Archive for category 真空管アンプ

Date: 4月 9th, 2021
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その31)

QUAD IIと同時代の真空管アンプ、
たとえばマランツのModel 5と比較してみたい。

比較といっても、その音を聴いてどちらかが優れているとか、
こんな音の特徴もっているとかいないとか、そんなことではなく、
現代真空管アンプ、それもオーディオマニアが自作できる範囲でのあり方を、
二つのアンプを比較して考えていきたい、というものである。

マランツの管球式パワーアンプは、
Model 2、Model 5、model 8(B)、Model 9がある。
Model 8(B)だけがステレオ仕様で、あとはモノーラル仕様である。

QUAD IIもモノーラルである。
QUAD IIの発表は1953年。
Model 2は1956年、Model 5は1958年である。

QUAD IIの出力管はKT66で、マランツはEL34である。
出力はQUAD IIが15W、Model 2が40W(UL接続)、Model 5が30W。

外形寸法は、QUAD IIがW32.1×H16.2×D11.9cm、
Model 2はW38.1×H16.5×D24.1cm、Model 5はW15.2×H18.7×D38.7cmで、
QUAD IIと比較するならばMODEL 5である。

マランツのModel 2、Model 5は、シャーシー構造がいわゆる片持ちといえる。
底板にゴム脚が四つあるが、これらはトランスの重量を支えるためといえる場所にある。

Model 2はシャーシー上後方にトランス(重量物)をまとめている。
手前に真空管が立っているわけだが、
この部分はトランスを支えるシャーシーにネジで固定されたサブシャーシーとなっている。

そして、このサブシャーシーの下部にゴム脚はない。

Model 5はサブシャーシーという構造はとっていないが、
真空管が立っている箇所の下部にゴム脚はない。

Model 8(B)、Model 9はオーソドックスな位置にゴム脚がついている。

Date: 4月 2nd, 2021
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その30)

QUADの22+IIの組合せを聴く機会には恵まれなかったけれど、
ステレオサウンドで働いていたから、QUADのトランジスター式のアンプをよく聴いた。

QUADのペアで聴くことも多かったし、
それぞれ単独で、他のメーカーのアンプとの組合せでも、何度も聴いている。

そうやってQUADのアンプの音のイメージが、私のなかでできあがっていった。
このことが、QUAD IIの真価をすぐには見抜けなかったことにつながっていったように、
いまとなっては思っている。

QUAD IIは22との組合せで、とある個人宅で聴いている。
他のアンプと比較試聴をしたわけではない。
あくまでも、その人の音を聴かせてもらうなかで、
アンプがQUADの22+IIであった、というわけだから、
その時の音の印象が、QUAD IIの音の印象となるわけではない。

それは十分承知していても、
私がQUAD IIを聴いたのは、このときとあと一回ぐらいだ。
どちらも22との組合せである。

22との組合せこそ、もっともQUADの音なのだが、
こうやってQUAD IIのことを書き始めると、QUAD II単体の音というのを、
無性に聴いてみたくなる。

おそらくなのだが、かなりいい音なのではないだろうか。
出力は公称で15Wである。
実際はもう少し出ているそうだが、
その出力の小ささとコンパクトにまとめられた構成、
そしてQUADのその後のアンプの音の印象から、
なんとなくスケール感は小さい、とどうしても思いがちだ。

実際に大きくはないだろう。
際立ったすごみのような音も出ないだろう。

それでも、フレキシビリティの高い音のような気がする。
このことはQUAD IIのアンプとしてのつくりとともに、
現代真空管アンプとしての重要な要素と考えている。

Date: 3月 31st, 2021
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その29)

私がQUAD IIの詳細を知ったのは、
ステレオサウンド 43号(1977年夏号)掲載の「クラフツマンシップの粋」でだった。

QUADのアンプのことは知っていた。
トランジスターアンプの前に管球式のコントロールアンプの22、
パワーアンプのIIがあることだけは知ってはいたが、
具体的なことを知っていたわけではなかった。

記事は、井上先生、長島先生、山中先生による鼎談。
QUAD IIのところの見出しには「緻密でむだのないコンストラクション」とあった。

内容を読めば、そして写真をみれば、
この見出しは納得できる。

山中先生は
《とにかく、あらゆる意味でこのアンプは、個人的なことになりますけれども、一番しびれたんですよ。》
と発言されていた。

この時から、QUAD II、いいなぁ、と思うようになっていた。

43号から約二年後の52号。
巻頭に瀬川先生の「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」がある。

