Archive for category 人

Date: 3月 31st, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾が終って……(その4)

これから書くことは蛇足かも……、と思っているところはあるし、
読む人によっては余計なことを、と受け取るだろう。
それでも書く。

草月ホールでの川崎先生の講演のときに、
ステレオサウンドにあのままいたら……、と思わないわけではなかった。

ステレオサウンド編集部という看板があれば、すぐにでも会える、連載を依頼できる──、
そんなことを、少しは思っていたことを白状する。

でも、この時の私には何の看板もなかった。
それにステレオサウンドにいたとしても、その看板は他人(ひと)がつくったものでしかない。

けれど、そのことを勘違いしてしまうことがある。
その看板を利用したとしよう、
おそらく「遠い」という感覚を味わうことはなかったはずだ。

この「遠い」という感覚をもっていない者だから、
あっさりと川崎先生の連載を手離すことをやってしまう。

「人は大切なことから忘れてしまう」と書いた。
けれど「遠い」という感覚を持たぬ者は、
「大切なことにすら気づかない」。

「遠い」という感覚から離れてしまったところでつくられている(編輯されている、とは書かない)が、
現在のステレオサウンドである。

Date: 3月 29th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾が終って……(その3)

いまはどうかといえば、何人かの方と挨拶を交したり、立ち話をしたりすることもある。
六回目のKK塾のとき、会場を出ようとしたら後から「すいません」と呼び止められた。

あれっ、忘れ物か何かを落としたかな、と思い、立ち止り振り返ったら、
「audio sharingの宮﨑さんですか」とたずねられた。
初対面の方だった。

草月ホールでの川崎先生の講演から20年も経つと、変っていく。
それでも、オープニングのカウントダウンが思い出させてくれることがある。

「遠い」という感覚だ。
草月ホールでの講演中に感じ、ホールを後にするときにも感じた「遠い」という感覚。
もっとも強く感じた感覚だ。

「人は大切なことから忘れていく」と、
菅野先生との対談のときに川崎先生がいわれた。

大切なことから忘れていき、忘れたことにすら気づかない。
そういうものかもしれない。
そうやって、私も大切なことを忘れていっているのかもしれない。

だから「遠い」という感覚だけは忘れないようにしている。

Date: 3月 28th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾が終って……(その2)

インパクトのあるカウントダウンのあとに、講演が始まった。
オープニングのカウントダウンが、いまもはっきりと思い出せるのは、
続く講演の内容が素晴らしかったからである。

その講演の途中、スクリーンが白くなり、
Sad Macの表示が出た。

Sad Macといっても、Mac OS X以降のMacしか知らない人はわからないだろう。
Macは起動時にハードウェアのチェックを行う。
ここで異常があると、モトローラ時代のMacでは、イヤな感じのする音とともにSad Macが表示される。
正常であればHappy Mac(ニコニコMacともいっていた)が表示される。

これは川崎先生のジョークである。
Macを使っていた人ならば、動作中のMacでSad Macが出ることはない。
これが表示されるのは、あくまでも起動中においてのみである。
動作中に出てイヤな思いをするのは、いわゆる爆弾マークである。

この人はこういうこともする人なんだ。おちゃめなところもある人なんだ、と思っていた。
手塚治虫のマンガには、ヒョウタンツギやおむかえでゴンスといったキャラクターが、
唐突にコマに乱入する。
それに似た感覚からなのだろうか、とも思っていた。

草月ホールでの講演のころの私は、しんどい生活を送っていた。
草月ホールのロビーでは、川崎先生デザインのタイマー Canoが販売されていた。
たしか、Canoの購入は寄付行為でもあった、と記憶している。

手に入れたかったけれど、3000円ほどの出費がしんどくてあきらめて会場を後にした。

この時、草月ホールに集まっていた人たちは、違う世界の人たちのようにも感じた。
知っている人は、当然のことだけどひとりもいなかった。

場違いの人間が、ひとりぽつんと坐っている……、という感じもしていた。

そんなことがあった。
講演の内容は素晴らしかっただけに、
よけいに「この人に会える日が来るのだろうか」と途方に暮れていた。
ほんとうに、すごく遠い距離を感じていた。

Date: 3月 26th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾が終って……(その1)

