真空管アンプの存在(その72)
TL431を使った定電流回路よりも、さらに部品点数を減らしたものに三端子レギュレーターを使ったものがある。
定電圧回路の三端子レギュレーターだが、配線をかえることで定電流回路としても使える。
ラジオ技術での製作例としては新忠篤氏が以前発表されていたことがある。
すこしあいまない記憶だが、たしか三端子レギュレーターによる定電圧回路よりは、
ずっと音がよい、と書かれていたはず。
ステレオサウンドに、以前倉持公一氏がエッセイの連載を書かれていた。
そのなかで自作の300Bのシングルアンプについて書かれた文章の中に、
この三端子レギュレーターによる定電流回路と思われることが出てくる。
新氏の名前も一緒に出ていたから、ほぼ間違いないだろう。
そこには、新氏から定電圧回路より定電流回路のほうがいいという連絡があった。
けれど、その後、やっぱり交流点火のほうがいい、という連絡がはいった、ということだった。
三端子レギュレーターによる定電流回路は、試していなけれども、私は懐疑的だ。
三端子レギュレーターの性能からして、ノイズ対策をほどこさずにそのまま定電流回路にしてしまったら、
いい結果は期待できないはず。なぜ新氏は、定電流点火を試みるであれば、
同じラジオ技術に筆者である石塚氏のアイデアを採用されなかったのだろうか。
安易な方法に頼ることで、定電流点火の良さが発揮されなかった印象が、残ってしまう。残念なことだ。