Archive for category 使いこなし

Date: 9月 28th, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(使いこなしとは)

なにかオーディオ機器を購入する。届く。
すぐに結線をして電源をいれて音を聴きはじめる人もいれば、
電源をいれてもすぐには聴かずに、電解コンデンサーへのチャージが十分にすすみ、
ウォームアップが終るまで聴かないという人もいるだろう。

さらには、CDプレーヤーならディスクを入れて再生状態・リピート状態にして、
1日か2日そのままにして、から、という人もいる。
アンプでも、発熱の多いものでなければ数時間のウォームアップではなく、
1日とか2日とか電源を入れっぱなしにしておいてから、
とにかく本調子が出てからの音を聴く、という人がいる。

人それぞれだから、どれがよくどれがだめなわけではない。
それでも……、とひとついいたいことはある。

「使いこなし」で大事なことは、とにかく「知る」こと。
そして「知る」ためには、「聴く」こと。

買うまでには時間がかかったり苦労したりがあったら、そうやって手にいれたオーディオは、最初の音出しから、
万全の調子にして、できるだけいい音ができる状況をつくったうえで聴きたい、その気持はわかる。

けれど届いたばかりのまっさらの新品の、まだウォームアップもチャージも十分に行われていない、
そのときの音も聴いて、知っておいた方がいい。

まだ冷えた状態の音から聴きはじめる。
そして徐々に暖まってくるとともに、チャージも進んでいく。そのときの音の変化も聴いていく。
そして1日目の音、2日目の音、3日目の音、さらに1週間後の音、1カ月後の音……。
その変化も聴いていくことの積重ねが、そのオーディオ機器を「知る」ことになっていく。

オーディオ機器は、違う製品であれば、ウォームアップによる音の変化、チャージによる音の変化、
エージングによる音の変化───これらは似たところもあれば、製品によってすこしずつ違う。

長時間のウォームアップによって、逆に音がダレてくるものもある。
ウォームアップした音だけを聴いていては、その判断はつきにくい。

ひとつのオーディオ機器で、アクセサリーの類をいっさい変えなくても、
つまり何もいじらなくても音は変化していく。使っていくうちに、そして季節の変化によっても。
音の変化はいくつもあり、それらをきちんと聴いて把握していくことが、
そのオーディオ機器を知ることになっていく。

とにかくあらゆる音の変化を貪欲に聴いていくことが、使っているオーディオ機器を「知る」ことである。
知らなければ、使いこなしは、ただやみくもに音の変化に惑わされることに陥りやすくなる。

音(そのさまざまな変化)を聴いて「知る」こと。
インターネットや雑誌によってのそれと、自分の耳で聴いて「知る」こととは、意味が異る。

音を聴いて「知る」ことが、オーディオの「基本」であり、
「使いこなし」はそこからはじまる、ともいえる。

Date: 8月 27th, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その30)

この項の(その26)でのB氏とC氏が、井上先生と決定的に違うところはここらにあるのではないだろうか。

結局のところ、B氏、C氏は、大きな音の変化、目立つ音の変化だけに集中しすぎて、
その陰でひっそりと変化しているところに耳を傾けていなかったので……、と思ってしまう。

井上先生の使いこなしを傍で見ている(聴いている)だけで、井上先生が聴かれていたであろう、
聴き逃さずきっちりと捉えておられたであろう音の変化──つまりB氏、C氏が聴き逃していた、
注意を払っていなかった部分での音の、微細な変化──を、
大きな変化に気を奪われることなくしっかりと、井上先生と同じレベルで聴きとっていれば、
井上先生の使いこなしによる音の変化は、なんらマジックではないことが理解できるはずだ。

この大事なところを聴き逃していては、井上先生の使いこなしは、その人にとってマジックでしかない。

もういちど、(その26)で引用した瀬川先生のことばを書いておく。
     *
スピーカーから出る「音」は、多くの場合「音楽」だ。その音楽の鳴り方の変化を聴き分ける、ということは、屁理屈を言うようだが「音」そのものの鳴り方の聴き分けではなくその音で構成されている「音楽」の鳴り方がどう変化したか、を聴き分けることだ。
     *
音に境界線はない、と書いた。便宜的に低音・中音・高音というけれど、
実際にはどこにも低音と中音のあいだに境界線はないし、中音と高音のあいだにも境界線はない。
そして、「音」と「音楽」にも、境界線はあるようにみえて、その実、曖昧でしかない。
ない、とはいまのところ言い切れない。だからといって、あるとも断言できない。

