Archive for category 新製品

Date: 11月 5th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その11)

ウォームアップの問題は、やっかいな面ももっている。
ウォームアップなんて、十分な時間電源をいれておいて、
信号を流して音を鳴らしている時間も十分ならば解消だろう──、
そう思われる人もいるだろう。

ウォームアップという言葉からは、
鳴らしていくうちに本調子になってきて、それにかかる時間は製品によって違っても、
あるレベルに達しウォームアップが終ればすむ──、そういった印象がある。

けれど実際にはあるレベルに達し、そこから先はウォームアップではないということになる。
この状態を維持できれば、話は単純なのだが、
モノによっては、長時間の使用により、むしろ音が悪い方向に変化していく。

つまりクールダウンを必要とするオーディオ機器が存在する。
おそらくすべてのオーディオ機器にあてはまることなのかもしれないが、
ウォームアップほど顕著に音に出ないようであり、
まれに顕著に音として、この問題が出てくるモノがある。

私がステレオサウンドにいた間の機種では、
アキュフェーズのD/AコンバーターDC81がそうだった。

ディスクリート構成のD/Aコンバーターということ、
アキュフェーズ初のセパレート型CDプレーヤーとしても話題になったし、
ステレオサウンドの試聴室でもリファレンス機器として使っていた。

それだけの内容と音を持っていたけれど、
DC81はかなり長時間使用していると、あきらかに音が弛れてくる。
それは音の滲みと受け取る人もいるだろうし、
音にベールがかかったように聴こえるという人もいるだろう。

ウォームアップとともに音は目覚めていくわけだが、ずっと目覚めた状態を維持できるとはかぎらない。
そのため、電源を落してクールダウンを必要としていた。

一日数時間の使用であれば、この問題は出てき難い。
もっとも使用条件・設置条件によっては、たとえ数時間でも発生するとは思う。

Date: 10月 31st, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その10)

アンプのウォームアップの問題を最初に指摘したのは誰なのかは知らない。
私がステレオサウンドを読みはじめたころには、すでにウォームアップについては指摘されていた。

そのころアンプテストやその他の記事でウォームアップについて頻繁に書かれていたのは、
私にとっては瀬川先生という印象がある。

おもしろいことに瀬川先生が高い評価を与えているアンプの多くは、
ウォームアップに時間がかかるものだった。
セパレートアンプだけではなく、プリメインアンプにおいてもそうだった。

このころウォームアップに時間をたっぷりと必要とするアンプとしては、
まずトリオがそうだった。それからSAEのMark 2500もそうだった。

トリオはプリメインアンプ、セパレートアンプ、どちらもその傾向があったことが、
瀬川先生の書かれたものから読みとれた。

このウォームアップの問題は、アンプだけでなく、
サーボ技術をとりいれたアナログプレーヤーについても指摘されるようになってきた。
だからCDプレーヤーも、その点ではまったく同じである。

このウォームアップの問題が割とやっかいなのは、
すでに書いているように電源を入れておくだけでは不十分であること。

それからケーブルの好感などでいったん電源を落すと、
たとえそれが数分間という短い時間であっても、アンプによってはすぐに本来の音、
つまり電源を落す前の音に復帰できるわけではない。

少なくとも数分間の音出しを必要とするアンプがある。
同じことはサーボ採用のアナログプレーヤー、CDプレーヤーに関してもいえる。

ディスクのかえかけごとにターンテーブルプラッターを止めてしまうと、
サーボが安定状態(ウォームアップの完了)まで、いくばくかの時間を要する。
だからステレオサウンドの試聴室においては、ターンテーブルは廻しっぱなしであった。

CDプレーヤーはそうはいかないので、厳密な試聴の場合はディスクのいれかえを行わず、
さらにはストップボタンも押さずに、ポーズボタンを使っていた。

それほどウォームアップの問題は、気にしはじめるとやっかいである。

Date: 10月 29th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その9)

コルグのNutubeを使った製作記事が、いま書店に並んでいる無線と実験と管球王国に載っている。
近いうちにラジオ技術にも載るだろうし、
来年になれば、いくつかの製作記事が載っていくはずだ。