そこで、こう書かれていた。
     *
迷いながらも選択はどんどんエスカレートして、結局、マランツのモデル7を買うことに決心してしまった。
 などと書くといとも容易に買ってしまったみたいだが、そんなことはない。当時の価格で十六万円弱、といえば、なにしろ大卒の初任給が三万円に達したかどうかという時代だから、まあ相当に思い切った買物だ。それで貯金の大半をはたいてしまうと、パワーアンプはマランツには手が出なくなって、QUADのII型(KT66PP)を買った。このことからもわたくしがプリアンプのほうに重きを置く人間であることがいえる。
     *
瀬川先生も、QUAD IIを使われていたのか──、
もちろん予算に余裕があったならばマランツの管球式パワーアンプを選択されていただろうが、
いまとは時代が違う。

マランツのModel 7とQUAD IIが、
瀬川先生にとって《初めて買うメーカー製のアンプ》である。

52号では、こんなことも書かれていた。
     *
 ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万語を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
     *
このころはQUAD IIを聴く機会はなかった。
意外にもQUAD IIを聴く機会は少なかった。

マランツやマッキントッシュの同時代の管球式アンプを聴く機会のほうがずっと多かった。

Date: 3月 29th, 2021
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その27)

伊藤先生が、無線と実験に6V6のシングルアンプを発表されたことがある。
私の記憶違いでなければ、これがオーディオ雑誌に発表された最後のアンプである。

手元にあったアンプがすべて持ち去られて、音を聴くことが出来なくなった。
それで手持ちの部品で作った、と書いてあった。

シャーシーは、だから市販のモノだった。
伊藤先生のパワーアンプにもちいられるシャーシーとはまったくの別物。
にもかかわらず、できあがったアンプは、伊藤アンプのたたずまいをしていた。

市販のトランス、市販のシャーシー、
これらの組合せにも関らず、間延した感じが、そのアンプにはなかった。

無線と実験、ラジオ技術などのオーディオ雑誌で数多くの真空管アンプの写真を見てきた。
どれも真似をしたいと思わなかった。
伊藤先生のアンプだけが、私にとっては違っていた。

そのためにはシャーシーを特注しなければ、と思っていた。
あのシャーシーがあってこその伊藤アンプの面は否定できない。

なのに6V6シングルアンプのシャーシーは全面黒色で、
シャーシーの高さも、40mmと伊藤アンプのシャーシー(50mm)よりも低い。

それでも伊藤先生のアンプに見える。
それは出力管のソケットの周囲に放熱用の穴が開けられているから、ともいえる。
この穴がもしなかったら、伊藤アンプとは思わなかった可能性は高い。

塗装済みのシャーシーに穴開け加工を施すわけだから、
切り口は金属の質感が顔を覗かせる。
だから伊藤先生は再塗装されている。

穴を開けなければ、こんな手間は不要になる。
穴を開けるのも手間である。

しかも(その26)で書いているように、
ソケット周囲の穴は出力管の放熱にほとんど効果はないはずだ。

手間をかけて穴を開けて、塗装する。
これらのことを考え合わせて、
この穴はデザインなのか、デコレーションなのを判断すべきである。

Date: 3月 21st, 2021
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その28)

現代真空管アンプをどうイメージしていくか。
こまかな回路構成について後述するつもりなのだが、NFBをどうするのか。

私は出力管が三極管ならばかけないという手もあると考えるが、
ビーム管、五極管ともなるとNFBをかけることを前提とする。

NFBはほとんどの場合、出力トランスの二次側巻線から初段の真空管へとかけられる。
信号経路とNFB経路とで、ひとつのループができる。
このループのサイズを、いかに小さく(狭く)していくかは、
NFBを安定にかける以上に、
真空管アンプ全盛時代とは比較にならないほどアンプを囲む環境の悪化の点でも、
非常に重要になってくる。

プッシュプルアンプならば、初段、位相反転回路、出力段、出力トランス、
これらをどう配置するかによって、ループの大きさは決ってくる。

信号経路をできるだけストレートにする。
初段、位相反転回路、出力段、出力トランスを直線状に並べる。
こうするとNFBループは長く(大きく)なってしまう。

初段、位相反転回路、出力段、出力トランス、
これらを弧を描くように配置していくのが、ループのサイズを考慮するうえでは不可欠だ。

QUAD IIのこれらのレイアウトを、写真などで確認してほしい。
しかもQUAD IIは、出力トランスと電源トランスを、シャーシーの両端に配置している。

やや細長いシャーシー上にこういう配置にすることで、
重量がどちらかに偏ることがない。

出力トランスと電源トランスの干渉を抑えるうえでも、
この二つの物理的な距離をとるのは望ましい。

Date: 1月 12th, 2021
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その12)

