Archive for category アナログディスク再生

Date: 12月 5th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その27)

ラックスから1977年にPD441というターンテーブルが出た。
この機種は、どういう位置づけだったのだろうか。

PD121の後継機ではなかった。
PD121は1979年にPD121Aにモデルチェンジしている。

PD441と同時にPD444も出た。
このモデルはトーンアームを二本装着できた。
通常の位置にショートタイプのトーンアームを、
左奥にロングタイプのトーンアームを取りつけられる。

PD441とPD444と同じデザイン。
PD444は1980年にバキューム機構を装備してPD555になっている。
PD441はしばらくして製造中止になり、PD300が出た。

PD121Aはこの時点でも現行機種だった。

ラックスのターンテーブルの中で、PD121だけは欲しい、と思った。
PD121にロングアーム、つまり3012-R Specialが取りつけられれば……、と思ったことがある。
現実にはPD121Aのデザインのまま、3012-R Specialが取りつけられるモデルはない。

ロングアームが取りつけられるターンテーブルが、トーレンスから1981年に出た。
TD226である。
型番からわかるように、トーンアームを二本装着できる。
ターンテーブルプラッター右側にショートタイプ、左側にロングタイプとなっていた。
そのために横幅は67.5cm。
この横幅はEMTの927Dstと同じ値である。

TD226は欲しいとは思わなかった。
トーンアームは一本でいいのだから……、と思っていたら、
1983年にTD127が登場した。
TD126がショートタイプ用で、TD127がロングタイプ用であった。

TD126の横幅は50.5cm、TD127は56.5cm。
6cmの差がある。
この6cmがどう捉えるか。

数値で判断するとそれほどの違いには思えないが、
実物を前にするとトーンアームベースがそうとうに横に広くなっている。
つまりターンテーブルプラッターとトーンアームのあいだが、
ショートタイプよりも当然ながら広く空いてしまう。

間が抜けたように感じてしまうのだ。

ラックスのPD121を、トーレンスのTD126からTD127のようにしたら、どうなるか。
PD121の横幅は47.2cm。これが6cm程度広くなる。
これにより印象はどう変るか──、容易に想像がつく。

Date: 12月 5th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その26)

SMEの3012-R Specialは、これまで見てきたトーンアームの中で、最も美しい。
ステレオサウンド 57号の広告、58号の記事に登場したときも、美しいと思ったし、
1981年春、無理して購入して自分のモノとして触れた3012-R Specialは、やっぱり美しかった。

音でいえばSMEのSeries Vのほうが優れている。
Series Vも欲しい、と思ったトーンアームである。

3012-R Specialが登場して35年が経った。
改めて美しいトーンアームだと思っている。

3012-Rも金メッキを施したGoldモデルと、
内部配線を銀にし、ナイフエッジを金属にしたProモデルが出た。

日本では金メッキというと、成金趣味と捉えられがちだが、
3012-R Goldの金メッキはしっとりした感じで、これはこれでいいと思う。

価格はずいぶんと高くなったけれど、3012-R Specialよりも音はいいように感じた。
金メッキはトーンアーム全体を適度にダンプしてくれるようで、
金という金属は、オーディオにとっても特別な金属であることを認識することになる。

とはいえ、いま欲しい、つまりもう一度欲しいと思うのは、3012-R Specialである。
Series Vでもなく、GoldでもProでもなく、スタンダードな3012-R Specialがいい。

3012-R Specialに続いて、3009-R、3010-Rも登場した。
パイプのサイズが違うだけのモデルが出てきて、
ますます3012-R Specialが美しいかを感じていた。

ロングアームが音がいい、という人もいれば、そうではない、という人もいる。
使用するカートリッジによっても、そのへんは変ってくるし、
音だけで選ぶならば他のトーンシームがある。

いま、この齢になって欲しいと思うのは3012-R Specialであり、
特にオルトフォンのSPUのGタイプのようにボリュウムのあるカートリッジの場合、
3012-R Special以上に美しさのバランスのとれたトーンアームは他にない。

けれど3012-R Specialう装着して美しいと思えるターンテーブルがない。
このことは以前にも書いたように、プレーヤーシステムとしてバランスがくずれてしまう。