いまのところ二本の製作記事を読んだが、
私がもっとも知りたいことはどちらにもなかった。

音のことではない。
音に関係してくることではあるが、ウォームアップによる音の変化についてである。

真空管アンプはヒーター(フィラメント)が十分に暖まるまで、
音は出るには出ても、満足な音ではない。
その点、トランジスターアンプの方が、すぐに音は出る。

けれどアンプにはウォームアップの問題がある。
1970年代半ばごろから、アンプにもウォームアップが必要だといわれるようになった。
それも電源を入れておくだけではな不十分で、
音楽信号を入れてのウォームアップが必要であり、
そのアンプ本来の音が出るようになるには、
アンプによっては数時間かかるモノもめずらしくなかった。

一時間ほどで一応のウォームアップが終るアンプもあるけれど、
三、四時間ほどかかるアンプもある。
三時間といえば、仕事を終え帰宅して、夕食をとり入浴して聴きはじめても、
そのアンプ本来の音が出るころには日付が変っていることだってあるわけだ。

その点、真空管アンプのウォームアップはそれほど時間をとらない。
真空管アンプの中にもウォームアップの遅いモノはあるだろう。
でも、きちんとつくられている真空管アンプならば短い。

でも、これは従来の真空管を使ったアンプの話であって、
蛍光表示管の技術を採用したNutubeはその点、どうなのだろうか、
と非常に興味がある。

ウォームアップに関しては、従来の真空管と同じなのか、
それとも意外に時間を必要とするのか。
いまのところ、どちらの製作記事には、そのことは触れられてなかった。

Date: 9月 23rd, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その8)

Nutubeは、蛍光表示管の技術を応用して、と説明されている。
私は「蛍光表示管の技術を応用して」のところをきちんと理解しているわけではない。

最初に、こんな言い訳を書いておいて、この方面には素人の戯言を書きたい。

照明は、白熱灯が最初に登場し次に螢光灯が出て来た。

Nutube以前の、つまり一般の真空管のヒーター、フィラメントは白熱灯と同じといえる。
それがNutubeで螢光灯と同じになった──これがただしい理解とはいわないが──、
そう理解すれば、Nutubeの次に来るのは、LED技術の応用なのだろうか、と考えている。

螢光灯もLED照明に変りつつある。
ならば真空管もLEDの技術の応用が可能になる……のかもしれないし、
まったく不可能なことなのかもしれない。

でももし可能であるとしたら、真空管はもっと小型になるはずである。
消費電力もさらに小さくなる。
音はどうなるのかはわからないけれども……。

Date: 9月 22nd, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その7)

Nutube 6P1のデータシートが公開されている。
見ていくと、(その4)で書いたパワーアンプの実現は、
不可能ではないけれどけっこう困難そうだ。

ならばNutubeで挑戦してみたいことが変ってくる。
MC型カートリッジのヘッドアンプはどうだろうか。

これまでにも真空管ヘッドアンプはあった。
カウンターポイントからSA2が、ミュージック・レファレンスからRM4が出ていた。
どちらもステレオサウンドの試聴室でじっくり聴いている。

ソリッドステート式ヘッドアンプにはない肌触りのよさが感じられはするものの、
安定性、ノイズなどで実用にたえるかとなると、そうとはいえない出来だった。

でもいつかはまともに使える真空管ヘッドアンプが登場してくれるだろう、と期待していた。
結局は登場しなかった。

Nutube 6P1がヘッドアンプに向いているかどうかは、なんともいえないが、
コスト的にも複数並列接続の小出力のパワーアンプよりも、負担はずっと少ない。

これから来年にかけて、Nutube 6P1の製作記事は、
オーディオ雑誌、インターネットにいくつも登場するはずだ。
その中にヘッドアンプはあるだろうか。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その6)

コルグにメールアドレスを登録している人には、
メールが届いていているであろう、Nutubeが、やっと発売になる。
9月23日から個人向けの発売が行われる。

個人向けの販売が始まる前に、
無線と実験、ラジオ技術に製作記事が載るのであろう、と思っていた。
製作記事が広告にもなるからだ。

でも無線と実験にもラジオ技術にもNutubeを使ったアンプの製作記事は載らなかった。
なので市販はもっと先になるのか、と思っていたところに、今回の報せである。

それからデータシートも更新され、より詳細な情報が得られる。
これも嬉しい。あれこれ想像できるようになるからだ。

少なくとも年内発行の無線と実験、ラジオ技術には製作記事が載るであろう。

Date: 8月 19th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その5)

その4)を書いている時点で、
具体的なアンプの構想を考えている。
回路的には単段アンプゆえに、
入力トランスと出力トランスのあいだにNutubeが並列接続されてある、という、
これ以上省略のしようのないものだ。