「音」と「音楽」の差違はなんなのか、そして「音」と「音響」、そして「音楽」について考えてみることこそ、
使いこなしを自分のものとすることにつながっていっているはずだ。

Date: 8月 24th, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その29)

オーディオシステムのどこかを変える。
接続ケーブルを、他のものに交換してみる、インシュレーターの類を使ってみる、
お金をかけなくてもできることは多数あり、スピーカーの設置場所・仕方を変えてみる、
など、とにかくやろうという気になれば、音を変える要素は、無数といっていいくらいある。

どこでもいい、とにかく何かかが変れば(替れば)、音は必ず変化している。
大きな変化もあれば、小さな変化もあるが、音が変化しないということは絶対にあり得ない。
その変化を聴きとれるかどうかは聴き手の問題でしかない。

そして音の変化は、どこか部分的ではないということ。
ずっと以前から言われ続けていることだが、スピーカーシステムでトゥイーターを他の物に交換してみたら、
そのトゥイーターの受持帯域だけでなく、低音まで変化する。
その逆にウーファーを交換する、もしくはサブウーファーを追加することで、
低域の鳴り方だけでなく高域(もちろん中域も)も、それにつれて変化している。

つまりどんな場合にも部分的な変化だけにとどまることはなく、全体が変化している。
ただ変化の目立つところと、そこに隠れて、それほど目立たない変化がある。
音に「境界線」はないからだ。
どこかに境界線が存在すれば、変化は部分的なものでおさまるだろうけど。

どうしても大きな変化の方に機をとられがちになってしまうが、
そんな大きな目立つ変化に隠れてしまいがちの、小さく目立たない音の変化を、
きちんと把握して、おろそかにせず磨き積み上げていくことが、音を良くしていくことである。

Date: 2月 4th, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その28)

いま書店に「微差力」というタイトルの本が並んでいる。
手にとっていないから、どんな内容なのかは知らないが、
タイトルの「微差力」はオーディオの使いこなしを、見事に言い表していると思う。

微差力の積み重ねで、音は磨かれていく。
ひとつひとつの差は、まさしく微差にしかすぎないが、それが、オーディオに関しては、
それこそいくつもある。10や100ではきかない。経験を積み、真剣に取り組んでいけばいくほど、
いくつもの微差力を生じるところが見えてくるようになるはずだ。

どれだけの微差力を見出しているのかが、その人のキャリアを表しているともいえる。

ケーブルを交換したり、アクセサリーを購入するのもいい。なにもそのことを否定はしない。
ただ、その前に、何も買わずに変えられるところを、すべて変えてみて、その音の変化を確認してからでも、
ケーブルやアクセサリーの購入は遅くはないはずだ。

たとえばACの極性による音の違いからはじまって、CDプレーヤーであれば、
ライン入力すべての端子に接ぎかえて、その音を確認していく。REC OUTに接続するという手もある。
もっとも’70年代の国産のコントロールアンプの中には、
REC OUTにバッファーアンプをもうけているものもあるので、
そういうアンプでは使えない手だが、使えるものならば試してみてほしい。

使いこなしは、そうやって微差力を鍛えていくしかない、ともいえる。

Date: 2月 4th, 2010
Cate: 4343, JBL, 使いこなし

4343における52μFの存在(その15・続々余談)

もう一度、コントロールアンプ、パワーアンプとも左チャンネルを使った音を聴く。
そしてスピーカーを、右チャンネルに接ぎかえる。
同じ音で鳴ることは、稀である。ここでも、聴こえ方は違ってくる。

ホワイトノイズを聴くのが嫌な人は、音楽を聴いて試してみてほしい。
マルゴリスがいうように、聴きなれたディスクをモノーラルにして聴くのがいいと思う。

コントロールアンプとパワーアンプのあいだに、
グラフィックイコライザーやパラメトリックイコライザーを挿入している場合には、
もちろんそれらの機器の左右チャンネルの音を個別に聴いておく。