Date: 12月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その25)

1978年のオーディオフェアには、国内メーカーからいくつかのアナログプレーヤー、
それもプロトタイプといえるモノが展示されていた。

といっても、当時は熊本住いだったから、オーディオ雑誌の記事で知っている程度でしかない。
後に製品化されたモノではマランツのTt1000。
1978年のオーディオフェアでは、Tt700の名で展示されていた。

ビクターはスーパーターンテーブルとして原盤検聴用に開発された、
上下二重ターンテーブル方式のモノを、
トリオはRP6197という型番の、
超重量級のプレーヤー(これが後のケンウッドL07Dにつながっているといえよう)、
テクニクスはカッティングレーサー用のSP02を展示していた。

私がいいな、と思ったのはフィデリティ・リサーチのNFT40というアナログプレーヤーだった。
トーンアームにはFR66Sがついている。

NFT40という型番は、おそらくNon Friction Air Push up Turntableから来ていて、
末尾の40は、40cm径のターンテーブルプラッターを示している、と思われる。

だからロングタイプのFR66Sが、NFT40には取り付けられて展示されていた。

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」の巻末の記事で、
NFT40のことを知った。知ったといっても、
さほど大きくないモノクロのぼんやりした写真から得られたくらいでしかない。

ターンテーブルプラッターは、40cm径とはいえ、
あくまでも30cmLPのためのプレーヤーを意識してのことだろうが、
段差がついて形状となっているように見える。

レコードのかけかえはやりやすそうである。

NFT40は、世に登場することはなかった。
この試作品は、その後、どうなったのだろうか。
どんな音がしたのだろうか。

まったく情報はない。
そんなプレーヤーのことをいまごろ思い出しているのは、
SMEの3012-R Specialのことを、どうしても忘れられないからでもある。

Date: 11月 20th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その24)

Beogram 8000はデザインが優れていたために損をした──、
そう書いた。

損をしたのは、B&Oなのだろうか。
B&Oは、それまでのことから各国でどういう扱いをされるのかは在る程度予測していたはず。
Beogram 8000のダイレクトドライヴの方式は、あまり注目されないことはわかっていたと思う。

だから、損をしたのはB&Oというより、われわれだと思う。
われわれとはオーディオ雑誌の編集者、オーディオ評論家を含むオーディオマニアである。

B&Oはデザインの優れたオーディオをつくる会社、というバイアスが、
われわれにあったことが、Beogram 8000の内側に関心をもつことをしなかった。

いまもアナログプレーヤーについては、
その21)で書いたような、議論になっていない議論のようなことが行われている。
本質から外れての、議論になっていない議論のようなことにしか思えないことが少なくない。

そういうところでB&Oのダイレクトドライヴ方式が話題になることはない。

もしアナログプレーヤーの開発にかかわることができるのならば、
私は、B&Oと同じく電力計の原理によるダイレクトドライヴを推す。
Beogram 8000の構造とは違う構造をとる。

Date: 11月 20th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その23)

「これはデザインで損している」とか「デザインで得している」とか、
そういった評価みたいなことを聞くことがある。

こんなことをいう人は、デザインを付加価値としてしか捉えていない。
だから、損している、得している、といったことをいうのだろう。

B&OのBeogram 8000は、そんな次元の話ではなく、
デザインで損している、といえる。
デザインが悪いからでもなく、デザインを付加価値と見てのことでもない。

デザインが優れていることで、デザインのことでしか語られないことがある。

B&Oは新製品を毎年のように出す会社ではなかった。
Beogram 8000の前のモデル、Beogram 2402、Beogram 4004はベルトドライヴだった。
Beogram 2402は1980年の新製品である。

Beogramシリーズはデザインとリニアトラッキングアーム、それにフルオートであること、
この三つのことがまず語られる。

その内側に盛り込まれている技術については、あまり語られることはない。
Beogram 8000がダイレクトドライヴになったことは知っていても、
一般的なダイレクトドライヴと同じ方式だと思っている人が大半かもしれない。