KK塾に、七回行った。
一回目は10月末だった。
予定よりも一時間すぎて終了した。
17時半ごろに、DNPホールを出た。

すでに暗くなっていた。
11月、12月はほぼ予定時間どおり16時半ごろに終ったけれど、
日は短くなっているから、DNPホールを出ると暗い。

六回目(3月上旬)、DNPホールを出て最初に感じたのは「明るい」だった。
もう春がそこまで来ているんだな、とあたりまえのことを感じていた。

七回目の昨日、目黒駅までの途中にある微生物研究所の建物がほぼでき上がっていた。
KK塾、最初のころは建築途中で囲いがなされていた。

毎回楽しみにしていただけに待ち遠しいと思うとともに、
充実していただけに短かったようにも感じられるところもあったけれど、
まわりの景色の変化は確実に半年経っていることを教えてくれる。

KK塾のオープニングは、カウントダウンから始まる。
これを見るたびに、草月ホールでの川崎先生の講演を思い出す。
もう条件反射のように思い出してしまう。

ほぼ20年前、私にとっては初めての川崎先生の講演だった。
どんなことを話されるのか、まったく見当がついていなかった。
そこにスクリーンいっぱいに映し出される数字。
カウントダウンが始まった。

その日のことを思い出す。
意識せずとも思い出してしまう。

Date: 3月 25th, 2016
Cate: 川崎和男

KK適塾

今秋からKK適塾が始まる。
詳細はまだだが、もしできれば……、と思うことがひとつある。

出来れば自分でやりたかったことで、
audio sharingを公開した時から考えていることだ。

川崎和男・内田光子 対談だ。
今年の秋、内田光子は来日する。
可能性がゼロというわけではない。

このふたりの対談は、スリリングになると思う。

Date: 3月 25th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾(七回目)

KK塾、七回目の講師は、松岡正剛氏。

KK塾では毎回印刷物が、受付で手渡される。
今回はその中に「松岡正剛 方法と編集」が含まれていた。
最初のページに、こう書いてあった。
     *
知識を編集するのではなく、
編集を知識にするべきである。
編集とは、「方法の自由」と
「関係の発見」にかかわるためのものである。
     *
私がステレオサウンド編集部にいたころに出た話を思い出していた。
具体的なことは、まだ書かないが、確かにそうだ、と納得するしかない指摘だった。

少なくとも、その指摘はいまのステレオサウンド編集部にもいえることだ。

KK塾2015は今回で終った。
オーディオ関係者は、なぜ来ないのだろうかと、毎回思ってしまう。

金曜日の午後、そんな時間に行けるわけないだろう、というのは簡単だ、
バカにでも出来る。

でも、ほぼ毎回来ているオーディオ関係者はいるのだ。

Date: 3月 4th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾(続DNPのこと)

KK塾、六回目の講師、澤芳樹氏が開発されたヒト(自己)骨格筋由来細胞シートは、
テルモから「ハートシート」という名称で製造されていることは知っていた。

ハートシートが実際にどのように製造されるのか、その詳細を知っているわけではないが、
なんなくではあるが印刷が関係しているのではないだろうか、
だとしたらDNPも関係しているんだろうな……、そんなことを思いながら会場に向っていた。

KK塾は六回目。
毎回来ていると会場の雰囲気が毎回微妙に違っていることを感じる。
今日も違っているな、と感じていた。
DNPのバッヂを胸につけていた人がかなり多かった。

やっぱりハートシートにDNPも関係しているんだ、と確信したし、実際にそうであることが話された。

今回DNPの社員によるプレゼンテーションはなかった。
楽しみにしていたので少しがっかりだったが、
今回もDNPという会社の「印刷」に対する取り組みのダイナミクスの大きさを感じる。

DNPの「D」は、Dynamicsであると感じるし、
DNPがオーディオの世界、音の世界に進出してくれることを、期待してしまう。

川崎先生がオーディオのデザインをふたたび手がけられるとしたら、DNPとである可能性が高い──、
前回から感じていることを、今日また、より強く感じていた。

Date: 3月 4th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾(六回目)