Nutubeは定電流点火をしたい。
入力トランスにはあれを使いたい、
出力トランスはあれかな、とかも考えているし、
アンプのレイアウトもできるかぎり薄型に仕上げたものと、
信号経路をできるだけ短縮化したもの、
古典的な真空管アンプのスタイルのもの、などいくつかを並行して考えている。

実際に作るとしたら、製作コストはどくらいになるのか。
コストの半分以上はNutubeの価格次第といえる。
片チャンネル八本使うわけだから、一本あたりの価格の違いは、(×16)で大きく響いてくる。

こんなふうに考えていっているのだから、
頭の中では、このアンプと組み合わせるスピーカーも、はっきりと決っている。
グッドマンのAXIOM 80を鳴らしてみたい、と思っているし、
Nutubeのアンプがどういう音を聴かせてくれるのか、
そのイメージをふくらませるに必要な試聴体験はないのだけれど、
私の頭のなかでは、もう完結に向いつつある。

Date: 8月 18th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その4)

1970年代終りごろ、出力トランジスターの高周波特性が向上した。
そのころRET(Ring Emitter Transistor)が登場した。
小信号トランジスターを多数並列接続して、
ひとつのパッケージにおさめたといえるトランジスターである。

小信号トランジスターは出力トランジスターよりも高周波特性が優れている。
ならばそれを並列接続することで、より大きなパワーを扱えるようにしたモノである。
パイオニアのパワーアンプM25に採用されていた。

ネルソン・パスが数年前だったか、同じ考えに基づくパワーアンプの記事を公開していた。
小信号FETをかなりの数並列接続することで、出力トランジスターを用いないパワーアンプを作っていた。
回路的には特に難しいところはない。
ただただハンダ付けを丁寧にこなしていくことが求められるアンプ製作である。
人によっては気が遠くなるような作業に感じられるだろう。

小信号のデヴァイスを並列接続して使うという手法は、真空管でもある。
ラジオ技術で武末数馬氏がECC81を片チャンネルあたり八本使用したパワーアンプを、
1981年(だったと記憶している)に発表されている。

入力された信号はトランスによる位相反転され、その後はECC81の8パラレル・プッシュプル回路である。
いわゆる単段アンプである。出力は5W+5Wと記憶している。

コルグがNutubeの出力管版を開発していくのかどうかはわからない。
出てこないかもしれない。
出てくるにしろ出てこないにしろ、Nutubeを武末氏のECC81アンプのように複数並列接続すれば、
数W程度の出力のパワーアンプは作れるはずである。

ECC81は傍熱管だが、Nutubeは直熱管。
片チャンネル八本使っての8パラレル・プッシュプルで、どれだけの出力がとれるだろうか。
100dB超えのスピーカーう使っていれば、数Wの出力でもいける。

Nutubeによるパワーアンプ、
予想以上のパフォーマンスを発揮してくれるかもしれない。

Date: 8月 11th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その3)

そろそろアナウンスがあってもいいんじゃないか、と期待していることがある。
コルグが開発した真空管Nutubeの出力管版である。

昨年1月の発表から一年半以上が経ち、Nutubeを搭載した試作機の試聴会も行われているようだ。
オーディオメーカーからコルグへの問合せも多いようだ。
秋にはなんらかの製品が登場してくるであろう。

それから一般市販も期待したいところである。
と同時に、ぜひとも開発してほしいのが、出力管の開発だ。
Nutube同様、直熱三極管を開発してほしい、と一方的に思っている。

Nutubeの電源電圧は5Vから80Vとなっている。
もしNutubeの出力管が登場したら、低電圧からの動作も可能になるのではないだろうか。
内部インピーダンスはどの程度になるだろうか。
私が勝手に期待しているスペックで出てくれれば、
管球式OTLアンプの設計がずっと楽になるはずである。

OTLアンプでなくとも、出力トランスの一次側インピーダンスをかなり低くできる可能性もある。
それにNutubeのヒーターは電圧0.7V、電流17mAで、
Nutubeの出力管も従来の出力管よりもずっと低いヒーター電圧と電流に抑えられれば、
出力管のヒーターの定電流点火も現実味を帯びてくる。

暑い夏、真空管アンプは休ませているというオーディオマニアも少なくない。
確かにこれだけ暑い夏だと、発熱量の多い真空管アンプ、
それもOTLアンプは涼しくなるまで、この音を聴くのはがまんしよう、
という気持になるのはごく自然なことかもしれない。