しかもB&Oは、あまり技術的なことをことこまかに語ることはしない。
Beogram 8000が「デザインで損している」とは、そういう意味である。

Beogram 8000は1981年の新製品である。
ダイレクトドライヴ方式についての音質面での追求が、
各メーカーでなされている時期であり、それぞれに工夫があった。

これらについてはオーディオ雑誌で取り上げられていたのに、
ダイレクトドライヴの技術的な考察からのBeogram 8000の記事はなかった。

Date: 11月 18th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その22)

ダイレクトドライヴは、なにもセンタードライヴである必要はない。
その18)で書いたように、
ターンテーブルプラッターというマスをもつものを廻すには、
中心に力を加えるよりも外周に力を加えた方が理に適っている、はず。

外周に……、ということになると、ベルトドライヴやアイドラードライヴということにななる。
ダイレクトドライヴで外周(最外周でなくとも、外周より)で力を加える方式が、
ダイレクトドライヴのひとつの理想形といえるのではないだろうか。

ずいぶん前に、そんなことを考えた。
とはいっても具体的な方式は考えつかなかった。

どのぐらいしてだろうか、一年、二年くらい経ってのことだ、
電力計の円盤が回転しているのを見て、これはアナログプレーヤーに使えるのでは、と。

使用している電力に応じて回転するスピードは変化する。
それになめらかに回転している。

あの当時、インターネットがあれば、すぐさま「電力計 原理」と検索するところだが、
そんなものはなかった。
すぐに電力計の原理について知ることはできなかった。

それからまた一年か二年経ったころに、あるアナログプレーヤーが登場した。
電力計と同じ原理でターンテーブルを回転させていた。

私が思いつくのだから、メーカーのエンジニアも思いつく。
彼らは原理を知っている。そしてアナログプレーヤーに応用している。

B&Oのダイレクトドライヴ型プレーヤー、Beogram 8000がそうである。
それまでベルトドライヴだったB&Oが出してきたダイレクトドライヴは、センタードライヴではなかった。

Date: 10月 7th, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その7)

電子ボリュウムの操作性の悪さ、と書いているので、
もしかしたら電子ボリュウムすべてが操作性が悪いと受け取られたかもしれない。

そんなことはない。
電子ボリュウムでも操作性に不満を感じないモノは、当り前に存在している。
すべての電子ボリュウム採用のオーディオ機器に触れているわけではないから、
どちらが多いのかを正確には把握していないが、問題のないモノの方が多いのではないだろうか。

電子ボリュウムの操作性は、一般的なポテンショメーターよりも劣るわけではない。
むしろ良くすることが可能な技術であるはずだ。
にも関わらず、操作性の悪さを残したままのモノが存在しているということ。

そのひとつがテクニクスのSU-R1であり、
しかもテクニクスのスタッフが、
レコードかけかえの作法をきちんを行っていたから、露呈したわけである。

私がテクニクスのスタッフが、仮に入力セレクターを使っていたら、何も書かなかった。
入力セレクターの切替えでやることを批判も否定もしない。
その人の考え方次第であるからだ。

瀬川先生は流れるような動作で、ボリュウム操作までを行われる。
対照的に語られるのが岩崎先生のレコードのかけかただ。

カートリッジを盤面数cm上から、文字通り落とされる。
だから、場合によってはカートリッジがバウンドすることもあった、と、
複数の人から聞いている。

けれど岩崎先生は、瀬川先生と同じように器用な指さばきで、
レコードの任意の位置に針をていねいに降ろす技術をもっていたうえでの、
そういうレコードのかけかたをされていたわけである。

作法を身につけずに、豪快といえるレコードのかけかたをされていたわけではない。

今回、この項を書いていると、
ほんとうに忘れられつつあることが見えてきたような気がする。

Date: 10月 7th, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その6)

レコードのかけかえごとのボリュウム操作は、
こまめにボリュウムを変えない人にとっては、非合理なこととうつるはずだ。

ボリュウム操作にこだわっていることを、
瀬川先生のマネをしていると捉えられるかもしれない。

けれど私くらいの世代(上の世代)にとって、
それはレコードをかける作法といえるのであって、身につけておくべきことと捉えていた。

オーディオは、レコードのかけかえは、
個人のリスニングルームという、いわは密室内でのことだから、
レコードのかけかえごとにボリュウム操作をするしないは、
それによって誰かに迷惑をかけるわけでもないし、誰かを不愉快にさせるわけでもない。