この組合せ、この時の音があまりにも印象的だったこともあり、
私にとってラックスの38といえば、SQ38FDでもSQ38FD/IIではなく、LX38である。

しかも私はウッドケースというのが、あまり好きではない。
LX38はウッドケースがオプションになっていた。

おそらくウッドケースをつけると値上げしなければならなかったため、
なんとか価格も維持するためだったのだろう。

だとしても重いコートを脱ぎ捨てかのようでもあり、私はLX38を好む。
ではLX38の程度のいいのを探してきてコーネッタを鳴らしたいか、となると、
興味がまったくない、とはいわないまでも、それほどではない。

なぜかというと、まず一つはスペンドールのBCIIとコーネッタは、
同じイギリスのスピーカーシステムであっても、ずいぶんと性格が違う。
それに当時はアナログディスクで、カートリッジはピカリングだった。

いまはそうではない。
ピカリングのXUV/4500QのようなCDプレーヤー、もしくはD/Aコンバーターはない。

あのころとずいぶんと、いろんなことが変ってきている。
LX38の出力管、50CA10も、いまでは製造されていない。
探せば、まだ入手できる真空管ではあるが、
なんとなく避けたい気持があったりする。

中国で、さまざまな真空管が製造されているが、
50CA10は、そのラインナップにはない。おそらくこれから先も期待薄だろう。

他にも、こまかな理由がいくつかあって、
LX38で、どうしても──、という気持にはなれないでいる。

やはりKT88のプッシュプルアンプで鳴らしたい、という気持のほうが、強い。
いい音の真空管アンプであれば、なにもKT88のプッシュプルにこだわる必要はない──、
頭では、そう理解していても、一度はKT88のプッシュプルで鳴らしてみたい。

それも自分の手で鳴らしてみたい。

Date: 1月 11th, 2021
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その11)

コーネッタを手に入れたことで、
この項のテーマが微妙にずれてきてしまっている。

だんだんとコーネッタにおける黄金の組合せ的なことを考え始めている。

別項で「黄金の組合せ」について書いている。
黄金の組合せという表現がつかわれるようになったのは、
タンノイのIIILZとラックスのSQ38FDの組合せからであろう。

この組合せの音は聴いたことがない。
それでもなんとなく想像はつく。

IIILZとコーネッタは、基本的には同じユニットといってもいい。
もちろんMonitor GoldとHPD295Aは違うユニットだ、という人もいるのはわかっている。

それでも別ブランドのユニットと比較すれば、どちらもタンノイの10インチ同軸型ユニットである。
ならばコーネッタにもSQ38FDが合うのだろうか。

これも別項で書いているのだが、
ラックスのLX38(SQ38FD、SQ38FD/IIの後継機)で鳴らしたスペンドールのBCIIの音は、
いまでも聴きたい、と思うほどの音だった。

熊本のオーディオ店で、この組合せで、と瀬川先生にいった。
瀬川先生は、なかなかおもしろい組合せだ、といわれた。
接続が終って、音が鳴り始めた。

カートリッジは、ピカリングのXUV/4500Qにした。

スピーカーにしてもアンプにしても、カートリッジもそうなのだが、
どれもはっきりとした個性をもつ音だ。

鳴ってきた音を聴かれた瀬川先生は「玄人の組合せだ」といわれた。
自分で考えた組合せということもあって、
私にとっての「黄金の組合せ」といえば、この組合せの音である。

Date: 12月 22nd, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その10)

コーネッタを鳴らすKT88のプッシュプルのプリメインアンプについて、
具体的に考えてみる。

出力はどれだけ欲しいのか、となると、50Wは欲しい。
コーネッタは、さほど高能率スピーカーではない。
これは、あくまでも昔の基準でのことであって、
いま市販されているスピーカーシステムとの比較では高能率となる。

それでも私の感覚としては、能率はやや低め、ということになる。

アンプの出力は音場の再現と大きく関っている。
オペラを聴くとよくわかる。

歌手がソロで歌っている。
さほど大きくない音量では、出力の低いアンプであっても、
クォリティの高いアンプであれば、気持よく鳴ってくれるのだが、
そこに合唱が加わって、クレッシェンドしていくと、音場がぐしゃっとくずれることがある。