そうやってさまざまな組合せの音を聴いて、左右の音の違いが最も少なくなる組合せを選択するだけで、
音場感の再現性に磨きがかかる。

ひとつひとつ接ぎかえて、その音をきちんとメモして、ということをくり返すのに、お金はいらない。
ただひとつ行動するだけである。

音は、確実に変る。これも「使いこなし」である。なにも特別なテクニックは必要としない。
丹念に音を聴いて判断していくだけ、である。

ただ、必ずしも音がよくなるわけではないことも最後につけ加えておく。
左右チャンネルを指定通りに接続している状態がいいということも、当然あるからだ。

Date: 2月 4th, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その27)

音は、どこをいじっても、変化しないということは絶対にありえない。
必ず、なにがしかの変化をしている。
その変化が聴きとれるか聴きとれないかは、聴き手次第であって、
聴きとれないからといって、変化が起っていないわけではない。

つまり、チューニングのテクニック、という特別なものは、じつのところない、ともいえる。

そのことがC氏には、わかっていなかったのだ。
だからB氏のことを、オーディオ評論家よりもチューニングのテクニックを持っている、と私に言った。
この言葉が、C氏の「使いこなし」に関する未熟な面、というよりも、
本質を理解していないことを、間接的に伝えている、ともいえよう。

使いこなし、チューニング、ということで、井上先生のことを思い浮かべる人も少なくないだろう。
早瀬さんも私も、井上先生からは、多くの大切なことを学んだ。

井上先生のチューニングは、なにも特別なことをされるわけではない。
しかも、アクセサリーの類を、特に使われるわけでもない。

あくまでも、そこにあるものを使い、なにもなければ、変えられるところを変えてゆき、
音を仕上げられていく。だから、呆気にとられる人もいよう、
井上マジック、と呼ぶ人もいる。でも井上先生は、マジックを使われているわけではない。

Date: 2月 3rd, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その26)

B氏の調整による「音」を私は聴いていないから、確実なことはいえないにしても、
その音を聴いた人の話では、音楽がかなり歪な感じで鳴っていた、ということは伝わってきた。

瀬川先生が書かれている。
     *
スピーカーから出る「音」は、多くの場合「音楽」だ。その音楽の鳴り方の変化を聴き分ける、ということは、屁理屈を言うようだが「音」そのものの鳴り方の聴き分けではなくその音で構成されている「音楽」の鳴り方がどう変化したか、を聴き分けることだ。
(「マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ──あなたはマルチアンプに向くか向かないか──」より)
     *
C氏によると、B氏はチューニングのテクニックを、
そのへんのオーディオ評論家よりも持っている、ということだが、
そのテクニックは、ほんとうに「音楽」の鳴り方を調整していくためのものなのだろうか。
B氏は、「音楽」の鳴り方の変化を聴き分けていたのだろうか、
それとも「音」の変化を聴き分けていただけだろうか。

さらに瀬川先生は、「マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ」でこうも書かれている。
     *
音楽ジャンルを問わず、音楽の心を掴んで調整し込まれた再生装置なら、必ずその音は万人を説得できるほどの普遍性を帯びるに至る。
     *
B氏は、音楽の心を掴んで調整されていたのか。そしてC氏の耳は、何を聴いていたのか、と問いたくなる。

Date: 2月 2nd, 2010
Cate: 4343, JBL, 使いこなし

4343における52μFの存在(その15・続余談)

このノイズの出方も、注意ぶかく聴くと、左右チャンネルで微妙に違うことがわかるはずだ。

フォノイコライザーがあればそれを接いでノイズを出せばいいが、
CDのみの場合であれば、チェック用CDにホワイトノイズがはいっているものがあるから、それを使えばいい。
ただし音量には気をつけること。

CDプレーヤーの左チャンネル(別に右チャンネルでもいい)から出力を取り出し、
コントロールアンプの左チャンネル、パワーアンプの左チャンネルにいれて、
スピーカーも左チャンネルのみを使い、ノイズの鳴り方を確かめる。

次にコントロールアンプまではそのままで、パワーアンプのみ右チャンネルに信号をいれ、
スピーカーはもちろん左チャンネルで、またノイズを聴く。

パワーアンプによっては、この差はわずかかもしれないし、かなり違った鳴り方をするものもある。
少なくとも、左チャンネルのときと、まったく同一であることは、まずない。