けれど出力管までNutubeで構成できれば、発熱の多さをあまり気にしなくもよくなる。
しかもオール直熱三極管でパワーアンプを構成できる。
もっとも古典的な構成を、もっとも現代的な真空管を使って実現できるようになる。

コルグがNutubeの出力管の開発に取り組んでいるのかどうかは、まったく知らない。
でも、まったく考えていない、取り組んでいないとも思えないのだ。

Date: 2月 10th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その2)

発表から一年。
コルグのサイト内にNutubeのページができ、ようやく概要がはっきりしてきた。

FAQもある。
ここでわかるのはNutubeは傍熱管ではなく直熱管だということ。
これには驚くとともに、冷静に考えれば消費電力の低さを実現するには直熱管が有利であることに気付く。

Nutubeのヒーターは電圧0.7V、電流17mAである。
この値ならば、定電圧点火よりも定電流点火のほうが楽になる。

電源電圧は5Vから80Vだから、
トランジスターを扱う感覚で真空管を扱えるようになる。
ただし直熱管ということもあってマイクロフォニックノイズには十分な配慮は必要だ。

こういった規格よりも気になっていたのは、
Nutubeそのものを一般市販してくれるのか、であった。

FAQには、個人ユーザーへの販売も予定している、とある。
これは、ほんとうに嬉しい。

Date: 9月 13th, 2015
Cate: 新製品

新製品(その15)

新製品の登場には、期待して、わくわくしてしまうのだろうか。

先日、Appleから新しいiPhoneとiPadの発表があった。
毎年、この時季には新しいiPhoneが発表されるのが恒例になっているし、
これまでの変遷から型番がどうなるのかは誰にでもわかることである。
しかも、インターネットでは新しいiPhoneが出てしばらくする来年のiPhoneについての予測記事が出る。
発表間近になると、かなり正確な情報が、どこから漏れてくる。
それでだいたいの予想はつくし、大きく外れることはない。

それでも新しいiPhoneの発表には、わくわくするところがまだある。
いったい新製品に、何を期待しているのだろうか。

1979年のオンキョーの広告がある。
チューナーのIntegra T419の広告である。

そこにはこう書いてあった。
     *
新製品というよりは
〝新性能の登場〟がよりふさわしい。
     *
この広告を見て、感心した。
新製品とはいったい何か、のある一面を見事に言い表している、と思ったからだ。

新製品の登場は、新性能の登場である。
たまには旧性能の登場といえるモノもないわけではないが、
基本的には、新製品は新性能の登場である。

オーディオマニアが新製品にわくわくしてしまうのは、
それが新製品だから、ということと同じくらい、もしくはそれ以上に、
その製品がどれだけの新性能を持っているのかに期待しているから、ともいえよう。

オーディオ機器の場合「新性能」とは、物理的な性能だけではない。
その製品が聴かせてくれる「音」もまた性能である。大事な性能である。

そして新製品の登場は、新性能の登場だけではない。
iPhoneがそうであるように、新機能の登場の場合もある。

それまでの製品にはなかった機能を搭載しての新製品(オーディオ機器)は、これまでにもいくつもあった。
目立つ新機能もあれば地味な新機能もあった。
消えてしまった機能もあれば、生き残り進歩している機能もある。

オンキョーの広告を見て以来、
新性能と新機能の登場ということは、わりとすぐに考えていた。

けれど新製品は、新性能と新機能の登場だけではないことに、
かなり経ってから気づかされた。

川崎先生の「機能性・性能性・効能性」をきいたことによって、気づいた。

Date: 7月 4th, 2015
Cate: 新製品

新製品(その14)

あのころは新製品が出るたびに、かなりわくわくしていた。
まだ学生で自由になるお金はほとんどなかった。
それでも目標だけは大きかった。

社会人になれば、そう遠くないうちに買えると思っていたからだし、
実際に当時憧れていたオーディオ機器は、頑張れば買えない価格ではなかった。

ステレオサウンドの新製品紹介のページを読んでは、
目標が少し変ったり、また元に戻ったりということがあった。

そんなふうに読んできた申請非紹介のページだったが、
いつのころからか、こちらの読み方が変ってきた。

変ってきた理由のひとつには、ステレオサウンドで働いていたことも関係している。
でもそれだけではない。

すべての新製品をそういう視点で見ているわけではないが、
いわゆる話題の新製品、そのブランドのトップクラスの新製品、
それから超高額といえる新製品が出た時には、
これらはいったい何年使えるのだろうか、とふと思ってしまうようになっていた。

