモにおいても濁りが少ない、
だから、キメの細かさを感じさせる。
優秀な録音のアナログディスクになればなるほど、この差ははっきりとしてくる。

こういう実例を耳にすると、磁気回路という大きな磁性体のカタマリを排除できなくても、
地道にひとつずつ磁性体を取り除いていくことの大切を感じる。

でも、そういったことがわかっていながら、私が選んできたカートリッジは、鉄芯型のモノばかりである。

まったく同じ発電構造であれば、鉄芯型と空芯型では、鉄芯型の方が発電効率は高い。
つまり出力電圧は大きくなる。
もともと出力電圧の低いMC型カートリッジにおいて、出力電圧が少しでも高くなることは、
音質的にもメリットはいくつもある。
鉄芯型の音質的メリットは、このことだけだろうか。
ただ出力電圧が大きいことだけが音に与えるメリットだけで、私は鉄芯型のカートリッジを選んできたのだろうか。

アナログディスクの音溝に刻まれたエネルギーをカートリッジの針先が拾い、
カンチレバーを伝わって信号を発電する。つまりコイルの巻枠もとうぜん振動している。

このコイルの巻枠の振動モードが、空芯型と鉄芯型はずいぶん違うのではなかろうか。
そのことと出力電圧の大きさとが相俟って、鉄芯型でなければ表現できない音をつくり出している──、
鉄芯型の優秀なMC型カートリッジを聴くと、そう思ってしまう。

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