だから合理的だということで入力セレクターの切り替えで、
針の導入音を鳴らさないようにするのも、ボリュウムの上げ下げで鳴らさないようにするのも、
どちらをとっても自由である。

ただ私は、オーディオショウという場で、
ボリュウム操作性の悪いSU-R1を使いながらも、
入力セレクターの切替えではなく、
ボリュウム操作を選択していたテクニクスのスタッフに好感を持ったということである。

それから常にレコードのかけかえごとにボリュウム操作をするわけではない。
たとえばカートリッジ、トーンアームの調整をする際は、
ボリュウムのツマミはまったくいじらない。

トーンアームの高さ、針圧、インサイドフォースキャンセル量の調整では、
一枚のレコードに固定して、ターンテーブルは廻したままで、
針圧を少し変化させては針を降ろす。

入力セレクターも使わないから、導入音がする。
この導入音も調整時には判断要素として重要なことのひとつである。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その5)

テクニクスの事業推進室長をつとめる小川理子氏は、
オーディオ雑誌やウェブサイト、テレビなどに、テクニクスの顔として登場されている。

いわばテクニクス・ブランドのプロデューサー的役割の人のように見受けられる。
このことはいいことだと、インターナショナルオーディオショウの前までは思っていた。
けれどSU-R1のボリュウムの操作性の悪さを見ていて、
この人の役割はいったいなんなのだろうか、と疑問に思っている。

小川理子氏はテクニクスの、現在の製品を使っているのだろうか。
使っていたとしても、アナログディスクは聴かれているのか。
聴かれているとしたら、どういう聴き方なのか。

SU-R1のボリュウムに関しては、自分で使ってみれば、すぐにでも改善したいと思うはず。
それは試作品の段階で気づくべきことであったし、
気づけなかったとしても、発売から一年以上も経っていて、そのままということは、
特に問題だとはしていないのか。

オーディオ雑誌は、そのことにインタヴューしたのだろうか。

疑問に感じることは、オーディオ評論家にもある。
試作品の段階で、間違いなく試聴している。
製品となってからも試聴している。
にも関わらず、SU-R1のボリュウムについて指摘した人は誰もいないのか。

テクニクスがSL1200を復活させていなければ、何も書かずにおこうとも思うが、
アナログディスク再生も、テクニクスはやっていく。
SU-R1のボリュウムの操作性を、どうするつもりなのだろうか。

もうそんなことはどうでもいいことと考えているのだろうか。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その4)

テクニクスのSU-R1のボリュウムの、
アナログディスク再生時における操作性の悪さは、
インターナショナルオーディオショウでのテクニクスのスタッフの人が実感していたはずだ。

針の溝への導入音は、音を判断する上で重要な手がかりとなるといっても、
オーディオショウという場で来場者に聴かせる類の音ではない、ともいえる。
極力聴かせないような配慮を、テクニクスのスタッフはしていた。

テクニクスのスタッフも、入力セレクターの切替えで対処することは考えた、と思う。
誰でも思いつくことなのだから。
それでも、テクニクスのスタッフは針の上げ下しに合せてボリュウムツマミをまわす。

その行為を、好き好んでバカなことやっている、面倒なことやっている、と見ていた人もいたかもしれない。
でも、私は感心して見ていた。

アナログディスク再生へのこだわりをもって、
ボリュウム操作をしている人が目の前にいたからだ。

それも自分のリスニングルームにおいてではなく、
インターナショナルオーディオショウという場において、である。
こういう場での音出しならば、入力セレクターの切替えを利用した方が、ずっと楽だ。

不思議なのは、こういう人がいるにも関わらず、SU-R1の電子ボリュウムは、
アナログディスク再生においては扱い難い、ということだ。

SU-R1はフォノイコライザーを搭載していないから、
開発時の試聴ではアナログディスクは使われなかったのかもしれない。
それでもSL1200Gの開発では試聴を行っているはず。
その時点で、SU-R1のボリュウムの問題点には気づかなかったのか。
ここは疑問として残る。