今度はパワーアンプは左チャンネルに戻し、コントロールアンプのみ右チャンネルを使用して、
また同じことをくり返す。やはりノイズの出方は違うはずだ。

さらにコントロールアンプ、パワーアンプとも右チャンネルにする。
これで、4つの組合せの、ノイズの出方をチェックしたことになるわけだ。

Date: 2月 2nd, 2010
Cate: 4343, JBL, 使いこなし

4343における52μFの存在(その15・余談)

モノーラルの状態で音を確認することは、昔ながらの方法なのだが、
いまではすっかり忘れさられているような気がする。

アンプには、入力端子、出力端子にL、Rの指定がある。
とはいえ、なにもこの通りに接続しなければならないわけでは、決してない。
左チャンネルの信号が、最終的に左チャンネルのスピーカーに届けばいいわけで、
そこまでの系路は、どこを通ってもいい。

最新のアンプは、フォノイコライザーを搭載していなかったり、測定上のSN比が向上しているため、
ボリュウムを目いっぱいあげても、スピーカーからノイズがはっきりと聴こえることはほとんどない。
けれど、アナログディスク全盛時代は、入力セレクターをPHONOにして、ボリュウムを最大にすると、
けっこうなノイズがスピーカーから聴こえてきた。

このノイズのおかげで、プログラムソースが何もなくても、それにアース電位を測るテスターがなくても、
AC極性をあわせることが可能だった。

ACの極性をかえると、このノイズの質、量の出方が変化するからで、
とうぜんノイズの質がザラつかず、レベルの低い方が、正しいAC極性というわけだ。

Date: 1月 29th, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その25)

優れたオーディオ機器ほど、誤った使いこなしを積み重ねていくと、
泥濘は広く深くなり、ひどい音で鳴るだけでなく、音楽を変質させてしまう。

2007年のA社の音は、まさにそうだったのではないか。
誰が調整したのかははっきりとしない。
だが、少なくとも責任者であるB氏は、その音にOKを出したことは間違いないだろう。
自社のブースの音を、開場前に確認しない責任者はいないはずだし、
もし、満足できるだけの音がでていなければ、B氏が調整される(された)はずだ。

少なくともC氏の話では、使いこなしに関しては、B氏は積極的に取り組まれている人なのだから。
私は2007年の音は、B氏が調整されたのだと思っている。

昨年、B氏が調整された音(本人の装置ではなく、別の人の装置ではあるが)を、
耳の信用できる人(C氏ではない)が聴いて、その感想をきかせてくれた。
その音の印象が、2007年のときの印象に通じるものがあるから、そう判断したわけだ。

Date: 1月 23rd, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その24)

スピーカーのセッティングをいいかげんにしたままでは、幸運がいくつも重ならないかぎりは、
そうそういい響きを、そのスピーカーから抽き出すことはできない。

けれど、聴き馴染んでいるベートーヴェンの音楽が、誰の曲なのか、一瞬わからなくなるほど、
音楽を歪めてしまうような鳴り方には、ならない。

いいかげんなセッティングによるひどい音は、そういう類の音ではない。
2007年に聴いた、あのひどい音は、あきらかに「調整後」の音であったはずだ。

Date: 1月 23rd, 2010
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その23)

この項の(その7)に書いたことに、話を戻そう。

じつは、このブースの音は、2007年だけではない、他の年も、ひどい音を出していた。
その6)や(その7)を書いてしばらくして、「A社って、○○でしょ」と、友人から言われた。
その通りだったから、隠しもしなかったが、
私だけでなく、A社のブースの音をひどいと感じていた人はいたわけで、それはなにも彼一人だけでなく、
私のまわりには、少なからず、同じように感じている人がいる。

それが、2009年では、それまでのひどすぎる音が嘘のようになくなり、
細かいことを言えば、もちろん不満点はあるものの、音楽が歪められることなく、まともな音が鳴っていた。

ある人からの情報によれば、昨年は、スピーカーの位置出しに、かなり時間をかけて行なっていた、ときいた。
ということは、一昨年までとは、かなり適当に、こんなところでいいよ、という感じでやっていたことになる。