KK塾、六回目の講師は、澤芳樹氏。

今回でKK塾は六回目。
今年度は3月25日に七回目(松岡正剛氏)で終る。

七人の講師。
回を重ねるごとに、なぜこの七人の講師なのかを、強く意識するようになる。
今回は、これまで以上にそのことを強く感じていた。

今のところ、毎回行っている。
毎回行くべきだと、思う。

Date: 2月 13th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾(DNPのこと)

別項「続・再生音とは……(その15)」に、
オーディオの世界も、音による空気への印刷と捉えることができる、と書いた。

KK塾では毎回、DNPの社員によるプレゼンテーションがある。
今回もそうなのだが、このプレゼンテーションを見ていると、
印刷は出力であり、出力するためには入力が必要であり、
その入力されたものを処理する技術も必要になる。

このことを改めて実感する。

印刷といえば、やはり紙への印刷であり、
DNPにとっても紙への印刷がメインであっても、
印刷領域の拡大と、その精度は確実に進歩している。

オーディオの世界も入力、信号処理、出力からなる世界である。
だから、DNPの取組みをみていると、
もしかしたらDNPはオーディオの世界に進出することもできるのではないか、とさえ思えてくる。

そうなったら、既存のオーディオメーカーとは違う「印刷(出力)」を見せてくれそうな予感すらある。

Date: 2月 12th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾(五回目)

KK塾、五回目の講師は、内藤廣氏。

内藤廣氏の話の中に、西洋と東洋の時間の概念を図で表したものが出てきた。
西洋のそれは右肩上がり直線、
東洋のそれは弧を描く二本の線が円を成していた。

このふたつを合わせたものとしての螺旋状の図がスクリーンに表れた。
螺旋状の図は、コイルである。
この螺旋状の図は、未来予想図でもある。

まっすぐに規則正しい弧を描いているものが、外的要因で曲がったり、弧が崩れたりする。
そういう話をききながら、こんなことを思っていた。

この螺旋状の図は、何の未来予想図か。
世界の、日本の、それぞれの地域の螺旋状の図であり、
ひとりひとりの螺旋状の図であるとすれば、
そしてコイルとみなせば、活動によりコイルに電流が流れ、
コイルの中心には磁力線が発生する。

コイル同士が十分に離れていて、向きが直行していれば干渉は少なくなるが、
そうでなければ互いに干渉しあう。

けれどコイルがトーラス状に巻かれていたら、どうなるか。
つまりトロイダル型のコイルである。

もし螺旋状の図が、直線のコイルではなく、トロイダル状のコイルであれば、
磁力線の漏れはずいぶんと抑えられる──、こんなことを考えていた。

内藤廣氏は建築家だ。
東京・六本木のミッドタウンに虎屋菓寮がある。
内藤廣氏が手がけられている。
オーディオマニアとして、ここに行ってみようと思っている。

Date: 1月 21st, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾(四回目)

KK塾、四回目の講師は、長谷川秀夫氏。

今回の講演で、もっとも印象深かったのは、知見だった。
知見の蓄積と活用ということだった。

長谷川秀夫氏の話は、専門のロケットを含む宇宙開発に関するものであり、
直接的にはオーディオとは何の関係もないように思われるかもしれないが、
知見の話は、オーディオの、まさに使いこなしの話といえた。

そして品質保証という話もあった。
オーディオで品質保証といえば、それはメーカー側の話であるように考えがちだが、
このことも使いこなしに関係してくる。

家電、炊飯器や掃除機、洗濯機などは、
メーカーが保証する品質そのままが家庭でも再現される。

ところがオーディオは、アンプ、スピーカー単体では用をなさないわけで、
つねにコンポーネント(他社製品との組合せが大半である)において、
その性能(音)が問われる。

しかも使い手の技倆によって、例え同じシステムであったとしても出てくる音に違いが出てくる。
ここでの品質保証(音)は、誰によってなされるのか。
そのために必要なことは何なのか。

そういったことを考えていた。

そしてシステマティックという言葉もあった。
これこそが使いこなしに必要不可欠といえるものであり、
井上先生がもっとも得意とされていた。

そのことを思い出していたから、今回の長谷川秀夫氏の話は、
私にとってオーディオの使いこなしに結びつくものだった。

Date: 1月 14th, 2016
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(UREI Model 813の登場・その8)