気づいてそのままにしておいたのか。
それとも開発時の試聴では入力セレクターの切替えで対処していたのか、
それとも導入音を出しての試聴だったのか……。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その3)

この項のタイトルは「アナログディスク再生とは」ではなく、
「私にとってアナログディスク再生とは」にしている。
あえて「わたしにとって」をつけている。

針の上げ下しの際にボリュウムツマミをまわすことにこだわって、
そのことについて書いている。

合理的に考えれば、(その2)で書いたように、
ボリュウムツマミではなく、入力セレクターを使った方が楽である。

たとえば昔の海外製のフルオートプレーヤーには、
出力にリレーが入っていて、針が降りてからリレーがオンになり、
針が上る前にオフになる機構がついているモノがあった。

この手のプレーヤーを使うのではあれば、あらかじめボリュウムツマミをまわしておけばいい。
そういう使い方が本来的といえる。
私はフルオートプレーヤーを使ったことはないが、
もし使うとなっても、ボリュウムツマミを針の上げ下しにあわせて回すような気がする。

EMTのプレーヤーには927Dst以外クイックスタート・ストップがあり、
出力をリレーで同期させている。
この機能を使えば、フルオートプレーヤー同様、ボリュウムツマミをあらかじめまわしておけばいいのだが、
トーレンス101 Limitedを使っていたときでも、ボリュウムツマミをまわしていたからだ。

この項では、テクニクスの名前を出さない書き方もできた。
それでもテクニクスの名前を出しているのは、
テクニクスのスタッフは、レコードのかけかえごとにボリュウムツマミをまわされていたからだ。
そこに感心したから、である。

Date: 10月 2nd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その2)

レコードの無音溝に針を降ろす。
音が鳴り始まるまでは、ほんのわずかしかない。
そのわずかのあいだにボリュウム操作を的確に行う。

上げすぎでもなく低すぎでもなく、ぴったりの音量になるようにすばやくボリュウムをまわす。
ボリュウムのツマミにふれている時間は、わずかだ。
そのわずかな時間でも、従来のポテンショメーターのボリュウムであれば、
すっと上げられもできたし下げることもできた。

だが電子式ボリュウムの中には、そうはいかないものがある。
テクニクスのSU-R1だけではない。
ジェームズ・ボンジョルノ設計のAmbrosiaもそうだと聴いている。

クルクルクルクルと何回もツマミをまわさないと、十分な音量まであげられない、そうだ。
ボンジョルノは、このボリュウムのプログラミングまで自分で行った、そうだ。
でも、その部分だけは外注すべきだったのではないたろうか。

レコードをかけるときのボリュウムの上げ下げは、
針が溝に落ちる際の音をまったくきにしない人であれば、
レコードかけかえごとに、ボリュウム操作はしないだろうから、
SU-R1やAmbrosiaのようなボリュウムでも、特に問題とは感じないであろう。

こう書いていくと、針の上げ下しのときには、
入力セレクターをPhonoポジションではなく、その他のポジションにすれば解決する、
そういう人がきっといる。

でも、違う。
レコードをかけるということは、
レコードをジャケットから取り出してターンテーブルにのせ、
針の上げ下しからボリュウム操作までを含む。

少なくとも私はそう考えている。
そんな面倒な……、と思うような人は、アナログディスク再生には向いていない、といえる。

Date: 10月 2nd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その1)

瀬川先生のレコードのかけ方は見事だった、と、
それを間近で見てきた人は、そう言う。

私も熊本のオーディオ店で見て知っている。
レコードをに針を降ろして、ボリュウムをさっとあげるまでの動きのスムーズさ。
流れがある、とはこのことだと思う。

その瀬川先生でも、流れが留ってしまうだろう、という光景を目にした。
インターナショナルオーディオショウでのテクニクスのブースでだった。

またテクニクスのブースでのことになってしまうが、
ここで指摘する問題はテクニクスだけではない。
テクニクス以外にも、同じ問題を抱えているオーディオ機器(コントロールアンプ)はある。

