フォノイコライザーアンプのSN比は、通常、入力をショートした状態で測定された値が、
メーカーから発表されているが、実際にユーザーが使用する状態でのSN比といえば、
当然だが、入力にカートリッジなりMC型カートリッジの昇圧トランスの2次側か、
ヘッドアンプの出力がつながれているときの値である。
ステレオサウンドが、42号(1977年春号)のプリメインアンプ特集で、
入力ショート時とカートリッジ実装時の、ふたつのSN比を測定し公表している。
話はすこし逸れるが、このころのステレオサウンドの特集は、とにかくボリュームがあった。
42号の特集の最終ページは、392である。編集後記がある奥付が536ページ。
1977年と2009年の今とでは、状況は違う。新製品の数は、いったいどれだけ増えたのか。
取りこぼしがないように新製品を取りあげれば、ページはすぐに不足してくる。
ステレオサウンドは、いつのころからか、弁当に例えるなら、幕の内弁当だけになってしまったのではないだろうか。
あれもこれも、と楽しめる幕の内弁当の方が売上げはいいだろう。安定しているだろう。
以前のステレオサウンドは、とんかつ弁当だったり、焼き魚弁当のときもあれば、
煮物中心だったりと、毎号、主菜は大きく変わっていた。そして食べごたえ(読みごたえ)があった。
42号のようにプリメインアンプの特集ばかりの号は、主菜がひとつに決まっている弁当と同じで、
プリメインアンプに関心のない人には魅力的ではないだろう。
とんかつが食べたくない人は、どんなにおいしくてボリュームがあるとんかつ弁当を差し出されても、
すこしも嬉しくないだろう。幕の内弁当だったら無難なのに、と思うかもしれない。
ステレオサウンドは1年に4冊しか出ない。
しかも年末の号は、ベストバイとステレオサウンド・グランプリが特集で、これこそ幕の内弁当的内容である。
だからこそ、他の号は幕の内弁当ではないほうが、
冬号の幕の内弁当がおいしく魅力的になると思ってしまうのだが……。