使いこなしのこと(使いこなしとは)
なにかオーディオ機器を購入する。届く。
すぐに結線をして電源をいれて音を聴きはじめる人もいれば、
電源をいれてもすぐには聴かずに、電解コンデンサーへのチャージが十分にすすみ、
ウォームアップが終るまで聴かないという人もいるだろう。
さらには、CDプレーヤーならディスクを入れて再生状態・リピート状態にして、
1日か2日そのままにして、から、という人もいる。
アンプでも、発熱の多いものでなければ数時間のウォームアップではなく、
1日とか2日とか電源を入れっぱなしにしておいてから、
とにかく本調子が出てからの音を聴く、という人がいる。
人それぞれだから、どれがよくどれがだめなわけではない。
それでも……、とひとついいたいことはある。
「使いこなし」で大事なことは、とにかく「知る」こと。
そして「知る」ためには、「聴く」こと。
買うまでには時間がかかったり苦労したりがあったら、そうやって手にいれたオーディオは、最初の音出しから、
万全の調子にして、できるだけいい音ができる状況をつくったうえで聴きたい、その気持はわかる。
けれど届いたばかりのまっさらの新品の、まだウォームアップもチャージも十分に行われていない、
そのときの音も聴いて、知っておいた方がいい。
まだ冷えた状態の音から聴きはじめる。
そして徐々に暖まってくるとともに、チャージも進んでいく。そのときの音の変化も聴いていく。
そして1日目の音、2日目の音、3日目の音、さらに1週間後の音、1カ月後の音……。
その変化も聴いていくことの積重ねが、そのオーディオ機器を「知る」ことになっていく。
オーディオ機器は、違う製品であれば、ウォームアップによる音の変化、チャージによる音の変化、
エージングによる音の変化───これらは似たところもあれば、製品によってすこしずつ違う。
長時間のウォームアップによって、逆に音がダレてくるものもある。
ウォームアップした音だけを聴いていては、その判断はつきにくい。
ひとつのオーディオ機器で、アクセサリーの類をいっさい変えなくても、
つまり何もいじらなくても音は変化していく。使っていくうちに、そして季節の変化によっても。
音の変化はいくつもあり、それらをきちんと聴いて把握していくことが、
そのオーディオ機器を知ることになっていく。
とにかくあらゆる音の変化を貪欲に聴いていくことが、使っているオーディオ機器を「知る」ことである。
知らなければ、使いこなしは、ただやみくもに音の変化に惑わされることに陥りやすくなる。
音(そのさまざまな変化)を聴いて「知る」こと。
インターネットや雑誌によってのそれと、自分の耳で聴いて「知る」こととは、意味が異る。
音を聴いて「知る」ことが、オーディオの「基本」であり、
「使いこなし」はそこからはじまる、ともいえる。