アルテックの604-8Gのクロスオーバー周波数は1.5kHzとなっている。
軽量のストレートコーンと強力な磁気回路によるウーファーであっても、
15インチという口径を考えると、ここまで受け持たせるのはかなり苦しい。

604-8Gのトゥイーターのホーンはマルチセルラホーン。
このホーンのサイズは、それほど大きくはない。
むしろクロスオーバー周波数を考慮すると小さいか、ぎりぎりのサイズでしかない。

この点に関しては、
ウーファーの振動板をホーンの延長としてみなしているタンノイのほうが有利といえる。

だからといって604-8Gのホーンを大きくしてしまうと、別の問題が発生してくる。
あのサイズは、ぎりぎりの選択によって決ったものといえよう。

ウーファーの口径もホーンのサイズも、どうにかできることではない。
そういう同軸型ユニットである604-8Gの欠点をうまく補い、
同軸型ユニットならではの長所を活かすにはどうするのか。

その答のひとつとして、UREIのネットワークが挙げられる。
813のネットワークは、ウーファー側に対して、
奥に位置するトゥイーターとの時間差を補正するためにベッセル型のハイカットフィルターを採用している。

このことは813のカタログに載っている応答波形をみても、ベッセル型であることははっきりとわかる。
ベッセル型にすることで、ウーファーに対して群遅延(Group Delay)をかけている。

ベッセル型ネットワークの次数によって、ディレイ時間を設定できる。
けれど、このベッセル型ネットワークをトゥイーター側にも採用してしまっては、
意味がなくなる。
ベッセル型にしてしまうと、次数の分だけのディレイ時間が発生してしまい、
その状態でウーファーとトゥイーターのタイムアライメントをとるには、
より次数の高いハイカットフィルターをウーファー側につけなくてはならない。

このことが、(その6)で書いた813のウーファーの周波数特性と関係してくる。

813のトゥイーター側のネットワークにはコイルが使われていない。
その後の改良モデルではコイルも使われているが、オリジナルのModel 813や811にはコイルはない。
コンデンサーと抵抗とアッテネーターだけで構成されている。

Date: 12月 18th, 2015
Cate: 川崎和男

KK塾(三回目)

KK塾、三回目の講師は、石黒浩氏。

先月、六本木にある国際文化会館で石黒氏の講演は聞いた。
今回のKK塾の予習になるだろうと思ってである。

よくデジタルは非人間的だといわれる。
一方アナログは人間的であると。

けれどどちらも人間が生み出した。
今回も話されたが、人間を円で表して、その中に小さな円がある。
この小さい円が動物で、それ以外の部分は技術であり、
技術の発想、元となるのは小さな円(動物)から生じるもの、ということだ。

とすればデジタルも、その小さな円(動物)から生じたものとなる。
にも関わらず、なぜデジタルは非人間的と受け止める人がいるのだろうか。

前回も話されたことだが、無機物の進化の過程に有機物がある、という説。
11月に聞いて以来、考えてきた。

無機物(デジタル、客観)であり、有機物(アナログ、主観)であると、今夜確信した。

Date: 12月 14th, 2015
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(UREI Model 813の登場・その7)

HIGH-TECHNIC SERIES-1に、
井上先生が既製のスピーカーシステムにユニットを加えるマルチアンプについて書かれている。
そこにアルテックの604-8Gが出てくる。
     *
 かつて、JBLのシステムにあったL88PAには、中音用のコーン型ユニットとLCネットワークが、M12ステップアップキットとして用意され、これを追加して88+12とすれば、現在も発売されている上級モデルのL100センチュリーにグレイドアップできる。実用的でユーモアのある方法が採用されていたことがある。
 ブックシェルフ型をベースとして、スコーカーを加えるプランには、JBLの例のように、むしろLCネットワークを使いたい。マルチアンプ方式を採用するためには、もう少し基本性能が高い2ウェイシステムが必要である。例えば、同軸2ウェイシステムとして定評が高いアルテック620Aモニターや、専用ユニットを使う2ウェイシステムであるエレクトロボイス セントリーVなどが、マルチアンプ方式で3ウェイ化したい既製スピーカーシステムである。この2機種は、前者には中音用として802−8Dドライバーユニットと511B、811Bの2種類のホーンがあり、後者には1823Mドライバーユニットと8HDホーンがあり、このプランには好適である。
 また、アルテックの場合には、511BホーンならN501−8A、811BならN801−8AというLCネットワークが低音と中音の間に使用可能であり、中音と高音の間も他社のLC型ネットワークを使用できる可能性がある。エレクトロボイスの場合には、X36とX8、2種類のネットワークとAT38アッテネーターで使えそうだ。
     *
これを読んだ時、私は高校生だった。
だから井上先生が、なぜ同軸型ユニットの604-8Gに中音用のユニットを追加されるのか、
その意図をわかりかねていた。