スピーカーシステムで、ペアで一千万円前後するモノがある。
そういったスピーカーが、仮にいい音を聴かせてくれたとしよう。
けれど、それはいったい何年使えるのか。

ここで使えるのか、という意味は、
新製品として登場した時点での最先端にあったであろう音は、
数年後には最先端ではなくなっていることが多い。
それは仕方のないことなのだが、毎日、そのスピーカーで音を聴いてきて、
10年、20年、30年……と使っていけるのだろうか、という意味でだ。

この新製品のモノとしての「耐久性」はいったいどの程度なのか。
このことを、高額なオーディオ機器に対しては冷静に判断するようになっていた。

Date: 1月 22nd, 2015
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その1)

今年も数多くの新製品が登場することであろう。
驚くような新製品もあってほしい、と期待している。

でも今年の新製品で、これほど昂奮するモノは出ないかもしれない。
Nutube(ニューチューブ)という真空管、
それも音響機器用真空管の新製品が登場する。

ノリタケとコルグの共同開発で、
ノリタケの子会社であるノリタケ伊勢電子が製造する蛍光表示管の技術を応用したもので、
小型化、それにともなう省電力化を実現したもの、とのこと。

どういう特性なのか、詳しい技術資料はまだ発表されていない。
アンペックスのオープンリールデッキMR70に採用されたニュービスタに近いモノなのだろうか。
ニュービスタはRCAがミサイル用に開発した真空管である。

今年中にはコルグからNutube搭載の機器が出るとのこと。
となると他メーカーからも出てくるのであろうか。
今年は無理でも来年あたりには、Nutube採用のアンプが登場してきても不思議ではない。

Nutubeそのものの市販も期待している。

Date: 11月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その13)

ステレオサウンド 60号は創刊15周年記念号で、特集はアメリカン・サウンドだった。
瀬川先生が登場された最後のステレオサウンドになった。

4345について、瀬川先生が語られている。
     *
 もちろん、中~高域にかけて、ネットワークやユニットの部分改良があり、全体によくなっているという発表はありますが、それだけではないと思うんです。やはり、あの低音の土台あっての柔らかさだ。自分のうちへ持ち込んでみてびっくりしたんですが、音がすばらしくソフトなんです。実に柔らかくてフワーッとしています。しかしそれは、腰抜けの柔らかさじゃなくて、その中にきちんと芯がある。かなり惚れ込んで聴いています。
 もちろん、まだまだパーフェクトだとは思いません。むしろ、4345まで聴いてみて、改めて、JBLでは鳴らせない音というものが、だんだんぼくの頭の中ではっきりし始めました。
 たとえばイギリスのBBCの流れをくむモニタースピーカーを、いい状態で鳴らしたときに、弦楽四重奏なんかをかけると、鳴った瞬間からウッドの胴体を持った弦の音が突然目の前に出現するけれど、4345では、いきなりそういう感じはなかなか出ないですね。どうしても中に金っ気がまじります。JBL嫌いの人は、昔からそこを非常にオーバーに指摘してきた。それは4345になってずいぶん抑えられたとはいうものの、どうしようもなくちゃんと持っていますね。あそこは越えがたい一線じゃないかという気がする。スピーカーがかなりパーフェクトに近づいてきて初めて、そこのところが見えてきたみたいな……。あるは少しはあばたがえくぼでなくなってきたのかなという気はします。でも、全体としてはやっぱり凄く惚れ込んでいますよ。
     *
ステレオサウンド 58号の記事はもうほとんど記憶していた。
やっぱり4345はいいスピーカーなんだ、PM510はもう目標としなくともいいのかもしれない、と思いながら、
途中まで読んでいた。

けれど、4345まで聴いてみて、改めて、JBLでは鳴らせない音がある、と発言されている。
そしてBBCモニターを引き合いに出されている。
こうも言われている。
「スピーカーがかなりパーフェクトに近づいてきて初めて、そこのところが見えてきたみたいな……。」と。