出力に余裕のないアンプに起りがちな現象である。

だからコーネッタに50Wの出力というのは、最低限といってもいい。
私の部屋はさほど音量が出せるわけではない。
それでも50Wは欲しい、と考えている。

もっと音量を出せる環境であれば、出力はもっと欲しいところだ。

75Wの出力といえば、マッキントッシュのMC275がそうである。
規模としては、一つの目安となる。

MC275をベースに、ラインアンプ(これも管球式)で、
トーンコントロールを装備したプリメインアンプとなると、かなり大型になる。

自家用として使いたくない大きさになるはずだ。
そこまでなるならば、セパレート形式のほうが、
パワーアンプを目につかないところに設置すれば、ずっとすっきりする。

Date: 12月 18th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その9)

その8)でテープ入出力端子のことにちょっと触れたので、
ここでのテーマとは直接関係ない話なのだが、
プリメインアンプの現行製品で、テープ入出力端子を備えているのは、
どれだけあるのだろうか。

しばらく前からアナログディスク・ブームといわれている。
それからしばらくして、カセットテープがブームになってきた、ともいわれた。
オープンリールテープも、静かなブームだ、ときく。

カセットテープにしろオープンリールテープにしても、
アンプにテープ入出力端子がなければ、けっこう扱い難い。

なのにテープ入出力端子をつけてほしい、という声を、
ソーシャルメディアでもみかけたことがない。

私がフォローしている人たちがツイートしていないだけで、
そういう声はあるのかもしれない。

でも、カセットテープ、オープンリールテープの音に惚れ込んでいても、
再生だけで録音はしていない人が、いまでは案外多いのかもしれない。

録音をしなければテープ入出力端子の必要性は、あまり感じないし、
テープデッキの出力を、アンプのライン入力に接続するだけで事足りる。

テープデッキを再生だけに使うのも悪いことではないし、間違っているわけでもない。
それでも、やっぱり録音器であるわけだから。

でも、何を録るのか、といわれるだろう。
音楽を録ることだけにとらわれすぎていないだろうか。

カメラを買ったからいって、誰もがスタジオを借りて撮影するわけではない。
家族の写真を撮ったり、身近な風景や動物を撮ったりする。

なぜオーディオの録音器だけが音楽だけを録ることにこだわるのか。
スマートフォンのカメラ機能で、気軽に撮るように、
身近にある音を録ってみたらいい。

Date: 12月 15th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その8)

ラックスから、今年プリメインアンプのプリメインアンプのL595A LIMITEDが登場した。

今回も往年のラックスのアンプ・デザインの復活であり、
これまで続いてきたずんぐりむっくりからの脱却でもある。

L595A LIMITEDのページには、《一体型アンプの矜持》という項目がある。
L595A LIMITEDはフォノイコライザーはもちろん、
2バンドのトーンコントロールも備えている。

さらに音量連動式のラウドネスコントロールもついている。
テープ入出力端子は、時代の流れからなのか、ないのだが、
プリ・パワーアンプのセパレート機能はついている。

プリメインアンプ全盛時代のプリメインアンプそのまま、といいたくなる内容である。

さまざまな機能を削ぎ落として、音質をひたすら追求しました、
というアプローチのプリメインアンプもあってもいいが、
それならば、いっそのことセパレートアンプにしてしまえばいいのに、と私は考える。

だからL595A LIMITEDは、逆に新鮮にみえてくるところもある。
管球式のプリメインアンプは、いまでも存在している。

けれどほとんどの管球式プリメインアンプは、さまざまな機能を省略しすぎている。
そこに、プリメインアンプの矜恃は感じられない。

なかにはかなり大きな図体の管球式プリメインアンプもある。
それでも機能は最低限度しかついていなかったりする。

音がいいことだけが、アンプづくりの矜恃ではないはずだ。

Date: 10月 15th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その26)

私が真空管アンプを自作するのであれば、
出力管のソケットの周囲には放熱用の穴を開ける。

伊藤アンプがそうしているから、その模倣である。
この穴は、出力管の放熱のため、といわれている。
穴以外の手法として、ソケットの取り付けを一段低くする、というものもある。