ふざけた話だ、と怒る前に、もう一度、2007年の、
コリン・デイヴィスの「コリオラン序曲」の鳴りかたの変質ぶりを思い出してみると、
あの音のひどさは、スピーカーのセッティングのいいかげんさが原因ではないはずだ。

Date: 12月 30th, 2009
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その22)

SUMOのThe Gold、The Powerのマニュアルには「ELECTROSTATIC SPEAKERS」の項目がある。

While both amplifiers (The Power and The Gold) are fully capable of driving electrostatic speaker, we feel that the Gold is more suited to this kind of application. Also, please be aware that “The Power” may have far too much output VOLTAGE potential under certain circumstances with most electrostatic devices. Such would be the case for example, in attempting to drive the QUAD electrostatics. Under NO CIRCUMSTANCES would you ever attempt to use either of these amplifiers to drive the QUADs as virtual destruction is assured for the speaker. We feel that due to its restricted output voltage capabilities, the forthcoming “NINE” 70 watt Class A amplifier will be ideally suited for driving the QUAD.

SUMOのラインナップは、The Powerとその半分の出力のThe Half、
The Goldとその半分の出力のThe Nineがあり、
QUADのESLを鳴らすのであれば、70Wの出力のA級アンプのNINEを使え、ということだ。
他の3機種ではESLを壊してしまう、という注意書きだが、
QUADのESLを、The Goldで、私は鳴らしていた。

The Goldだったから、あんなに狭い部屋でもESLが鳴った。
よけいな苦労を背負い込まなくてすんだ。

Date: 12月 30th, 2009
Cate: 使いこなし, 岩崎千明

使いこなしのこと(その21)

岩崎先生が書かれている。
     *
高価な高級品ほどよく鳴らすのがむずかしいものである。わが家には昔作られた、昔の価格で1000ドル級の海外製高級システムから、今日3000ドルもする超大型システムまで、いくつもの大型スピーカーシステムがある。こうした大型システムは中々いい音で鳴ってくれない。トーンコントロールをあれこれ動かしたり、スピーカーの位置を変えたり。ところが、不思議なのは本当に優れた良いアンプで鳴らすと、ぴたりと良くなる。この良いアンプの筆頭がパイオニアのM4だ。このアンプをつなぐと本当に生まれかわったように深々とした落ちつきと風格のある音で、どんなスピーカーも鳴ってくれる。その違いは、高級スピーカーほど著しくどうにも鳴らなかったのが俄然すばらしく鳴る。昔の管球式であるものは、こうした良いアンプだが、現代の製品で求めるとしたらM4だ。A級アンプがなぜ良いか判らないが、M4だけは確かにずばぬけて良い。
     *
同じ経験は、私もあるし、他の方もお持ちであろう。
良いパワーアンプで鳴らしてみると、それまではスピーカーのせい、セッティングのせいにしていたことが、
パワーアンプがスピーカーを十全にドライブしていなかったことに起因していたことがはっきりとする。

(その11)で書いているが、基本的に井上先生も同じことを言われている。

QUADのESLが、パワーアンプの進化とともに、その評価を増していったことを思い出してほしい。

Date: 12月 30th, 2009
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(その20)

欲しいと想い続けてきたスピーカーを手に入れて、すぐに音を出したくなる気持は、私にだってある。
だが、手に入れるまでに、なんらかの苦労があったスピーカーであればあるほど、
できるだけ最初の音出しから、いい環境で、と思う。

少なくとも基本的な素性のいいもの、スピーカーの品格と同等とまでいかなくても、
最低限、このくらいはあってほしいと思えるだけの品格をもっているもので鳴らしたい。

他人が鳴らしたスピーカーは、鳴らしていた人の癖が残っているのと同じように、
優れたスピーカーであれば、粗雑なアンプやプレーヤーで鳴らしていた日が長ければ長いだけ、
悪い癖が残ってしまうようなところが、確実にある。

それに破鍋に綴蓋的な使いこなしの癖が、鳴らしている本人にも滲みついてしまう……。

誰しも、最初から理想的な組合せを用意できるわけではない。
だからこそ、スピーカーが最低限求めているクォリティを有したアンプなりプレーヤーを用意できないのであれば、
しばらくがまんすることも必要ではないのだろうか。

がまんしていた時間は無駄にはならない。
むしろ使いこなしに関しては、正しい選択だと思う。