使いこなしのこと(その27)
音は、どこをいじっても、変化しないということは絶対にありえない。
必ず、なにがしかの変化をしている。
その変化が聴きとれるか聴きとれないかは、聴き手次第であって、
聴きとれないからといって、変化が起っていないわけではない。
つまり、チューニングのテクニック、という特別なものは、じつのところない、ともいえる。
そのことがC氏には、わかっていなかったのだ。
だからB氏のことを、オーディオ評論家よりもチューニングのテクニックを持っている、と私に言った。
この言葉が、C氏の「使いこなし」に関する未熟な面、というよりも、
本質を理解していないことを、間接的に伝えている、ともいえよう。
使いこなし、チューニング、ということで、井上先生のことを思い浮かべる人も少なくないだろう。
早瀬さんも私も、井上先生からは、多くの大切なことを学んだ。
井上先生のチューニングは、なにも特別なことをされるわけではない。
しかも、アクセサリーの類を、特に使われるわけでもない。
あくまでも、そこにあるものを使い、なにもなければ、変えられるところを変えてゆき、
音を仕上げられていく。だから、呆気にとられる人もいよう、
井上マジック、と呼ぶ人もいる。でも井上先生は、マジックを使われているわけではない。