これらの手法は、ほんとうに出力管の放熱に寄与しているのだろうか。
出力管のほとんどは下部にベースがある。
この部分は熱をもたない。

熱を持つのはガラスのところである。

真空管アンプのシャーシー内に空冷ファンがあって、出力管に向けて送風しているであれば、
ソケットまわりの穴は放熱の役に立つ。

けれど伊藤アンプにも、そのほかのアンプにはファンが内蔵されているモノはまずない。
おそらく穴があろうとなかろうと出力管表面の温度、周囲の温度ともに変化はないはずだ。

それがわかっていても、自作するのであれば穴をあける。
伊藤アンプのように開けていくのは手間であるし、
穴をあければそれだげシャーシーの強度は低下する。

それでもあける理由は、あいていないとたたずまいが悪いからだ。
以前、伊藤先生の300Bシングルアンプとそっくりのアンプを、
あるオーディオ雑誌で見たことがある。

けれど、なんだかしまらない印象を受けた。
穴があいていないのだ。
外観上の違いは、穴の有無だけである。

なのに印象はずいぶん違う。
だから穴をあけるわけだが、
この穴は、デザインなのだろうか、デコレーションなのだろうか。

Date: 8月 27th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その25)

「聴感上のS/N比がよくなるって、どんな感じですか」と問われたことが数回ある。
音を鳴らしている場であれば、実際に音を聴いてもらえば、わかってもらえるかもしれない。

何度聴かせても分かってもらえない人がいることも、体験上知っている。
時に言葉で説明した方が伝わることがないわけでもない。

おかしいなことだ、と思うところもあるが、結局のところイメージの問題なのかもしれない。
訊いてきた人のなかに、まったくイメージがなければ、
音を聴いてもらってもダメなことなのかもしれない。

そしてイメージのきっかけでも与えることができれば、
音を聴いてわかってもらえるようになる。

オーディオでは、昔から、百読は一聴に如かず、という人がいる。
オーディオ評論家が書いたものをどれだけ読んだところで、
一回音を聴いたほうがよくわかる的な使われ方がされるし、
絶対的な感じで、これをいう人もいる。

聴いた方がはやい、という場合は確かに多い。
でも、上に書いているように、必ずしもそうでないこともある。
そのことをわかんていない人ほど、百読は一聴に如かずを使いたがる。

そしてオーディオ評論家不要論を、そのあとに続ける。
そんな人はどうでもいいのだけれど、
「聴感上のS/N比がよくなるって、どんな感じですか」という質問に、
前回書いたもやしのヒゲのことを答えたことがある。

ヒゲを取ったもやし炒めを食べてみれば、
聴感上のS/N比がよくなる、というどんな感じなのか、
そして雑共振が音に与える影響についての、なんらかのイメージは掴めるのではないだろうか。

ヒゲを取ってみたら、というと、決って返事は、
そんな面倒なことするんですか、である。

面倒なことかもしれないが、難しいことではない。
もやしのヒゲを取るだけである。
ただ本数が多いだけのことだ。

それなのに、やりもしないで、面倒だ、と決めつける人がいる。
もやし一袋のヒゲを取るのに、一時間くらいかかるのであれば、
私だってそんなにやらないし、人にすすめたりもしない。

でも、やってみると、そんなに時間はかからない。
くり返すが難しいことは何もない、このことをやらない人は、
アンプの自作はやらないほうがいい。

Date: 8月 25th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その24)

アンプの自作が初めて、という人にいいたいのは、
一時間自炊のすすめ、である。

これは伊藤先生から30年以上昔にいわれたことだ。
別項「伊藤喜多男氏の言葉」で書いている。

一時間自炊といっても、なにか特別なものを作って、ということではない。
特別な食材、高価な食材を用意しての自炊ということではない。
それこそ冷蔵庫の中にある食材を使って自炊、
近所の店で食材を買ってからの自炊である。

一度も自炊をしたことのない人が、
一流の高級料理店で出される料理をつくろうとするだろうか。

たぶんやらないだろう。
なのに趣味の世界となると、
オーディオの世界となると、
初心者がいきなり300Bのアンプを作ろうとしたりする。

それも高価な部品をたっぷりと使って、である。

趣味の世界だから、という一言で片づけてしまえるところもあるといえばある。
でも趣味の世界だからこそ、段階を踏んでこそ、ではないだろうか、と思う。

五極管で真空管アンプを作ってみよう、と思う人がいるかもしれない。
そういう人は、まず自炊をしてほしい。
ありふれた食材での料理から始めてみる。

たとえば肉ともやしの炒め物。
もやしは安価だし、特に難しいわけではない。

誰にでもできる料理といえば、たしにかそうなのだが、
変に凝る人は、味つけに変った調味料を使ったりするかもしれない。

そんなことをしてほしいのではなく、
ごく当り前の味つけであっても、炒める前にもやしのヒゲをきれいに取っていく。

一手間かけるだけである。
これだけのことなのだが、ヒゲを取ったのを味わうと、次からもそうしたくなる。

Date: 8月 24th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その23)

