新製品(TANNOY Legacy Series・その3)
Ardenを筆頭とするABCシリーズは1979年にユニットのフェライト化にともないMKIIとなり、
1981年10月、Arundel、Balmoralの二機種だけになってしまった。
型番からいえば、Ardenの後継機がArundel、
Berkeleyの後継機がBalmoralと思いがちだが、
Balmoral搭載のユニット口径は12インチで、Cheviotの後継機である。
BalmoralとCheviotは、一見したところ、
エンクロージュアのプロポーションは近いように思える。
ArundelとArdenは、この点が大きく違う。
Ardenはフロントバッフルの面積を大きくとったプロポーションに対し、
Arundelはずっとスリムになっている。
Ardenの外形寸法はW66.0×H99.0×D37.0cm、
ArundelはW49.8×H100.0×D48.9cmである。
フロントバッフルの横幅を縮めた分、奥行きを伸ばしている。
BBCモニター系のプロポーションに近くなっている。
Arundelの音は聴いているはずなのに、記憶がほとんどない。
Ardenの堂々とした音は、Arundelからは感じられなかったからなのかもしれない。
今時のスピーカーのトレンドばかりを王ことに汲々としている人は、
新Ardenのプロポーションを見て、音場感なんて再現できない、といいそうである。
確かにフロントバッフルの幅の狭さは有利に働きがちではあるが、
それだけでスピーカーの音・性能が決るわけではない。
瀬川先生はステレオサウンド 45号のスピーカー特集で書かれている。
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たとえばKEFの105のあとでこれを鳴らすと、全域での音の自然さで105に一歩譲る反面、中低域の腰の強い、音像のしっかりした表現は、タンノイの音を「実」とすればkEFは「虚」とでも口走りたくなるような味の濃さで満足させる。いわゆる誇張のない自然さでなく、作られた自然さ、とでもいうべきなのだろうが、その完成度の高さゆえに音に説得力が生じる。
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Ardenの試聴記である。
Legacy SeriesのArdenの味の濃さは、元のArdenよりは薄らいでいるかもしれない。
おそらくそうだろう。
それでも、あのプロポーションを見ていると、
「実」と口走りたくなる味の濃さは失っていないように思いたくなる。