802-8D+511Bを604-8Gに追加するということは、
いうまでもなく同軸型のメリットを殺すことにつながる。
そんなことは井上先生は百も承知のはず、なのに、こういう案を出されている。

604-8Gは15インチ口径のコーン型ウーファーとホーン型トゥイーターの2ウェイ構成である。
クロスオーバー周波数は1.5kHz。

アルテックのストレートコーンのウーファーは、416は1.6kHz、515Bは1kHz、515-8LFは1.5kHzと、
カタログ上ではそうなっている。
以前、ごく初期の515(蝶ダンパー)に、
ポータブルラジオのイヤフォン端子から出力を取り出して接いで鳴らしたことがある。

1kHzといようりも、もう少し上まで、3kHzくらいまではなだらかに減衰しながらもクリアーに聴きとれた。
このことはトーキー用スピーカーとして源流をもつからであり、
映画館でもしドライバーが故障して鳴らなくなっても、
ウーファーだけでセリフがはっきりと聞き取れる必要があるからだ。

とはいえ、振幅特性だけでない、
位相特性、指向特性をふくめた周波数特性でいえば、
15インチ口径のコーン型にそこまで受け持たせるのは無理がある。

同じことは604シリーズのトゥイーターにもいえる。

Date: 12月 12th, 2015
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(UREI Model 813の登場・その6)

UREIの813はアルテックの604-8Gにサブウーファーを足した、
いわば変則3ウェイといえる構成をとっている。

クロスオーバー周波数はUREIのカタログには載っていないが、
ステレオサウンド 47号の測定結果をみると、おおよそ250Hz以下で使われていることがわかる。
このサブウーファーのハイカットは12db/octであることもわかる。

813にはレベルコントロールのツマミが3つある。
MID RANDGE、HF DRIVE、HF TRIMである。

これらが一般的なレベルコントロールと違う点は、
マキシマムの位置で周波数特性がフラットになっていることである。
つまり絞ることはできても、レベルを上昇させることはできない。
さらに絞りきることもできない。
あくまでも微妙な調整を行うためのレベルコントロールといえる。

回路図をみればわかることだが、
813のMID RANGEは604-8Gの中高域を調整しているわけではない。
HF DRIVE、HF TRIMはトゥイーター側のローカットフィルターで行っているが、
MID RANGEはウーファーのハイカットフィルターで行っている。

これも47号の測定結果をみれば、どういうことをUREIが行っているかは、
回路図を見なくともある程度推測がつく。

47号の測定結果のなかには、近接周波数特性という項目がある。
これはウーファー、バスレフポートなどにマイクロフォンを非常に近づけての周波数特性であり、
ウーファーのネットワーク込みの周波数特性がわかる。

813のウーファーの特性は800Hzあたりから急激に減衰している。
けれど一度減衰した周波数特性は1kHz以上の帯域でレベルが上昇している。
そして2.5kHz以上で、ふたたび急激に減衰するというものだ。

813のMID RANGEは、この1kHzから2.5kHzまでの帯域のレベルをコントロールしている。
813のカタログに載っている周波数特性でもMID RANGEを絞ると、この帯域が減衰するのがわかる。

アルテックの604-8Gのクロスオーバー周波数は1.5kHzと発表されている。
ウーファーのハイカットは12dB/oct、トゥイーターのローカットは18db/octのスロープ特性。

UREIの813のネットワークは、アルテックのオリジナルとは大きく違っているとはいえ、
MID RANGEのレベルコントロールはウーファー側なのか。
これは、UREIの特許ともなっているTIME ALIGN NETWORKと関係してくる。