初心者が真空管アンプを作りたい、というのであれば、
私は五極管のシングルアンプではなく、プッシュプルアンプをすすめる。

位相反転回路にP-K分割を採用すれば、真空管の数も抑えられる。
よほどまずい配線をやらないかぎり、ハムの心配もない。

シングルよりもプッシュプルのほうが、当然だが出力はとれる。
大型の出力管を最初から使わなくても、よほど低能率のスピーカーでないかぎり、
実用的な出力は、十分とはいわないまでも確保できる。

とにかくポピュラーな出力管を使ったほうがいい。
EL34もいい球だし、ラジオ球とバカにする人もいるようだが6V6もいい球だ。

これらの球ならば、インターネットで検索すれば、製作例はけっこう見つかる。
回路は自分で設計するのもいいが、最初は基本的な回路のほうがいい。

まずは一台をきちんと作ってからのことだ。
創意工夫していくにしても、もっと大がかり、本格的なアンプに挑戦するにしても、だ。

EL34、6V6のプッシュプルアンプでは、
《他人(ヒト)とは違うのボク》を満足させられないかもしれない。

だからといって、変に凝ったレイアウトにはしないほうがいい。
オーソドックスなレイアウトでやったほうがいい。

使用する部品に関しても、オーディオ用を謳っているモノは使わない方がいい。
信頼性のある部品を、まず使ってみることだ。

オーディオ用を謳っている部品のなかには、サイズがかなり大きかったりする。
このくらいのサイズなら……、と楽観しない方がいい。

極端に小さな部品も作業がしにくいが、大きい部品もけっこう苦労する。

こうやって書いていると、
ますます《他人(ヒト)とは違うのボク》を満足させるところからは遠ざかる。

それでいい、と私は考えている。
一台目の真空管アンプを、佇まいを多少なりであっても感じさせることができれば、
それで十分《他人(ヒト)とは違うのボク》であるからだ。

プリント基板は使わない方がいい。
初心者だからといって、プリント基板に頼ることだけは止した方がいい。

Date: 8月 14th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その7)

その1)を書いたのは、二年前。
そのころはタンノイを買うことになるとは、ほとんど思っていなかった。

なので、ここでのサブタイトル、「KT88プッシュプルとタンノイ」は、
タンノイの特定のモデルではなく、あくまでもタンノイの同軸型スピーカー全般のことだった。

それが今年6月にコーネッタを手に入れた。
そうなってくると、「KT88プッシュプルとタンノイ」のタンノイとは、
コーネッタということに、意識しなくてもそうなりつつある。

最初のころのKT88プッシュプルとは、KT88のプッシュプルのパワーアンプのことを想定していた。
それがコーネッタ以降、プリメインアンプも含めてのことになってきている。

KT88プッシュプルのパワーアンプということならば、
コントロールアンプは別個に考えればいいわけで、
トーンコントロールのことは考えていなかった。

コーネッタとの組合せを、この項でも意識する。
そうなるとプリメインアンプ、それもトーンコントロール付きかどうかが気になる。

コーネッタを鳴らしてみたいプリメインアンプとして、イギリスのCHORDのモデルがある。
ソリッドステートアンプなので、この項とは直接関係ないわけだが、
それでもコーネッタとの組合せは、かなりいいように想像している。

そのCHORDのプリメインアンプは、
輸入元タイムロードでは、現在プリメインアンプは取り扱っていない。

CHORDのサイトをみると、製造中止になったわけではなく、
現行製品であることがわかる。

CHORDのプリメインアンプは日本ではあまり人気がないようだが、
私はけっこう気に入っているが、トーンコントロールに関しては、不満がある。

トーンコントロールがついていないだけでなく、
テープ入出力端子をもたないから、そのへんの拡張性はまったくない。

このことはCHORDのプリメインアンプに限ったことではなく、
ほかのブランドのプリメインアンプでもそうなのだ。