いままで見落していたところであり、
たまたまテクニクスのブースで気づかされた。

テクニクスのコントロールアンプSU-R1のボリュウムは、
従来のポテンショメーターではなく、いわゆる電子式である。

音がよければ、ポテンショメーターであろうと電子式であろうと、
どちらでもいいわけだが、ここには操作性の問題が関係してくる。

テクニクスのスタッフがレコードをかけかえるたびに、
針の上げ下しの歳に、SU-R1のボリュウムのツマミをせわしくなく回されていた。

かなりまわさなければ、十分な音量まであげられないし、
音を絞ることができないのだ。

SU-R1はフォノイコライザーを搭載していない。
アナログディスク再生をしないという人ならば、
このボリュウム操作の問題は、さほど気にならないかもしれない。

だがアナログディスクではそうはいかない。

Date: 9月 8th, 2016
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その31)

接点をこまめにクリーニングする知人がいた。
彼がオーディオ機器のセッティングを大きく変更するというから手伝ってほしい、といわれた。

セッティングの変更だから、まず接続ケーブルを外していくことから始まる。
ここで気づいたのだが、確かに接点はこまめにクリーニングされているようであるが、
RCAプラグがスポッと簡単に抜けてしまった。

スピーカーケーブルに関しても同様だった。
アンプ・リアパネルのスピーカー端子、スピーカーシステム裏側のスピーカー端子、
どちらも締めがゆるかった。
ほとんど力を入れずに緩めることができた。

これでは……、と思ってしまった。
ステレオサウンドの試聴室で、長島先生は特に接点の状態を気にされた。
接点のクリーニングはもちろん、
接点の嵌合具合に関しても,つねに気を配られていた。

RCAプラグがスポッと抜ける場合だと、
ロングノーズプライヤー(ラジオペンチ)で、RCAプラグのアース側の径を少し小さくされる。
あまり小さくしてしまうと、今度はRCAジャックにささらなくなるから、
適度に抵抗が感じられる程度にする。
何事もやりすぎは禁物である。

これでしっかりと嵌合するようになるのは、あくまでもアース側だけである。
それでもゆるいのとしっかりしている状態とでは、音に違いがあらわれる。
スピーカー端子も同じだ。
意識的に緩めた状態と締めた状態の音を比較してみれば、すぐにわかることだ。

アナログディスク再生だと、シェルリード線も交換できるし、この部分にも接点がある。
この個所の接点がゆるかったり、汚れていたりしては、
それ以降の接点をきちんとしていても、台無しである。

しかもシェルリード線の嵌合が緩いまま気にしていない人は、意外に多いようだ。

Date: 7月 24th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その21)

数ヵ月前だった、facebookでダイレクトドライヴについての議論のようなものが目に留った。
肯定派、否定派による議論であれば読んで得られるものがあるが、
そこでは議論にはならずに議論のようなものの段階で留っていた。

ダイレクトドライヴはダメだ、と主張する人も、
ダイレクトドライヴは優れていると主張する人も、
なぜ、そこだけしか見ていない? と思えるほど微視的な視点での、
それも相手の言い分を聞かずに(読まずに)、一方的に主張するだけに終始していた。

アナログプレーヤーがLPをのせて回転するだけで事足りるモノであれば、
そこでの議論のようなものも議論にもう少し近くなろうが、
アナログプレーヤーはそういうモノではない。

回転機器として十分な性能を持っていたとしても、
オーディオ機器として充分かというと、そうではない。

テクニクスの新しいダイレクトドライヴを見ていると、
まさにそうである。回転機器としては、あのつくりでも問題はないであろうが、
オーディオ機器として見た場合には、問題が残ってしまう。

ああいうつくりにしてしまうのは、大量生産と安定した品質を得るためであることはわかるが、
それではオーディオ機器とはいえないのである。

オーディオエンジニアリングの不在が、SL1200の最新モデルからみてとれる。
何もSL1200の最新モデルだけがそうだというわけではない。

だがダイレクトドライヴを生み出したのは、テクニクスである。
だから、つい厳しいことを書きたくなる。