五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その29)
私としては、初心者ならば最初に作る真空管アンプは、
プッシュプルアンプがいい、と考える。
すでに(その1)で書いていることだ。
私がオーディオに興味をもちはじめたころ(1970年代後半)、
初心者向きの真空管アンプ製作といえば、プッシュプルアンプだった。
EL84(6BQ5)、6F6、6V6などのポピュラーな出力管のプッシュプルで、
電圧増幅管には五極管と三極管をひとつにまとめた複合管、
ECC82(12AU7)、ECC83(12AX7)などの双三極管を使い、
初段で増幅したあとにP-K分割の位相反転段という構成だった。
この構成であれば片チャンネルあたり使用真空管は三本。
出力もそれほど大きくないから出力トランスも大型のモノを必要とはしないから、
アンプ全体もそれほど大きくならずに製作出来る。
電源トランスなどが大型化になれば、それだけ高価になるし、
シャーシーもよりしっかりしたものが必要になるなど、費用はかさむことになる。
それにチョークコイルも省くことができる。
それからシングル用の出力トランスのいいモノは、けっこう少ないし、
それだけ高価だったりする。
とりあえず音が鳴ってくれれば、それでいい──程度の自作であれば、
シングルアンプでもいいけれど、初めてのアンプであっても、
きちんと鳴ってくれる音を求めるのならば、
初心者ならばプッシュプルアンプのほうが好結果が期待できる。
いま手元にダイナコのSCA35から取り外した出力トランスと電源トランスがある。
これらを使って、EL84のプッシュプルアンプを作ろうと考えている。
SCA35のパワーアンプ部そのままの回路でいきたいところだが、
一つネックがある。電圧増幅段の複合管が入手しにくい。
この点が、1970年代後半とは大きく状況が変ってきている。