真空管アンプの存在(その67)
いちどでもヒーターの点火方法の違いによる音の差を聴いてしまうと、
三端子レギュレーターなんて、と全面否定したくなるところだが、
それでも安易な使用の三端子レギュレーターとしたのは、もうひとつ別の体験があるからだ。
もうずいぶん前のことだから書いてもいいだろう。
ステレオサウンドでEMTの管球式イコライザーアンプの製作記事を掲載していたときの話だ。
この記事を読まれた方は、カウンターポイントの協力によって、この企画は実現したことを知っておられるだろう。
このときプロトタイプのSA139stのヒーターは、いわゆる安易な三端子レギュレーターの使用だった。
それを長島先生が、カウンターポイントの主宰者マイケル・エリオットに電源に関しても、
じつに細かいアドヴァイスをされて、いくつかのノイズ対策処理をがおこなわれた電源でを聴くことができた。
三端子レギュレーターの使用をやめたわけでなく、小容量のコンデンサーをいくつか後付けを中心とした改良だった。
そこにかかった費用も手間もそれほどのものではない。でも、出てきた音は大きく変化していた。
もちろん長島先生による電源部の改良はヒーター回路だけでなく、高圧のB電源に対しても行なわれていたから、
その音の違いはヒーター回路の違いだけではない。それでも、ヒーター回路への改良がもたらした面も大きいはずだ。
SA139stの製品版の外付け電源の内部を見る機会はなかった。
だから、私が聴いたのと同じことが施されているはずだが、はっきりとしたことはわからない。