やはりPM510は必要なのか。
そうなると4345とPM510となるのか。

だが4345は4343ほどカッコよくない。
ステレオサウンド 58号で書かれていたことが浮んでくる。
     *
 ♯4343と並べてみると、ずいぶん大きく、しかもプロポーションのせいもあってか、ややズングリした印象だ。♯4343は、初対面のときからとてもスマートなスピーカーだと感じたが、その印象は今日まで一貫して変らない。その点♯4345は、寸法比(プロポーション)も、またそれよりもいっそう、グリルクロスを外して眺めたときのバッフル面に対するユニットの配置を含めて、♯4343の洗練された優雅さに及ばないと思う。この第一印象が、これから永いあいだに見馴れてゆくことで変ってゆくのかゆかないのか、興味深いところだ。
     *
瀬川先生は4345のプロポーションを見馴れてゆかれたのだろうか。
それについての発言は60号にはなかった。

見馴れてゆくにしろ、4343の「洗練された優雅さ」は4345にはないことは変ってゆかない。
ならば、4343(アルニコ)とPM510ということになるのか。
目標が揺らいでいく……。

Date: 11月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その12)

56号から半年後のステレオサウンド 58号。
ここにJBLの4345の記事が載る。
もちろん瀬川先生が書かれている。
試聴記の最後に、こうある。
     *
一応のバランスのとれたところで、プレーヤーを、P3から、別項のマイクロSX8000とSMEの新型3012Rの組合せに代えてみた。これで、アッと驚くような音が得られた。が、そのことはSMEの報告記のほうを併せてご参照頂くことにしよう。
     *
58号の新製品紹介のページには、SMEの3012-Rも登場している。
さっそく読む。
     *
 音が鳴った瞬間の我々一同の顔つきといったらなかった。この欄担当のS君、野次馬として覗きにきていたM君、それに私、三人が、ものをいわずにまず唖然として互いの顔を見合わせた。あまりにも良い音が鳴ってきたからである。
 えもいわれぬ良い雰囲気が漂いはじめる。テストしている、という気分は、あっという間に忘れ去ってゆく。音のひと粒ひと粒が、生きて、聴き手をグンととらえる。といっても、よくある鮮度鮮度したような、いかにも音の粒立ちがいいぞ、とこけおどかすような、あるいは、いかにも音がたくさん、そして前に出てくるぞ、式のきょうび流行りのおしつけがましい下品な音は正反対。キャラキャラと安っぽい音ではなく、しっとり落ちついて、音の支えがしっかりしていて、十分に腰の坐った、案外太い感じの、といって決して図太いのではなく音の実在感の豊かな、混然と溶け合いながら音のひとつひとつの姿が確かに、悠然と姿を現わしてくる、という印象の音がする。しかも、国産のアーム一般のイメージに対して、出てくる音が何となくバタくさいというのは、アンプやスピーカーならわからないでもないが、アームでそういう差が出るのは、どういう理由なのだろうか。むろん、ステンレスまがいの音など少しもしないし、弦楽器の木質の音が確かに聴こえる。ボウイングが手にとるように、ありありと見えてくるようだ。ヴァイオリンの音が、JBLでもこんなに良く鳴るのか、と驚かされる。ということきは、JBLにそういう可能性があったということにもなる。
 S君の提案で、カートリッジを代えてみる。デンオンDL303。あの音が細くなりすぎずほどよい肉付きで鳴ってくる。それならと、こんどはオルトフォンSPUをとりつける。MC30とDL303は、オーディオクラフトのAS4PLヘッドシェルにとりつけてあった。SPUは、オリジナルのGシェルだ。我々一同は、もう十分に楽しくなって、すっかり興に乗っている。次から次と、ほとんど無差別に、誰かがレコードを探し出しては私に渡す。クラシック、ジャズ、フュージョン、録音の新旧にかかわりなく……。
 どのレコードも、実にうまいこと鳴ってくれる。嬉しくなってくる。酒の出てこないのが口惜しいくらい、テストという雰囲気ではなくなっている。ペギー・リーとジョージ・シアリングの1959年のライヴ(ビューティ・アンド・ザ・ビート)が、こんなにたっぷりと、豊かに鳴るのがふしぎに思われてくる。レコードの途中で思わず私が「おい、これがレヴィンソンのアンプの音だと思えるか!」と叫ぶ。レヴィンソンといい、JBLといい、こんなに暖かく豊かでリッチな面を持っていたことを、SMEとマイクロの組合せが教えてくれたことになる。
     *
これを読み、私の目標はまた変更になった。
4345とSMEの3012-R。
このふたつがあれば、スピーカーは一本(1ペア)ですむかもしれない、と。

4343とPM510(スピーカーとスピーカー)が、4345と3012-R(スピーカーとトーンアーム)へと変っていく。
けれど、また半年後のステレオサウンド 60号で迷うことになる。